2004年11月26日
10月15日、神奈川県内において教育に関わる4団体が、05年度公立高校入学定員に関して、県知事と県教育委員会委員長に対し要請書を提出しました。以下に、その要請書を資料として紹介します。
2004年10月15日
神奈川県知事 松沢 成文 様
教育委員会委員長 平出 彦仁 様
新日本婦人の会神奈川県本部
会長 柳下 靖子
神奈川県教育運動連絡センター
事務局長 加藤 誠
子どもと教育・くらしを守る神奈川県教職員連絡協議会
議長 福田 やよい
横浜市立定時制高校の灯を消さない会
代表 高坂 賢一
05年度高校入試定員に関する要請書
貴職におかれましては、神奈川の教育の充実と発展のために、日ごろから努力されていることに敬意を表します。
私たちは、2月、3月の公立高校入試について緊急措置要求につづいて、9月に公立高校の入試についての要請書を提出してまいりました。10月13日の新聞記事による数値から推計すると、県教育委員会の05年度公立高校定員計画に多くの危惧する問題があると判断し、再度、以下の通り要請いたします。
記
1.全日制高校への進学率(計画進学率)を95%に引き上げること。
@進学希望調査での全日制高校への進学希望率が94%台から93%台に落ちてきたのは、2002年度以降である。それは横浜総合の定時制高倍率と経済状況の悪化から私立を受験できずに私立高校への入学実績が計画を2000人以上下回るようになったのが直接的原因と考えられる。実績として全日制高校への進学率が著しく低下していることは、県教委として対策を講ずべき重要課題である。
A全日制高校への進学希望が高いこと、定時制に進学している子どもたちのなかにも全日制を希望している子どもが多きことは、進路希望と実績の差からも明らかである。県教委は、実績に近づくように計画進学率を下げるのではなく、まず、実績を進路希望の全日制進学率にどう近づけるか真剣に対策を検討すべきである。
B計画進学率を93.8%から93.5%に引き下げることは、公立、私立、県外の全日制高校への進学者数の総枠を約200人縮小することになる。それはそのまま進学率の実績を引き下げることになる。知事が「受験生のことを第一に考え、混乱を避けるルールを作らなければならない」と述べている(04.10.8神奈川新聞)こととも矛盾する。
C現在、心から中卒でおえることを希望する子どもはごく少ない。家庭の事情や健康上の問題などから高校進学を諦める人がほとんどといっていい。21世紀を生きる子どもたちを考えるならば、県教委は子どもたちが将来に希望を抱き、1人でも多く自ら進学希望をだせるように誘導すべきである。
D計画進学率を95%に引き上げると、県教委の計画より約960人の公立、私立、県外の全日制高校への進学者数の総枠を拡大することになる。県の財政的負担の削減を目標に子どもたちの未来を閉ざしてはならない。
2.県内私立高校への入学定員計画が毎年2000人前後満たされない状況がつづいている。県教委はその入学定員計画が達成できるよう必要な措置をとること。
@私学助成を抜本的に見直し、隣接する東京都並の水準に引き上げる。
A高校入学支度金制度を新設し経済困窮家庭の子どもの高校教育を保障する。
B所得格差の拡大・家計悪化の家庭が増えるなかで、教育基本法第3条(教育の機会均等)「すべて国民はひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。」を守って、奨学金制度を拡充する。
C実状にあった具体的対策を関係者・関係機関と協議する。
3.公立高校全日制の定員を04年度比−2,921人とする県教委の定員計画を見直し、「15の春」・義務教育修了者の進路を保障すること。
@公立中学卒業生数の前年度比が−3,894人であるならば、04年度と同じ条件の公立高校進学計画人数の削減数は、3,894×0.935(計画進学率)0.637(公立高校の割合)で、2,319人となる。県教委の計画はそれを542人オーバーする削減であり、02年度、04年度の混乱をくりかえすことが危惧される。
A前述の新聞記事によると、02年の(公私間の)設置者会議で、県教委が05年度公立高校の定員を36,827人とすることを約束したという。その通りとするならば、04年度比4,240人の削減となり、中学卒業生数の減少数を346人上回るばかりか、県教委の計画にあわせて計算する公立高校進学計画人数数(上記の計算)の2,319人を1,921人もオーバーする削減となり、02年度、03年度の混乱どころではない。
4.04年度入試や02年度入試の混乱の最大の犠牲者は子どもたちである。知事や関係者が言うように、「受験生のことを第一に考え、混乱を避けるルールを作らなければならない」。特に05年度入試から学区も撤廃され、入試が全面的に改定され、それだけでも混乱が予想される。そうした事情も考慮して、05年度の定員計画については私立高校の空定員もみこんだ余裕ある公立高校の定員確保をはかること。
5.いま、定時制高校は、学習のつまずき、いじめ、不登校、高校中退などで傷ついた子どもたちの「生きなおし」の場、勤労者はもちろん、外国籍の人たちの学びの場として、重要な役割をはたしている。「定時制の良さ」 ― 少人数学級、小規模学校、安心して通える地域性、異年齢集団を確保するために、定時制の統廃合はおこなわず、学年2〜3学級規模とし、学級規模を35人にもどすこと。
以上