#Extra 
大谷さんのダブルクロス講座
 



 みなさんこんにちは。いつも当サイトをご愛顧いただき,誠にありがとうございます。
 大谷さんが譲らないなら私も,ということで再度導入を勤めさせていただきます,相模原泪です。……気がつくと役員解任されて幽閉とかされてるはずなのに,こんなことしてていいのかしら私。ねえ,大谷さん?
 え? 何ですかADさん? そのへんはパラレルだと思って対処しろ,ですって?
 ……えー,そういうことで大谷講座もめでたく4回目となりました。今回は「強いキャラクターの作り方・まとめ」と「Dロイス」,それから「受けと盾使い」について講義をしていただく予定です。では大谷さん,どうぞ。

 


◆第1時間目:ちょっと一息
 


大谷:では,ダブルクロス講座第4回を行いたいと思う。今回も講師役の大谷・真(おおたにまこと)だ。
キルス:今回も生徒役その1のキルスティン・ビョルクでーす♪
咲耶榎:いつになれば生徒役その1になれるのでしょう,虎視眈々と下克上を狙うように見せかけている生徒役その2の姫宮・咲耶榎(しんぐう・さやか)です。
キルス:見せかけてるだけなの?
咲耶榎:はい。狼の皮をかぶった羊なんです。
大谷:どうやって手に入れたんだ,その皮は。
咲耶榎:企業秘密です♪
大谷:いや,もう……なんでもいいや。
キルス:最近あきらめるの早くなったね,真。
大谷:やかましい,授業するぞ,授業。
キルス&咲耶榎:はーい。

大谷:正気に返って読み返してみたんだが……。
キルス:みたんだが?
大谷:キャラクター作成に関する授業,わかりづらいな。
咲耶榎:それを言ったら……。
キルス:他のところも充分わかりづらいと思う。
大谷:……まあ,それはいいとしてだ。
咲耶榎:大谷さん。
大谷:ん?
咲耶榎:……世界で最初に開き直りを開発した人って偉大ですよね?
大谷:……とりあえず判りやすいようにまとめてみた。

◆戦士型
主に使用する能力:【肉体】
主に使用する技能:〈白兵〉〈回避〉
必須エフェクト:クリティカル系2LV,【肉体】もしくは〈白兵〉ダイス増加系2LV,回避系1LV,攻撃系1LV
向いているシンドローム:キュマイラ,エグザイル,ノイマン,サラマンダー
備考:エンジェルハイロウ,ブラッグドック,ハヌマーン,モルフェウス,バロールあたりと組み合わせると幅が出る。エグザイルは必ず他のシンドロームと組み合わせること。パーティープレイでは壁になって相手の進撃を阻み,大きなダメージを与えることが期待される。基本的に対ボスのタイマン能力が高い方がよい。

◆盗賊型
主に使用する能力:【感覚】
主に使用する技能:〈射撃〉〈回避〉〈知覚〉
必須エフェクト:クリティカル系2LV,【感覚】もしくは〈射撃〉ダイス増加系2LV,回避系1LV
向いているシンドローム:エンジェルハイロゥ,ブラックドッグ,ノイマン,サラマンダー,モルフェウス
備考:ダイス増加系エフェクトがあまり多くないので,タイミングが『マイナー』のものも組み合わせて補うことをおすすめする。パーティープレイでは僧侶型と共に捜査を引き受け,戦闘時には戦士型との連携を図るのが基本か。

◆魔法使い型
主に使用する能力:【精神】
主に使用する技能:〈RC〉
必須エフェクト:クリティカル系2LV,回避系1LV,2ndアクション系1LV,攻撃系2LV
向いているシンドローム:エンジェルハイロゥ,ブラックドッグ,ブラムストーカー,ハヌマーン,サラマンダー,オルクス,バロール
備考:できればピュアブリードにしてクリティカル系エフェクトを3Lvとることがおすすめ。タイミングが『マイナー』でダイスが増加させられるエフェクトがあればそれも取っておくこともおすすめする。オルクスはどちらかといえば使い方が難しいので組み合わせるのは上級者向き。パーティープレイ時には範囲攻撃能力の高さでトループを排除する集団戦の華となりやすい。そのぶん,対単体攻撃能力は戦士型や盗賊型にかなわないので素直に譲るのもよいかと。

◆僧侶型
主に使用する能力:【社会】
主に使用する技能:〈交渉〉〈RC〉
必須エフェクト:治療系1LV,2ndアクション系1LV
向いているシンドローム:ノイマン,ソラリス,オルクス
備考:完全にサポートに徹するならばクリティカル系エフェクトが要らなくなることもあるので,さまざまなエフェクトを高レベルでとりやすい。ただ,戦闘では下手するとトループにすら勝てないので,個人で動くような行動はとりづらくなる。もし敵に対して影響を及ぼすようなエフェクトを使用するなら,クリティカル系エフェクトも取得すること。パーティープレイ時は捜査と戦闘の補助を引き受ける。軍師プレイが好きな人向け(笑)。

キルス:随分とまとまったわね。
大谷:まあ,かなりの部分を省いたからな。やっぱり一度は第二回の『必要なエフェクト・その2』を読んでおいて欲しい。
咲耶榎:まあ,これは簡単な目安というところですね。
大谷:そんな感じだな。ついでにクリティカル系エフェクトの選び方はこんな感じになる。

 1. タイミングが「能動/受動」のものを選ぶ
 2. 「組み合わせ」を見る。さまざま>シンドローム>【能力】>〈技能〉の順によい


大谷:まあ,このあたりを押さえておけば平気だろう。
キルス:やればできんじゃない。
咲耶榎:本当に,ただのまとめですね。
大谷:まあな。この2点と,第一回の『強いキャラの作り方』で述べた『ダイス数8個以上,クリティカル値8以下』の条件さえ満たせばまずハズレはない。
キルス:言い切ったね。
咲耶榎:ましたね。
大谷:ええと……?
キルス:きっと後悔するよね。
咲耶榎:しますね。
大谷:……ほっといてくれ。とりあえず,一時間目はコレで終了。
キルス:お,珍しくすっきりまとまったわね。
咲耶榎:所詮まとめですからね。続編の製作が決まった某種運命とかの総集編と同じで。
キルス:ああ,アレ? 見終わってみるとほとんど中身がないことに気づいたりするって言う……。
大谷:ああぁああぁあああああぁ,おまえらちょっと黙っとけとゆーかアレと一緒にするのはいくらなんでもあんまりだ(泣)。
咲耶榎:そうですね。大谷さんと楓さんの間にはアレなんかとは比べものにならないくらいピュアで強い本物の「何か」があるんですもんねー。
キルス:この間,泪ちゃん泣いてたよ。『私,あの2人の間には絶対割り込めません』って。
大谷:……神様,ああ神様。俺の人生がわりとものすごい勢いでしっちゃかめっちゃかなんですが……,明らかに運の配分間違ってませんかアンタ(泣)。

