シネマ大全 か行・カ

 カーテンコール 2005年 日本

出版社で見習い記者を務めながら正社員を目指していた香織は、ふとした事件をきっかけに九州のタウン誌に異動を命ぜられる。そこで香織を惹きつけた1通の匿名のハガキ。このハガキの内容を記事にするために取材を始めた香織だが、昭和の映画全盛の時代に幕間芸人という仕事に就いていた男とその家族の数奇な運命に心動かされ、ついに親子探しの旅に出る…。「半落ち」で、本年度日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞し、下関の高校生の初恋と青春を瑞々しく描き高い評価を得た「チルソクの夏」の佐々部清監督作品。

プロが集まるプレス試写で観たのだが、映画が終わったら、拍手が自然に起こった。こういう事は、非常に珍しい。あすこに座っている人=プロたちは、面白くても笑わぬ、悲しくても泣かぬ面々なのだ。(あ、オレもプロだった…)

そう、拍手したくなる様な終わり方だったのだ。

ネタばれになるので、多くを書けないのが残念だが、これは、“映画の映画”であると同時に、「血と骨」や「パッチギ!」と同じく“在日を描いた映画”でもある。

途中で、登場人物というより、監督の真っ直ぐな気持ちが伝わって来て、何度も涙をぬぐってしまった。皆、不器用だけど、ひたむきだったんだなぁ…。映画は、まるで時代みたいに、淡々と淡々と進んで行く。だから、こちらに、ジンンジン、ジンジンと響いて来る。

“こんなに荒んでいるオレの、こんなに柔らかい所に、勝手に入って来るな!”と、少し前なら、ムキになって抗議しただろう。

思えば遠くへ来たもんだもしかすると、日本人は今、この数十年の間になくしたものを取り戻そうとしているのかもしれない。そう思い至ると、レトロな振りをしながら、実に新しい映画だ。佐々部さん、オレ、またヤラレちゃったよ。不器用でも、恥ずかしがり屋でも、ええじゃないか!今年の私のベストテンに入るのは、間違いない。

(2005.7.22)