2017年1月21日

 2016年11月15日に、「いのちとくらしと雇用・営業を守る神奈川県市民実行委員会」による対県交渉が産業貿易センターで行われました。そこで取り上げられ、県に示された2017年度にむけた高校教育にかかわる要求項目を紹介します。

 
 
神奈川の子どもたちをめぐる状況は、07年から減少をつづけてきた公立小中学校の不登校が12年、13年、14年と増加し、9,363人(前年比365人増)、高校途中退学者は3,163人(在籍生徒の2.2%=全日制0.95% 、定時制12.6%、通信制14.6%)、公立小中高特別支援学校の年々増加していた「いじめ」件数は12年、13年、14年と若干減少しているが6,479件(前年比340件減)となお深刻、公立小中高の暴力行為は14年に6,461件(前年比929件減)と減少傾向にあるが、小学校は13年まで年々増加していた。神奈川県議会でも国会でも全会派一致して求めている35人学級の実現と過労死ラインにある教職員の超多忙化の改善などの条件整備が喫緊の課題である。 

 全国最低レベルの全日制高校進学率は16年度入試では0.7%上がって90.9%となったが、生徒の希望率92.4%には程遠く1,000人以上が全日制高校を断念させられている。近隣の埼玉県93.3% 、千葉県94.4%(いずれも14年)並みに引き上げることは子どもたちが希望を描ける神奈川実現の最低限度の責任である。

 ところが黒岩県政は、「県立高校再編計画」を今年度から12か年計画でスタートさせ県立高校を大規模化して20〜30校削減し、指定校方式、学力やテストで高校を振り分け、競争させ、子どもたちの願いを踏みにじって安倍政権のすすめる人材づくりの先導役を担おうとしている。
 私たちは、県教委実施の県民意識調査に示される子どもたち・保護者・教職員・県民の願いを実現する立場からここに要求の実現を求める。


W、県民が安心して子育てを続け、青少年、成人が豊かな文化・スポーツを享受できる教育・文化・スポーツ行政を求めて

1.子どもの権利に関する項目
(1)子どもの権利の実現について

@ 教育基本法や学校教育法、学習指導要領、教科書検定基準などの改定により、特定のイデオロギーにもとづき「愛国心」や「道徳」のおしつけ、教育の国家管理の傾向が強まっている。子どもを主人公に、憲法、子どもの権利条約と教育の条理にもとづく教育を貫くとともに、未来に生きる子どもたちのために十分な予算を確保して、「人格の完成」をめざすゆきとどいた教育を実現すること。

A 県立津久井やまゆり園での事件に関わって
 県立津久井やまゆり園での凄惨な事件が起こり、事件の背景などについての調査が続いている。容疑者の生育環境・生来の気質・精神の状態など、様々な角度から検討がなされなければならないが、検討の角度の1つに、ヘイトクライム・障害者差別主義など近年のヘイトスピーチやヘイトデモなど拝外主義的な差別主義につながる問題がある。また、ヘイトクライム・障害者差別主義は、2チャンネルやSNSなどのネット上の乱暴な言動によって醸成されている可能性が強い。現在、スマホ・携帯電話・SNSなどのもんだいについて、小中高校では、「総合的学習」などの中で児童・生徒の学習が行われているが、ヘイトクライム・ヘイトスピーチ・排外主義・障害者差別などについての学習はあまり組織されていない。今後は、こういった問題についての学習も必要になるってくると考えられるが、見解を伺いたい。

B 教育課程の編成権は各学校にあることを確認し、各学校の主体性を保障すること。とりわけ、学校行事の内容、実施形態に対して通知や職務命令などによる不当な介入を行わないこと。


(2)入学式・卒業式について
@ 憲法19条「思想・良心の自由」、20条「信教の自由」、21条「表現の自由」に照らして、卒業式・入学式における「日の丸」「君が代」の強制をやめ、「国歌斉唱」時の起立が強制ではない旨の告知を生徒・保護者に対して行うこと。また、昨年までの回答で「児童・生徒に対して、国旗・国歌に対する正しい認識をもたせ、それらを尊貴する態度を育てることを目的として指導を行うこととなっております。」とあるが、何をもって「正しい認識」とするのか。その認識とは何か、お聞かせ願いたい。
 