 この後,トボトボと哀しげに控え室に戻る大谷真を多数の人が目撃したが,いつものことなので誰も気にしなかったとか。
 南無。

 


◆第2時間目:Dロイス
 


キルス:真,来ないねー……。いじめすぎたかなー?
咲耶榎:平気ですよ。さっき控え室にご飯持っていきましたから。しかも新米コシヒカリです。
キルス:まあ,お腹がふくれれば嫌なことも忘れるでしょ。

大谷:(ガラガラと扉を開けて)すまん,遅くなった。
咲耶榎:……大谷さん,どうしたんですか? そんな青い顔して。
キルス:あ,わかった。食べ過ぎたんでしょ?
大谷:んなわけあるか,おまえじゃあるまいし。とゆーか俺は生米だけで食事をする趣味はない。
咲耶榎:〜♪(そっぽ向いて下手くそな口笛を吹く。曲はアタックオブキラート○ト)
キルス:咲耶榎,アンタねぇ……。
咲耶榎:ええと,キルスさん。多分就職先の選択さえ誤らなければそのガンつけだけで一生食べていけます。
キルス:……言い訳があれば聴くけど?
咲耶榎:お米は炊き立ての白米こそがその魅力を最大限に……ああっ,こめかみが,割れるよーに痛いっ!?
大谷:いいからおまえらとっとと席着いてハナシ聞けよ。
咲耶榎:(コメカミにヒビの入ったヘルメットを脱ぎながら)で,実際のところ何があったんですか?
大谷:控え室の俺の机に,相模原さんのところから色々と書類が届いててな。
キルス:へぇ。で?
大谷:……あがってたんだ。
キルス:何が?
大谷:……給料が。
咲耶榎:……すみません,なんだか耳の調子が悪いみたいです。変なことが聞こえました。
キルス:わ,私も。なんかありえない単語が聞こえた。真,悪いけど,もう一回言ってくれる?
大谷:もう一回言うぞ? ……給料が,あがってたんだ。

 一瞬空気が凍りつく教室。

キルス:え,え,えええええぇえええぇえええっ!!!!?
咲耶榎:イタリアのマフィアは殺すと決めた相手に殺意を悟られないように贈り物をすると言いますが,まさか……。
大谷:……かもな。

 また,しーんとする教室。

大谷:……まあ,そんなことはいいから授業だ,授業。
キルス:そーだね。授業授業。
咲耶榎:そうですね。いつものことですし。
大谷:今回のテーマは『Dロイスについて』だな。
キルス:description……『記述』ロイス? なにそれ?
大谷:…………。
咲耶榎:………………。
キルス:何よ,2人ともいきなり黙り込んで。
咲耶榎:そう言えば,キルスさんって北欧系アメリカ人なんですよね……。
キルス:そうよ? 一応スウェーデン語と英語ぐらいは話せるわ。
大谷:いや,……人間誰しも意外な特技ってあるもんだよな。
キルス:何よそれーっ!?
大谷:今回は素直にほめ言葉だ。話を戻すぞ。Dロイスは追加サプリメント『ブレイクアップ』によって追加された新しいルールだ。キャラクターはロイスを1つこれに書き換えることで極めて特殊な『背景』を得る。
咲耶榎:つまり,そのキャラクターの精神を,その『記述されるほどの特殊な背景』が占めるわけですね。
大谷:まあ,そういう解釈でいいだろうな。注意すべきことは,Dロイスは最後の自律判定時にロイスとしての機能をなさない。
咲耶榎:1人のキャラクターが持てるロイスとタイタスの合計は7つですが,それが6つになったと解釈するんですね。
キルス:つまり,Dロイスの分だけ戻ってきづらいってことね。
大谷:そういうことだな。ばーっと説明してみるか。
キルス:アンタ,ほんとにそういうの好きよね。
咲耶榎:まあ,大谷さんはマニアですから(笑)。


◆賢者の石

大谷:Dロイス第一弾は『賢者の石』だ。詳細はルールブックを読んでもらうとして,簡単に説明すれば,このDロイスはそのキャラクターにレネゲイドクリスタルと呼ばれる特殊な鉱物が埋め込まれていることを表している。
キルス:……仮面ラ○ダーBLACK?
大谷:……そうくるとは思わなかったな。
咲耶榎:効果としては1シナリオに1回だけ侵蝕値を2D10上昇させてクリティカル値を−2します。普通にタイタスを2つ使用したほうが効率としてはいいです。
大谷:まあ,ドラマティックではあるが,実際はそれほど強力でもないから,GMも許可しやすい能力だろうな。


◆起源種

大谷:お次は『起源種』。キャラクターが世界で最初に発見された状態でのレネゲイドウィルスを保持していることを表しているDロイスだ。
咲耶榎:いわゆる『旧型ウィルス』ですね。
大谷:起源種は,侵蝕値によるダイスボーナスや目標値低下をいっさい得られない代わりに,侵蝕値によるエフェクトレベルの上昇が早いという特徴を持っている。シンドロームごとの特徴が強く現れるから,ピュアブリードに近くなるだろうな。
キルス:ということは,ピュアブリードで持つよりクロスブリードで持った方がいいの?
咲耶榎:多分,その方が使いやすくなりますね。それから,魔法使い型や僧侶型で取るより,戦士型や盗賊型で取ることをお薦めします。
大谷:ダイス増加エフェクトが使えないとだいぶ厳しいからな。逆にダイス増加エフェクトさえ豊富なら,通常のオーヴァードを凌駕する戦闘力を得ることも難しくはない。まあ,少しテクニカルなDロイスだな。


