大森青べかカヌークラブ
合流式下水道が汚染の原因

何故、下水道の中まで覗いたのか?

 この夏(平成13年)、内川のヘドロの堆積が特に酷かった。干潮に近い時出かけると、辺り一面ヘドロだらけ、臭いこと、水滴を一滴たりとも手で触れないように慎重に慎重にパドルを回して内川を抜けました。クラブ仲間の堀井さんも同じことを感じていました。内川で毎日釣りをしている人達に聞くと、「今年の夏は下水が大量に流れて魚が全滅した。その数は千や二千じゃない、万の単位の魚が死んでしまった。それ以来、まったく釣れ ない。今年はだめだね。」という声も聞きました。毎日、内川で釣りをしている一人が、 最近は下水が流れる回数が増えたとも語っていました。そこで、汚染の原因を知るには下水がどのようなしくみで内川に流れ込むのかを知る必要がありました。今年に限ってヘドロが多かった原因には、河口での浚渫等の工事が関係していると考えます。しかし、原因は未処理下水が長年流された結果、河口に堆積しているからです。

 これまで10年以上、大森・羽田の海をカヤックで歩いて海は一向に奇麗になっていません。海を知らない人は、たまたま奇麗な時に見て、良くなったと思っているだけです。自治体が出しているデータを見ても判るように、東京湾の COD,BODの値は改善されていません。窒素、リンが年間通して高いため、赤潮 は4月から10月まで、青潮は夏季から秋季にかけて必ず発生します。その原因はどこにあるのか。単純に 言えば東京湾に流れ込む栄養分が多いということです。その主な原因は、下水道から河川にながされる未処理下水と考えています。

 ようやく、人々が未処理下水による環境染に気がつき始めています。NHKのクローズアップ現代 「下水が海に流れる」(平成14年春?) でこの事実が紹介されました。この番組の内容は、人々が集まるお台場海浜公園の砂浜に、と ても臭く白い油の塊(オイルボール)が打ち上げられる苦情から始まりました。原因を海上保安庁が調査したが、掴めないでいるところ、下水道局が名乗りをあげました。 下水に流された廃油が固まり、下水管に付着し、大量の雨水と共に海に流されたのです。

オイルボール(羽田東岸にて)


 この問題点は、雨水と汚水が一緒に流れる合流式下水道という構造的欠陥にあります。貯水能力を無くした都市構造のため、雨が一挙に下水へ流れ込みます。合流式下水は、工費が分流式より安価で、大雨にて内部に堆積したヘドロを一気に河川や海に流せるので、維持管理が簡単という反面、環境汚染を引き起こしています。また、当然ながら各地の海水浴場で糞便性大腸菌による汚染が広がり、遊泳禁止となる海水浴場が増えています。

 処理場は増量した下水を処理できないために 1)途中で未処理下水を河川および運河に捨ててしまう。 2)あるいは下水処理場から直接、処理せずにそのまま河川および運河に放流する政策をとっています。

 これは当初から(雨水と下水を分けて流す分流方式)としなかった政治の問題です。このホームページを見ている下水道関係者を責めても無意味です。しかし、未処理下水による海洋環境汚染は、すでに見過ごすことが出来ない状況であることを下水道や自治体の関係者にご理解を願いたい。(東京湾の赤潮・青潮情報を参照して下さい

近年の青潮発生状況(資料:千葉県水産研究センターのホームページから)
年度
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年
発生件数
3回
2回
4回
2回
5回
4回
(青潮とは、海水の酸素が無くなりいき物が死んでしまう海水のこと。下水等の有機物により海水が富栄養化し、分解の過程で酸素を消費し、硫化物で青く見える現象)

 下水道局は、合流式による問題点を是正する対策をとっていますが、問題の根源は合流式下水です。お金はかかりますが、将来を見据えたならば分流式(下水と雨水を分離して流す)に変換する施策をとることが最も効果があると考えます。

NHKのクローズアップ現代「下水が海に流れる」のビデオが見たい方はご連絡ください。

 怖いほど美しかった東京湾を知っている私の悲しみ苦しみは 、そこに棲む 魚、カニ、タコ、鳥の苦しみに他ならない。彼らは何も言えない。

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