今月の音盤
 

No.13 How The West Was Won /Led Zeppelin 

 ビッグバンドのあとはぜップですもん、ちょっと嗜好がとびすぎてないか?と自分では全然思っていないけど、やっとこんなライブが出るようになったんだね。うれしいじゃないですか。ジミー・ペイジといえばあの低く構えるギター、ダブルネック、テルミン、なにやってもかっこいい人だったけど、高校生のころロックだった僕もやっぱりギターは低く構えてました。でも大学生になってジャズやクロスオーバー(のちのフュージョン)、AORなんかに手を染め出してからはいっきにポジションがあがったんです。でもバタヤンのようにはできなかった、さすがにあそこまでアッパーにはできなかったですけど。今はその中間ぐらい。でも、もう腰より下には下げられません。
 さてそんな低く構えていたころの僕には悩みがあった。”アクション!ペイジは口とんがらかしてギターかきむしってたし、ピート・タウンジェントにいたってはご存知のように稲妻サーブ弾きのうえ、ハイジャンプでギターめっちゃだたきのあとアンプ串刺し刑。高校生にそんなことできましぇんよ。かといってマーク・ボランのように化粧の銀ラメ衣装はひいてしまうし。そう、札幌のうぶな高校生にはちょっと冒険すぎたのかも。そのとき踏ん切りつけて一山越えていたら、いまの人生ちょっとかわっていたかもしれないなあ。あれ、CDのことなんにも書いてないじゃん。とにかくめちゃくちゃいいCDってこと。

No.12 More Smiles/Kenny Clarke Francy Borand Big Band 

 でもってカナダのサイトに注文して中古でゲットしてしまったわ。今聞くといたってノーマルちゅうか、ストレートにスタンダードやってるんですね。学生のころ、このなかの「木の葉の子守唄」っちゅうのがレパートリーにはいってたんだけど、はじめてオリジナル演奏聞きました。ちょっと解釈が違ったみたいだけど、ま、いいか。これなんかCD化はされないんだろうなー。


No.11 Blowing The Cobwebs Out/Kenny Clarke Francy Borand Big Band 

 ジャケットをみてしばらく考えてしまった。ほんとは「木の葉の子守唄」がはいっているのを探しているんだけど、う〜ん1500枚限定で通し番号ねえ。中身わかんないよー。店員に聞いても曲目わかんなくて、ブラックボックスの状態で、結局中身さっぱりわからんまま買ったこの2枚組み。MPS後期の作品4枚をまとめたものだったのね。アメリカでは「食ってはいけない」ビッグバンドジャズは、ヨーロッパではある種「芸術」的評価をえて息を吹き返していたんだろう。学生時代には手にすることはなかったCBBBだけど、ベイシーやサドメルなんかのエッセンスを、他民族楽団が昇華したっていうんでしょうか、とにかくストレートでノリがいい。学生の頃のレパートリーはほとんどマイナーキーが多くて、ヨーロッパぽい暗さ、みたいなもんをイメージしていたんだけど、多国籍なメンバーをあらためてみてみると、そうしたエスニックな香りが影響していたのかも。ジャンゴの音楽だってジャズという枠ではちょっと誤解招くような気がするし、そうした国境を越える汎ヨーロッパ的要素が、アメリカで成長したジャズにあらたな活力を注ぎ込んだんじゃないか、と勝手に想像している。
 このCDを買ったおかげで、前から探していた「More Smiles」はインターネットで探してカナダのレコード販売サイトから中古LPを購入することにした。やれやれ。(ちなみにこのCD、94年のリリースだから、ずいぶん長く店頭在庫だったのねえ。1500枚しか発売してないのに)。

