シネマ大全 た行・チ

 父よ 2001年 フランス

長年賭博で生計をたててきたジョーは、死刑を宣告されて拘留中の息子マニュのため、大統領からの特赦を得るのに必要な情報を懸命に収集していた。
しかしマニュは賭博で大きなホテルを手放した父を軽蔑しており、ジョーも息子に対する愛情をうまく表現できない。ジョーはある晩、賭博で大損した後、娼婦(シャルロット・カディ)に悩みを打ち明けたりしつつ、息子の訴訟のために闘い続ける。やがて彼の努力のおかげで、マニュは死刑を免れるが…。


私の好きなアラン・ドロンの中期の作品群…「暗黒街のふたり」(’73) 「ル・ジタン」(’75) 「ブーメランのように」(’76) 等の監督で、ギャングが脱走する小説「穴」でベストセラーを出す前は、実際にギャングだったというジョゼ・ジョバンニの自伝的作品。
残念ながら、これが遺作となった。ずっと観たかった一本だ。

父と子は、相容れない。親の心、子知らず。やっと解り合えたかにみえても、大して会話を交わさない…。“ああ、実に日本的だなぁ、フランスって”と時々思う事があるが、正にそういう一本だ。   何も話さなくてもいい、暖かく確かな何かが伝わり合えば…。
“ストーリーにばかり気を取られていないで、その映画の持つ「色」みたいなものを感じなさい”
これは、淀川長治先生の名言。その「色」を確実にキャッチ出来る映画だ。

後にジャック・ベッケル監督で映画化された「穴」は、フィルム・ノワールの古典的傑作となった。  あの歯ブラシが…。
ジャック・ベッケル監督の息子であるジャン・ベッケル監督(「クリクリのいた夏」他)もこの「穴」の撮影現場を手伝っていたそうだが、3年前のフランス映画祭で私は、彼にインタビューした。

“風格”というより、“風圧”を感じる大人物だったなぁ。
これまでに数多くの映画監督にインタビューして来たが、“風圧”を感じてビビったのは、3人だけ。 このジャン・ベッケル、オリバー・ストーン、そして今村昌平だ。
このHPのフォトグラフの頁にベッケルとの写真があるので、良かったら見てネ!

(2004.8.18)