学術出版と学術コミュニケーション−ブロッグ(Weblog)

2002年2月27日

ミシガン大学図書館のOAIsterプロジェクトの紹介
OAIsterは、メタデータ・ハーベスティング計画のため補助金(メロン財団)による7プロジェクトのひとつである。OAIsterの目標は、これまでアクセスが困難であった、あらゆる分野の無料で利用できる有益な電子リソースのリポジトリを構築し、それを誰もが簡単に検索できる仕組みを提供することにある。プロジェクトの特徴としては以下の点を挙げることができる。
  • OAIメタデータ・ハーベスティング・プロトコルを使用して、これまでウェブ・スクリプトの背後に隠れ、利用者の目には触れなかった電子リソースを開示する。
  • 利用者は単に電子リソースに関するメタデータを入手するだけでなく、リソースそのものにもアクセスできる。
  • 有益な電子リソースに関心を抱く利用者にとっての、ワン・ストップ・ショッピングを提供する。
  • 電子リソースは誰でも簡単に検索・閲覧できる。DLPSと呼ばれるミドルウェアがこれを可能にする。

HINARIの紹介
HINARI (Health InterNetwork Access to Research Initiative)は、開発途上国の公的機関に対して、無料もしくはそれに近いかたちで医学生物学系の学術文献を提供しようというプログラムである。World Health Organization (WHO)とOpen Society Institute (OSI)が創設し、現在ではBMJとイェール大学図書館の支援を受けてWHOが管理運営している。このプログラムの下で、医学生物学系の出版社(6社)は、一人当たりの国民総生産に応じた3段階の価格設定に合意している。一人当たりの国民総生産が1000ドル以下の国については、オンライン版の購読料が無料になる。また、1000ドルから3000ドルの範囲の国については、ディスカウントが適用される。3000ドルを越える国については通常の購読料が設定される。現在の参加出版社は、Blackwell Synergy、Elsevier Science Direct、Harcourt IDEAL、Springer Link、Wiley Interscience、Wolters Kluwerの6社であるが、3月にはさらにいくつかの出版社が加わる予定。
この1年ほど利用不能状態になっていた、Directory of Scholarly and Professional E-Conferencesが再開した。
Ex Librisのプレスリリースによれば、CrossRefとSFXの完全統合化が完了した。

2002年2月21日

United Press Internationalに著作権と研究情報(Copyright and scholarship)と題された、ピーター・サバー(Peter Suber)に対するインタビュー記事(パート1パート2)が掲載されている。サバーは、フリー・オンライン・スカラシップ運動の提唱者であり、Free Online Scholarship newsletterを刊行している。また、ブダペスト・オープン・アクセス運動(Budapest Open Access Initiative: BOAI)の創設メンバーの一人でもある。

2002年2月20日

Kimberly Douglas, Dana Roth and David Goodman. E-Choice option for Elsevier's Science/Direct. SPARC e-news Supplement, February 2002
エルゼビアのE-Choiceオプションの分析。
Rob Kling, Joanna Fortuna and Adam King. The Real Stakes of Virtual Publishing: The Transformation of E-Biomed into PubMed Central. CSI Working Paper No. WP-01-03.

仮想出版の真の利害関係:E-BiomedからPubMed Centralへの変容
[抄録]
1999年、NIHの所長であったハロルド・バーマス(Harold Varmus)は、"E-Biomed"と名付けられた全国生物医学文献サーバの提案を行った。学術的電子出版の提唱者たちのビジョンを反映したものであった。E-Biomedは完全な検索機能を備え、無料でアクセスでき、生物医学分野のプレプリントと刊行後論文の全文情報を収録するはずであった。しかしながら、1年足らずの間に、E-Biomed提案は根本的な変更を余儀なくされ、プレプリント・セクションは削除され、論文の刊行からアーカイブへの投稿までのタイムラグが認められ、さらには"PubMed Central"と改名された。本稿では、米国政府機関であるNIHが設けたE-Biomedに関するオンライン・ディスカッション・フォーラム、その他、E-Biomedをめぐる論争が展開されたフォーラム上の投稿メールの分析を通じて、E-Biomedの提案からPubMed Centralへの注目に値する変容を精査した。その結果、この変容は、提案に反対する出版社と学会による、認知度が高くかつ影響力の強い発言によって生じたことが判明した。結論として、以下の3点が導き出された。1) 学会及び学会を構成する個個の研究者の利害は必ずしも一致しない。特に学術電子出版に関してはこの傾向が顕著に認められる。2) 政策論争の場においては、利害関係者の政策と個人的な利害が支配的な力を持っている。たとえ建前上、地位や身分にとらわれないオンライン・ディスカッション・フォーラムの場においても、この傾向が認められる。3) 公の政策論争の検証を行う場合には、複数のコミュニケーション・フォーラムを対象とすべきである。