 また、「保護者につきましては、指導の対象ではございません。」と同じ回答を繰り返されているが、配慮ある対心はなされていない。式の中で起立し、その流れで「国家斉唱」となり「君が代」を歌わざるを得えなかったということや「配慮のあるアナウンスがなかった」との声があり、「よろしかったらご唱和ください」の呼びかけなど配慮ある対応をすること。



2.国・県の教育行財政に関する要求
(1)全般について
@ 「神奈川の教育を考える調査会」の「最終まとめ」が県立高校改革の推進、インクルーシブ教育の推進、小中一貫教育の推進と具体化されようとしている。これをすすめるにあたって最大の課題はその経費をどう位置付けるかである。
 年々教育予算を縮減し、この10年間で県の教育予算の一般予算に占める割合は6,069億円/14.658億円=41.4%から5,806/18,650=31.1%と大幅に落ち込んでいる。これが条件整備の立ち遅れの最大の原因であり、神奈川の学校教育の種々の困難の根本原凶となっている。教育は「同家百年の計」「米百俵」の精神で、教育予算を大幅に増額し、子どもたちに夢と希望を与える教育を創造すべきである。先ず条件整備を充実し、学校・教職員の自主性を高め、活力を引き出せば、今横たわる大方の難題は必ず解決できる。それだけの覚悟を決めて改革に当たるべきである。

ア、神奈川の子ども1人当たりの教育予算が全国最低レベルにあることをふまえ、財政縮減を大前提とすることなく、子どもたちや現場実態を調査し、関係者の意見も十分尊重してすすめること。

イ、県民の関心の高い問題でもあり、パブコメにとどめず、少なくとも旧高校18学区程度の県民討論会など広く県民意見を反映する手立てをとること。現在行われているフォーラムなどの問題点を深める意見交換になるように少人数で数多く計画すること。

ウ、「最終まとめ」に見るような、「インクルーシブ教育」の名のもとに、障害を抱える子どもたちを、経費縮減の目的から特別支援学校の整備をせずに、小中の一般学級、高校に誘導するようなことや、学級定数の弾力化、小中一貫校、県立高校大規模化などによる教職員削減など、教育条件の悪化につながるような施策化は絶対にしないこと。.

エ、「最終まとめ」にある「小中一貫校」「インクルーシブ教育」の具体化が、7 月に「検討会」を設置しで急がれているが、教職員、保護者はじめ県民の意見を十分反映させること。また、広く県民が傍聴・参加できるように、会議、シンポジウムなど開催日時の発表を3 週間以上前とすること。

オ、県予算の「選択と集中」が県、議会ともに強調されているが、県教育予算は類似府県に比較しても十分ではない。「最終まとめ」にある「小中一貫校」「インクルーシブ教育」の具体化が、教職員人件費、学校運営費などの経費削減優先とならないようにすること。事業には財政支出が当然である。各事業の予算概要も示して県民の理解を得るように提案すること。その費用が他の教育予算の縮減を前提としないこと。

オ、一部選ばれた子どもたちのための施策とすることなく、すべての子どもたちの全面的発達を保障するように計画し、貧困の世代継承を断つに役立つ政策を推進すること。

A 新学習指導要領の教科時数増や内容増の実施については、教員の配置をはじめ、教材などの整備のための予算を十分に措置すること。また、各学校の実態に応じて学校の自主的裁量を尊重すること。


(2)就学援助・経済支援について
@ 就学援助について以下の点を市町村へはたらきかけること。
ア、就学援助制度をわかりやすく周知させるとともに、だれでも気兼ねなく申請できるよう、学校とともに教育委員会や市区町村役所でも、また郵送でも申請できるようにすること。

イ、神奈川県内の各自治体における生活保護や就学援助等の制度の申請に際し、相談窓口の相談者に対する対応が、相談者の人権を侵害することのないよう周知徹底はかること。

ウ、就学援助の認定基準を上げること。生活保護基準引き下げに連動し、いま、困っている人が就学援助からはずれることのないようにすること。生活保護基準引き下げにより、枠から外れてしまった家庭はどれくらいあるのか。昨年の回答でも、制度を受けられなかった家庭の数を県として把握していないとのことだったが、再度お聞きする。県民の実態を把握することが県としての責務であり、それを公表すること。
  経済格差の拡大から子どもたちの学習権を守る立場から、生活保護基準と同水準になっている市町村に、それを引き上げるよう強く働きかけること。

