*** SCENE 11 ***
 



 久島の部屋に入った。真っ暗だ。

「おい,久島?」

 …………あれ?
 いくらなんでも,暗すぎやしないか?

 …………。
 …………。
 …………。


 おかしい。
 俺は慌てて背後を振り返った。
 そこには当然,開けたままのドアと,そこから差し込んでくる光が――

 ……ない。
 そんな馬鹿な。ここはどこだ。
 
『運が悪かったな,大谷よ』

 ひどく,禍々しい声がした。

「誰だ!?」



『当サイトの管理人でーす』


 …………。
 …………。
 …………。
 …………。


「うわ。イッタ」

『イタイとかゆーなー!?』

「だってさ。こういうSSで書き手がしゃしゃり出てくるのって,何か禁じ手ってゆーか,ぶっちゃけ手抜きじゃないんですかソレ」
『私だってそう思ってるわい! ……しかしだね大谷先生。考えてみてもくれよ』
「何をです」
『「磨亜矢と久島の家庭」って想像できるか? 私には無理だぞ?』
「……まぁ,難しいでしょうね。『どうして久島と磨亜矢が結婚したか』ってのは,もはや久島プレイヤーにさえ理解できない,UGN七不思議のひとつであるわけだし」
『そうでしょそうでしょ!? 私だって書こうとしたんだよ久島エンド! でもさ,想像力の限界なんだよ! ただでさえ,久島は「久島プレイヤーにしか真の久島は作れない! だから久島は次回予告にも登場しないんです!」な人なのに! 久島と磨亜矢のラブラブ新婚家庭って何ソレ! わけわかんないよ私!?』
「わかった,わかりましたよ」
 両手を挙げて,周囲を見回した。
 やはり,真っ暗。
「一応確認しておきますが,ここってやっぱりバッドエンドだったんですか」
『うん』
「……あんまり聞きたくないんですが,一応確認しておきましょう。どういうバッドエンドなんですか」
『うむ。後ろを見たまえ』
 嫌々振り返ってみた。
 ちゃぶ台。
 どこからともなく差し込むスポットライトが,暗闇の中に,丸いちゃぶ台を浮かび上がらせていた。
 えらく年代モノっぽい,ってゆーか今時TVアニメ版『サ○エさん』でしかお目にかかれないんじゃ?ってな感じの,ちゃぶ台。一本だけ足が短いのか,下に週間○春を挟んであるあたりが,また哀愁を誘う。
 そしてさらにその上には。
 俺の愛用のPCと,『ダブルクロス』のセカンドエディション,さらには『ブレイクアップ』『アルターライン』までがきっちりと準備されていた。
「まさか……」
『そのまさかだ』声は言った。『今すぐ「大谷講座」の第4弾を書くのだ大谷先生。それまで,この異次元空間「まっくら森」から出られないからそう思え!』
「…………」
 俺は『アルターライン』のか○みちゃんっぽいオレンジ服の少女をしばし見つめ,おもむろに言った。
「色々突っ込むところはあるんですけど,そのネーミングはどうかと思います。谷○浩子さんがいらっしゃる方角へ土下座して謝りなさい」
『うむ』
 わずかな沈黙。(管理人が土下座して謝ったのかもしれない。俺からは見えないけど)
『よし,反省した。じゃ,大谷さん。あとよろしく』
「あ,ちょっと待て! まとめに入るな!」
『だって皆「大谷講座」待ってるよ〜? 掲示板にも「早く『大谷講座』書いてください」って書き込み多いし』
「それは嬉しいんですが,問題はそこではなく」
『……そしたら,しばらくリプレイアップしないで済むしさ』
「うわ本音出しやがった!?」
『じゃ,あとよろしく』
「だからさりげなくまとめに入るな! おい!?」
 返事はなかった。ただのしかばねのようだ。
 じゃなくて。
「横暴だ。あまりにも横暴だ……」
 俺はちゃぶ台とパソコンとルールブックの前に佇み,我が身の不幸を噛み締めるしかなかった。

END


《管理人からヒトコト》
 えー,弁解の余地もない手抜きエンド。真ちゃんコンビが好きな方ごめんなさい。あと,久島もゴメン。
 でも無理です。久島は,久島プレイヤーにしか表現できない「神の領域」にいる人なんです。勘弁してください(笑)。

 

(⇒最初からやり直す)