No.10 美童しまうた/神谷 千尋 

 しまうたの新人、といっても血筋、キャリアとも20歳そこそことは思えない彼女のデビュー。沖縄のメロディにほどよい感じのポップなエッセンスを交えた、とっても心地いい作品だ。元ちとせのヒット以来、こうしたルーツをしっかり持ち、歌の持つ本来のパワーみたいなものを感じさせるような歌い手が増えてきたのは、レコード会社の「柳の下のどじょう」戦略もあるけど、やっぱり世の中「癒し」が欲しいのかな、とも思う。でも、彼女のこれからはかなり期待していいなじゃないだろうか。きっと夏の琉球フェスティバルにはメインで登場、っていうところかもしれない。うー、、しばし聞きほれました。

No.9 PUNK JAZZ /Jaco Pastorius 

 大学のころから全盛期を迎えていたジャコをリアルタイムに体験してきたことは、とってもすごいことなんじゃないか、とふと思うときがある。そんでもって「風船おじさん」を思い出した。いきなり風船の気球にのってどっかへいってしまったあの人。なんか天才と凡人、というわけ方は乱暴かもしれないけど、「風船おじさん」も天才的ひらめきが結果に直結しなかったことで、いつか忘れられてしまう凡人だったのではないだろうか。ジャコは残した作品すべてがすばらしいとは思えないけど、あのベースプレイと存在感がそんなことを圧倒してしまうだけのパワーを持っている。「風船おじさん」もあの大胆な行動で社会の注目をあびることができたけど、残念ながら影響を与えることはできなかったみたい。
 さて、そんなジャコの過去の作品、セッションの作品から代表曲(というには不満の残る選曲もある。どうしてDonnaLeeがないのか、The Remark You Madeがないのか、いろいろファンにはあるだろうな)と、未発表作品を収録。リミックスで音もぐんと良くなって、あらためて彼のすごさを実感できる。最初のChickenを聞いたときは、正直「なんだ、このくらいならアマチュアとたいして変わらんな」と感じたのは早合点、高校生のころまだベースを始めて間もないころに、自宅ですべての楽器を多重録音したものだったとわかり、「!!!」。ほんとにR&Bが好きな人だったんだなあ。WeatherRepoertのライブ盤も必聴かな。

No.8 White Light/Gene Clark 

 ちょっとロックを聞きかじってくると、いろいろ知らない音楽へ興味が湧いてくる。高校時代、札幌のロック喫茶で「楽屋」や「ケーシー・ジョーンズ」なんかはそんな好奇心をくすぐる通なアメリカンロックをたっぷり聞かせてくれるお店だった。特にカントリー系、スワンプ系など、高校生にはとってもディープな音楽に思えたもんだ。バーズの中心人物、ジーン・クラークのこの代表作も、その渋さではピカ一だったように思う。発表から数年しかたっていなかった当時でも、幻の名盤みたいな存在感があった。昨年CD化されたとき、未発表音源やアウトテイクが追加された、ほぼ決定版といえるこの1枚、やっと買いました。バーズ一派を押さえるにはやはりマストアイテムです。

No.7 BOB DYLAN LIVE 1975/Bob Dylan


 高校生のころ発売された「ハリケーン」が最初の出会い。ちょうどそのころアメリカをゲリラ的に演奏活動していた「ローリング・サンダー・レビュー」の全容を明らかにするライブが発売された。おまけのDVD(プレーヤーなくてまだ見ていない!)までついて、輸入版2300円はチョーお買い得だ。70年代の絶頂期でもあったディランの歌が熱い。ルービン・カーターは釈放されるのはずいぶん後になるけど、メッセージを伝えようとするディランの姿にただただ熱くなる。ミック・ロンソンのギターもまたいいんだな。
No.6 Lost in Space/Aimee Mann 

