学術出版と学術コミュニケーション−ブロッグ(Weblog)

2002年1月28日

JISCは、高等教育機関が保有するコンテンツへのアクセスを支援する新たなプログラム、Focus on Access to Institutional Resources (FAIR)の開始を発表した。このプログラムは、Open Archives Initiative (OAI)のビジョンに端を発するものであり、メタデータのハーベスティングを活用したプロジェクト提案が求められている。現在、英国の高等教育機関からの提案書を受付中。締め切りは、2月28日。

2002年1月27日

Newsletter on Serials Pricing Issuesが、257号(2001年8月12日)をもって終刊した。編集者であったMarcia Tuttleさんによるアナウンスはこちら
Newsletter on Serials Pricing Issuesのアーカイブは、下記サイトにて公開されている。
http://www.lib.unc.edu/prices/
http://www-mathdoc.ujf-grenoble.fr/NSPI/NSPIe.html

2002年1月25日

Chronicle of Higher Educationの1月23日付けの記事によれば、米国の12大学コンソーシアムの図書館と出版局が、学術電子ブックの配信プロジェクトを開始するとのこと。このプロジェクトの背景には、netLibraryebraryQuestia等の営利的電子ブックサービスに対する、図書館や出版者の不満が存在しているという。

2002年1月23日

Chronicle of Higher Educationの1月21日付けの記事によれば、エルゼビアが電子版単独購読のオプションを提供するという。E-Choiceと名付けられた、この新しい購読オプションには、ScienceDirectの他に、アカデミック・プレスの175タイトルも追加されるらしい。
Keller, Alice. Future development of electronic journals: a Delphi survey. The Electronic Library, 19(6), pp. 383-396(2001).
電子ジャーナルの将来:デルフィ調査
[抄録]
本稿は、電子ジャーナルの将来展望に関する、国際的かつ学際的なデルフィ調査の結果について報告する。45名の研究者、出版者、図書館員、雑誌エージェント及びコンサルタントから構成される専門家パネルを対象に調査を行った。調査には、学術雑誌文献の将来の役割、未来の雑誌にとってのシナリオ、雑誌の危機、電子ジャーナルのアーカイビング、新しい価格モデル及びアクセスモデルといった、電子ジャーナルに係わる5つの関心領域が含まれている。今後5年から10年間に予測される変動についてのデルフィ調査を行い、その結果の検討から、過去300年に及ぶその歴史のなかで、雑誌が現在ほど多様な変化に直面した時期はないという結論が導かれた。また、この変化は今後5年から10年の間も継続すると予想される。
1月15日付けプレスリリースによれば、ebraryは、ハーバード大学、コーネル大学、インディアナ大学のそれぞれの出版局と契約を取り交わした。その結果、ebraryのサービスを通じて、これらの大学出版局が刊行する出版物に無料でオンラインアクセスできるようになる。ebraryの課金対象は、複製と印刷に限られており、閲覧のみの場合は無料。

2002年1月22日

昨年12月、北米研究図書館連盟(ARL)は、ARL図書館統計補遺版1999-2000要約をオンラインで公開した。
[要約]
図書館の資料購入費に占める電子情報の購入費の割合は、3.6%(1992-93年)から12.9%(1999-2000)に上昇した。1999年から2000年にかけて1年間に、105のARL加盟館は、約1億ドルを電子情報の購入に費やしたと報告されている。これは、前年に比べると2,300万ドルの増加を示している。合計950万ドルの追加予算が、中央助成コンソーシアムを通じて、38のARL加盟館に配分された。電子情報に費やされた予算の大半は、電子雑誌とサブスクリプション・サービスに支払われた。ドキュメント・デリバリ及びILLサービスについては、101のARL加盟館が1100万ドルを費やしている。ARL図書館統計補遺版1999-2000は、図書館にとって価値判断のための有益なツールである。また、情報産業のアナリストは本書のデータを利用して、電子出版市場の規模と成長について判断を下すことができるであろう。