Rob Kling, Lisa Spector, Geoff McKim. Locally Controlled Scholarly Publishing via the Internet: The Guild Model. CSI Working Paper. No. WP-02-01.

学部や研究機関が管理するインターネット経由の学術出版:ギルド・モデル
[抄録]
図書館員や研究者の多くは、インターネットの出現により研究論文を介した学術コミュニケーションは劇的に改善されると信じている。この10年間、読者が無料で論文にアクセスできる環境を実現するための主要なモデルについて活発な議論が行われてきた。このモデルとは、電子ジャーナル、紙と電子のハイブリッド・ジャーナル、著者によるウェブサイトへのセルフ・ポスティング、及び著者が査読前の論文を投稿できる分野ベースのリポジトリの4つである。それぞれのモデル内において、数多くの実践プロジェクトが行われてきた。同様に、それぞれの長所と限界についても広範な議論が展開されてきた。これらのプロジェクトのいくつかは、ある特定の分野における貴重な学術リソースへと発展していったが、複数の分野を横断する共通のモデルはひとつも生まれていない。4つのモデルの他に、いくつかの分野において密かに発展し、採用されてきた第5のモデルが存在する。すなわち、ワーキング・ペーパーやテクニカル・レポートと呼ばれ、学部や研究機関が後援する研究出版物シリーズである。こうした文献シリーズの多くは、現在では、オンラインで無料提供されている。このモデルを本稿ではギルド出版と名付ける。他の4つのモデルと比較した場合、ギルド出版には明確な利点と限界が存在する。本稿では、ギルド出版モデルとは何かを説明し、それ実例を挙げ、さらにこのモデルの長所と短所について論じる。

2002年2月19日

「ブダペスト宣言」に対するAssociation of Learned and Professional Society Publishers(ALPSP)の立場
[全訳]
ALPSPは複数国の約200の参加出版社を代表する組織である。これらの出版社の大多数は学術専門情報を扱う非営利出版社(学会、大学出版局その他)である。非営利出版社として、われわれのメンバーは、学術研究の発展のために、可能な限り広範囲に及ぶ情報の配信に献身的に取り組んでいる。この活動から利益を得ることは二の次であり、利益が生じた場合には、それは親組織の使命を支援するために利用される。

ALPSP自身の調査を通じて、フォーマルな出版は相変らず研究者にとって多大な価値を有しており、ピア・レビューは単にその価値の一部にすぎないことが判明している。しかしながら、このフォーマルな出版のプロセスには費用がかかる。電子出版の出現によって、この費用はたしかに低減されてはいるものの、それは期待されたほどではない。むしろ、データベースの構築やメンテナンス、利用者が要求する検索機能や使い勝手の向上、そして、恒久的な保存のための費用が新たに発生している。フォーマルな出版の核を成す機能を維持していくためには、コミュニケーションの連鎖のなかのどこかで、こうした費用に対する支払いが行われなければならない。

研究文献の量的増加、及びそうした文献を購入するための図書館予算の伸び悩みを原因とする問題が、ますます深刻化していることをALPSPは認識している。ALPSPのメンバーの多くはすでに過去の論文コンテンツを無料で開放している。また、著者が自らの論文をアーカイブに投稿することや再利用することに制限を加えてはいない。ALPSPは、可能な限り研究者の便宜を優先する政策を採用することを出版社に勧めている。加えて、メンバーの数社は、現行の図書館を通じた予約購読やライセンスモデルに取って代わる、より持続可能性の高い資金調達モデルの開発に積極的に取り組んでいる。しかしながら、雑誌コンテンツの刊行資金を調達するための実行可能な代替経済モデルを導入することなく、学術機関によるコンテンツの組織的アーカイビングを促進していこうというイニシャティブは、われわれの学術コミュニティ全体にとって悪影響を及ぼすとわれわれは確信している。このような運動は、学術コミュニティがその価値を認めているフォーマルな出版プロセスの土台を蝕むだけである。それ故、責任ある組織がこうしたイニシャティブに支援を申し入れることは危険である、とALPSPは判断した。