エ、就学援助が入学時から受けられるように、認定を早く行うよう市町村へ働きかけること。

オ、修学旅行や遠足、野外活動などの行事の費用は、高額な上、通常は事前徴収である。それに間に合うように事前支給とすること。また、現地での交通費や食費なども事前に支給し、現地での活動に支障のないように各自治体に働きかけること。

カ、民生委員の所見についてはどの市町村でも不要にすること。寒川町では申請するときに民生委員の所見が必要と記入されていますが実際には不要になっている。県内の実態を調査して、それが必要と記入されている場合は削除させること。

キ、年度当初に申請をしないと4月からの認定(支給)が受けられない市町村が多くある。年度内に申請し、4月の在籍が確認されれば5月以降の申請でも4月に遡って認定(支給)を認めるよう働きかけること。

ク、2010年度から国はクラブ活動費・生徒会費・PTA会費を支給対象項目に入れている。全市町村で支給するように働きかけること。

ケ、申請書は全児童生徒に配布するよう働きかけること。

C 高等学校等進学者数の割合が97.9%と、高等学校等への進学が実質的に準義務化している現状がある。子どもの貧困化・格差拡大が社会問題化するなかで、小中学生に設けられている就学援助制度を高等学校にも新設する必要があると考える。更に、高校授業料の無償化を復活し、高校・大学まで給付制の奨学金支給について県教委区委員会としても、国に要求するとともに何らかの施策ををとること。


(3)県費旅費について
@ 来年度から旅費の政令市移管が実施され、今年度が政令市を含む旅費問題の最後となる。旅費支給(支給打ち切りなど)の実態、教職員自己負担、保護者負担、PTA負担などの実態を調査して公表すること。毎年要求しているが実施していない。サンプル調査でもいいから誠意ある態度を示すこと。

A 修学旅行の下見は1名で、芸術鑑賞、社会見学などの引率に学年の教員全員が参加できない、部活動の練習試合引率は私費で、など、本来あってはならない実態が広がっている。これに対する見解を明らかにすること。

B 政令市以外の旅費予算水準が心配される。前年比大幅な増額になるよう手立てを講ずること。

C この間、学校旅費の過去10年に渡る増減状況について、学校配当旅費総額と教員一人当たり旅費と残金をそれぞれ明らかにすること。


(5)安全・防災対策について
 ア、緊急地震速報を校内放送に連動し、それに対応して行動することを避難訓練として位置づけている学校が県内にあるという。県立高校に、緊急地震速報に連動した校内放送システムを設置する計画はあるのか、ないとすればその理由を明らかにすること。

イ、県立高校に、地震津波の避難所に指定されている学校はいくつあるのか、校名を明らかにすること。また、指定されていない学校に住民が避難してきたとき、当該の高校にどのように対応させることにするのか、明らかにすること。避難所として活用するとしたら、住民用の食料・水・備品、マンホール型トイレなどの準備が必要と考えるが、現在そのような準備はされていない。今後の計画を明らかにすること。


(6)県立高校について
@ 県立高校に押し付けている法的根拠のない「観点別評価」「定期試験の共通化」「1単位授業1750分確保」「教科書選定への介入」「卒業式・入学式での国歌斉唱の強制」をやめること。

A まなびや計画をいち早く完成させること。また、まなびや計画終了後の、県立高校の耐震化工事計画を明らかにすること。まなびや計画終了後も、県立高校校舎の30%に耐震工事が必要となっていることは周知の通りである。築40年を過ぎて壁がはがれ落ちる危険校舎もある。また、トイレの洋式化を早急に進めること。家庭トイレの洋式化にともない学校トイレの洋式化を進める必要との声も上がっている。昨年の回答で「(耐震化・老朽化対策、トイレの改修等)現時点でお示しできる段階に至ってはおりません」とあったが、命にかかわる問題でもあり、早急に検討内容を公表すること。全国最下位の耐震化工事及び老朽化対策(改築、修繕)を完全解消するまでの実施計画を策定すること。

B 冷房機器を県立高校の図書準備室・技能員室・体育科準備室・芸術科家庭科以外の特別教室・視聴覚室・教科準備室などすべての部屋に設置は「対象外となっており、今後の課題」とのことだったが、その後、どうなったか。進展がない場合は検討し、設置すること。