2002年1月21日

CLIR IssuesのNo.25のよれば、図書館情報資源協議会(Council on Library and Information Resources: CLIR)米国出版協会(AAP)は図書館と出版社の共通問題の解決に向けた作業グループを立ち上げた。作業グループは、図書館と出版社との間には多くの競合する利害関係が存在することを認めつつ、お互いが共有する諸問題の解決に取り組むことになる。目標のひとつには、電子的な研究成果のアーカイビングが取りあげられている。

2002年1月20日

SPARCSPARC Consulting Groupを発足させる。この新グループは、大学、学会、大学学会系出版社、その他の非営利組織のために、ビジネス上の助言、戦略コンサルティングを提供する予定。このコンサルティング・サービスは有料。
2002年1月1日より、EUR-Lexは同サイト上の全公式文書に対する無料オンラインアクセスの提供を開始した。EUR-Lexは、EUの法律文書のポータル。
英国図書館(The British Library)とエルゼビア社が新たな契約を締結した。この契約によって、英国図書館の科学閲覧席の利用者は、エルゼビア社が提供する1,000タイトル以上の電子ジャーナルにアクセスすることができるようになった。また、英国図書館が、これらの雑誌の論文をドキュメント・デリバリ・サービスに利用することも認められた。BLのプレスリリースより。
PubMedのLinkOutと呼ばれる新サービスを利用して、ユーザはPubMedの文献情報からフルテキスト情報やその他のウェブからアクセスできる情報源へのダイレクト・リンクを設定することが可能になった。

2002年1月19日

エルゼビア・サイエンス社が、2001年12月に発表されたICOLCの「ウェブベースの情報資源の利用統計指標のためのガイドライン(2001年12月改訂版)」の支持を表明した。今後Science Directの顧客利用リポートは、当ガイドラインに準拠した形となる。Leo VoogtによるLiblicense-Lへの投稿記事より。

2002年1月17日

JoDI(Journal of Digital Information)2(2)が昨年国立情報学研究所にて開催されたDublin Core 2001国際会議の特集を組んでいる。コンテンツは以下のとおり。

2002年1月16日

図書館における電子リソースの利用データの収集支援をめざした、ARLのE-Metricsプロジェクトに関する講演記録がオンラインで公開された。
E-Metrics: Measures for Electronic Resources by Rush Miller and Sherrie Schmidt.
[抄録]
E-Metrics:電子リソースのための指標
今日の研究図書館が直面する主要な問題のひとつは、電子リソースと電子サービスに関するデータの欠如である。このデータの収集と分析における問題点と課題は数多く存在し、それらは明白である。すなわち、
     
  • データ要素の明確で整合性のとれた定義が欠如している。  
  • ベンダーの「カウント」方法に差異が存在する。  
  • コンソーシアムに参加することにより、個々の図書館の統計が歪曲されてしまうおそれがある。  
  • 電子リソースに関する図書館の組織はさまざまであり、それがデータの収集を困難にしている。  
  • 図書館はベンダーが供給するリソースに関する重要なデータに対するアクセスやその利用を管理することができない。  
  • 電子リソースの性格そのものが急速に変化しており、そのためにデータ要素も変動を余儀なくされる。
ARLの新指標行動(ARL New Measures Initiatives)のひとつである、E-Metricsプロジェクトは、電子リソースの利用とその価値についてのデータを定義し、それを収集することの実現可能性について調査するための取組みである。ARLは、その補足統計を通じて、電子リソースへに対する支出をトレースする経験は有しているものの、さらに多くの作業が必要とされる。24のARL加盟館に助成金が支給され、これらの図書館は2000年5月から2001年12月にかけてARLのE-Metricsプロジェクトに参加した。プロジェクトはフロリダ州立大学の情報利用管理政策研究所と契約を結び、プロジェクトの共同委員長であるSherrie Schmidt(アリゾナ州立大学図書館長)とRush Miller(ピッツバーグ大学図書館長)の指導の下、Wonsik "Jeff" Shim、Charles R. McClure、John Carlo Bertotがプロジェクト管理を行っている。本稿では、E-Metricsプロジェクトの理論的根拠と文脈について詳述する。特定された問題点、教訓、及び一連の問題が研究図書館コミュニティにもたらす可能性と課題について述べる。