◆変異種

咲耶榎:3番目は『変異種』ですね。
キルス:これ持ってると,特殊なエフェクトが使えるようになるんだっけ?
大谷:ああ,シンドロームごとに1つずつ設定されている『変異種エフェクト』を使用できるようになる。
咲耶榎:ここで注意しなければならないのは,『自分のもっているシンドローム以外のシンドロームの変異種エフェクトは取得できない』ということと,『1人のキャラクターが取得できる変異種エフェクトは1種類だけ』ということです。
キルス:クロスブリードでも1種類だけなの?
大谷:そうだ。ピュアブリードだろうがクロスブリードだろうが関係はない。面倒くさいから,軽くだけ説明するぞ。とりあえず俺の中での使いやすさの順位はこんな感じだ。
 

 順位 名称 備考
  1位 《破邪の瞳》 エンジェルハイロゥ:防御時の侵蝕値を抑える効果がある。優秀
  2位 《プレディクション》 ノイマン:対オーヴァード戦闘時に極めて効果的
  3位 《万色の檻》 オルクス:全てのダイスが増加するので極めて効果的
  4位 《クロックアップ》 ハヌマーン:魔法使い型,僧侶型に嬉しい補助エフェクト
  5位 《降魔の雷》 ブラックドッグ:〈RC〉系エフェクトの中ではピカイチ
  6位 《ロイヤルブラッド》 ブラム=ストーカー:技能が『エフェクト』なのが残念
  7位 《ドッペルゲンガー》 モルフェウス:回数制限はあるが,強力な攻撃手段
  8位 《バーストアップ》 ソラリス:起動条件が厳しいが,強力
  9位 《ファストフォワード》 バロール:効果が極めて独特。考えなしに使うと最悪
 10位 《獣魔の巣》 キュマイラ:可もなく不可もなく。効果としては悪くない
 11位 《生命の海》 エグザイル:どう使えというのだろう
 12位 《コキュートス》 サラマンダー:通常エフェクトなら悪くないが……


咲耶榎:ふむふむ,まあこの辺りが妥当な評価ですよね。
キルス:ねえ,《破邪の瞳》が強すぎるんじゃないかと思うんだけど。
大谷:確かに。だが,ちゃんと倒し方や対処法も存在するし,別になんとでもなると思うぞ?
咲耶榎:どちらかと言えば対抗手段がほとんどない《プレディクション》の方が私は怖いんですけど……。
大谷:これでまたノイマンはヤバくなっちゃったよなぁ。
キルス:これどうやって防ぐの?
大谷:正直なところ,従者によるカバーリングか極めて高レベルの〈耐性〉や〈意志〉によるダメージ無効化エフェクトぐらいしか手がない。
キルス:げー。いやらしい。


◆対抗種

大谷:4番目は『対抗種』。このDロイスは同じレネゲイドウィルスを攻撃する性質を持った特殊なレネゲイドウィルスに感染していることを表す。
咲耶榎:使い勝手は微妙なところですよね。所詮ダメージが5点上がるだけですから,普通に殴るのに使うのならわざわざDロイスで取る必要は……。
キルス:ほとんどないわね。しかも使うたびに2点ダメージ受けるんでしょう?
大谷:普通に使う価値はほとんどない。だが実ダメージを与えるタイプのエフェクトと組み合わせて使うのならばかなり価値は高い。
咲耶榎:そのタイプのエフェクトは攻撃力が低いですから,5点の増加は結構大きいですね。
キルス:なんか陰険ねぇ。
大谷:業界用語ではこういうのも『テクニカル』と言う。
咲耶榎:大谷さん,『美辞麗句』ってご存知ですか?


◆実験体

キルス:5番目は『実験体』ね。これ,どうなの?
大谷:特殊な実験の被験者であったことを表すDロイスだ。効果としては基本侵蝕値を5点上昇させるのと引き換えに能力値を合計3点上昇させられるんだが……。
咲耶榎:これもまたわりと微妙な能力です。経験値9点分の能力値に,登場1回かリザレクト1回分の侵蝕値とロイス枠1つを引き換えにするほどの価値があるかと言えば……。
大谷:セッションが進めば進むほど無くなって行くよな(笑)。まあ,このあたりは純粋にファッションの問題だろ。『実験体』っていう設定のあるキャラクターが気が向いたら取る,みたいな。
キルス:よーするに毒にも薬にもなんないわけね。
咲耶榎:むしろ毒気味death。ロマンとわびさびを知る方,どうぞって感じですね。


◆戦闘用人格

大谷:お次は『戦闘用人格』だな。キャラクターの中に自分よりもレネゲイドウィルスの扱いに長けた『もうひとつの人格』が潜んでいることを表すDロイスだ。
キルス:へー,……多重人格探てむぐぐっ!?
咲耶榎:(キルスの口にバナナを押し込みながら)はーい,甘くて美味しい冷凍バナナですよー♪
大谷:……最近は統合失調症と言う,とか,なんで冷凍バナナなんだ,とか,そもそもそんなモンどっから出した,とか色々突っ込みどころは多いんだが……まあ,よくやった姫宮。
咲耶榎:えっへん(おおいばり)。
キルス:……(もぐもぐ)。
大谷:効果としては侵蝕値が100%を越えた時点で起動し,侵蝕値によるダイスボーナスを2倍にすることができる代わりに,自律判定で振るダイスの数をさらに1つ減らさなければならない。
咲耶榎:つまり,侵蝕値ボーナスの代わりにロイス欄を2つ犠牲にするわけですね?
キルス:……(もぐもぐ)。
大谷:これによって自律判定で振ることのできるダイスの数は最大で5個。5D10の平均値は27.5なので,経験値を減らさず帰ってくるためのラインは約125%前後となる。そこまでして侵蝕値によるダイスボーナスが必要かというと,魔法使い型以外は『ちょっと……』ということになる。
咲耶榎:戦士型,盗賊型,僧侶型はエフェクトでダイスを増やすのが楽ですからね。
キルス:……(もぐもぐ)。
大谷:(何かを我慢している)……そうだな。まとめるならこのDロイスは魔法使い型のキャラクターを強化するのには適しているが,その他のタイプにはあまり向いていないし,リスクもそれなりに大きいってところだな。
キルス:……(もぐもぐ)。
咲耶榎:……大谷さん,無理なガマンはお体に障りますよ?
大谷:……そうか。じゃあ…………,いつまで食っとんのじゃこんボケええっ!!?
キルス:……(もぐもぐ)。