BOAIに対するメディアの反応

2002年2月15日

米国図書館協会情報技術政策室(ALA Office for Information Technology Policy)は、2月25日から、図書館員に必要なライセンシング提要についての電子メールによるチュートリアルを開始する。講師はレスリー・エレン・ハリス(Lesley Ellen Harris)。詳細は、liblicense-lの投稿記事を参照されたい。
Eprints v. 2.0がリリースされた。Eprintsはセルフ・アーカイビングのためのOAI準拠アーカイブを構築するためのフリー・ソフトウェア。
2月11日付け、Ebraryのプレスリリースによれば、エルゼビア・サイエンスはebraryを通じて科学書の配信を開始するとのこと。
2月8日付けプレスリリースによれば、CrossRefの参加出版社が100を越え、登録論文数も400万件を突破した。
2月12日付け、プレスリリースによれば、Swets Blackwellは、エルゼビア・サイエンスとBibliotheque Interuniversitaire de la Communaute francaise de Belgique (BICfB)との間の契約をとりまとめた。この契約によって、BICfBは今後3年間Science Directの1,2000誌にオンラインアクセスするライセンスを獲得した。BICfBはベルギーのフランス系コミュニティの9大学からなるコンソーシアムである。

2002年2月14日

ブダペスト・オープン・アクセス運動(Budapest Open Access Initiative(BOAI))の創設

2月14日に公式に発足したBOAIは、全ての学問分野の研究論文をインターネット上で無料で利用できるようにするための国際的な取組みを支援するイニシャティブである。ソロス財団ネットワークのOSI Information Programは、BOAIの活動をサポートするために、今後3年間にわたって毎年100米ドルの助成金を提供することを約束している。現在、345名の個人と33機関がこの運動に賛意を表明する署名を行っている。33機関のなかには、ARLSPARCBioMed CentralPublic Library of Science等も含まれている。


Leslie Chan and Barbara Kirsop. Open Archiving Opportunities for Developing Countries: towards equitable distribution of global knowledge. Ariadne. 30. (2001.12)
オープン・アーカイビングが途上国にもたらす恩恵−地球規模での平等な情報配信に向けて
[抄録]
ワールド・ワイド・ウェブが誕生してからまで10年足らずであるが、ウェブはすでに学術出版及び学術コミュニケーションに多大な影響を及ぼしている。とりわけ、オープンな標準規格と低コストのネットワーキング・ツールによって、学術出版物の価格障壁を引き下げ、さらにはそれを完全に取り除く可能性がさまざまな形で生まれつつある。なかでも貧困国にとって多大な潜在力を持つのが、「オープン・アーカイビング」、すなわちインターネットでアクセスできるネットワーク・サーバに研究論文を寄託しようというイニシャティブの進展である。「オープン・アーカイビング」の普及に伴い、途上国の研究者は、オンライン相互運用の仕組みを通じて先進国の研究者による研究成果を探し出すことが可能となる。同様に、途上国の研究者はこの運動に参加することにより、地球規模での知識ベースに自らの研究成果を投稿することが可能となるのである。本稿の目的は、途上国の研究者や出版者にこの「オープン・アーカイビング」や他の関連イニシャティブについて紹介し、参加の可否を決定するための情報を提供することにある。電子出版やオープン・アーカイビングのための「電子プリント」サーバの構築に関する技術詳細を提供することよりもむしろ、途上国の研究者にとってオープン・アーカイビングが持つ戦略的重要性について力点を置く。

