Opening Phase//Nite for pretty Kitten//
SCENE 1
(マヤカシ)
暗い部屋。白い壁。薄くたちのぼる白い煙。煙草に混じる薬物のキツイ臭い。
トロンが薄青い、鈍い光を発している。
男はじっと画面を見ている。何かと対話しているように、指と、青ざめた唇が時折かすかに動く。
男がキーを操る。画面に新たなメッセージが浮かび上がる。
ファイル“PFU”の閲覧を希望しますか?
>Yes/No
SCENE 2
(クグツ)
藤田:いきなりキー効果を俺に使えと?
RL:ん? クグツってペルソナでしょ? おい、ブレカナと混乱してねーか?
藤田:あ、そーかも(笑)。
RL:それでは、いきなりメルちゃんからオファーしてもいいんだろうか?
藤田:いいですけど、メルちゃん言わんでください。
RL/千早雅之:(涼しい顔)「G.C.I.のタタラが1人、姿を消しました。名前はケネス・サマーランド。あなたにお願いしたいのは、彼の身柄、および彼が持って逃げたデータの入手です」
NAME:Kenneth Summerland
HEIT:176cm WEIT:61kg AJ:35 JENDER:Male
HAIR:Brond EYEZ:Blue SKIN:White
北米連合出身。白人男性。独身。G.C.I.ではAIおよび仮想人格の研究チームに所属。1週間前に失踪。現在はN◎VAに潜伏しているという情報がある。
N.B.:2日前、タタラ街で確認されている。現在の所在は不明。
藤田:殺してはまずいということですね?
RL/千早雅之:「最悪、脳さえ残っていればよいこととします。万が一の場合は、データの方を彼の命より優先させてください」
藤田:そのデータというのは……
RL/千早雅之:「“デヴァナガライ”というAIですが、詳しいことはわかりません。それと、できるだけわが社が関係していることが外部に知れないように行動してください。したがって、こちらから人員は割きません。メンバーの手配はあなたにおまかせします」
藤田:その報酬含め、必要経費は?
RL/千早雅之:「もちろんこちらが払います。領収書は千早重工ではなく、関連会社の名を使ってください。これは会社側の必要経費となるので、あなたが申告する必要はありません」
藤田:そこまでは訊いてないんですが。
RL/千早雅之:「では、他に質問はありますか?」
藤田:領収書云々より、情報をください(笑)。
RL/千早雅之:「2日前に、タタラ街で“スカベンジャー”と呼ばれる臓器密売人と接触したとの情報があります。その時に同行していた女性のデータも転送しておきました」
NAME:“Aegis”Gabriel Riddel
HEIT:172cm WEIT:82kg AJ:31 JENDER:Female
HAIR:Silver EYEZ:Blue SKIN:White
北米連合出身。白人女性。独身。元G.C.I.のカブト。5年前に退社、N◎VAへ移住。現在はフリーランスだが、ナイトワーデン社に登録あり。
RL/千早雅之:「彼女とはあまり事をかまえないように」
藤田:ナイトワーデン社とはモメたくないということですよね。
RL/千早雅之:「その通りです。現場の判断は、あなたにおまかせしますが」
藤田:頬をぽりぽり掻きながら、結構無理くさいなぁとか思ってる。
RL/千早雅之:「質問は以上ですか」
藤田:もう一つ。最後に質問していいですか。
RL/千早雅之:「どうぞ」
藤田:(真面目な顔で)おやつはいくらまでですか。
RL/千早雅之:(同じく真面目な顔で)「3カッパーまで、バナナはおやつに含まれません」
一同:…………(←寒い沈黙)。
藤田:……失礼。マジに答えていただけるとは思ってませんでした。
RL/千早雅之:「仕事ですから」
SCENE 3
(ヒルコ)
RL:あれ? ヒルコでちゃった。すまんが、ヒルコがキーの人(笑)。
アンジェラ:(不承不承)はーい。ところでこいつ、どこに住んでんだろ?
RL:マイケルのとこでいいっしょ? 自宅でもいいけど。
アンジェラ:ペットとして飼われてる。それはやだな(笑)。
RL:やめんか(笑)。そだね、将来優秀な手駒になりそうだというあたりで。マイケル氏ならその中に何パーセントか善意は入ってそう。
アンジェラ:どっちでもいいけど……じゃ、マイケルさんのとこ。
RL:では、呼ばれて部屋に行ってみると、彼は書類をより分けている最中だ。「ひとつ仕事を頼まれてほしいんだが、いいかな?」
アンジェラ:はい。
RL:まず、1人の白人男性のデータが転送されます。
アンジェラ:ケネス・サマーランドですね。
RL/マイケル:「これからお客がやってくる。君にも同席してもらうから、それまでに目を通しておいてくれ」で、ケネスのデータに関してはさっきと同じ。ただし、持って逃げたデータは“プシィ・キャット”になってる(笑)。
アンジェラ:(ものすごくイヤそーな顔)あのー、程度が暴落してるよーな気がするのは、気のせいですか。
RL:ま、そのへんはキャストにはわからないわけだし? ちなみに“プシィ・キャット”というのは、いわゆる「理想の娘」の人格プログラムだね。
アンジェラ:はあ……そんなもん持ち逃げしてどーすんですかね。
RL:そうこうするうちに、お客がやってきます。ひとりはいかにもエグゼク風、50がらみの白人男性。でもって、その秘書風な30くらいの男。こっちは東洋系だけど、いまいち人種のわかりづらい顔をしてる。たぶんユーラシアンでしょう。彼はたったまま、エグゼクの方が座って。で……12歳かぁ(笑)。
アンジェラ:まずかった?
