2018年6月10日

 2017年11月13日に、「いのちとくらしと雇用・営業を守る神奈川県市民実行委員会」による対県交渉が行われました。そこで取り上げられ、県に示された2018年度に向けた、主に高校教育にかかわる要求項目(主要項目)を紹介します。「かながわ定時制通信制教育を考える会」や「神奈川高校教職員連絡会」の会員も参加し、県の担当者に要請しました。


Ⅳ、県民が安心して子育てを続け、青少年、成人が豊かな文化・スポーツを享受できる教育・文化・スポーツ行政を求めて


  神奈川の子どもたちをめぐる状況は、07年から減少をつづけてきた公立小中学校の不登校が12年、13年、14年と増加したが、15年度は8,936人(前年比427人減)と減少に転じ、高校途中退学者は2,753人(前年比410人減、在籍生徒の:全日制0.87% 、定時制10.7%、通信制14.4%)と改善が見られました。公立小中高特別支援学校の「いじめ」件数は7,916件(前年比1,437件増)となお深刻で、公立小中高の暴力行為は15年に7,277件(前年比816件増)あり、特に小学校で増加している。教職員が子どもたち一人ひとりに寄り添い、心の通い合う指導を徹底するにも、神奈川県議会でも国会でも全会派一致して求めている35人学級の実現と過労死ラインにある教職員の超多忙化の改善などの条件整備が喫緊の課題となっている。

 全国最低レベルの全日制高校進学率は17年度入試では、ここのところ上がり続けていた全日制進学率が90.7%と0.2%下がった。そして生徒の全日制進学希望率も91.5%と0.9%も下がった。通信制希望者が0.2%増え、未定者が0.7%増えたことは、子どもたちの中に全日制高校進学に夢を描けなくなっている生徒が増加しているという深刻な問題を投げかけている。受験生の状況に何か変化が起きていると考え、実態を分析して手立てをとる必要がある。県が1999年に約束した全日制進学率93.5%(近隣の全日制進学率・埼玉県93.3% 、千葉県94.4%)に引き上げることは子どもたちが希望を描ける神奈川実現の最低限度の責任である。

 ところが黒岩県政は、「県立高校再編計画」を前年度から12か年計画でスタートさせ、県立高校を大規模化するとともに、生徒減以上に20~30校削減し、加えて指定校方式、そして学力テスト等で高校を振り分け、競争を激化させて、安倍政権のすすめる人材づくりの先導役を担おうとしている。
 私たちは、県教委実施の県民意識調査に示される子どもたち・保護者・教職員・県民の願いを実現する立場からここに要求の実現を求める。


1.子どもの権利に関する項目

(1)子どもの権利の実現について
① 教育基本法や学校教育法、学習指導要領、教科書検定基準などの改定により、特定のイデオロギーにもとづき「愛国心教育」や「道徳の教科化」「武道に銃剣道」「マナーキッズ体幹遊び教室による礼法指導」など、教育の国家管理の傾向が強まっている。子どもを主人公に、憲法、子どもの権利条約と教育の条理にもとづく教育を貫くとともに、未来に生きる子どもたちのために十分な予算を確保して、「人格の完成」をめざすゆきとどいた教育を実現すること。

③ 教育課程の編成権は各学校にあることを確認し、各学校の主体性を保障すること。とりわけ、学校行事の内容、実施形態に対して通知や職務命令などによる不当な介入を行なわないこと。

(2)入学式・卒業式について
① 憲法19条「思想・良心の自由」、20条「信教の自由」、21条「表現の自由」に照らして、卒業式・入学式における「日の丸」「君が代」の強制をやめ、「国歌斉唱」時の起立が強制ではない旨の告知を生徒・保護者に対して行うこと。