◆特権階級

咲耶榎:7番目は『特権階級』ですね。大企業のトップや一国の王など,絶大な権力をふるう立場にいることを表すDロイスです。
キルス:効果はタイタスを他人に使うことができるのね。でも……。
大谷:でも?
キルス:これって権力関係なくない?
咲耶榎:関係なさそうですよね。せめて購入判定と情報判定の達成値が常に+10される,とかだったら納得がいくんですけど。
大谷:まあ,あれだ。フレーバーテキストと内容はいっさい関連性がありませんってやつ。実際の効果としては補助役向きだな。
キルス:どうしてよ?
大谷:理由は2つ。前衛は回避と攻撃を行う回数が増えるので,必然的に侵蝕値は上がりやすい。故に,どうしてもタイタスを多めに取得することになるこのDロイスでは,最後の自律判定で『帰れない』ことが多くなる。
咲耶榎:だから比較的攻撃にさらされづらく,侵蝕値の上昇を意図的に抑えやすい僧侶型が最適なんですか。
大谷:そのとおりだ。
キルス:じゃあ,もう1つの理由は何よ?
大谷:タイタスを使用する機会は後衛のキャラクターより前衛の方が多い傾向にある。自分で使うとわかりきっているのに,わざわざロイス欄つぶしてまで他人のために使ってやる必要はないってことさ。
キルス:なるほどねぇ。


◆生還者

大谷:やっと8番目。『生還者』はそのキャラクターがレネゲイドウィルスのもたらす衝動に対して耐性を持っていることをあらわすDロイスだ。効果としてはシナリオ終了前に行われる自律判定時に,3個のダイスを追加して振ることができるようになる。つまりこのDロイスは,通常のロイス3個分の効果をもっているわけだ。
キルス:へー,帰って来やすくなるんだ。便利ね。
咲耶榎:そうですね。Dロイスの中ではもっとも安定して利用出来るものかも知れません。
キルス:でも,何で帰って来やすくなるの?
大谷:自我が強固で衝動に流されづらいとか,逆に思考が柔軟でその衝動をきちんと理解して受け流すとか色々あるが,真実は闇の中だな。他にも『帰って来る』べき理由がある,とか,たまたまウィルスとの適性が高いので負担がかかりづらいとか,さまざまな理由が考えられるだろう。
咲耶榎:そういったところを,いかに他人の負担にならないようにうまく設定してロールできるか,がGMやプレイヤーの腕の見せ所ですね。
キルス:ま,確かに設定の押し付けはちょっとカンベンよね。
大谷:逆にそれにさえ気をつければさまざまな設定が考えられる,非常に面白いDロイスだと言えるだろうな。


◆複製体

キルス:次は『複製体』。これを持っているキャラクターは前にいた『誰か』のコピーみたいね。
咲耶榎:断片的ではありますがオリジナルの記憶も引き継いでいるようですから,クローン技術だけではなく記憶転写技術も存在しているようですね。でも,どうして遺伝子が同一なのに発症するシンドロームが違うんでしょう?
大谷:まあ,その辺りはクローンの作成の手法によって異なることもあるからな(苦笑)。こんなとこで素人どうしが遺伝子工学について話し合ってもしかたがない,進めよう。
キルス:そうね,眠くなっちゃうし。
咲耶榎:あの,キルスさん。時々使わないと,溶けますよ?
キルス:……何が?
咲耶榎:……脳が。
キルス:…………。
咲耶榎:………………。
キルス:きぃーーっ!!
大谷:コラコラそこ,授業中に野性に帰るな。このDロイスの効果はおそらくオリジナルが所持していたであろう『自分がもっているもの以外のシンドロームからエフェクトを1つ取得できる』なんだが,これがまたヤバイ。
咲耶榎:単純に考えただけでもキュマイラ/ハヌマーンで《バリアクラッカー》とか思いつきますからね。
キルス:そんなモンがあんたたちルールチキンどもの手に渡ったら,手がつけられないわね。
大谷:言い方は悪いがそういうことだな。技能が『シンドローム』のものは選択しても意味がないが,それ以外は全て選択可能になる。これによって今までは思いもよらなかったコンボが成立するようになってしまう,要注意なDロイスだ。


◆伝承者

大谷:お次は『伝承者』。特定の技能に関して常人のそれよりも高い技術を持ち合わせていることを表すDロイスだ。
キルス:ケンシ○ウとか●ャギ様とかラオ○とか○キとかは全員これを持ってるのかしら。
咲耶榎:ジャ○様は持ってなさそうな気がしなくもありませんが。
大谷:なんでジ○ギだけ『様』づけなんだ。まあ,それはいいとしてこのDロイスは先に技能を1つ指定しておいて,1シナリオ中に1度だけその技能の達成値を+3D10することができるという,地味ながらもなかなか強力なものだ。
咲耶榎:ジ○ギ様とハー○様に「様」をつけるのはヒトとして当然のことですがそれは置いておいて,3D10の期待値は16.5ですから,それだけ達成値が上昇するとなると意外に強烈ですよね。
キルス:達成値20くらいなら『何とかなりそう』とか思えるけど,達成値35じゃ普通はあきらめちゃうわよね。
大谷:『伝承者』は普通に使用しても強いが,《鏡の盾》や《軍神の守り》《がらんどうの肉体》などの『タイミング』が『後述』のエフェクトと組み合わせて使用したときにこそ,その真価を発揮する。
キルス:なんで『後述』の時なわけ?
咲耶榎:タイミングが『後述』のエフェクトは他のエフェクトといっさい組み合わさりませんから,クリティカルさせて達成値を上げるという方法が取れません。通常はそれに対応した技能のレベルを上げて何とかするわけですが,『伝承者』を使用すれば経験点もあまりかからず,比較的簡単に目標値をクリアすることができるようになるわけです。
キルス:へー。


