シネマ大全 た行・タ

 ダンサーの純情   2005年 韓国

少女チャン・チェリンが、中国からソウルに到着した。姉の身代わりとして、ダンス大会に出場するためである。
将来を有望視されながら、パートナーを失い、さらには足の怪我で絶望の底にいたダンサー・ヨンセの前に現れた新しいパートナー、それがチェリンだった。彼女の姉はダンスチャンピオンだが、チェリンはダンス未経験。大会を三カ月後に控え、チェリンが素人と知ったヨンセは、一度はチェリンを追い出すも、やがて、彼女に特訓を開始するのだが…。


映画「マイ・リトル・ブライド」、テレビドラマ「秋の童話」のムン・グニョンが、ダンスに挑戦、純愛ドラマとダンス・コンペ・ドラマの融合を目指した一本。

物語の核となる2人の気持ちの微妙な“恋の駆け引き”は、まるで御伽噺みたいなトーンで、美しく、可愛らしい。
しかし、それと、ちょっとコワイ面々が現れて、二人の運命を狂わせてしまう“ゾッとする恐ろしさ”とのトーンが合っていない。
心地よいモーツァルトを聴いていたら、途中で突然パンク・ロックが入って来て、終わり方は、メンデルスゾーンだった… みたいな感じだ。

そこが何とも惜しいが、ムン・グニョンの愛らしさ、魅力は、それを上回る力がある。
全ての観客は、彼女にグイグイ引き込まれてしまう。
映画の中の多くのほころび、甘さを補って余りあるものがある。
映画全体が、助かっている。
正直言って、こういう女優は、現代ニッポンでは見つけにくい。
来月で、19歳。
あの、思いつめた様な真っ直ぐな視線、変わらないで。

(2006.4.16)