RL:ニューロならいいんだが、荒事系で12はなぁ。エグゼグは奇妙な顔であなたを見た後、マイケルに「この子かね?」と訊く。
アンジェラ:黙って相手の顔を見返している。
RL/マイケル:「彼女の年齢のことなら問題ありません。通常通り扱っていただいて結構。責任は私がとります」
アンジェラ:やっぱり黙って見返している。
RL/エグゼグ:「失礼、お嬢さん。私はG.C.I.のビル・アーメンガード。こちらは秘書のウィルシャー・ダニング。私はこれからすぐに帰国するので、実務的なことは彼に言ってくれ」
アンジェラ:さらに黙ってぺこりと頭を下げる。
RL/ダニング:「ケネス・サマーランドの情報はいっておりますね? あなたには彼を探し出して身柄を確保し、データを取り戻していただきたい」
アンジェラ:わかりました。
RL/ダニング:「報酬は2ゴールド。危険度によっては特別手当も考慮します。必要経費はこちらが払いますので、後で請求してください。前金として5シルバー、あなたの口座に振り込んでおきました」
アンジェラ:その辺のことはまったく興味なし。聞き流してる。
RL:マイケルがいいようにしてくれるんじゃん?
アンジェラ:了解しました。他に情報はありますか?
RL/ダニング:「彼がN◎VAに潜伏しているのは確かな情報です。2日前、タタラ街で、クリスタル・シールドを持ったカブトらしい女と一緒にいるところが確認されました」ここで女の画像も渡される。ただし名前とかはわかんないけど。「他に人員が必要な場合は、こちらに打診してください。ただし、G.C.I.の名前は出さないように」
アンジェラ:その必要はないと思います。
RL/ダニング:「おひとりで大丈夫ですかな?」と少し軽侮の視線。
アンジェラ:ええ、と言ってやっぱり黙っている。
RL/ダニング:こちらも表情は変えないまま、「では、よろしくお願いします」ということで、シーンを変えます。
SCENE 4
(アラシ)
RL:さてさて、お待たせしました新条さん。あなたの場合は自宅で、ある雨の夜だ。あなたは寝てるんだけど、ドアをこんこんと叩く音がするわけ。
勇基:俺は気づいていいわけ?
RL:女の人連れこんでる?
勇基:…………。
一同:そこで悩むな(笑)。
勇基:いや、ベッドの下で寝てるのもアリかなー、とか(笑)。
RL:君は某戦争バカか(笑)。
藤田:いやぁ、正しい判断ですよ。
RL:何でもいいけど、気づきたいなら一応【肉体】で制御判定を。
勇基:成功。その日はたまたま女を連れこんでなかったんだろう。
藤田&アンジェラ:たまたまぁ?(笑)
勇基:(無視)警戒しながらドアに近づこう。
RL:ちょっと待てよ。(シートを見て)【外界】8ぃ?! カブトワリって金持ってんなぁ。
勇基:殺しまくって金もうけ〜♪ 誰か使用人いてもおかしくないですな。
RL:使用人というか、ドロイドが応対に出てくれんじゃないのか。
藤田:人格どんなんがいい?
勇基:え? そういうの決められるんですか。やっぱこう、セバスチャン!なタイプが。
藤田:はっ、千早の製品にありますな、“セバスチャン”。(RLに)演っていい?
RL:どうぞどうぞ。
藤田/セバス:(厳粛な声)「マスター、お客さまのようですが、いかがいたしましょう」
RL:と、ついでモニターに移し出されたのは、だね。6歳くらいの女の子。小柄で、黒い髪に黒い目、白人の美少女です。ちなみにずぶ濡れ。
勇基:全く知らない顔?
RL:うん。
勇基:武装とかまでわかんの?
RL:どー見ても持ってないんじゃないのか。なんせ素肌に薄い夏物の白いワンピースで、白い麦わら帽子といういでたちだ。
アンジェラ:うわ、やばぁ(笑)。
藤田:ある意味マニアだ(笑)。
勇基:……とりあえず入れてやってくれ。
RL:入れてあげるのね? では、あなたの前にやってきて、あなたをじーっと見つめる。
勇基:…………?
RL:んで、てててっと走ってきて、きゅっと抱きついて、(甘えた声で)「お父ちゃまぁ」
一同:(爆笑)
勇基:…………。
藤田:ほー。19歳の時のお子様ですか。
勇基:過去の過ちが走馬灯のように……ってなんでやねん!