2002年2月13日

Andrew W. Mellon財団の電子ジャーナル・アーカイビング・プログラムに参加している図書館による進捗レポートのサマリーがウェブ上で公開されている。プログラム参加館は、コーネル大学、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、ニューヨーク公共図書館、スタンフォード大学、ペンシルバニア大学、イェール大学。
カナダの6大学が電子テキストの研究者のためのオンライン・ポータルの構築を開始した。TAPoR(Text Analysis Portal for Research)と呼ばれるこのポータルは、電子テキストのデータベースへのアクセスやテキスト研究のためのソフトウェアを提供していく予定。さらに、参加6大学のそれぞれが、スキャナー、コンピュータ、及びその他のハードウェアやソフトウェアを備えたラボを開設し、テキスト研究者に開放する計画もある。
参加しているのは、マックマスター大学、モントリオール大学、アルバータ大学、ニュー・ブランズウイック大学、トロント大学、ビクトリア大学の6大学。 総予算は、カナダ・イノベーション財団からの提供される1.6百万ドルに参加大学が拠出する分担金を含めると、プロジェクトの総予算は4.3百万ドルに達する。
カナダのテキスト研究者はこれまで数多くのデータベースを開発してきた。そこには、古英語、中世英語のテキスト・コレクション、カナダ原住民の言語資料、マルチメディア音声テキスト、及び貴重韻文テキストなどが含まれる。研究者はポータルを通じてこれらのデータベースにアクセスすることが可能となる。
[ニュース・ソース]
Karen Birchard. Canadian Universities Will Create an Online Portal for Studying Texts. Chronicle of Higher Education. February 8, 2002.

2002年2月7日

2月6日付けのSPARC Newsによれば、世界の主要な8つの研究図書館組織が、国際学術コミュニケーション同盟 (International Scholarly Communications Alliance (ISCA)) を結成した。この同盟には、オーストラリア、カナダ、ヨーロッパ、香港、ニュージーランド、英国、米国の研究図書館連盟に加えて、日本の国立大学図書館協議会も創設メンバーとして名を連ねている。ISCAは、地球規模のネットワークを形成し、研究者や出版者と協力して、研究学術出版物への平等で健全なアクセスを確立することを目的としている。

2002年2月6日

ALA Midwinter 2002 Conferenceの期間中に開催された、電子出版物のアーカイビングに関するNISO/BISGミーティング(2002年1月20日)の報告書が公開された。この会合は、現在進行中の3つの電子アーカイビングプロジェクトに焦点を合せたもので、出版者と図書館委員が直面している諸問題の検討を行った。
ハーバード大学図書館の企画システム副部長であるデール・フレッカー(Dale Flecker)は、電子ジャーナルのアーカイブ方法に関するハーバードでの研究について報告した。
エルゼビア・サイエンスのカレン・ハンター(Karen Hunter)は、ハーバードのプロジェクトと同様にメロン財団の資金援助による、イェール大学図書館とエルゼビア・サイエンスの共同ディジタル保存プロジェクトについて報告した。
米国政府印刷局(U.S. Government Printing Office)の図書館プログラムサービスのジョージ・バーナム(George Barnum)は、GPOとOCLCの共同プロジェクトである、OCLCウェブ・ドキュメント電子アーカイブ計画について報告を行った。

2002年2月5日

Create ChangeDeclaring Independenceにつづく、SPARCの第3のマニュアルとなる「独立への道 (Gaining Independence: A Manual for Planning the Launch of a Nonprofit Electronic Pulishing Venture)」がこの春発表される予定。SPARC e-news (December-January 2002)による。
バーバード大学図書館は、電子ジャーナルに含まれる論文のアーカイビングの実現可能性に関する報告書を発表した。この「電子ジャーナル・アーカイブのためのDTDの実現可能性の研究」によれば、現行のドキュメントタイプ定義 (Document Type Definitions (DTDs))は、いずれも、アーキビストの長期的な要求を満たしてはいない。しかしながら、ある共通のDTDを策定し、それを利用して、出版者が保有するSGMLやXMLの一次ファイルをアーカイブを目的とした共通フォーマットにうまく変換することが可能である。
SPARC e-news (December-January 2002)に、1月9日に国立情報学研究所にて開催された、講演会「SPARCと日本の学術コミュニケーション」に関連した報告が掲載されている。以下はその翻訳。
1月初旬に東京にて開催された、学術コミュニケーション市場の改革に向けた図書館と研究者主導のイニシャティブに関する一連のディスカッションに、SPARCが参加した。国立大学図書館協議会の協賛の下、国立情報学研究所が主催したこのディスカッションにおいて、SPARCは、日本の図書館における雑誌の危機を解決するための、幾つかの可能な方策を提示した。日本の国立大学図書館の受入雑誌タイトル数は、1989年の40,000タイトルをピークとして、その後約半数にまで落ち込んでいる。日本では、高額な購読料、不利な為替相場(特に円建て価格)、及び非集約的な蔵書構築アプローチなどが相まって、現在の危機的状況がもたらされた。文部科学省の諮問委員会は、電子ジャーナルの出版とアクセスをめざした新たな方向性に関する勧告を策定している最中である。この勧告には、日本の学会がセルフ出版のためにディジタル技術を活用する方法や、図書館グループが連携して購読料を引き下げるための交渉力を強化する方策も含まれることになっている。最初の一歩として、Create ChangeパンフレットとDeclaring Independenceハンドブックの翻訳と配布が計画されている。国立大学図書館協議会と国立情報学研究所は、今後もSPARCと協力して、日本における啓蒙報知活動を展開し、学会や個人研究者のための電子出版の選択肢を促進する予定である。詳細については、Science Vol. 295, 18 January 2002, p.429、及びLibrary Journal Academic Newswire, January 29, 2002を参照されたい。

