シネマ大全 た行・テ

 ティアーズ・オブ・ザ・サン  2003年 アメリカ

アメリカ海軍特殊部隊シールのA.K.ウォーターズ大尉にとって、人生とは軍隊のことであり、ミッションの遂行こそが、生きる目的のすべてであった。過去23年間にわたる軍人としての輝かしいキャリア。そのほとんどが、記録に残ることのない極秘作戦。いまや彼は7人の戦術スペシャリストを率い、任務遂行率100%を誇る精鋭部隊の隊長として、司令官の絶対的な信頼を得ていた。ウォーターズに与えられた新たな任務は、「内戦下のナイジェリアから、アメリカ国籍の女医・リーナを救出せよ」。クーデターによって大統領一家を殺した反乱軍は、暴虐の限りを尽くし、生命の危機にさらされた外国人は次々に国外脱出していた。だが、国際的な医療奉仕団のスタッフとして内戦の犠牲者の治療にあたるリーナは、今なお、辺境の村の教会にとどまっていた…。


アメリカの国策映画みたいで、最初は拒絶反応があったが、映画は観てみるまで、わからない。
誰も、観てない映画に口を挟む権利はない。
ナイジェリアの内戦から、女性の医師(モニカ・ベルッチ)を救うべく、任務を帯びてやって来たアメリカの一個隊。大尉のブルース・ウィルスは、完全にハゲていても、カッコいい。
そうか、人生で一番大切なのは、毛根ではなかったのか!!

非常に危険な場面になって、銃弾の雨に晒されたベルッチは、自然と最も強い男(B・ウィルス)に寄り添っている。 やがて、撃たれて死んでゆくアメリカ兵。そのいまわの際に彼は、やはり撃たれて倒れている黒人女性の胸に重なって行く…。
ここに何だか、この映画の母性を感じたなぁ。人間は、やはり一人で死ぬのは嫌なんだなぁ…。

映画に目線があるとしたら、この映画はアフリカの人々の目線は全然、立っていない気がする。
でも、“アメリカ映画に、そこまで望むなよ!”と言いたいのかもしれない。
多くを望まなければ満足出来る映画。その意味では「遠い夜明け」に似ている。
ラスト近く、圧倒的な軍事力を見せ付けるアメリカ軍。その爆撃の映像は殺戮の現場であるのに、とても、美しい。 映画的には派手になったが、ちょっと嫌な感じがした。
戦争も人の命も花火ではないのだ。 
こういう手は、「地獄の黙示録」みたいな映画にのみ許されるのではないか。
そういう意味では、悪くはないが、バランスの悪い映画だった。

(2003.11.8)