◆秘密兵器

大谷:ええと,今度は『秘密兵器』。このDロイスは,通常より優れた特殊なアイテムの所有者であることを表す。
咲耶榎:いわゆる『魔剣の使い手』系ですね?
大谷:そうだ。アイテムについての詳しい内容に関しては省略するが,この能力で所有することになったアイテムは,決して他のキャラクターには使用できない。
キルス:ねえ,真。アンタだったらどれがおすすめ?
大谷:一番のおすすめは「Rコントローラー」だな。ダイスの増加手段に乏しい魔法使い型にとって5個のダイスボーナスは喉から手が出るほど欲しい代物だと思う。
咲耶榎:私だったら「フォールンブレイド」ですね。この攻撃力に加えて,1シナリオに1回とは言えクリティカル値−1は単純に魅力的です。
キルス:ふーん。
大谷:まあ,どれも一長一短ではあるんだけどな。
咲耶榎:キルスさんは当然「レジェンド」ですよね?
キルス:なんで?
咲耶榎:だって……(ちらりとバナナのつまった自分のカバンに目を向ける)。いえ,やっぱりなんでもありません♪
キルス:へんなの。
大谷:…………。


◆古代種

咲耶榎:ラストは『古代種』ですね。
大谷:このDロイスは,18年前世界にレネゲイドウィルスがばら撒かれる以前から存在していた『別のレネゲイドウィルス』を,そのキャラクターが保持していることを表す。これを取得したキャラクターは,『古代種エフェクト』と呼ばれる特殊な一般エフェクトを使用できるようになる。
キルス:ねぇ,レネゲイドウィルスって18年前にばら撒かれたものだけじゃないの?
大谷:アメリカの考古学者,ライアン・フィランダー博士が中東の遺跡からレネゲイドウィルスを発見し,それが事故により世界にばら撒かれてしまったのは確かに18〜19年前だ。
だが,遺跡から発見されたということは,レネゲイドウィルスはその遺跡が作られた当時から存在していた可能性がある,ということだろう?
咲耶榎:それがその当時から現在にいたるまで人知れず連綿と受け継がれてきたわけですか……。
大谷:まあ,古代種ウィルスの中には感染者を老化させなくするものもあるようだからな。そこまで難しいことでもないのかもしれん。
キルス:じゃあ,神話に出てくる古代の英雄とかも出来るわけ? 『実は私はその昔,ヘラクレスと呼ばれたこともある』みたいな。
大谷:当然可能だ。神話にでてくる英雄は何かしら特殊な能力を持っていることが多いが,オーヴァードならその説明もつく。
咲耶榎:まあ,それは抜きにしても古代種エフェクトはどれも使い方を考えれば強力なものが多いですから,色々と面白いでしょうね。
大谷:侵蝕値100%を超えていても一度だけ《リザレクト》ができる《イモータルライフ》,一度だけトループを召還できる《親衛隊》,3回GMに質問できる《デジャ=ヴュ》,リアクション補助である《ニンバス》,そして侵蝕値を大幅に節約することが可能な《フラットシフト》。どれもこれも使い方次第で『化ける』可能性のあるものばかりだ。
キルス:ま,古代の英雄を名乗るからにはそれくらいできて当然なのかもね。


大谷:と,このように全て説明してみたわけだが。
キルス:……(ぐったり)。
咲耶榎:意外に短く済んだほうかもしれませんね。
大谷:Dロイスはどれもこれも使い方次第では使用者の身を救いも滅ぼしもする諸刃の剣だ。また,不用意に導入するとシナリオが破綻する恐れすらある。
咲耶榎:使用上の注意はよくお読みになってから御使用ください,ってことですねー。
大谷:そういうことだ。じゃあ,これでこの時間は終了とする。お疲れさまでした。
咲耶榎:お疲れさまでしたー♪
キルス:……ぐー。

 


