*** SCENE 25 ***
 



 千葉が指定した場所は,第3ゲートの2キロばかり南にあった。もう少しゲートに近ければ,防衛隊の駐屯地やら何やらがあるはずだが,ここには見事に何もなかった。ただ陰鬱な灰色の壁が続くばかりだ。
 そう,ただひたすらの壁。
 こんなところに連れてきて,いったい何をさせようっていうんだ。
 手を伸ばせば触れられるところまで壁に近づいてみた。砂塵でざらついた表面を指でなぞってみる。と,ピンクの蛍光ペンキで小さく,

『下を見ろ』

 と書いてあった。
「…………」
 俺は黙って下を見た。千葉のことだから,ばーかがみるー,とかそういうオチじゃないかとも思ったが,そんなことはなかった。
 赤いチョッキを着たモン○ッチが,ぽつんと壁にもたれて座っている。
「……マジでなんなんだアイツは」
 あいつ,実は生きててどっかからこの光景見てたりしてないだろうな。今度こそ大人しく死んでてくれよ。俺の仕事増えるから。(あ,それと今の若い人,モンチ○チってご存知ですか? 口に小さく穴が開いていて,親指をくわえさせられるようになってるサルのぬいぐるみです)
 抱き上げてみると,親指くわえたモ○チッチは,腕に小さなカードを抱えるようにしていた。曰く,


 様々な試練を乗り越え,よくぞたどり着いてくれました。
 さて,最後の試練です。全PC20人のうち,このSSに1回も登場していない人が1人います。それは誰でしょう?

 1.草薙ユウキ
 2.久島真二
 3.キルスティン・ビョルク

 その人物に,大切なものを預けてあります。その人のところにとりに行ってくださいね。とっても大事なものですよ。行かないと後悔しますよ。――K.C


「…………」
 俺は黙って,カードを細かく細かく,それはもう偏執的に細かく破り捨てた。
 何が最後の試練だ,この存在そのものが大迷惑な愉快犯め。これ以上何かやったら○郷さんよろしくピンクのワニ散歩させてる銅像を市政局前広場のど真ん中にブッ立ててさらに「耶魔斗像」とかプレートつけて飾ってやるから覚えていやがれ。
 それになんだよこの問題。そういうことを登場人物に答えさせるかフツー?
 激しく手抜きを感じさせるから二度とやるなよ管理人め。
 ――胸中で一通り毒づき終わると,壁にもたれて思案にふけった。ここまでやっといて諦めて帰るのも,それはそれで馬鹿みたいだ。こうなったら是非ともその「とっても大事なもの」とやらを拝んでやらねば気がすまない。
 さて,このSSに登場していない可能性があるのは――


 ⇒ ユウキだろう。だって今んとこ行方不明だし。
 ⇒ 久島だな。あいつの行動って,描写不能だから。
 ⇒ そうか。キルスだ。