岡村通信 No.9 「夏への扉」

2001年7月8日

蒸し暑い毎日が続きますが、お元気ですか?

最近の私です。

【6月23日 土曜日 曇り時々雨】    みなとみらい・パシフィコ横浜

第9回フランス映画祭2001横浜  旬の男ブノワ・マジメルはすごい人気。
今年は全部で14人の俳優・監督にインタヴュ−した。時にはアメリカ人のストレートさ、ノーテンキさを懐か しく思い出す瞬間もあったが、ジャン・ベッケル監督(『クリクリのいた夏』)に逢えたのはうれしかった。彼は巨匠・ジャック・ベッケル監督(『モンパルナスの灯』他)の息子。若い頃からお父さんの映画製作の手伝いをしていたという。

「映画『穴』(1959年)の歯ブラシに貼り付けた鏡に多数の看守達が映るあの戦慄のラストシーンは、何度 も私の夢に出てきましたョ」と私が言うと、巨体、チェーンスモーカーの好々爺は、「そうか! あの シーンはなかなか鏡にうまく人間が映らなくてナ、苦労したョ」と言いながら実に嬉しそう。
洒脱自然、そして良くも悪くもマイペース。こういう歳のとり方ができたらいいな。彼の新作『天国で殺しましょう』というサスペンス・コメディを観て、久々にこんな 名言(?)を思い出した。

---- あなたにとって女性とは?

「男にとって女とは、必要な…悪である。」(アラン・ドロン)

3月以来のフランス嫌いが少々治ったかもしれない。

【6月24日 日曜日 曇り】    青森県・ワーナーマイカルシネマズ弘前
 
毎年プロデュースと司会をさせて頂いている、RABシネマフェスティバル2001(青森放送主催)。 今年は女優の桜井淳子さん(ドラマ「ショムニ」他)とのトークショーだ。
初めて彼女をスクリーンで見たのは、『あげまん』と『大病人』だった。8年前にただ一度だけ、 伊丹十三監督にインタヴューした事があるが、なんとその時に彼女の話をしたのだった。
「フレッシュでいいよねえー、桜田(!)くんは。」とニコニコと語ってくれたっけ…
もしも生きていれば、今年68歳。 彼はどんな歳のとり方をしていっただろうか。

【 7月 3日 火曜日 晴れ 猛暑 】     京王線・代田橋近くの公園

映画 『竜二 Forever』(仮題/細野辰興監督)の撮影 シーン72 公園

1983年の佳作『竜二』の脚本・主演をし、映画の完成直後、33歳の若さで夭折した金子正次の半生を 描くこの映画は、映画製作についての映画でもある。私は、遅々として進まない映画の撮影途中で キレて、現場放棄してしまうチーフ照明マンの役。
この日、関東地方は午前中から30度を越える暑さだった。
プロデューサー役の木下ほうか(『のど自慢』『Swing man』)は、「俺はプロだから汗はかかない んだ!」とうそぶくヘンな奴だ。 
主役の正次役・高橋克典さん(『サラリーマン金太郎』)は、ガンで痩せていく設定のため、3食 とも冷奴とキムチのみだという。 偉い! だんだん顔が金子正次に似てきたゾ。 凄い!
ロケバスで待機している間、監督役の香川照之さん(『独立少年合唱団』)とビデオで『竜二』を観る。 18年ぶりだったが実に新鮮だ。観終わって、松田優作さんの話になった。
 
「優作さんって、一言でいうと、どんな人だった?」と私が訊くと、
 「うーん…答えを持っている人」と香川さん。 

ううっ… 深い。 鋭い。 羨ましい!

老けてゆく金子正次、枯れてゆく松田優作を観る楽しみは永遠に失われてしまったけれど、 私は今も、会ったこともない彼らと付き合い続けている気がする。日本映画の本当の黄金期はこれからだと思う。

またまた自分の事ばかり、長々とすみません。
もしもお時間がありましたらあなたの近況等も教えて下さい。

これからが本格的な暑さ。 どうかご自愛下さい。

ではまた!