引継ぎをしてくれる先輩に挨拶を済ませます。この先輩がまた小柄な女の人でビックリ!そして失礼ながら、ちょっぴり安心してしまいました。
だって、どう見ても「私は毒物扱っている、有能な研究者であります」風の人が現れたら、
そのオーラで絶対凹んでいましたからね。
早速、ダイオキシンを分析する部屋、通称「前処理室」へ。
やはりダイオキシンを扱うとなると、それなりの設備が整った部屋じゃなくてはダメなようです。
その前処理室は研究棟みたいな立派な建物の、2階の一室にひっそりとありました。
そのひっそり具合が見るからにアヤシイ印象を放っていたのを今でも思い出します。
ガチャ!と扉を開けて中へ。
・・・。
うおおぉおおお!!!
そこでまず見たものは、陳列された三角フラスコ。ビーカー。怪しげなアングル。
そして、ツーンとした、何ともいえない薬のようなニオイが鼻を刺激してきます。
辺りを見回してみると、蛍光灯に照らされた部屋は、大きさが10畳くらいでしょうか。四方をコンクリートに囲まれていて
窓が一切ありませんでした。
しきりに空気を喚起する
「コォオオオォオオ!!」
という唸るような音が部屋で響いています。
そこはまさに「ダイオキシン分析してまっせ!!」というオーラが放たれていた場所でした。
先輩は慣れた動作で、部屋専用の靴に履き替え、白衣を着て手袋をはめています。
実験用の手袋なんて初めてみるものですから、それを見るだけで妙に気分がソワソワしてきます。
うっかり白衣もなにも持っていなかった私は、見るだけで何も触らなければよい、ということで、
普段着のままで引継ぎを行うことになりました。非礼をお許しください。
さぁ、引継ぎの時間です。まずは抽出の初歩から!
分りやすい説明で、早く自分でやってみたい!と気持ちがはやります。
もちろん、私のHPのような説明ではありませんが(笑)。
先輩の説明がある程度まで終わると、デモンストレーションとして、
抽出する器具にトルエンという有機溶媒を注ぐ作業を見せていただきました。
そこで私は、本当に衝撃をうけましたよ。
このトルエンという溶媒。めちゃくちゃすごいニオイがするのです。
油性マジックのインクのニオイです。このニオイにハマッテしまう人も中にはいて、
こーんな事件になってしまうこともあります。とにかく、凄まじいニオイなのです。しかも有害ですよ。
そんなのを数百ミリリットル。マスクなしで、
どぼどぼ〜〜っと器具へ注いでいる先輩。充満するトルエン臭。私が物凄いニオイのあまりに後退っていると、
「え〜〜〜〜っ。なんか臭う????」
と満面の笑顔。笑ってないで、マスクしろ。
あんまりのニオイだったので、私はマスクを出してもらって着用。それでも臭ってきます。
マスクしないんですか??と聞いてみると、始めはしていたけどもう慣れちゃったーーーっ感じな―い、とのこと。
おいおい、慣れとは恐ろしい。ラリんないでください。確かトルエンも立派な毒物(正式には劇物)だったはずです。
この前処理室で何年も実験していると、こんなになってしまうのでしょうか。。。。
驚いている私を知ってか知らずか、マスクをしている私の前で、凄まじいニオイの中、なおもデモンストレーションを続ける先輩。
「え〜〜〜〜っ。なんか臭う????(ニコニコ)」
ふう。まぁ、この先輩も結構サッパリとした性格の人でしたからねぇ。
こんなのを続けていたら絶対カラダを壊す、とココロからおもった瞬間でした。
しかし、その後、さらに衝撃的なものを見せて頂きました。
抽出予定物質・ダイオキシン実汚染土壌。
それを見せていただいた時の先輩の姿は、忘れもしません。
トルエンの時にはマスクもしなかった先輩が、ダースベーダーみたいなマスクをしながら
「これはコーホーかなりマズイからコーホー 扱いには気をつけてねコーホーコーホー」
・・・
絶対にダイオキシンの分析を一生の仕事にしたくない、と思う一瞬でした。
それと同時に、扱いには気を付けよう、とココロから思いました。
先輩、ダイオキシンの怖さがよーーく分りましたよ!
私はどんな作業をするときでも、マスク着用ですよ!
ダイオキシンを研究なさってる方、ご苦労さまです。
お互い、健康に気をつけてがんばりましょう!
何年後かに癌になったら、研究室を訴えられるのでしょうかねぇ??
本当に分析の仕方を熟知している方には、
やや!?違うのでは…??
と思う方もいらっしゃるかもしれません。
その時にはご教授お願いいたします。
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