大谷:じゃあ,第2回ダブルクロス講座をはじめたいと思う。前回から引き続き,講師役の大谷真(おおたに・まこと)だ。
キルス:同じく,生徒役その1のキルスティン・ビョルクでーす。
咲耶榎:永遠の生徒役その2,姫宮咲耶榎(しんぐう・さやか)です。
キルス:ダブルクロス講座,第2回開設おめでと〜っ!! ドンドンドンドン,パフパフパフ〜ッ♪
咲耶榎:良かったですねえ,大谷さん。これで3食銀シャリ食べ放題ですよ,ホロリ(←わざとらしく口で言ってる)。
大谷:素直に喜んで良いものやら……。しかも,銀シャリって……一体いつの人間だ?
キルス:男が細かい事をグチグチいうな〜っ,はげるぞ〜っ!!
大谷:やかましい。授業はじめるぞ。今回のテーマは『戦闘の特殊性』だ。
咲耶榎:あれ,前回シンドロームについて話すって言ってませんでしたっけ?
大谷:そうしようと思ってたんだが,それ以前にダブルクロスの戦闘の特殊な性質について理解しておいて貰わないと,話にならなさそうだからな。
キルス:あんたって,几帳面に見えて実は結構行き当たりばったりよねえ。
大谷:臨機応変と言え(笑)。で,都市部で事件が起きた時,敵として出てくるだろうと予測される相手を3つあげられるか? じゃあ,キルス。
キルス:ええと……不良,ヤクザ,警官。
大谷:アホかお前は(笑)。
キルス:なによーっ!? 真面目に答えたのにーっ!!
大谷:全然違うわボケ。正解は『人間,オーヴァード,ジャーム』だ。ではこのうちで,戦闘を行うに当たって最も手ごわいであろうと予測されるのはどれだ?
咲耶榎:侵蝕率にもよると思いますけど……,オーヴァード,ですか?
大谷:正解だ。逆に人間は最もくみしやすい。なぜなら話が通じるし,ワーディングで無力化できるし,殴れば基本的に勝てる。ジャームは,高い能力値,高いHP,強力なエフェクトを持っているが,それと同時に超えられない限界ももっている。
咲耶榎:限界?
大谷:300点ダメージを食らったら1発で死ぬってことさ。
キルス:そんなの誰でも死ぬと思うんだけど……。
大谷:そう,それが常識だ。だが,その常識を覆すのがオーヴァードだ。彼らは,侵蝕率が100%を超え,ジャーム化が起きるまで,決して『死』なない。いかなるダメージを受けようと,何度でも《リザレクト》で復活する。
咲耶榎:限定的な『不死』ですね。
大谷:そうだ。残念ながら,これを普通の人間が一対一で倒すのは不可能といっていいだろう。ここにファルスハーツの対抗手段としてのUGNが認められた理由がある。
キルス:オーヴァードは,オーヴァードじゃなきゃ倒せないってこと?
大谷:そうだ。じゃあ,対人間の戦闘,対ジャームの戦闘,対オーヴァードの戦闘,順番に説明してみようか。
キルス&咲耶榎:は〜い。
大谷:じゃあ,まず対人間の戦闘だ。敵が単体で出てくることはまずない。必ずトループとして出てくる。
キルス:なんで?
咲耶榎:オーヴァードと一般人じゃそれくらい戦闘力に差があるんですよ。
大谷:そうだな。とりあえずはワーディングをかけること。それで倒れなかったら相手はオーヴァードかジャームの可能性が極めて高い。対ワーディングマスクも存在するが,それはつけていたら一発でわかるしな。もし,マスクをつけている集団だったら,そんなに侵蝕値のかからないコンボで殴れば充分だ。
咲耶榎:あんまり強力なコンボを使っても勿体無いだけですからね。
大谷:次に対ジャーム戦闘だが……基本的な戦闘能力ではオーヴァードよりも彼らのほうが優れている。高い能力値と,高いエフェクトレベル,そしてダイスボーナスとHPボーナス。まずは当たらないと話にならないし,1回殺せばいいだけだから,侵蝕値を気にせず全力で殴れ。あとは基本的に一対一では戦わないこと。
キルス:やっぱり勝てない?
