2016年11月5日

 2015年11月5日に、「いのちとくらしと雇用・営業を守る神奈川県市民実行委員会」による対県交渉が産業貿易センターで行われました。そこで取り上げられ、県に示された16年度にむけた高校教育にかかわる要求項目を紹介します。


Ⅳ、県民が安心して子育てを続け、青少年、成人が豊かな文化・スポーツを享受できる教育・文化・スポーツ行政を求めて

8.県立高校再編・入試改革に関わる要求
(1)「県立高校改革実施計画」では、子どもたちの希望と実態、学校現場の実態を直視し、当該の教職員や生徒・保護者の意見を反映させて高校教育充実を図ること。

① 県教委が、適正規模とした1学年6〜8学級を越える規模の学校が35校と全県立高校の4分の1を越えている。いち早く適正規模内に戻すとともに、「県立高校改革実施計画」のなかでも今後ともこの適正規模を維持すること。

② 「課題集中校」を中心に実施されてきた募集クラス数を越える6クラス募集8展開などの少人数学級や少人数授業を今後とも保障すること。人的にも、施設面でも。

③ 総合学科等で成果を上げている30人学級や30人授業等を他の学校にも広めること。

④ 県立高校改革実施計画」で、県立高校統廃合をしないこと。「県立高校再編計画」の実施による統廃合の結果、近くの高校に入れず遠くの高校に通っている生徒が増え、交通費の負担に喘ぐ状況も発生している。地域の生徒にとって必要な地域の高校を維持すること。


(2)公立高校入学定員枠と中卒者の進路について
  国連子どもの権利委員会が、『学力的な優秀性と子ども中心の能力形成を結合し、かつ、過度に競争主義的な環境が生み出す否定的な結果を避けることを目的として、大学を含む学校システム全体を見直すこと』を日本政府に勧告している。神奈川では、その否定的影響が、不登校、暴力、いじめ、中途退学などと顕著に実体化している。高校入学問題が義務教育全体、子どもたちの人格形成に大きな影響を与えていることを重視して、以下の改善を図ること。

① 13年度入試から、「生徒の受入れを拡大することを基本方針とし」、公私立高校が「実現を目指す定員目標を設定する方式」に変更して、全日制高校進学率が一定改善された。しかし、なお2,000人もの子どもたちが全日制高校を希望しながら進学できず、定時制や通信制に不本意入学させられている現状は早急に改善しなければならない。県民の子弟の教育に責任を負う県政として、県内公立、県外公立、県内私立、県外私立を含む計画進学率を県民に示し、その達成のために具体的施策を検討すること。

② 知事が主宰する公私立高等学校設置者会議は10年を経過して、当初県民に約束した目標と逆の結果を生みだし、機能不全状態から脱出の道を模索する事態にある。子どもたちを蔑にした公私の談合の場とまで批判されている。この体制を解体し、現在オブザーバー参加とされている、現場を一番よく知っている中・高教員代表、PTA代表を中心メンバーとし、高校生、中学生の意見表明も保障する組織に再編すること。

③ 公立高校授業料無償化の精神を具体化して、全日制高校進学率を当面、生徒の全日制希望率(15年度卒は92.1%)とし、公立全日制高校の定員を増やすとともに、私学学費補助を大幅に増額して公私間格差を是正し、希望する子どもたちが私学を選べるようにすることによって、全国最低レベルの全日制高校進学率(14年度卒は90.2%)の大幅改善を図ること。

⑤ 様々な問題を抱えている生徒が多く入学する定時制高校の学級定員を早急に現行35人から30人に縮小させるとともに、25人定員をめざすこと。さらに、夜間定時制については単学年原則(3学科ある工業高校などを除き)2学級の学校適正規模化をすすめ、定時制を希望する子どもたちのニーズに応える教育を保障する環境を整えること。


(3)高校入試について

① 新入試制度は、学力重視をうたい、社会科は極端に平均点が低下した。差をつける学力競争ではなく、それぞれの高校で学習するに足る学力をみる問題とし、子どもたちへの心理的、肉体的過重負担を解消し、義務教育の競争主義教育の弊害を排除すること。

② 旧学区外進学者数は増から減に転じている。地域づくりの観点からも学区問題を重視し、全県一学区制から当面、以前の中学区制にもどし、希望する子どもたちが安心して近くの高校に進学できるように改革すること。
 アンケート結果に見る学区自由化の肯定的意見は、合格者の意見であり、不合格者も含めた受験者・保護者の意見ではないことも考慮し、その弊害も分析すべきである。新制度で受験した子の保護者は徒歩や自転車で通える学校に行きたくても学力的に遠くの学校を選ばざるを得ない等の問題がおきている。交通費の負担や部活動によっては早朝の登校や遅い帰宅になるなど、親は費用の面や犯罪などに巻き込まれないか、さらに東日本大震災のような大災害があった場合などの心配も。子は親への負担を心配してアルバイトをするなどの弊害が起こっている。全県一学区制によって高額になる交通費に対する補助制度を創設すること。以前の中学区制でも学区外の行きたい学校に通うことはできたことから、全県一学区制をやめること。