◆第3時間目:受けの有効性
 


大谷:ふむ,じゃあ,この時間は受けについて少し話してみるか……っておまえら今度は何やってんだ? 2人してデコにカード当てて……。
咲耶榎:インディアンポーカーです。ご存知ありません?
キルス:(ものすんごい形相で)ベットォオッ!!
咲耶榎:う〜ん……では,降ります……あっ?
キルス:けけけけー,ひっかかったー(怪鳥のように笑う)。
咲耶榎:うう,ひっかかったというよりあの形相に騙されました……。
大谷:どーでもいいんだが,教室でギャンブルするのはよせっちゅうに。
キルス:今日はお金かけてないから安心しなさいよ。
大谷:『今日は』……か。
キルス:犯罪じゃないんだし,いいじゃない。
大谷:立派に犯罪だって……。今回のテーマはダブルクロスにおける「受け」の有効性だ。
キルス:受けって使ったことないわね。弱いし。
咲耶榎:そんなことはないんですが……。
大谷:まあ,確かに使いづらいが,うまく使えば回避より確実に強い。現実的に使えるシンドロームがほとんどないのが問題だがな。
キルス:えー? だって受けなんて所詮装甲無視されたら終わりじゃない。
大谷:まず,そこが根本的な誤解だよな。
キルス:え? なんかちがうの?
大谷:じゃあ,そこから説明しよう。まずはダブルクロスにおいて『防御力』と『装甲値』は違うものだということを認識してくれ。具体的にいうと,『装甲値』は常に有効だが,『装甲無視』のエフェクトによってあっさり無視される。対して『防御力』は受けが成立した時にのみ有効。しかし,『装甲無視』のエフェクトによっては無視されない。
キルス:防御力は装甲値とは別物なんだ。ふぅん……。どんな方法でも無視出来ないの?
咲耶榎:基本的には無理ですね。当たった後に実ダメージを発生させるたぐいの攻撃なら不可能でもありませんが。
大谷:今は『受けで発生する防御力はどんな方法でも無視されない』とだけ覚えておけば充分だ。じゃあ,『受け』の優れた点をあと2つほどあげてみようか。
キルス:2つもあったっけ?
大谷:ああ,1つは成功率が高い。リアクションとして『受け』を選択すると,武器に設定されてる達成値ボーナスが加算される。
咲耶榎:〈白兵〉+達成値ボーナスですから,通常の回避よりも成立しやすいですね。
大谷:もう1つは『受け』はカバーリング時にも使用可能,ということだ。
キルス:カバーリング……ってなんだっけ?
咲耶榎:自分の行動を消費して,同エンゲージの他のキャラクターを攻撃からかばう行動です。その際選択できる防御行動は『受け』だけなんですよ。
大谷:ま,俺のよくやる行動だな。
キルス:『避け』は,できないの?
咲耶榎:避けたら,守ってる意味がないです(笑)。
キルス:コレだけ見たら『受け』って強そうに見えるんだけど,やっぱなんか弱点があんのよね?
大谷:なかなか鋭いな。その通り,『受け』には3つほど致命的な弱点がある。なんだかわかるか,姫宮。
咲耶榎:1つは,射撃攻撃に対応できないこと。『当たったら効果を発揮する』タイプのエフェクトに弱いこと。後は『受け』が成立しないと効果を発揮しないことですか?
大谷:1個ハズレ。70点だな。
キルス:あららら。
大谷:まず,1つ目は正解。射撃攻撃は特殊なエフェクト,具体的にあげるならば《瞬間の眼》《砂の盾》《ディフレクション》《灼熱の結界》《グラビティ・ガード》の5種類のうち,どれかを使用しなければ『受け』ることができない。
キルス:エンジェルハィロゥ,モルフェウス,ノイマン,サラマンダー,バロールのどれかじゃなきゃいけないんだ。
咲耶榎:そうですね。シンドロームがこの時点で限定されます。
大谷:もう1つの『当たったら効果を発揮するタイプのエフェクトに弱い』も正解。回避ではなく,あくまでもダメージ軽減だからな。バッドステータスとか弾き飛ばしとかもモロに食らうことになる。
キルス:そっか。実際ダメージがなくても『食らった』ことになるんだ。
咲耶榎:そうですね。普通の戦闘ならともかく,テクニカルな戦闘になってくると少し辛いです。
大谷:クリンナップに実ダメージを与えるタイプのエフェクトには要注意だ。で,最後の『成立しなきゃ云々』が間違い。これは回避も同じリスクを背負ってる。正解は,受けが成立しても受け値そのものは少ないから,効果が芳しくないということだ。
キルス:どういうこと?
大谷:日本刀のデータの,防御力のところを見てみろ。
咲耶榎:ルールブックp.226ですね。+3/+8,です。
大谷:コレが答えだ。受けは成功しやすいし,受け値を無視する方法はほぼない。だが成功してもダメージは数点しか軽減されない。
キルス:威力ダイスは?
咲耶榎:足せません。防御力分のみ軽減されるんです。
キルス:えー? それじゃあ,なんて言ったっけ? 焼け石に……芋?
咲耶榎:スイートポテトですね(笑)。
大谷:水だドアホウども。一体どんな意味だそれは(笑)。
咲耶榎:とにかく,効果に限界があるんですか。
大谷:ああ。ダメージが10台の世界ならまだ効果はあるが,20,30台の世界になってくると明らかに力不足だ。
キルス:じゃあ,やっぱり『受け』は実戦じゃ使えない?
大谷:まあ,結論を急ぐな。ダブルクロスには463種のエフェクトがあって,その中には当然受け値を上昇させるものもある。それを使うんだ。
咲耶榎:《イージスの盾》とかですね?
大谷:受け値を上げさせるエフェクトはキュマイラ,サラマンダー,ブラックドッグ,モルフェウス,バロールぐらいにしかない。これらを組み合わせて,受け値が20点ほどに達すれば『受け』は充分実戦的だ。
キルス:つまり一部の連中でしか『受け』は実用的じゃないんだ?
咲耶榎:射撃が受けられて,なおかつ受け値をあげなきゃいけませんからね。
キルス:……めんどくさ。
咲耶榎:少なくとも,キャラクター作成の時点から『受け』を使用することを考慮に入れておく必要がありますから,ちょっと大変です。
大谷:『受け』が実践的なレベルで使用できるということがキャラクターのスタイル,つまり特色になるわけだ。言うなれば『盾使い』ってところか?
咲耶榎:カブトですか? ニューロ!!(笑)
大谷:N◎VAわかんない人が絡みづらいボケかますなっ!!
キルス:うーわきっつー。
大谷:おまえももっと絡みづらいネタ出してくるんじゃねえっ!! とにかくっ!! 『受け』は使いづらいけれどそれに特化したキャラクターはかなり強いからな!! わかったかっ!?
キルス&咲耶榎:はーい♪
大谷:(ぜえぜえ……)『盾使い』についての詳細なコンボ例は次の時間に説明するから,三時間目はコレで終了とする。
キルス&咲耶榎:ありがとうございましたー♪

 


◆第4時間目:盾使い
 


キルス:ここはどう考えたって「壁際で」よ。
咲耶榎:そうですね。じゃあ,ここは「涙しながら」で行きましょう。
大谷:おーい,四時間目そろそろはじめるぞー……って,ピクミ○の歌詞カードなんか出して,今度は何やってるんだ?
咲耶榎:イエイエ,ナンデモアリマセンヨ?
キルス:なんだっていいでしょ!? いいからアンタちょっと向こう行ってなさいよ。
大谷:……なんでおまえらそんなあからさまに怪しいんだ。どれどれ?(ひょい,と咲耶榎が「あからさまに」後ろ手に隠したメモを取り上げる)
キルス&咲耶榎:あ。

 

大谷・哀の歌(あいのうた)

俺は大谷 男キラーとからかわれ
今日も 働く 戦う ツッコむ そしていじられる
いっつも給料 泣けるほど安いけど
今日も大谷真はUGNにつくします

そろそろ辞めちゃおうかな 静かに生きていこうかな なんて
ああ あああ 壁ぎわで 涙しながら

いじめぬかれて 貧乏くじひかされて
でも誰かに向かって助けてくれとは言わないよ
なぜかボーナス 泣けるほどけずられて
でも困った人がいるならそこへむかいます

そろそろ見捨てちゃおうかな マトモに愛されないかな なんて
ああ あああ かなわない 夢とか見ながら

ネタにされて ひどい目にあわされて
でも自分のための幸せなんかはいらないよ
大谷真は いつだってがんばって
今日もみんなの笑顔と世界の平和を守ります

 

キルス:あーあ,ばれちゃった。
咲耶榎:今度,大谷さんのテーマソングを作ろうということになりまして。喜んでもらおうと思ってこっそり作ってたんです。
キルス:でもまあ,結構いい出来でしょ?
咲耶榎:大谷さんの現状をみごとに表してると思いますよ。我ながら傑作です♪
大谷:そうか……。……おまえら,覚悟は,いいんだな?
キルス:……え?
大谷:……往生せいやああああぁぁぁああああ〜〜〜〜〜〜っ!!!!
咲耶榎:キャー♪ (笑)

