2015年1月6日

 2014年11月12日に、「いのちとくらしと雇用・営業を守る神奈川県市民実行委員会」による対県交渉が産業貿易センターで行われました。そこで取り上げられ、県に示された15年度にむけた高校教育にかかわる要求項目を紹介します。


W、県民が安心して子育てを続け、青少年、成人が豊かな文化・スポーツを享受できる教育・文化・スポーツ行政を求めて

1.子どもの権利に関する項目
(1)子どもの権利の実現について

@ 教育基本法や学校教育法、学習指導要領、教科書検定基準などの改定により、特定のイデオロギーにもとづき「愛国心」や「道徳」のおしつけ、教育の国家管理の傾向が強まっている。子どもを主人公に、憲法、子どもの権利条約と教育の条理にもとづく教育を貫くとともに、未来に生きる子どもたちのために十分な予算を確保して、「人格の完成」をめざすゆきとどいた教育を実現すること。

A 神奈川の民際外交推進の立場、多文化共生の地域社会づくりの実践者として、子どもたちの学習権保障の自治体の役割を重視し、朝鮮学校への運営費補助を復活すること。

B 新学習指導要領の実施にあたっては、各学校の主体性を活かした教育課程の編成権を保障すること。とりわけ、学校行事の内容、実施形態に対して通知や職務命令などによる不当な介入を行なわないこと。

(2)入学式・卒業式について
@ 憲法19条「思想・良心の自由」、20条「信教の自由」、21条「表現の自由」に照らして、卒業式・入学式における「日の丸」「君が代」の強制をやめ、「国歌斉唱」時の起立が強制ではない旨の告知を生徒・保護者に対して行うこと。また、昨年までの回答で「保護者につきましては、指導の対象ではございません。」とあるが、「配慮のあるアナウンスがなかった」との声があり、「よろしかったらご唱和ください」の呼びかけなど配慮ある対応をすること。

A 神奈川県個人情報保護審査会及び審議会は、「卒業式・入学式で国歌斉唱時に起立しない教職員の氏名収集は、思想・信条情報に該当する」という答申を出している。県教育委員会による「不起立者の氏名収集」は、神奈川県個人情報保護条例第6条「思想、信条、宗教に関わる情報を取り扱ってはならない」ことに違反する。不起立者の氏名収集と指導主事等による訪問指導をやめること

2.国・県の教育行財政に関する要求
(1)全般について
@ 「神奈川の教育を考える調査会」の「最終まとめ」の具体化にあたっては、以下の点を守ること。

ア、神奈川の子ども1人当たりの教育予算が全国最低レベルにあることをふまえ、財政縮減を大前提とすることなく、子どもたちや現場実態を調査し、関係者の意見も十分尊重してすすめること。

イ、県民の関心の高い問題でもあり、パブコメにとどめず、少なくとも旧高校18学区程度の県民討論会など広く県民意見を反映する手立てをとること。

ウ、「最終まとめ」に見るような、「インクルーシブ教育」の名のもとに、障害を抱える子どもたちを、経費縮減の目的から特別支援学校の整備をせずに、小中の一般学級、高校に誘導するようなことや、学級定数の弾力化、小中一貫校、県立高校大規模化などによる教職員削減など、教育条件の悪化につながるような施策化は絶対にしないこと。

エ、「最終まとめ」にある「小中一貫校」「インクルーシブ教育」の具体化が、7 月に「検討会」を設置しで急がれているが、教職員、保護者はじめ県民の意見を十分反映させること。また、広く県民が傍聴・参加できるように、会議、シンポジウムなど開催日時の発表を3 週間以上前とすること。

オ、県予算の「選択と集中」が県、議会ともに強調されているが、県教育予算は類似府県に比較しても十分ではない。「最終まとめ」にある「小中一貫校」「インクルーシブ教育」の具体化が、教職員人件費、学校運営費などの経費削減優先とならないようにすること。

A 新学習指導要領の教科時数増や内容増の実施については、教員の配置をはじめ、教材などの整備のための予算を十分に措置すること。また、各学校の実態に応じて学校の自主的裁量を尊重すること。

C 実教出版の日本史教科書採択に対する県教育委員会の介入について

ア、(昨年・2013年度の経過と問題点について)
  県教育委員会は、地教行法第23条第6項を根拠に、県立高校の教科書採択権は県教育委員会にあるとしている(具志堅委員長談話)が、文部科学省ホームページで「高等学校の教科書の採択方法については、法令上、具体的な定めはありません…」とあるように、その主張の根拠は薄弱で、教育課程編成権は各学校にあり、教科書選定はそれと密接不可分であるから、「実質的に採択権は学校側にある」というのが、学会の通説である。

  県教育委員会が「再考」をもとめた理由として、国旗国歌法問題に関する脚注の3行が県の主張とあっていないことをあげているが、県民や生徒の保護者が納得するような回答は得られていない。この3行は歴史に関する記述として書かれており、国旗国歌法が制定された過去の一時期、卒業式・入学式における国旗国歌の扱いについて、服務として当然のことと見るか思想良心の自由を妨げる強制と見るかをめぐって熾烈な争いがあったのは歴史的事実である。それを踏まえて、文部科学省は、実教出版の教科書を検定教科書として認定した。神奈川県教育委員会が越権的に教科書の二重検定を行ったことになる。