 昨年までの回答で「児童・生徒に対して、国旗・国歌に対する正しい認識をもたせ、それらを尊重する態度を育てることを目的として指導を行うこととなっております。」とあるが、何をもって「正しい認識」とするのか。その認識とは何かお聞かせいただきたい。また、「保護者につきましては、指導の対象ではございません。」と同じ回答を繰り返されているが、配慮ある対応はなされていない。式の中で起立し、その流れで「国歌斉唱」となり「君が代」を歌わざるを得えなかったということや「配慮のあるアナウンスがなかった」との声があり、「よろしかったらご唱和ください」の呼びかけなど配慮ある対応をすること。


2.国・県の教育行財政に関する要求

(1)全般に関して
 ① 県立高校改革の推進、インクルーシブ教育の推進、小中一貫教育の推進をすすめるにあたって最大の課題はその経費をどう位置付けるかである。
、神奈川の子ども1人当たりの教育予算が全国最低レベルにあることをふまえ、財政縮減を大前提とすることなく、子どもたちや現場実態を調査し、関係者の意見も十分尊重してすすめること。

、教育改革は県民の関心の高い問題でもあり、パブコメにとどめず、少なくとも旧高校18学区程度の県民討論会など広く県民意見を反映する手立てをとること。現在行われているフォーラムなど少人数で数多く計画すること。

、「インクルーシブ教育」の名のもとに、障害を抱える子どもたちを、経費縮減の目的から特別支援学校の整備をせずに、小中の一般学級、高校に誘導するようなことや、学級定数の弾力化、小中一貫校、県立高校大規模化などによる教職員削減など、教育条件の悪化につながるような施策化は絶対にしないこと。

、県予算の「選択と集中」が県、議会ともに強調されているが、県教育予算は類似府県に比較しても十分ではない。いま進められている「小中一貫校」「インクルーシブ教育」の具体化が、教職員人件費、学校運営費などの経費削減優先とならないようにすること。事業には財政支出が当然である。各事業の予算概要も示して県民の理解を得るように提案すること。その費用が他の教育予算の縮減を前提としないこと。

、一部選ばれた子どもたちのための施策とすることなく、すべての子どもたちの全面的発達を保障するように計画し、貧困の世代継承を断つに役立つ政策を推進すること。
 
(2)就学援助について
 ① 就学援助について以下の点を市町村へはたらきかけること。
、就学援助制度をわかりやすく周知させるとともに、だれでも気兼ねなく申請できるように、例えば、川崎のように申請しない家庭もふくめ全家庭が学校に提出する方式や教育委員会や市区町村役所・郵送でも申請できるようにすること。

、神奈川県内の各自治体における生活保護や就学援助等の制度の申請に際し、相談窓口の相談者に対する対応が、相談者の人権を侵害することのないよう周知徹底はかること。

、就学援助の認定基準を上げること。生活保護基準引き下げに連動し、いま、困っている人が就学援助からはずれることのないようにすること。生活保護基準引き下げにより、枠から外れてしまった家庭はどれくらいあるのか。昨年の回答でも、制度を受けられなかった家庭の数を県として把握していないとのことだったが、再度お聞きする。県民の実態を把握することが県としての責務であり、それを公表すること。
  経済格差の拡大から子どもたちの学習権を守る立場から、生活保護基準と同水準になっている市町村に、それを引き上げるよう強く働きかけること。
、就学援助が入学前から受けられるように、認定を早く行うよう市町村へ働きかけること。

、修学旅行や遠足、野外活動などの行事の費用は、高額な上、通常は事前徴収である。それに間に合うように事前支給とすること。また、現地での交通費や食費なども事前に支給し、現地での活動に支障のないように各自治体に働きかけること。

、民生委員の所見についてはどの市町村でも不要にすること。寒川町では申請するときに民生委員の所見が必要と記入されていますが実際には不要になっている。県内の実態を調査して、それが必要と記入されている場合は削除させること。

、年度当初に申請をしないと4月からの認定(支給)が受けられない市町村が多くある。年度内に申請し、4月の在籍が確認されれば5月以降の申請でも4月に遡って認定(支給)を認めるよう働きかけること。