2000年1月15日

米国の連邦破産裁判官は、netLibraryの40,000点の電子ブックその他の資産をOCLCに売却することを認めた。
[関連記事]
Judge Approves Sale of netLibrary's e-books to Nonprofit Library Group by JEFFREY R. YOUNG

2002年1月11日

1月9日、eprints.orgは、Eprints-2-Alpha-2をリリースした。Eprintsは、英国サウサンプトン大学が開発しているウェブベースの大規模論文アーカイブ(e-prints archive)構築用ソフトウェアで、無料で利用できる。Eprints2は、多言語サポート、オブジェクト指向デザイン、インストールの改善等々の特徴を備えている。
メリルリンチは、Reed ElsevierによるWolters Kluwerの合併の噂を否定した。(liblicense-lの投稿より)

2002年1月10日

JGRの刊行で有名な米国地球物理連合(American Geophysical Union: AGU)が突然オンライン版雑誌の価格の引き上げを発表した。それに対するアメリカの図書館員たちの抗議が開始されている。
AGUの釈明
liblicense上での不満表明
ロスアラモス国立研究所図書館ニュースレター上での抗議

1月6日付けのThe Observerの記事によれば、Reed Elsevierが再びWolters Kluwerとの合併を画策しているという噂が流れているらしい。

2002年1月9日

Library High Techの19(4)が電子ブック(e-book)の特集を組んでいる。主なコンテンツは以下の通り。
  • Beyond Print: Reading Digitally
  • E-Book Devices and the Marketplace: In Search of Customers
  • E-books: the University of Texas experience, Part 2
  • The Economics of a Cooperative EAD Project
  • Electronic Books: Challenges for Academic Libraries
  • Electronic Ink Technologies: Showing the Way to a Brighter Future
  • Stakeholders and Standards in the E-Book Ecology: Or, It's the Economics, Stupid!
  • Use of Electronic Monographs in the Humanities and Social Sciences
  • A Web-Based Electronic Book (E-Book) Library: The netLibrary Model

2002年1月8日

Odlyzko, Andrew. The rapid evolution of scholarly communication. Learned Publishing. 15(1), p.7-9(2002)
[抄訳]
「学術コミュニケーションの急速な進展」
伝統的な雑誌は、たとえ電子的に利用できたとしても、その変化の速度は緩慢である。しかしながら、学術コミュニケーションには急速な進展が認められる。雑誌利用の主流は徐々に電子フォーマットに移行しつつある。分野によっては、電子論文の利用が印刷雑誌の利用とほぼ同水準にまで達している。異なるメディアの利用統計データを比較するのはなかなか困難であるが、電子的学術情報の利用の伸び率は極めて高く、仮にこの率が数年継続するとするなら、間違いなく印刷体の影は薄くなるであろう。さらにアクセスの対象とされる電子的情報の多くは、フォーマルな学術出版プロセスの枠の外に存在している。また、ウェブ特有の可能性を活かした、さまざまな形態の電子コミュニケーションの発展には目を瞠るものがあり、こうした電子コミュニケーションは、伝統的な雑誌刊行フォーマットには全くなじまないのである。本稿では、印刷版および電子版情報の利用統計を紹介する。また、利用の変化パターンを示す予備的な調査結果について論じる。これまでにない読者(例えば、授業において課題として割り当てられる専門的研究論文(esoteric research papers)を求める学部生)がオンラインアクセスのかなりの部分を占めている。また印刷雑誌へのアクセスが不可能な場所からの利用も多い。さらに、利用に関するほんのわずかな障壁に対しても拒否反応を示すことから、高品質の研究論文でさえも代替不能ではないことがうかがえる。読者の目の前には、いわば「知識の大河(river of knowledge)」が横たわっているのであり、その豊富な情報源のなかから自由に情報を選択することができる。また、必要とあらば、代替情報を見つけ出すこともできる。研究者、出版者及び図書館員が、時代に取り残されないようにするために、情報資源へのアクセス改善に向けた、より一層の努力が求められる。
Goodman, David. A year without print at Princeton, and what we plan next. Learned Publishing. 15(1), p.43-50(2002)
[抄訳]
「プリンストン大学における印刷雑誌の廃止と今後のプラン」
プリンストン大学では、2000年の購読分から、いくつかの主要なタイトルについて電子ジャーナルのみの受入を開始した。信頼できる出版社から発行され、かつ顕著な財政面での効果が明らかなタイトルについて、この試みを拡張しつつある。これまでのところ、利用者からは不満の声は全く上がっていない。また、ほとんど何のコメントも寄せられていない。明らかに、利用者はカレントな雑誌論文をまずオンラインで探し、オンライン版が利用できない場合に限り、紙バージョンを利用する傾向にある。プリンストン大学では、利用者の利便性を高める方策についてさらに計画中である。