⑤ 現行の「定通分割選抜」は夜間定時制と通信制を、初めから全日制や昼間及び多部制定時制などの「受け皿」とする差別的な入試制度である。また、夜間定時制專願の子どもたちには不利となる(80%枠のために不合格となり、「定通分割選抜」では全日制を不合格となった子どもたちが殺到するため入試が厳しくなる)「定通分割選抜」を廃止し、「共通選抜」で100%募集するように改めること。「共通選抜」不合格者に対しては、この2年間の夜間定時制及び通信制の出願者数を考慮するならば二次募集で可能であり、定員が十分に準備されていれば問題はない。入試期間の縮減にも役立つ。


(4)高校再編・「高校改革」について

① 全日制高校を廃止して昼間定時制をつくる県教委の方針は、全日制高校を希望しても入れずに多くの子どもたちが泣かされている実態を無視した政策であり、県民の理解を得難い。全日制を希望しても入れないから定時制に希望する。夜間定時制よりは昼間定時制を希望する。昼間定時制が子どもたちの真のニーズでないことはアンケート調査からも明らかである。昼間定時制ではなく全日制高校を増設すること。

② 1999年に始まる県立高校再編計画で、県教育委員会は、文部省方針の通りの6~8学級を適正規模とし、選択授業や少人数授業・少人数学級も同様に推進してきた。その結果、新タイプ校では30人以下授業が実施され、普通科課題集中校では、6クラス8展開のような実質的な少人数学級が実現し教育効果を上げてきた。ところが、県立高校改革基本計画」では、この歴史を無視し、「現行の標準規模以上にすることが望ましい」とした。1学年6学級から8学級という現行の学校適正規模を維持し、1学年9学級や10学級という過大校を解消し、全日制高校定員を確保するために、人口急増地域の横浜北東地域など、地域的配置を考慮してしながら高校増設を図ること。

③ 定時制高校の地域性、今日の定時制高校が果たしている役割を考え、夜間定時制の定員確保のため、横浜市教委と川崎市教委の定時制再編合理化計画を中止して定員を確保するよう申し入れること。


(5)定時制高校の充実について

① 経済格差の拡大・貧困化の拡大を考慮し、定時制高校の給食費や教科書代を自己負担させないこと。

② 夜間定時制給食は、経済困難が深刻化する中で、若者の健康と体力維持増進、食育の観点からもますます重要になっている。給食制度の維持はもとより、衛生基準や現場・生徒のニーズに合った施設設備と給食内容の充実を図ること。

③ 定時制の在籍生徒数の急増にともない、全日制・定時制併置校においての県費予算不足はより深刻である。全日制単独校と変わらない図書費20万円をはじめ、生徒数の増加に見合った予算とするよう、ただちに改善を図ること。

④ 夜間定時制においては、この10年間に入学生徒数が2倍に増加する一方で、教職員定数はほぼ同じという状態が続き、教員一人あたりの生徒数が全日制を大きく上回る学校も現れている。不登校、病弱、外国籍など配慮を必要とする生徒が多い現状をふまえ、定時制の教員定数の改善を図ること。

⑤ 夜間定時制は、全日制に比べて臨任や非常勤の比率が高い。夜間定時制の生徒の状況を踏まえ、専任の教員の配置を増やすこと。

⑥ 生徒がいる時間帯であっても、専任の事務職員が配置できていない状況を改善するため、東京や埼玉では置かれている夜間定時制専任の事務職員を配置すること。また、定時制専任の現業職員や司書を配置すること。


(6)新しいタイプの通信制高校の学習環境充実について

① 不登校が1万人近い実態がつづいている。義務教育を修了して模索するなかで高校教育に移る高校1年生は、自分を主体的にとりもどすチャンスである。修悠館高校に対する期待も高い。その子たちの条件に合わせて、寄り添う指導がもとめられる。そのためには法定数にとらわれることなく、「毎日通える」という条件に合せて教員数を増員して、遅れを取り戻して成長できる条件を整備すること。

④「 残す」との県民に約束をし、施設も残っている湘南高校、平沼高校の通信制課程を、不登校生徒のニーズに多面的にこたえる施策として、小規模通信制として再開すること。

トップ(ホーム)ぺーじにもどる