、2010年度から国はクラブ活動費・生徒会費・PTA会費を支給対象項目に入れている。全市町村で支給するように働きかけること。

、申請書は全児童生徒に配布するよう働きかけること。

④ 高等学校等進学者数の割合が97.9%と、高等学校等への進学が実質的に準義務化している現状がある。子どもの貧困化・格差拡大が社会問題化するなかで、小中学生に設けられている就学援助制度を高等学校にも新設する必要があると考える。更に、高校授業料の無償化を復活し、高校まで給付制の奨学金支給について県教育委員会としても何らかの施策をとること。

                                              
(3)県費旅費に関して
① 17年度から旅費の政令市移管が実施されている。旅費支給(支給打ち切りなど)の実態、教職員自己負担、保護者負担、PTA負担などの実態を調査して公表すること。毎年要求しているが実施していない。サンプル調査でもいいから誠意ある態度を示すこと。

② 修学旅行の下見は1名で、芸術鑑賞、社会見学などの引率に学年の教員全員が参加できない、部活動の練習試合引率は私費で、など、本来あってはならない実態が広がっている。これに対する見解を明らかにすること。

③ 政令市以外の旅費予算水準が心配される。前年比大幅な増額になるよう手立てを講ずること。

④ この間、学校旅費の過去10年に渡る増減状況について、学校配当旅費総額と教員一人当たり旅費と残金をそれぞれ明らかにすること。

 
(6)県立高校について
① 県立高校に押し付けている法的根拠のない「観点別評価」「定期試験の共通化」「1単位授業35週分確保」「教科書選定への介入」「卒業式・入学式での国歌斉唱の強制」をやめること。

③ 現業の民間委託25校を見直し、現業職員の採用を再開すること。民間委託方式では学校現場との連携が不十分となり、急を要する校舎の修繕・修理などは、教職員の対応になっており、学校現場での多忙化につながっている。文化祭・体育祭等の学校行事においても現業職員の技術的な指導や援助が必要になっているなど、学校教育における現業職員の業務は教育活動の一貫となる重要なものだと考えるが、県としての見解を明らかにすること。

④ 専門学科教員、実習教員の退職不補充を改め、採用を継続すること。

⑤ 司書の採用数を大幅に増やすとともに、現在臨任司書として勤めている者の採用幅を広げること。

⑥ 学校事務センターを解消し、3人体制の事務職を4~5人に増やすこと。学校現場での人給システムは、現状の多忙な教職員の教育活動に支障となっている。現在の3人の事務室体制においてもいっそうの多忙化を招いている。学校現場での多忙化解消の対策としても、4〜5人の事務室体制に改善すべきである。

⑦ 今年度の「庶務事務システム」の混乱の問題について、その原因と責任を明確にすること。さらに、「知事部局の給与事務センターと学校事務センターの一本化」に伴う「庶務事務システム」の民間委託はどのようなものであるかを明らかにすること。また、県職員の個人情報・プライバシーの保護に支障がないことを明確にすること。

⑧ 公立高校展などを強制せず、学校判断の自主参加に改めること。

⑨ 県として給付制の奨学金制度を創設・拡大する計画があるか明らかにすること。


                                      
3.児童生徒の必要に応じた学校運営をすすめるための教職員の定数改善に関する要求

(1)神奈川県は全国最悪レベルの小中高生の暴力行為がつづき、学級崩壊、不登校、陰湿化するいじめ問題も深刻な実態にある。その解決は緊急にして最重要課題である。
① 神奈川の深刻な校内暴力、不登校などの実態から、それを未然に防ぎ、子どもたちの精神的不安解決や、保護者・教職員の相談にも大きく役立っているスクールカウンセラーと相談員を県独自にも現在の配置数を大幅に増やす特別予算を確保すること。
② 保健室登校の生徒を指導する補助員を配置すること。

