カンボジア

天空の楽園アンコール・ワット

世界文化遺産の一つとして知られるアンコール・ワットは今から130年前にはその存在を

知る人すらいなかった。フランス人博物学者アンリ・ムオが再発見するまで、密林の奥深く

に眠り続けていたのである。実は、この巨大寺院を有したクメール王国はインドシナ半島

の一部までを領土としたこともある大帝国であった。その規模と完成された美しさで知られ

るアンコール・ワット以外にも、数百を越える宗教施設が王国全土に造られていた。

アンコール・ワットは宗教施設であると同時に都のシンボルでもあった。アンコール・ワット

の造営から遅れて半世紀後、今度は一辺3kmの城壁で囲まれた王都が造られた。その王

都はアンコール・トム(大きな町)と呼ばれ、その中心に位置するのがバイヨン寺院である。

この四面仏塔の乱立するバイヨン寺院は仏教寺院として、クメール人独自の宇宙観の中心

に燦然と輝いたのである。アンコール・ワットとバイヨン寺院、クメール建築美術を語る上で

は欠くことのできない二大遺跡を中心に、永い眠りから覚めつつあるアジアの至宝を訪ねて

みたい。

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創建者:スールヤヴァルマン二世、建築年代:12世紀前半、信仰:ヒンドゥー教。

南北1300m、東西1500mの堀で囲まれた敷地内にある。

 

 

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アンコール・ワットは刻一刻と天気や光の具合でその表情を変える。

参道に立った時、どんな表情を見せてくれるだろうか。

 

写真の参道両側の建物は経堂。

 

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クメール建築では原則として東西軸上に建物が配置されている。西側が正面のアンコール・ワットと、南北に入口を設けている経堂を除けば、基本的に中心祠堂は東側が正面である。従って各建物の入口は東西軸上にあるが、それぞれの軸線が微妙にずれている場合もある。この軸線のずれは、造営途中での設計変更や後世の増築によるものと見られる。

 

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