 大変申し訳ございませんが,しばらくお待ちください。

大谷:(倒れたイスや机を片付けながら)では,あらためて四時間目を開始したいと思う。この時間のテーマは『盾使い』についてだ。
キルス:(何もせずにイスにふんぞり返って)ええと,さっき話してた『受け』を専門的に行う奴のことね。
咲耶榎:(『何故か』散らばったピンクのワニをかき集めながら)さっきの説明だけでは実際にキャラクターを作る際に困ることが多いでしょうからね。
大谷:そうだな。まず,後々まで闘える本格的な『盾使い』を作りたければ,エフェクトの問題でそのキャラクターのシンドロームはおのずと限定されてくる。候補として挙げられるシンドロームは5種類。さっきの説明を聞いていて,よく考えればわかるはずだ。キルス,言えるか?
キルス:ええと,エンジェルハィロゥ,ブラックドック,キュマイラ,モルフェウス,後は……,わかんないわ。
大谷:まあ,そこそこ聞いてたな。だが,エンジェルハィロゥは候補に入らない。まずは『防御力』を優先して考えるんだ。
咲耶榎:すると,候補に上がるのはブラックドッグ,キュマイラ,モルフェウス,サラマンダー,バロールの5つですか?
大谷:そうだ。とにかくまず防御力そのものがなければ話にならないからな。さらに主とするシンドロームの候補は3つに絞られる。その3つとはモルフェウス,サラマンダー,バロールだ。では何故この3つが必須なのか,わかるか姫宮?
咲耶榎:その3つのシンドロームはともに『射撃攻撃』を『受け』ることができるエフェクトを持っているからですね。
大谷:正解。じゃあ,『盾使い』はクロスブリードとピュアブリード,どちらがよい? キルス。
キルス:少しでも防御力を上げるために,クロスブリードじゃない?
咲耶榎:そうですね。ピュアブリードではどうがんばっても防御力を上げるためのエフェクトが3LVまでしか取得できませんが,クロスブリードならば2LVずつ取得することによって合計で4LV分の受け値上昇エフェクトを取得できます。
大谷:欲を言うならば行動済みでも受けを行える,もしくは受けを行っても行動済みにならないエフェクト,具体的に言うならば《マグネットフォース》《崩れずの群れ》《砂の結界》《炎陣》のどれかも欲しい。特にバロールの《重力の城》を使用するならばこれらは必須となる。
キルス:ええと,ワケわかんなくなってきたんだけど?
大谷:まとめるとこうなる。

1. キャラクターはクロスブリード。戦士型。
2. モルフェウス,サラマンダー,バロールのどれかから1つを選ぶ。
3. さらにブラックドッグ,キュマイラ,モルフェウス,サラマンダー,バロールの中からもう1つのシンドロームを選ぶ。
4. 射撃攻撃を受けることのできるようになるエフェクトを取得する。
5. 防御力が大きく上昇するエフェクトを各シンドロームから2LVずつ取得する。


キルス:フンフン,なるほどなるほど。で,ここまで取ってから戦士型キャラクターを作ればいいわけね?
咲耶榎:そうですね。ブラックドッグ,モルフェウス,バロールは組み合わせ次第では【肉体】のダイスが増えませんから少し辛くなりますが,『受け』は元から達成値のボーナスがありますから結構なんとでもなります。
大谷:これにアイテムで盾を持ったら,後はシンドロームごとの特性を活かすことになる。それから,キュマイラは《完全獣化》を使わない方がいいかもしれん。
咲耶榎:アイテムが装備できなくなってしまうからですね?
大谷:盾で追加される防御力は意外に大きい。もしも防御に重点を置くならば《完全獣化》の代わりに《獣の魂》を使用しておくといい。相手の達成値が高く,どうしてもダイス数が足りない時にのみ《完全獣化》を使用するべきだろうな。
キルス:ほんっとにめんどくさいわね。
大谷:まあ待て,めんどくさいのはこれからだ。
キルス:ええ!?
大谷:今度は盾使いの立ち回り方,闘い方に関してだ。このようにキャラクターの作成が通常のキャラクターより複雑な盾使いだが,戦闘時においてもその面倒くささは変わらない。
咲耶榎:とにかく弱点が多いですからね。
大谷:そうだな。まず第一にバッドステータスに弱い。受けはあくまでもダメージしか防げないからな。当たった瞬間にバッドステータスを与える系統の攻撃には弱い。
キルス:[捕縛]とかされたらヤバイんじゃないの?
咲耶榎:盾を使っていたなら盾を,素手で受けていたなら素手を封じられてしまうわけですから極めて危険ですね。
大谷:もっとも危険なのはエンゲージから吹き飛ばすタイプの攻撃と,[捕縛][転倒]を同時に与えられることだ。これを食らうと盾使いは完全に無力化されてしまう。
キルス:同じエンゲージの対象しかカバーリングできないから,マイナーアクションで[転倒]を回復して,メジャーアクションでエンゲージに戻って,あ,……[捕縛]が解除できないんだ。
咲耶榎:サラマンダーやブラム=ストーカーのバッドステータス解除エフェクトがない限り,どうしようもありませんね。
大谷:また,防御力,装甲値がともに効果をもたない実ダメージを与えてくるタイプのエフェクト,具体的にあげるなら《餓鬼魂の使い》《マイクロウェーブ》《呪いの火壷》《炎の理》《茨の輪》にも注意が必要だ。
キルス:これは素直に避けるしかないわけね。
大谷:まあ,このように結構弱点だらけな盾使いなのだが,それでも盾使いには大きな意義がある。カバーリングは対象が攻撃を受けた際にリアクションを行い,それに失敗したあとでも宣言できるという点だ。盾使いはこれを行うことにより,仲間が受ける被害を確実に軽減していく ことができる。
咲耶榎:リアクションが弱い仲間と同じエンゲージにいて,もし仲間がリアクションに失敗したらかばうんですね。
大谷:特に侵蝕値100%を越えてしまった仲間をかばうのは重要な役目になるだろう。まさしく騎士の如く弱者を暴力から守る盾にならなければならない。純粋に戦術の面から言えば,侵蝕値が100%を越えていないならばカバーリングを行うだけにして,『受け』は侵蝕値を節約するために行わない方がいい。
キルス:仲間のために死ね,って感じね。
咲耶榎:ただただ効率だけを追及するなら,シーンに登場するのもできるだけ慎んで,戦闘時は仲間をカバーリングしては《リザレクト》し,侵蝕値が100%を越えたなら盾で受けるのが最上ですね。
キルス:うわ……,ストイック。
大谷:はっきり言おう。盾使いは本当に割に合わない。だが,それでも仲間を守る盾になりたいなら,このスタイルをおすすめする。
咲耶榎:他に何か注意点はありますか?
大谷:そうだな。カバーリングについて少し説明しておこう。これについても意外に誤解している人が多い。
キルス:誤解って,どんな風に?
大谷:まあ,順を追って説明するから,そう急くな。カバーリングは他人に対して行われた攻撃に対して行う,一種の特殊なリアクションだ。これを行うためには3つほどの条件がある。 