(2)現在の保健室は精神面からも子どもたちをささえている。その今日的役割を考慮して、すべての学校に養護教諭を複数配置する県独自措置をとること。県立高校養護教諭複数配置35校実現が臨任での配置の形になっている。今後とも複数配置校の数を増やすとともに、臨任でなく正規職員での配置とするよう努力すること。


4.児童生徒がよりよい学習生活を送るための学級編成についての要求

(1)教職員の多忙化が年々深刻になる中、子どもたちに向き合う時間が不足している。中央教育審議会も少人数学級の緊急性を答申し、政府も8カ年計画で30人・35人学級の実現を明らかにしている。ゆきとどいた教育を実現するため、教職員定数の改善と学級規模の縮小(35人学級~30人学級、定時制25人)を県独自予算で計画的に実現すること。
  教員配置をともなわない神奈川県の「研究指定校方式」による全学年35人学級は、県民からみると神奈川は全学年35人学級が実現しているように受けとるのが普通である。年度進行で教員を配置しての35人学級の学年を増やしていくこと。


8.県立高校再編・条件整備・入試改革・就学保障に関わる要求

(1)「県立高校改革実施計画」では、子どもたちの希望と実態、学校現場の実態を直視し、当該の教職員や生徒・保護者の意見を反映させて高校教育充実を図ること。
① 「県立高校改革実施計画」による県立高校統廃合は見直すこと。これまでの統廃合の結果近くの高校に入れず遠くの高校に通っている生徒が増え、交通費の負担に喘ぐ状況も発生している。地域の生徒にとって必要な地域の高校を維持すること。また、「適正な配置」とは何か。「計画(Ⅰ期)」はどういった基準で統廃合が決まったのか。2010年に相武台高校と新磯高校が統合してできた相模原青陵高校が、今度は弥栄高校と統廃合するという。相模原南部と言っても車で約30分、バスなどでは1時間近くかかるルートであり、近い学校同士とは言えず、やはり杜撰としか言いようがない。相模原青陵高校と弥栄高校の再編統合は即刻辞め、Ⅱ期以降このようなことがないようにすること。

② 統廃合で県立高校を減らす一方で、32の県立高校に1学年9クラス以上の過大校を押し付ける「県立高校改革実施計画」を見直すこと。8~10学級を標準とする計画を改めること。1校に生徒を詰め込むことは教育条件の悪化につながる。

③ 川崎地区・横浜北部地区を中心とする1学年9クラス・10クラス規模校を8クラス募集に引き下げること。また、「県立高校改革実施計画」による、川崎地区・横浜北部地区高校の募集クラス数の想定規模を年次毎に明らかにすること。

④ 1学年9クラス以上の過大校となることで、それまで実施していた多クラス展開(学年のクラス数を募集クラス以上に増やし35人クラスなど少人数クラスを実現)ができなくなった高校がある。こうした高校は何校あるのか、明らかにすること。また、県教育委員会は、これらの高校が多クラス展開という行政上の配慮が必要なくなったと考えているのか、あきらかにすること。また、今後も配慮のない施策を続けて行くつもりなのか、明らかにすること。また、現在も多クラス展開を実施している高校では、今後も多クラス展開を維持すること。

④ 1学年9クラス以上の過大校となることで、それまで実施していた多クラス展開(学年のクラス数を募集クラス以上に増やし35人クラスなど少人数クラスを実現)ができなくなった高校がある。こうした高校は何校あるのか、明らかにすること。また、県教育委員会は、これらの高校が多クラス展開という行政上の配慮が必要なくなったと考えているのか、あきらかにすること。また、今後も配慮のない施策を続けて行くつもりなのか、明らかにすること。また、現在も多クラス展開を実施している高校では、今後も多クラス展開を維持すること。