C 現業の民間委託25校をやめ、現業職員の採用を再開すること。

D専門学科教員、実習教員の退職不補充を改め、採用を継続すること。

E事務センターを解消し、3人体制の事務職を4〜5人に増やすこと。


(7)県として以下の点を国へ要望すること
@ 日本の教育予算は異常に低い。GDP比教育予算は、OECD平均が4.9%にたいして、 日本は3.3%である。欧米並みにすると日本の教育予算は約7兆円増にもなる。教育予算を少なくともOECD平均まで増額し、日本の教育条件を抜本的に改善すること。

A 教職員の多忙化が年々深刻になる中、子どもたちに向き合う職員の時間が不足している。中央教育審議会から少人数学級の緊急性が答申され、政府が小1から中3まで35人学級制とし、さらに小1小2は30人学級制とする8カ年計画をもつという新たな段階を迎えている。神奈川県議会でも全会派一致で35人学級の推進が決議された。ゆきとどいた教育を実現するために、計画を前倒しして実施に踏み切るとともに、高等学校の全日制35人、定時制30人の学級定員制を実現し、生徒が安心して学習できる教職員定数改善を図ること。

B 新たな教職員定数改善計画を策定実施すること。

C 特別支援学校の設置基準を設けること。差別ともいえる特別支援学校の遅れた教育条件の根底にある重大事項である。

D 年々増加する外国籍児童生徒の学習権保障に国が責任を持って条件整備をすすめること。外国籍児童生徒の日本語教室の増設と充実を図るとともに、日本語教育の教員を増員すること。

E 義務教育費国庫負担制度を維持、拡充し、国の負担率を2分の1に復活すること。

F 教員不足解消のため、大学・大学院の教職課程の定員を増やすこと。

G 学校事務職員・栄養職員の給与国庫負担制度を堅持すること。

H 教材費・旅費の国庫負担制度復活を図ること。
I 子どもたちの精神的不安解決や、保護者・教職員の相談にも大きく役立っているスクールカウンセラーと相談員を全学校に配置すること。

J すべての学校に養護教諭を複数配置すること。

K 就学前教育の無償化を図ること。

L 所得制限なしの高校授業料無償を復活すること。
 

8.県立高校再編・入試改革に関わる要求

(1)「県立高校改革実施計画」では、子どもたちの希望と実態、学校現場の実態を直視し、当該の教職員や生徒・保護者の意見を反映させて高校教育充実を図ること。
@ 「県立高校改革実施計画」による県立高校統廃合をやめること。これまでの統廃合の結果、近くの高校に入れず遠くの高校に通っている生徒が増え、交通費の負担に喘ぐ状況も発生している。地域の生徒にとって必要な地域の高校を維持すること。また、「適正な配置」とは何か。「計画(T期)」はどういった基準で統廃合が決まったのか。2010年に相武台高校と新磯高校が統合してできた青陵高校が、弥栄高校と統廃合とは余りに杜撰ではないか。理由を明らかにすること。

A 「県立高校改革実施計画」による県教委による各県立高校への「指定」をやめること。県立高校は、入試によって振り分けられた高校生の要求に応じ、高校毎の特色ある教育を行なうべきであり、高校生の能力や個性の高低に合わせるとして教育行政機関が各高校に「指定」した特色に合わせて県民の子弟を振り分けることは、高校生を差別的に取り扱うことであり、教育行政機関がしてはならないことである。

B全日制高校を廃止して昼間定時制をつくる県教委の方針は、全日制高校を希望しても入れずに多くの子どもたちが泣かされている実態を無視した政策であり、県民の理解を得難い。全日制を希望しても入れないから定時制に希望する。夜間定時制よりは昼間定時制を希望する。昼間定時制が子どもたちの真のニーズでないことはアンケート調査からも明らかである。昼間定時制ではなく全日制高校を増設すること。

C 川崎地区・横浜北部地区を中心とする1学年9クラス・10クラス規模校を8クラス募集に引き下げること。また、「県立高校改革実施計画」による、川崎地区・横浜北部地区高校の募集クラス数の想定規模を年次毎に明らかにすること。

D 横浜総合高校の弘明寺移転に伴い、横浜東部の夜間普通科定時制高校が手薄になる。定時制高校の全県的適正配置と適正規模化を考えて、横浜東部に県立の夜間定時制を設置すること。

