グアバジュース1 20020602
プライドは 置き去りで キミにすがるのも いいね 「センパイ?」 眉をしかめて見上げてくる声にかまわず抱き締めた。高い体温に、どこかほっとして骨の浮き出た肩に顔を埋めた。あちこち骨ばった成長期の体はお世辞にも抱き心地がイイとはいえないが、この感じが好きだと思う。我ながらオカシイ、と笑った。彼はコッチがへこんでいる雰囲気を読んだらしい、いつものように振り払おうとはしなかった。あるいは、彼も不安なのか。 彼の肩口に顔をうずめてしまって、思うのは。結果が出せなかったとき、同じ感情を共有できるのはダブルスの良いところだというコト――ペアを組む、腕の中のヒトは悪いところだと言いそうだが。フ、とハナから抜ける笑いがついた。敏感に反応して顔を見ようとする彼の頭を軽く押さえて、ひっそりと切り出した。 「どうしようか、これから」 ナニが、とは言わない。今の彼と自分の頭にあることなど、ひとつだけだから。彼がちゃんと意図を汲み取ってくれた証拠に、努力している割に筋肉のつかない体がビク、ゆれた。後頭部に添えた手が振り払われて、彼が顔をあげる。視線を合わせれば、まっすぐなのに不安定な目があった。 「どうしようって…なにが」 わざと理解しない姿に苦笑する。見たくないものを見ないでいれる性質でもないクセに、無理をしている様子は痛々しい。しかしそんな彼が相変わらず可愛らしくもあって、ダブスル解消は出来れば遠慮したいなあ、と長閑に思った。しかしソレは全て彼の決めることだ。 「お前は、分かってるだろうが」 「だから、何がだよ」 目を眇めて、唇を噛んで。低く唸るような声で、それでも視線を反らしたら負けだというように睨み付けてくる。重度の負けず嫌い。だからこそ、今回の負けは酷くこたえたはずだ。彼の目的はもう達成されたのだから、俺の勝手に付き合う意味なんて何にもない、次も俺と組んで負けるかもしれない試合を押し付けられる必要なんて本当に何にもない。 「竜崎先生はああ言ったけど、お前は俺に借りなんてないよ」 「何が、言いたいんだ」 「無理してダブルスに付き合う必要ナイってこと。お前は、シングルスがやりたいんだろう?」 そのためのブーメランだったしな。付け加えてやると彼はしかめた眉をますます険しくする。くしゃ、と急に歪めた彼の顔が何を示しているのかは、正直分からなかった。それでも、彼の‘自分の勝利’への執着は誰よりよく分かっているつもりだから。さっき振り払われた手を再び彼の頭に載せて細い髪を梳き下ろす。冷たい感触を楽しみながら精一杯の見栄と本心で告げた――真っ直ぐに向けられる彼の視線からふと逃げて。 「もっと、強くなれるよ、お前は」 NEXT or BACK |
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ユウさまキリ番リクエスト「ラブでスイートな乾海」。 ゴーネクスト(薫さん一人称)。 |