⑤県立高校改革実施計画」によって普通科単位制に移行する総合学科高校で、総合学科高校で行なって来た多クラス展開を維持できるようにすること。

⑥県立高校改革実施計画」による県教委による各県立高校への「指定」をやめること。教育行政機関が各高校に、一方的に「指定」する特色を押し付けることは、本来各学校が自主的に作り上げる特色や教育目標・教育内容に教育行政が権力的に介入する違法行為である。また、生徒の学力・能力・個性などに合わせるとして特色を「指定」することは、そこに生徒を振り分け差別化することにつながる。高校教育は「リーダー育成」や「グローバル化に対応」する教育に見られるエリート養成や社会貢献など特定目的にそった学力・能力・個性を育てるのではなく、生徒が自ら学び成長し個性を磨くのをサポートする場である。「スーパーサイエンススクール」や「スーパーグローバルスクール」をめざすなど、「指定」を通して高校間に競争を持ち込むことは、公平な教育の機会や予算の配分を損ね、教育の崩壊に道を開くことになる。

⑧ 全日制高校を廃止して昼間定時制をつくる県教委の方針は、全日制高校を希望しても入れずに多くの子どもたちが泣かされている実態を無視した政策であり、県民の理解を得難い。全日制を希望しても入れないから定時制に希望する。夜間定時制よりは昼間定時制を希望するのが実際である。昼間定時制が子どもたちの真のニーズでないことはアンケート調査からも明らかである。昼間定時制増設ではなく全日制高校を削減しないこと。

⑨ 横浜総合高校の弘明寺移転に伴い、横浜東部の夜間普通科定時制高校が手薄になる。定時制高校の全県的適正配置と適正規模化を考えて、横浜東部に県立の夜間定時制を設置すること。

(2)インクルーシブ教育について
① 教育環境の整備、教科指導・教科外指導などを含め、「合理的配慮」を保障したインクルーシブ教育を行なうには、従来の学校教育費に対して10倍の費用がかかるとすでに文科省は指摘している。今後進められる神奈川のインクルーシブ教育へ十分な予算を確保すること。

② 今年度から3校において、インクルーシブ教育がスタートし、学年に7人の教員が加配された。
これは高く評価したい。2学年、3学年まで進行しても学年7人の加配を維持すること。一方、1クラス定員は35名から37名程度である。T−T、少人数、個別指導など多様な指導とのことだが、教育の質を落とさずに普通科教育を実施するには、クラスを20名程度にしてほしい。

③ 入学には障碍者手帳取得は要件ではないということだが、障害で線引きすることは本来のインクルーシブ教育と言えるのだろうか。また、入学後に生徒との面談で目標を決め、達成度で評価をするとのことだが、一般受験生や保護者から反発が予想されるが、どうか。

④ 中高連携枠入学生徒(個別教育計画+個人内評価+観点別評価)と一般受験入学生徒の評価・成績付けにおいて、平等性・公平性はどのように確保されるのか、その論拠を示すこと。

⑤ 高校卒業後の進路を保障するための配慮(インターンシップ)を特別支援学校並みに実施すること。保護者が志願を決断するとき、この点が大きな不安の一つである。

(3)公立高校入学定員枠と中卒者の進路について
 
国連子どもの権利委員会が、『学力的な優秀性と子ども中心の能力形成を結合し、かつ、過度に競争主義的な環境が生み出す否定的な結果を避けることを目的として、大学を含む学校システム全体を見直すこと』を日本政府に勧告している。
  神奈川では、その否定的影響が、不登校、暴力、いじめ、中途退学などと顕著に実体化している。高校入学問題が義務教育全体、子どもたちの人格形成に大きな影響を与えていることを重視して、以下の改善を図ること。

①13年度入試から、「生徒の受入れを拡大することを基本方針とし」、公私立高校が「実現を目指す定員目標を設定する方式」に変更して、全日制高校進学率が一定改善された。しかし、なお1,000人もの子どもたちが全日制高校を希望しながら進学できず、定時制や通信制に不本意入学させられている現状は早急に改善しなければならない。県民の子弟の教育に責任を負う県政として、毎年、県内公立、県外公立、県内私立、県外私立を含む計画進学率を県民に示し、その達成のために具体的施策を検討すること。

