e-printアーカイブは、e-print(電子論文)を保管・提供するためのインターネット上の貯蔵庫。研究者は、既存の雑誌を迂回してe-printを直接アーカイブに投稿することができる。この場合のe-printはプレプリントということになる。また、論文を雑誌に投稿し、審査を通った後に、これをアーカイブに蓄積することも可能。この場合はポストプリントということになる。現在、arXiv.orgをはじめてして、さまざまな分野のアーカイブ、もしくは学術機関が主催するアーカイブがサービスを提供している。また、複数のe-printアーカイブの相互利用性(interoperability)の確立をめざしたイニシャティブ(OAI:Open Archives Initiative)が活動を開始している。さらに、e-printアーカイブの発展を促すために、EPrints.orgが、OAI準拠のアーカイブを構築するためのソフトウェアを無料で配信している。
ここ数年間、特に米国の大学において、研究論文の著作権を大学が管理しようという運動が起こっている。カリフォルニア工科大学などの米国の数大学では、研究者に向けて自分の論文に対する著作権を留保し、出版社にはそのライセンス(利用許諾)だけを与えるように呼びかけている。こうした運動の目標は、出版社が論文の著作権を全面的に著者から譲り受け、著者などがウェブサイトや電子プリントアーカイブなどに発表論文を再掲載することを禁止するという、慣行に挑戦することにある。背景としては、編集者として、査読者として無償奉仕によって雑誌の刊行に寄与しているにも関わらず、論文の利用に際して、高額な購読料の支払いを強いられるという矛盾した現状に対する根強い不満が考えられる。一方、著作権の扱いについて柔軟な方針を打ち出す出版者も現れ始めている。例えば、米国物理学会は、論文を刊行するライセンス(利用許諾)のみを著者から獲得し、著作権自体の譲渡は求めないという方針を公表している。他にもこの方針に追随する出版者が現れており、著作権譲渡という規制も徐々に緩和される兆しが認められる。
Public Library of Science(PLoS)は、ノーベル医学賞受賞者でありPubMed Centralの提案者でもあるHarold Vermusを含む生命科学の指導的な研究者グループによる草の根的運動である。PLOSは、そのWebサイト上にオープンレターを掲載し、世界中の科学者たちの著名を募っている。現在、173カ国、28,802名の署名が集まっている(2001年8月23日現在)。この公開状は、出版社に対して雑誌刊行後6ヶ月以内にすべての掲載論文をPubMed Centralや同種の公的アーカイブに提供し、無料アクセスを可能にするよう要請しており、2001年9月を期して、この要求を拒否した雑誌には一切論文を投稿せず、その編集や査読も拒否するという、一種のボイコット宣言となっている。そして、ボイコットの期限となった2001年9月には、PLoS自らが新雑誌を刊行するとの計画が発表されている。
PLOSの提唱者たちは、Science誌の2001年3月23日号に、"Building a "GenBank" of the Published Literature"と題された書簡を投稿し、学術文献の公的電子アーカイブの創設への参加を出版社、編集者、科学者に呼びかけている。この投稿を契機として、Science誌およびNature誌上で、学術出版の在るべき姿に関するオンライン論争が開始されており、研究者、図書館員、学会、非営利出版者、商業出版者といったさまざまな立場からの意見が公表されている。
1989年6月、Vegetatio誌(W. Junk-->Nijhoff-->Kluwer)の編集委員であるEddy van der Maarelと彼の編集委員会は、Vegetatioを離れ、Journal of Vegetation Science誌(Opulus Pressと国際植物科学協会)を創刊した。
1998年11月、Michael Rosenzwigおよび他の編集委員はEvolutionary Ecology誌(Chapman & Hall-->Thomson-->Kluwer)を離れ、Evolutionary Ecology Research誌を創刊した。新誌はSPARCの助成を受けている。
1998年、Journal of Academic Librarianship誌の編集委員の大多数は、当誌の所有権がJAI PressからPergamon-Elsevierに移った際に大幅な購読料の値上げが実施されたことに抗議して辞任した。これらの編集委員のうちの数名は、ジョンズホプキンス大学出版局から、Portal: Libraries and the Academy誌を創刊した。
1999年11月、Journal of Logic Programming誌 (Elsevier)の編集委員総勢50名が脱退して新雑誌Theory and Practice of Logic Programming (Cambridge)を創刊した。Theory and Practice of Logic ProgrammingもまたSPARCの支援を受けている。
2000年1月、Henry HagedornはArchives of Insect Biochemistry & Physiology誌(Wiley-Liss)を辞任し、Journal of Insect Science誌(University of Arizona Library)を創刊した。JISは無料のオンラインジャーナルで冊子体は刊行していない。著者に対する課金によってコストを回収しようと計画している。JISの創刊および初期段階のテイクオフについても、SPARCが支援している。
2001年初頭、Topology and Its Applications誌(Elsevier)の一握りの編集委員は、Algebraic and Geometric Topology誌(ウォーリック大学国際出版局)を創刊するために辞任した。AGT誌は無料のオンラインジャーナルで、年間累積版が冊子で刊行されている。AGTもSPARCの支援を受けて創刊された。
2001年10月8日、Machine Learning誌(Kluwer)の編集者40名(全体の3分の1)が辞任の事由について公開状を回送した。旧編集者のひとりであるLeslie Pack kaelblingは、Journal of Machine Learning Research誌を無料のオンラインジャーナルとして創刊した。また、JMLR誌の冊子体(季刊)がMIT Pressから刊行される。