1. 自分が未行動,もしくは待機状態であること。
2. カバーリングする対象と同じエンゲージにいること。
3. カバーリングした際に行える防御行動は『受け』のみ。

大谷:さらに,カバーリングを行うと行動済みになってしまうことも注意して欲しい。 
咲耶榎:でも,それと第一の条件は《マグネットフォース》《崩れずの群れ》《砂の結界》《炎陣》のどれかがあれば無視できますね。
キルス:ああ,さっき言ってた行動済みでもカバーリングを行える,もしくはカバーリングを行っても行動済みにならないエフェクトってやつね。
大谷:ああ,そうだ。それさえあれば盾使いは攻撃に加わることも,またより多くの敵と対峙しても仲間を守ることができる。が,ここでもうひとつ気をつけて欲しいことがある。
キルス:今度は何よ?
大谷:『カバーリングで守れる対象は1人だけ』,ということだ。たとえ範囲攻撃で複数人が対象になっても1人だけしかカバーリングできない。
咲耶榎:あれ? 《炎陣》等を併用してカバーリングしてもだめなんですか?
キルス:そーよ,行動済みになってないし,同じエンゲージにいるなら条件は満たしてるんじゃない?
大谷:ふむ。一見そう見えるんだが,これはさらに上位のルール,つまり『1回の攻撃に対してリアクションは1回のみ』の原則がこれを不可能にしている。これがカバーリングに関しての最大の誤解だ。
咲耶榎:確かに……それがありましたね。
大谷:もし,3人以上のキャラクターがいるエンゲージを範囲攻撃され,あるキャラクターが1人をカバーリングしたとする。その場合カバーリングされたキャラクターは無傷,されなかったキャラクターは通常のダメージを,そしてカバーリングしたキャラクターは『2倍の実ダメージ』を受けることになる。
キルス:2倍? なんで?
大谷:範囲攻撃をカバーリングした場合,カバーリングしたキャラクターは自分の分とかばった対象の分を合計して,通った分の2倍の『実ダメージ』を受けるんだ。これによって,範囲攻撃をカバーリングしたキャラクターの死亡率はグンと跳ね上がっている。
咲耶榎:でも,結局《リザレクト》しちゃえばそれまでなんですけどね。
キルス:実も蓋もないわよね,そこらへん言っちゃうと。
大谷:まあ,もしそういう状況で範囲攻撃をされて,かばいたい対象が2人以上いるのならバロールの《孤独の魔眼》を使うしかない。
咲耶榎:《孤独の魔眼》の宣言は攻撃がきた時点で行わなければなりませんから,どうぞお気をつけ下さい♪
大谷:大谷:それから,盾使いをするならアドヴァイスと言うか忠告をひとつ。コンボは細かく紙に書いてまとめておくこと。とにかく計算が多いからな。多少手間がかかるが先に効果を書いた紙をカードのようにまとめておくのがいいだろう。それくらいだな。じゃあ,今回はここまでだ。
キルス:つかれたー,今回も長かったわね。
咲耶榎:でも,前回よりは短めですよ?
大谷:まあ,一時間目が短かったからな。
キルス:ねえ,次回はなにやる気?
咲耶榎:読者様からもご要望が多いですよね。
大谷:うーん,細かい質問に関しては掲示板とか泪さんが企画してる質問コーナーで答えるしかないからなあ……。
キルス:確かにいちいちハヌマーンの戦士型はどうすればいいとかバロールの使い方を教えろーとか答えてたらキリがないもんね。
大谷:できれば,そのあたりは自分で考えた方がその人のためだし,キャラに愛着も湧くと思う。だから,できるだけコンボの具体例とかは挙げないようにしてるんだが……。
咲耶榎:大変ですね(苦笑)。じゃあ,次回はどうするんですか?
大谷:次回があれば,だけど,GMさんのためにちょっと色々書いてみようかね。どういうボスがいいかとか,トループの使い方とか,ロイスの与え方とか。プレイヤーの人も読めばためになると思う。それか,目標値のために必要なダイス数を求める公式とか,高経験点環境における技能の使い方とか,ちょっと専門的かつマニアックな方向に行くか,だな。
キルス:素直な話,結構ネタに詰まってきたのね?
大谷:そうとも言う。教えることは教えた感じだしな。
咲耶榎:各シンドロームごとに一時間ずつ使って使い方を紹介するのはどうでしょう?
大谷:シンドロームが11種あるから,約3回分か。楽ではあるんだけど,そんな細かいの読みたい人いるのかな。
キルス:ま,その辺は読者様と泪ちゃん次第でしょ。
大谷:そうだな,じゃあ,これで第四回大谷講座を終了としたいと思う。お疲れさまでした。
キルス&咲耶榎:ありがとうございましたー♪





 大谷さん,ありがとうございました。次回講義を楽しみにしています。以前企画していた「教えて!大谷先生」のコーナーも,近日中になんとかしましょうね。
 ……あら,でも先に私の幽閉解いてもらわないとならないんじゃないかしら。そもそも大谷さんてば,いきなり人を解任したり幽閉したりしておいて,よく「泪さん次第」とか言えたものですね。うふふ。
 え? 「ですからそれはパラレルです」ですって?
 ……そうね,パラレル世界の恨みをここに持ち込むのはよくないわね。そうよね。
 だから私がギャラを6割減とかしたって,それをリプレイ本編に持ち込んじゃイヤですよ大谷さん。ふふっ。
 では皆さん,次回の「大谷講座」でまたお会いしましょうね。

つづく。(みたいだね)