②知事が主宰する公私立高等学校設置者会議は12年を経過して、当初県民に約束した進学率の目標からは大きく後退し、機能不全状態から脱出の道を模索する事態を引き起こした。子どもたちを蔑にした公私の談合の場とまで批判されている。この体制を解体し、現在オブザーバー参加とされている、現場を一番よく知っている中・高教員代表、PTA代表を中心メンバーとし、高校生、中学生の意見表明も保障する組織に再編すること。

③全日制高校計画進学率を、1999年度策定の「県立高校改革推進計画」で掲げた最低目標値の93.5%とし、公立全日制高校の定員を増やすとともに、私学学費補助を大幅に増額して学費の公私間格差を是正し、希望する子どもたちが私学を選べるように条件を整備し、全国最低レベルの全日制高校進学率(17年度入試は90.7%)の大幅改善を図ること。

④ その年度の高校募集定員計画にその年度の中学校の進路希望調査を活用できるように、その調査を5月と現行10月の2回実施すること。

⑤ 様々な問題を抱えている生徒が多く入学する定時制高校の学級定員を早急に現行35人から30人に縮小させるとともに、25人定員をめざすこと。さらに、夜間定時制については単学年原則(3学科ある工業高校などを除き)2学級の学校適正規模化をすすめ、定時制を希望する子どもたちのニーズに応える教育を保障する環境を整えること。

⑤ 様々な問題を抱えている生徒が多く入学する定時制高校の学級定員を早急に現行35人から30人に縮小させるとともに、25人定員をめざすこと。さらに、夜間定時制については単学年原則(3学科ある工業高校などを除き)2学級の学校適正規模化をすすめ、定時制を希望する子どもたちのニーズに応える教育を保障する環境を整えること。

⑥義務教育修了者が自らの進路を決めて、希望をもって門出できるように行政が条件整備に責任を果たすべきである。毎年数百人の子どもたちが進学も就職も決まらないまま中学を卒業している。さらに、高校1年生の中退者(14年度)も全日制437人、定時制507人、通信制624人と、1,567人を数える。その多くは、16、17歳でドロップアウトしていると心配される。貧困の世代継承を断つ政策の観点からもこの問題を重視して、その後の子どもたちの生活実態を追跡調査し、それらの子どもたちを生みださない対策を明らかにすること。


(4)高校入試について
③ 昨年も指摘したがアンケート結果に見る学区自由化の肯定的意見は、合格者の意見であり、不合格者も含めた受験者・保護者の意見ではないことも考慮し、その弊害も分析すべきである。そういった人たちも含めたアンケートを実施すること。また昨年の回答で「各高校の特色などについて主体的に調べる、学校説明会に積極的に参加するなど、生徒・保護者の県立高校の進学に対する意欲が高まったという回答も7割を超えております。」とあるが、全県1学区になったことで、中学の進路指導で情報が得られないとの声があり、自ら調べざるを得ない状況の反映でもあり、負担になっている家庭もある。

 子どもたちは徒歩や自転車で通える学校に行きたくても学力的に遠くの学校を選ばざるを得ない等の問題がおきている。交通費の負担や部活動によっては早朝の登校や遅い帰宅になるなど、親は費用の面や犯罪などに巻き込まれないか、さらに東日本大震災のような大災害があった場合などの心配もある。子は親への負担を心配してアルバイトをするなどの弊害が起こっている。全県一学区制によって高額になる交通費に対する補助制度を創設すること。以前の中学区制でも学区外の行きたい学校に通うことはできたことから、全県一学区制をやめること。

⑤ 全員面接は、自己肯定感を抑えて「望まれる人間像」への人間改造が迫られることが心配され、子どもたちに道徳主義を押し付ける危険性がある。また、内気な子や不登校の子などにとっては人前で表現すること自体が精神的プレッシャーになるなど子どもの負担が大きい。面接官の高校教諭の負担も大きく、先生方から面接で差をつけられないので意味がないという声もある。面接の一律実施をやめること。