E 県が計画している障害がある入学生徒を各クラスに3人ずつ配置するというインクルーシブスクール計画は重大な矛盾をはらんでいる。
ア、現在、県立高校は、入学選抜をへた生徒が学ぶ場となっており、異なる選抜基準によって入学した生徒を、同一の校内基準で教育するには困難が予想される。また、入学生によって異なった校内基準を適用することは、生徒が履修修得した単位に応じて進級・卒業を認定するシステムをとっている高校において、生徒間に不平等感を生じさせ、生徒の高校生活に混乱を引き起こす心配がある。県教育委員会は、今回のインクルーシブスクール開設にあたり、以上述べた現在の高校制度とその運用とインクルーシブスクール制度と運用の関係をどのように整合させようとしているのか。

 イ、定時制には家庭環境、経済条件、人間関係、不登校、言語など様々なハンディを負った生徒が入学し、毎年その内容も変化している。ある夜間定時制では知的障がいを持った生徒(手帳を所持)2名を受け入れているが、所属するクラスは15人学級。授業は、芸術科目と体育はクラス単位の授業で一緒におこなっているが、それ以外の科目については、2人に対して一人の授業担当者を配置して取り出し授業を行っている。また、定期的にケース会議を開催し、それには近隣の養護学校からの担当者が参加してアドバイスを受けており、進路指導(就職)に関しても全面的な支援を受けている。インクルーシブ教育にはこのような条件の整備が是非とも必要と考えるが、これについて県はどのように考えるか。

 ウ、インクルーシブ教育実践推進校については、障害のある一人ひとりの生徒の発達を最大限保障するために、少人数学級、15人程度の少人数授業、複数担任制、ティームティーチング、子どもの実態に合わせた授業選択や取り出し授業等、合理的配慮が行えるよう、学年20名の障害のある子を受け入れるにふさわしい教員配置など含めた教育条件整備を行うこと。

エ、教育課程の編成や単位認定基準等の運用について混乱を来さないよう、校内で十分議論をし、共通理解と合意を図るとともに、入試基準や単位認定基準、条件整備などの具体的内容・計画について少なくとも校内はもちろん、すべての高校、中学校、保護者、県民の共通理解と合意を得て実施すること。一般受験生・保護者等から逆差別ではないかなどの批判も十分に予想される。

オ、校長推薦の要件は何か。障碍者手帳取得も要件か。入学後はついていけない教科科目でも受けないといけないのか。高校卒業後の進路を保障するための配慮(インターンシップ)がされるのか

 カ、「平成29年度神奈川県公立高等学校入学者選抜募集案内」には、「連携募集とは?」の説明の欄に最後の2行「知的障がいのある人が連携型中学校長からの推薦の対象」と書いてあるだけである。校長推薦の基準は何か。多数の希望があった場合どのように選考するのか。これまでは、クリエイティブスクールなど入試基準が異なる場合は新制度として県民に広く明らかにして導入された。今回のインクルーシブ教育実践推進校については、高校、中学校、保護者、県民の共通理解と合意がないまま選考準備や条件整備がすすめられ、来年度から新入生が入学する。なぜそれほどまでして拙速な実施が必要なのか。もっと県民に開かれた慎重な検討が必要ではないか。

F 「課題集中校」を中心に実施されてきた募集クラス数を越える6クラス募集8展開などの少人数学級や少人数授業を今後とも保障すること。人的にも、施設面でも。

(2)公立高校入学定員枠と中卒者の進路について
  国連子どもの権利委員会が、『学力的な優秀性と子ども中心の能力形成を結合し、かつ、過度に競争主義的な環境が生み出す否定的な結果を避けることを目的として、大学を含む学校システム全体を見直すこと』を日本政府に勧告している。
  神奈川では、その否定的影響が、不登校、暴力、いじめ、中途退学などと顕著に実体化している。高校入学問題が義務教育全体、子どもたちの人格形成に大きな影響を与えていることを重視して、以下の改善を図ること。

@ 13年度入試から、「生徒の受入れを拡大することを基本方針とし」、公私立高校が「実現を目指す定員目標を設定する方式」に変更して、全日制高校進学率が一定改善された。しかし、なお2,000人もの子どもたちが全日制高校を希望しながら進学できず、定時制や通信制に不本意入学させられている現状は早急に改善しなければならない。県民の子弟の教育に責任を負う県政として、県内公立、県外公立、県内私立、県外私立を含む計画進学率を県民に示し、その達成のために具体的施策を検討すること。