2002年1月4日

BioMed Centralの2001年12月14日付けニュースより。
生物医学研究の発展に寄与することを目的とした英国の研究財団であるWellcome Trustは、Heritage Lottery Fundからの資金協力を得て、1953年にJames Watsonと共同でDNAの構造を解明した英国の科学者Francis Crickの学術論文を購入した。Wellcome Trustは、2002年早々にこれらの論文の索引化と電子化を開始し、将来的にはCrickのフリー・オンライン・アーカイブを構築する予定。
無料のオンライン・ビデオ・アーカイブであるOpen Video Projectが、Open Archives Initiativeに準拠した。
2001年12月、JISCとNSFが、電子図書館とクラスルーム:教育と学習の変革のためのテストベッドと題された共同プロジェクトの開始を発表した。
http://www.jisc.ac.uk/pub01/c07_01.html
Syllabus Magazineのに、フィリップ・ロング(Phillip Long)による、MITのOpen CourseWare Prejectの実際と目的についての記事が掲載されている。
安価なオンライン学術コミュニケーションの発展に貢献する非営利団体であるICAAPは、この程、myICAAPと名づけられたサービスを発表した。myICAAPは、電子ジャーナルの新規刊行を支援し、質の高い査読者の発見を援助するためのサービスである。myICAAPは、編集上の判断を除く、オンライン雑誌出版のほとんど全ての過程を自動化するBlueSkyソフトウェアのバックアップを受けている。例えば、編集者は、マウスを数回クリックすることで簡単に、ある原稿を査読者のひとりに割り当て、査読の進捗状況を管理し、査読者の判定に目を通すことができる。また、原稿の受理、拒否、再投稿の判断を下すことも可能である。さらに、受理された論文をHTML、PDF、eBook、CD-ROM、WAP等のフォーマットで出版可能な状態に加工することもできる。BlueSkyはまた、査読に要した時間や論文の受理率に関する統計情報を出力することができる。加えて、OAI準拠のメタデータを含む、あらゆる種類の論文メタデータを生成することも可能である。こうした自動化により、オンライン雑誌刊行に要する時間、労力、費用は大幅に節約される。myICAAPに登録した雑誌は、このBlueSkyの利点をフルに活用している。また、myICAAPに登録した研究者の情報はデータベースに蓄積され、myICAAPに参加する雑誌の編集者は、このデータベースを参照することによって、適切な査読者を探し出すことができる。図書館は、アクセスを希望するmyICAAP雑誌の数に応じて購読料の支払いを求められるが、この支払いは強制ではなくあくまで自由意志に基づくものである。

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