今年も年の瀬だ。街はクリスマス一色。人々が慌ただしく行き来する。
でも、僕は一人空を見上げている。あの時の仲間を星に見立てて。
『もう、20年以上も前の事さ』自分に言い聞かせるが、くわえたキャメルが震えている。涙が止めどなく溢れる。
虚像に満ちたクリスマスには、まったく興味がない。
星を見上げる僕にとって地上の出来事など些細なことでしかない。
冬の空が澄んでるこの時期は星達が僕に語りかけてくる。
『大野!俺たちの分まで頑張ってるか?』香取があの日の姿のまま語りかける。
圭子は僕の中で今でも生き続けている。あの仕草、微笑み、そして肌のぬくもり。彼女のすべてが僕の体の中に生き続けている。
忘れられないあの夏は今でも続いている。
僕はあの時一度死んだ人間だ。恐れるものなど何もない。

今日も一人、騒然とした都会を彷徨う。
誰もが持つ心の空洞を、あえて悲しみで埋めながら。
あの時の仲間が自分の中には生きている。彼らの強さと優しさも。
だから、前を向いて生きる。人にも優しくなれる。
それが、彼らに出来る唯一の供養であり、天から与えられた使命だろう。

『もう20年以上も前の事さ』再び自分に言い聞かせる。
ただ、溢れる涙だけは止められない。永遠に。
街の中には流行のクリスマスソングが流れているが、僕の頭の中には今でも『COOL NIGHT』が鳴り続く。

       

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