A 知事が主宰する公私立高等学校設置者会議は10年を経過して、当初県民に約束した目標と逆の結果を生みだし、機能不全状態から脱出の道を模索する事態にある。子どもたちを蔑にした公私の談合の場とまで批判されている。この体制を解体し、現在オブザーバー参加とされている、現場を一番よく知っている中・高教員代表、PTA代表を中心メンバーとし、高校生、中学生の意見表明も保障する組織に再編すること。

B 全日制高校計画進学率を、1999年度策定の「県立高校改革推進計画」で掲げた最低目標値の93.5%とし、公立全日制高校の定員を増やすとともに、私学学費補助を大幅に増額して学費の公私間格差を是正し、希望する子どもたちが私学を選べるように条件を整備し、全国最低レベルの全日制高校進学率(16年度入試は90.9%)の大幅改善を図ること。

C その年度の高校募集定員計画にその年度の中学校の進路希望調査を活用できるように、その調査を5月と現行10月の2回実施すること。

D 様々な問題を抱えている生徒が多く入学する定時制高校の学級定員を早急に現行35人から30人に縮小させるとともに、25人定員をめざすこと。さらに、夜間定時制については単学年原則(3学科ある工業高校などを除き)2学級の学校適正規模化をすすめ、定時制を希望する子どもたちのニーズに応える教育を保障する環境を整えること。

E 義務教育修了者が自らの進路を決めて、希望をもって門出できるように行政が条件整備に責任を果たすべきである。毎年数百人の子どもたちが進学も就職も決まらないまま中学を卒業している。さらに、高校1年生の中退者(14年度)も全日制437人、定時制507人、通信制624人と、1,567人を数える。その多くは、16、17歳でドロップアウトしていると心配される。貧困の世代継承を断つ政策の観点からもこの問題を重視して、その後の子どもたちの生活実態を追跡調査し、それらの子どもたちを生みださない対策を明らかにすること。


(3)高校入試について
@ 入学試験問題が難しくなる傾向にある。差をつける学力競争ではなく、それぞれの高校で学習するに足る学力をみる問題とし、子どもたちへの心理的、肉体的過重負担を解消し、義務教育の競争主義教育の弊害を排除すること。

A 旧学区外進学者数は増から減に転じている。地域づくりの観点からも学区問題を重視し、全県一学区制から当面、以前の中学区制にもどし、希望する子どもたちが安心して近くの高校に進学できるように改革すること。
  昨年も指摘したがアンケート結果に見る学区自由化の肯定的意見は、合格者の意見であり、不合格者も含めた受験者・保護者の意見ではないことも考慮し、その弊害も分析すべきである。子どもたちは徒歩や自転車で通える学校に行きたくても学力的に遠くの学校を選ばざるを得ない等の問題がおきている。交通費の負担や部活動によっては早朝の登校や遅い帰宅になるなど、親は費用の面や犯罪などに巻き込まれないか、さらに東日本大震災のような大災害があった場合などの心配も。子は親への負担を心配してアルバイトをするなどの弊害が起こっている。全県一学区制によって高額になる交通費に対する補助制度を創設すること。以前の中学区制でも学区外の行きたい学校に通うことはできたことから、全県一学区制をやめること。

B 新入試制度は、調査書、学力検査、面接などの重点化比率を最大3倍まで各高校で決められ、教科毎重点化比率も最大2倍まで各高校で決めることができる。子どもたちから見ると重点の置き方が高校毎に異なる複雑な入試となっている。もっと単純化してわかりやすい制度にすること。それは各学校に多様な生徒が集まり、相互に創造的な活動を高め合う力ともなる。

C 全員面接は、自己肯定感を抑えて「望まれる人間像」への人間改造が迫られることが心配され、子どもたちに道徳主義を押し付ける危険性がある。また、内気な子や不登校の子などにとっては人前で表現すること自体が精神的プレッシャーになるなど子どもの負担が大きい。面接官の高校教諭の負担も大きく、先生方から面接で差をつけられないので意味がないという声もある。面接の一律実施をやめること。