⑨ 定時制高校の入学試験を全日制高校と同様に1回にすること。これによって入試期間の
短縮ができる。現在は、2次募集の入学試験の合格発表日は3月28日となり、新年度の時間割や持ち時間が決まるのは4月中旬となっている。また、全日制高校不合格者の入学試験の再度の機会は、各定時制高校の2次募集で十分である。


(5)定時制高校の充実について
① 経済格差の拡大・貧困化の拡大を考慮し、定時制高校の給食費や教科書代を自己負担させないこと。

② 夜間定時制給食は、経済困難が深刻化する中で、若者の健康と体力維持増進、食育の観点からもますます重要になっている。給食制度の維持はもとより、衛生基準や現場・生徒のニーズに合った施設設備と給食内容の充実を図ること。

③ 全日制・定時制併置校においての県費予算不足はより深刻である。全日制単独校と変わらない図書費の配当を増額するなど、教育活動に見合った予算とするよう、ただちに改善を図ること。

④ 夜間定時制においては、不登校、障がい(身体、知的)、病弱、家庭の経済困難、複雑な家庭事情、日本語に不自由、日本社会に不慣れなどの配慮を必要とする生徒は年々増加している。取り出し・TT授業や複数担任制の導入のために、クリエイティブスクールやインクルーシブスクールと同様に教員の加配を行うこと。

⑤ 夜間定時制は、全日制に比べて臨任や非常勤の比率が高い。夜間定時制の生徒の状況を踏まえ、専任の教員の配置を増やすこと。

⑥ 生徒がいる時間帯であっても、専任の事務職員が配置できていない状況を改善するため、東京や埼玉では置かれている夜間定時制専任の事務職員を配置すること。また、定時制専任の現業職員や司書を配置すること。

⑦ 様々な配慮を必要とする生徒が多い現状をふまえ、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置の充実を図ること。

(6)修悠館通信制高校の学習環境充実について
① 不登校が1万人近い実態がつづいている。義務教育を修了して模索するなかで高校教育に移る高校1年生は、自分を主体的にとりもどすチャンスである。修悠館高校に対する期待も高い。その子たちの条件に合わせて、寄り添う指導がもとめられている。そのためには法定数にとらわれることなく、「毎日通える」という条件に合せて教員数を増員して、遅れを取り戻して成長できる条件を整備すること。昨年の回答の「登校し活動する生徒数を参考にし、配当・・・」は何人か。常勤者か、非常勤者か。「キャリア支援の定数加配」は何人か。常勤者か、非常勤者か。

② 毎年一校で数百人の除籍者・退学者の実態は県民保護者に大きなショックをあたえた。この原因をどのように分析しているか。また、これを改善するためにどのような施策を講じたか明らかにすること。

③ 修悠館高校の2017年度の志願者、合格者、入学者、タイプごと履修状況、履修届を提出しない生徒数、退学者数(16年度)を示し、その理由も明らかにすること。
④ 「残す」との県民に約束をし、施設も残っている湘南高校、平沼高校の通信制課程を、不登校生徒のニーズに多面的にこたえる施策として、小規模通信制として再開すること。

(7)高校生の就学保障・経済的支援について
① 学費の公私格差を縮小するとともに、学費補助制度の大幅な拡充・増額を図ること。公私立高校への入学に「入学支度金制度」を新設すること。 

② 経済困難家庭の増加に合わせて、返還不要の給付型奨学金について、その給付条件を緩和して多くの家庭で利用できるよう拡充すること。貸与型の奨学金についても、奨学金受給者が一定の収入額を得るようになるまでは返還猶予する制度を拡充すること。奨学金制度について広報活動を促進すること。

③ 大学・短大・専門学校に進学を希望し合格しながらも経済的な理由で進学をあきらめる高校生が増えている。県として入学時納入する支援金制度を検討すること。また、国に対して支援制度をもとめること。


以下、省略

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