アンジェラ:(冷たく)心当たりあるんでしょ?
勇基:ない! ……と思いたい。いや、俺はそんなヘマはしてないぞ!
RL/女の子:(小首をかしげて見つめるポーズ)じーっ。
勇基:……え、えーと。とりあえず風呂にでも入りなさい。風邪ひくから。
藤田/セバス:(すかさず)「すでに沸かしてございます、マスター」
勇基:ほら。風呂。
RL/女の子:「お父ちゃまは一緒に入らないの?」(一同さらに爆笑)
勇基:1人で入りなさい!
RL/女の子:「……はぁい。お父ちゃまは何するの?」
藤田:とりあえず過去の過ちを考えているらしい(笑)。
RL:んじゃしばらくして、濡れたままてててっとやってくる。
藤田/セバス:「お嬢さま、お風邪を召します」
RL:ふるふる(と首を振る)。
勇基:せめてバスタオルとか何とかで拭きなさい。
RL:で、そうやってると、うなじにIANUSのスロットがあるね。
勇基:え? 嘘だろ?
藤田:……6歳でしょ? マジでやばくない?
RL:うん、でもあるんだよ。
勇基:6歳に見える23歳なんだなきっと。……いねーってそんなの!
RL/女の子:「お父ちゃま、おやすみなさいしないの?」
アンジェラ:(かわいい声で)しないとめーなのよ?(笑)
勇基:とりあえず空き部屋に連れてって、寝せる。
RL/女の子:「……いっしょにおやすみなさい、しないの?」
勇基:1人で寝なさい!
藤田/セバス:「マスター、差し出がましいようですが、お嬢さまの教育上よろしくないかと」
勇基:俺の娘じゃねーつーの!(怒)
RL:あ、そゆこと言っていいと思ってんの? 君をじーと見つめて、ぽろっと涙がこぼれるぞ。「お父ちゃま、わたしのこと嫌いなの?」
勇基:(←苦悶している)……わかった、わかったから。
RL:ところで、君が彼女の濡れた服を片付けているとだね。ポケットにデータディスクが1枚入っている。
勇基:んん?
RL:ちなみに下着はいちごパンツ。
勇基:んなこたどーでもえーわい! セバスチャン、このデータを開けてみてくれ。
RL/女の子:「お父ちゃま、後でいっしょにおねんねね? 約束ね?」
勇基:はいはい。……で、セバス! データは!
RL:入っているのはひとつがRead Me で、もうひとつは圧縮ファイルだね。
勇基:とりあえず説明文のほうを。
RL:説明文とゆーより、メッセージのようだ。差出人はケネス・サマーランド、宛名は新条勇基様。『突然のことで驚いていることと思う。その子はデヴィエラ・サマーランド。私の娘だ』
勇基:そら見ろ!
一同:勝ち誇るなよ(笑)。
勇基:……それはともかく自分の娘にそんなヤバい処置を施すオヤジって一体?
RL:ケネス・サマーランドという男には覚えがある。
勇基:(真面目な顔で)男のことはあんまり覚えてない。
一同:(笑)
RL:きっとセバスが覚えてるよ(笑)。G.C.I.のタタラで、かつて護衛をしたことがあった。その時に、友人つきあいというほどではないにしろ、お互いのアドレスを教えるぐらいの仲にはなったのだ。あなたが知る限り、生真面目な人物だ。少なくともここまで人倫にもとるような真似をするとは思えない。
勇基:…………。
RL:続きいくね。『彼女を護って欲しい。3日後に指定の場所にて、このデータと一緒に、ロジオン・スタルツェフという男にあずけてくれ。報酬は後日送金する。ケネス・サマーランド』
アンジェラ:あれ? 単に依頼だったの?
RL:この依頼、断ってもいいんだけど、その場合あの娘をどーやって叩き出すかとゆー(笑)。
藤田:(真面目な顔で)今からツバつけとくとゆー考え方もありますが。
勇基:光源氏計画はいいっつーの! もー寝よ。
藤田/セバス:「マスター、お嬢さまとのお約束が」
勇基:いいんだよ! 約束は破るためにあんの!
藤田/セバス:「いえ、セキュリティ上の都合です。マスターがいつも言っておられるではありませんか。『護るなら同じベッドの中』と」
一同:(大爆笑)
RL/女の子:「お父ちゃまぁ、そろそろおねんねしないとめーなのよ?」(笑)
アンジェラ:過去に付き合ったどの女の子よりタチ悪い(笑)。
RL/女の子:じゃ、何故かピカ○ュウ大冒険な絵本を持って、「お父ちゃま、これ読んで」(笑)
勇基:どこにあったんじゃ!
RL:(無視)ある日ピカチュ○は川へ洗濯に行きました。
勇基:そして任○堂はユリ・ゲラーに訴えられました。おしまい。……どーゆー本やねん!
RL:と、勇基の絶叫が響き渡る中、夜は更けてゆくのだった。シーン変えます(笑)。