D 現行の「定通分割選抜」は夜間定時制と通信制を、初めから全日制や昼間及び多部制定時制などの「受け皿」とする差別的な入試制度である。また、夜間定時制専願の子どもたちには不利となる(80%枠のために不合格となり、「定通分割選抜」では全日制を不合格となった子どもたちが殺到するため入試が厳しくなる)「定通分割選抜」を廃止し、「共通選抜」で100%募集するように改めること。「共通選抜」不合格者に対しては、この2年間の夜間定時制及び通信制の出願者数を考慮するならば二次募集で可能であり、定員が十分に準備されていれば問題はない。入試期間の縮減にも役立つ。
定時制2次募集の入学試験の合格発表日は3月28日となり、新年度の時間割や持ち時間が決まるのは4月中旬となっている問題の解決にもなる。


(4)定時制高校の充実について
@ 経済格差の拡大・貧困化の拡大を考慮し、定時制高校の給食費や教科書代を自己負担させないこと。

A 夜間定時制給食は、経済困難が深刻化する中で、若者の健康と体力維持増進、食育の観点からもますます重要になっている。給食制度の維持はもとより、衛生基準や現場・生徒のニーズに合った施設設備と給食内容の充実を図ること。

B 定時制の在籍生徒数の急増にともない、全日制・定時制併置校においての県費予算不足はより深刻である。全日制単独校と変わらない図書費20万円をはじめ、生徒数の増加に見合った予算とするよう、ただちに改善を図ること。

C 夜間定時制においては、この10年間に入学生徒数が2倍に増加する一方で、教職員定数はほぼ同じという状態が続き、教員一人あたりの生徒数が全日制を大きく上回る学校も現れている。不登校、病弱、外国籍など配慮を必要とする生徒が多い現状をふまえ、定時制の教員定数の改善を図ること。

D 夜間定時制は、全日制に比べて臨任や非常勤の比率が高い。夜間定時制の生徒の状況を踏まえ、専任の教員の配置を増やすこと

E 生徒がいる時間帯であっても、専任の事務職員が配置できていない状況を改善するため、東京や埼玉では置かれている夜間定時制専任の事務職員を配置すること。また、定時制専任の現業職員や司書を配置すること。

@ 不登校が1万人近い実態がつづいている。義務教育を修了して模索するなかで高校教育に移る高校1年生は、自分を主体的にとりもどすチャンスである。修悠館高校に対する期待も高い。その子たちの条件に合わせて、寄り添う指導がもとめられる。そのためには法定数にとらわれることなく、「毎日通える」という条件に合せて教員数を増員して、遅れを取り戻して成長できる条件を整備すること。昨年の回答の「登校し活動する瀬音数生徒数を参考にし、配当・・・」は何人か。常勤者か、非常勤者か。「キャリア支援の定数加配」は何人か。常勤者か、非常勤者か。

(5)修悠館通信制高校の学習環境充実について
@ 不登校が1万人近い実態がつづいている。義務教育を修了して模索するなかで高校教育に移る高校1年生は、自分を主体的にとりもどすチャンスである。修悠館高校に対する期待も高い。その子たちの条件に合わせて、寄り添う指導がもとめられる。そのためには法定数にとらわれることなく、「毎日通える」という条件に合せて教員数を増員して、遅れを取り戻して成長できる条件を整備すること。昨年の回答の「登校し活動する生徒数を参考にし、配当を行っております。平成26(2014)年度よりキャリア支援の定数加配を行っております」とあるが、「キャリア支援の定数加配」は何人か。常勤者か、非常勤者か

A 毎年一校で数百人の除籍者・退学者の実態は県民保護者に大きなショックをあたえた。この原因をどのように分析しているか。また、これを改善するためにどのような施策を講じたか明らかにすること。

C 「残す」との県民に約束をし、施設も残っている湘南高校、平沼高校の通信制課程を、不登校生徒のニーズに多面的にこたえる施策として、小規模通信制として再開すること。


(6)高校生の就学保障・経済的支援について
@ 学費の公私格差を縮小するとともに、学費補助制度の大幅な拡充・増額を図ること。公私立高校への入学に「入学支度金制度」を新設すること。 

A 経済困難家庭の増加に合わせて、返還不要の給付型奨学金について、その給付条件を緩和して多くの家庭で利用できるよう拡充すること。貸与型の奨学金についても、奨学金受給者が一定の収入額を得るようになるまでは返還猶予する制度を拡充すること。奨学金制度について広報活動を促進すること。 

B 大学・短大・専門学校に進学を希望し合格しながらも経済的な理由で進学をあきらめる高校生が増えている。県として入学時納入する支援金制度を検討すること。また、国に対して支援制度をもとめること。 

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