大谷:別に勝てないわけじゃない。こっちには《リザレクト》があるからな。経験を積んだ戦闘系オーヴァードならかなりの確率で勝てるだろう。
キルス:じゃあ,なんで?
大谷:それをやっちゃうとだな,戦ったオーヴァードが結構高い確率でジャーム化するんだ。
キルス:あ,そっか……。
咲耶榎:より強いジャームが生まれてしまうんですね。
大谷:それが最も避けたい事態だからな。だから一対一は出来るだけ避けること。まあ,ジャームでも雑魚のヤツとかトループのヤツとかもいるからその時々なんだけど。で,最後に対オーヴァードの戦術。これが一番特殊なんだ。
キルス:どんな風に?
大谷:生命力がなくなることを『死ぬ』と定義しよう。じゃあ,オーヴァードはどうやったら死ぬ?
キルス:動かなくなるまで殴ったら(真顔)。
大谷:……いや,もーいい。姫宮……どうおもう?
咲耶榎:相手の侵蝕値を100%越えさせて,《リザレクト》を起動させないようにしてから昏倒させます。
大谷:そうだな。オーヴァードでも侵蝕値が100%を超えた状態でならHP以上のダメージを受ければ昏倒する。その無限の生命力はひとえに《リザレクト》によって支えられているからだ。つまり,『100%までの残り侵蝕値=生命力』の図式が成り立つ。それじゃあ,どうやったら侵蝕値は上がる?
キルス:衝動が起きた時と……,エフェクト使ったときぐらいじゃないの?
咲耶榎:正確には《ワーディング》以外のエフェクトを使用したら,ですね。
大谷:そう,オーヴァードは《ワーディング》以外は例外なく侵蝕されながらエフェクトを使用する。これはさっきの図式からもわかるように,自分の生命を削っているのと同じだ。
キルス:あの……,さっきから聞いてると,エフェクトを使うのは自殺してるのと同じだって聞こえるんだけど……。
大谷:その通りだ。
咲耶榎:気の滅入るお話ですねえ。
大谷:で,このオーヴァード同士での戦闘方法は,その例えで言うと『互いにできるだけ死なないよーに自殺しながら相手の自殺を促進させようとする』って事になる。《リザレクト》一回で侵蝕される平均値は幾つだ?
咲耶榎:ええと,5.5です。
大谷:つまり,5以下の侵蝕値のエフェクトで相手を一撃で倒し,敵の一撃を5以下の侵蝕値のエフェクトで回避する。これを延々と繰り返すのが対オーヴァード戦の最も効率のいい方法だ。多少の裏技と,例外も無くはないけどな。
キルス:5以下って……,ロクなコンボ使えないと思うんだけど。
大谷:別に,たいした打撃力が必要なわけでもないだろう? 20点ぐらいのダメージを与えれば大抵の相手は倒れるんだし,逆に例え100点のダメージを与えた所で相手は《リザレクト》が一回起動するだけなんだから。
キルス:なんか,随分と味気ないわね。
咲耶榎:(ルールブックを読んで)……実際,大谷さんはそれで戦闘することが出来ると思いますか?
大谷:まあ待て。これにはちゃんと続きがあってな。侵蝕値が100%を越えたからといって,オーヴァードがすぐに昏倒するわけじゃない。逆に100%を越えてからが本番とも言える。100%を越えてから,相手の攻撃を全て回避もしくは無効化し,強力で防御が困難なコンボで,同じく100%を越えた相手を昏倒させるんだ。戦闘が終わった時に侵蝕値が120%を越えてなければ,ロイスを4つほど持っているオーヴァードなら,充分ジャーム化を免れることが出来る。
咲耶榎:なるほど。不安だったら,経験値を半分にして振るダイスの数を倍にしても良いわけですしね。
キルス:……随分と複雑な話ね。
大谷:簡単な話,人間相手には《ワーディング》をしろ。ジャームは一対一を避けて全力で殴れ。オーヴァード相手のときは互いに100%を越えてからが正念場ってことだ。
キルス:最初っからそういえばいいのよ♪
大谷:…………(嘆息)。
咲耶榎:ええと,他に気をつけることはありますか?
大谷:そうだな……,特には無いな。 じゃあ,これで1時間目は御終いだ。
キルス&咲耶榎:ありがとうございました〜。
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