 ちょっと古いけど、彼女の最新アルバム。知的で深遠な歌詞と旋律は、アメリカのシンガーソングライター、ローラニーロ、キャロルキング、スザンヌ・ヴェガなど、現代にくらす人びとの苦悩、愛、悲しみ、喜びを見事に歌い上げる彼らの系譜と共通する。深く傷ついた心を癒してくれるような彼女の歌が、広く大衆的に受け入れられるようなアメリカの現状ではないだろうけど、こうした作品を提供してくれるミュージシャンがたくさんいるってところにアメリカの奥深さを感じる。
 1960年生まれだから、管理人とおんなじ年代だ。聞いて育ってきた音楽も、どこか共通項があるのだろうことは想像に固くない。そこが親近感を感じるポイントかな。見事に60年代や70年代のロック、ポップスを昇華しつつ、実に彼女らしいオリジナリティ溢れるソングライティングには感服します。そしてなにより、けして売れ線を狙うことなく、自分の信じる道を歩む姿、そして作品を作る上でとことん妥協しない姿勢など、学ぶべき「自称」アーティストは多いんじゃないか?レコード会社のいいなりになって著作権の保護だとかなんとかいってコピーガードCDになんの反対もしない思考停止な人たちには関係ないことか。自分の魂を売っていいの?作品をずたずたにされても異論ないの?自称アーティストさんたち。売れないのはCDコピーされてるから?


No.5 New York Tendaberry/Laura Nyro
Gonna Take a Miracle/Laura Nyro

 高校生のころ、ちょうど西海岸の音楽が大人気だった。ドゥービー、イーグルス、ジャクソン・ブラウン、リンダ・ロンシュタット。。。アサイラム系がなかでも抜きん出ていたように思う。僕もそんな音楽を熱心に聞いていた当時、東海岸の音楽にはどうも馴染めなかった。あまりに対称的すぎて。単純な高校生の頭には難しすぎた!
 再発された彼女の作品をあらためて聞いて、その都市の表情、空気、人それぞれの模様を、20歳そこそこの彼女が見事に透視していた事実、それをこれほど美しく伝わえる作品がある、ということにあらためて驚きを覚えたね。LPのころには結局買うことのなかった彼女の音楽は、今少しづつ僕との距離が縮まり、すでに4枚を数えている。30年あまりの活動期間のなかで彼女が残した作品はベストもいれてわずか13枚。僕の大事なコレクションに間違いなく増えていくだろうな。49歳で他界した彼女、あまりに早すぎた。

No.4 The Ultimate Collection/THE WHO

 とにかくFirstEditionのみのボーナスCDほしさに買ったようなもんだけど、あらためてこのバンドのすごさみたいなもんがつたわってくる。偶然にもベースのジョン・エントウィッスルが急死してしまい、ほとんどこのバンドの生命も絶たれてしまったのがつらい。特にドラムスとベースの太さがあってこそのフーだったと思うし、彼らの代役をいれたとしても、それはフーへのオマージュにはなっても、新たなフーを提示してくれるわけではないだろうし。
 後のパワーポップのル-ツになったThe Kids Are All Right他、My Generation、Summer Time Blues、Pinball Wizard、Real Meなどなどヒット曲は最後までテンション下がることのない彼らの曲つくり、音つくりの変遷をよくとらえているように思える。ぶっといギタートリオとしてのサウンドに対比するかのようなメロディアスな旋律、ハーモニーは一見ハードに思えるバンドの芯の部分にあるルーツをよく表現しているようだ。
 とにかくFirst Editionは絶対買い!

No.3 登川誠仁 スタンド!

 70歳をこえてもなお、精力的な音楽活動を続けているセイ小(グヮ)の最新作だ。ますます磨きがかかった声と三線が新旧とりまぜた島唄を届けてくれるこのCD,ほんとにいい。もうひとりの重鎮だった嘉手刈林昌が晩年は正直つらい部分もあっただけに、この人の元気、あいかわらず下ネタまぜた歌は聴いていて楽しいし、元気になるな。

 横浜鶴見にもたくさんの弟子達がいる関係で、よく本土にやってくる。そんな身内の情報もぼちぼちはいってくるけど、今年は日比谷の琉球フェスティバルのとりをつとめるようだし、ほんと目が離せない唄者だ。

 

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