2002年2月1日

1月23日付けプレスリリースによれば、エルゼビアのScirusの検索対象にarXivが追加された。
英国物理学会(Institute of Physics)の2001年11月12日付けプレス・リリースによれば、無料アクセスを提供する学術雑誌の草分け的存在であったJournal of High Energy Physics (JHEP)が、2003年1月から、購読料の徴収を開始することになった。ステバン・ハーナッド(Stevan Harnad)氏のAmsci-Forum上での発言を引用する。「皮肉なことに、JHEP誌上に掲載される論文は、事実上100%、著者によってarXiv.orgにセルフ・アーカイブされている。つまり、JHEPが課金ベースのサービスに移行したとしても、arXivにアクセスすれば無料バージョンが利用できることに変わりはない。」
A Spectrum of Interoperability: The Site for Science Prototype for the NSDLと題されたD-Lib Magazine (2001.1)の論文において、ウィリアム・アームズ(William Arms)らは、NSDL(National SMETE Digital Library:SMETEは科学、数学、工学、技術のアクロニム)の概要と、これまでの実装から得た教訓について紹介している。
[摘要]
協力サイト間の相互運用性を達成するには、全てのサイトが同一の標準を採用する必要があるが、この調整作業にはかなりの困難が伴う。NSDLのような均質でないコレクションから構成される集合サービスの場合、ある「レベル」での相互運用性を確立することには意味があるが、必ずしも全ての「レベル」での相互運用性は必要ない。将来的に費用が低減し、相互運用性に対する誘引が高まるにつれて、より高次のレベルをめざす運動が開始されるであろう。まずは最低限の相互運用性を確立するためのミニマム標準として、OAI規格の実装を推奨する。
Searcher(2002年1月号)において、マイヤー・カッツ(Myer Kutz)は、近年の「学術出版の現状に対する研究者の反乱」を取りあげ、好意的な見解を示している。カッツは、雑誌価格の危機的状況、図書館員の反乱、それに加勢する教授たちの反乱、および、SPARC、PubMed、BioMed Central、Public Library of Science、TheScientificWorldなどの出現について、その経緯を跡付け、反乱戦略について若干の評価を試みている。
Greenberg, Jane and Maria Cristina Pattuelli, Bijan Parsia and W. Davenport Robertson. Author-generated Dublin Core Metadata for Web Resources: A Baseline Study in an Organization. JoDI: Journal of Digital Information. 2(2) (January 2002) 「作成者自身が生成する、ウェブ情報資源のためのダブリン・コア・メタデータ:一研究機関における基礎研究」
[抄録]
本稿は、ある一機関の設定のなかで、情報資源の作成者自身が一定の基準を満たしたメタデータを作成する能力を有しているかどうかについての調査研究について報告する。調査結果によると、ダブリン・コアを使用することによって、作成者は高品質のメタデータを作成することが可能であり、場合によっては、専門家が作成したメタデータよりも品質の高いメタデータを作ることができる。この調査結果が示唆するところによれば、作成者は、情報資源の探索にとってメタデータは有効であり、ウェブ情報資源のためにメタデータを作成すべきであると考えている。さらに、作成者自身が、自らの作品のメタデータ作成に関与すべきであると考えているようである。また、テキストによる案内とポップアップ・ウィンドウやドロップダウン・メニューなど選択窓を備えた簡易なウェブ・フォームが、著者による高品質なメタデータの作成に役立つことが明らかになった。

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