  また、「街宣車が学校にやってくる」との発言があったことを、複数の校長が当該校の教職員に言明している。学校に外部団体が何らかの圧力をかけた場合、その外部団体の行為は、明らかに学校に対する威力業務妨害であり、生徒や教職員に対しては脅迫の罪が適用される行為である。その県教育委員会は、威力業務妨害や脅迫から、生徒や教職員を守るために警察と提携しながら行動するのが役目のはずである。

  以上の点から、私たちは昨年度、「再考」を要請した当該校の教科書を、最初の希望の教科書に戻すことをもとめた。また、次年度以降、各学校における教科書採択を実質的に保障する従来の方法に戻すよう要請した。

イ、(今年度・2014年度の経過と問題点 その1)
  県教委事務局は、4月24日(木)校長を対象に、また、5月14日(水)には副校長・教頭を対象に教育課程説明会を実施した。その際、「平成27年度神奈川県立高等学校等使用教科用図書採択方針」の説明の中で、昨年8月の「実教出版高校日本史A,B」教科書の「再考」経過を踏まえ、各学校に「採択についてよく注意するよう」伝えた。この説明の仕方では、各学校に対して、「実質的に実教出版の教科書を選択するな」と要請したことになる。

  特に、副校長・教頭を対象に教育課程説明会では、県教委・事務局は、「校長の教育課程説明会で配布した書類は同じだが、若干、説明は違うことがある。副校長・教頭への教育課程説明会では『実教日本史は候補の3つにも入ってこないのではないか』との認識をお話した」と発言した。この発言内容は、実質的に副校長と教頭に県の「高等学校使用教科用図書採択方針」に反する不当な指示を行ったことになる。  
  この一連の事実について、県教委は認めるか。違うならばどこがどう違うか具体的に答えること。

ウ、(今年度・2014年度の経過と問題点 その2)
  県教委事務局は、上記のイに記載したように、一方的に各学校の教科書採択希望へ圧力をかけ行い、そのことは教育課程編成権への介入となっている。しかし、各学校が希望教科書の選定で実教出版を選んだ場合、県教委及び県教委・事務局がその選定を否定する根拠はない。

  教科書採択のための希望教科書の選定は各学校・教職員の権限である。各学校の選定希望に対する今回の県教委・事務局の説明は、「指導」の枠を越えた各学校の教科書選定への不当な越権行為であり、教科書の二重検定と言える。しかも、県教委・事務局が県教育委員会に諮ることなく、学校での教科書選定に圧力をかけたことは、公開性・公正性に反する行為ではないだろうか。

エ、(今年度・2014年度の経過と問題点 その3)
  県教委・事務局による教育課程説明会での「説明」は、実教出版を排除するものであり、その撤回を求める。

  本来、教科書は、「主たる教材」(教科書の発行に関する臨時措置法2条1項)として各教科の教育指導の基本となるものである。そして、教育とは、「教師と子どもとの間の直接の人格的接触を通じ、子どもの個性に応じて弾力的に行われることをその本質とするから」(最高裁大法廷1976年5月21日判決)、教科書選定に当たっては、実際にそれを使用して授業を行う教師たちの意向が最も強く反映されるべきである。

  ILO・ユネスコ「教員の地位に関する勧告」(1966年)の第61項「8 教員の権利と責任」では、「教育職は専門職としての職務の遂行にあたって学問上の自由を享受すべきである。教員は生徒に最も適した教材及び方法を判断するための格別の資格を認められたものであるから、教材の選択と採用、教科書の選択、教育方法の採用などについて不可欠な役割を与えられるべきである。」ことを明示している。

  国際理解を強調する県教育委員会としては、むしろILO・ユネスコ勧告における「国際的基準」をこそ尊重すべきである。事実、各学校では、教職員が生徒の実態を踏まえ、その生徒の実態・学習状況に応じた最適な教科書を選定してきたのであり、生徒の教育に対する教職員の直接的な責任と権限は最大限尊重すべきである。
  文部科学省は、毎年、各都道府県に対して、教科書採択に関し、「地方自治に基づいて、県民が各都道府県での教科書採択の手続きや内容についての説明を求めていくことや県教育委員会は採択手続き等が県民に十分納得が得られるどうかの説明が求められています。」として、県教育委員会に対し、採択手続きの公開性・納得性を求めている。しかし、事前に県教育委員会の正式な手続きを経ることなく、特定教科書についての事前の排除を行おうと企図したことは、採択手続きの公開性及び公正性という点で極めて問題である。

  県教育委員会は、以上の点を踏まえ、今後、各学校の教育課程編成権を尊重し、公開性・納得性・公正性に基づき教科書採択を行うこと。

(2)就学援助・経済支援について
C 高等学校等進学者数の割合が98.0%と、高等学校等への進学が実質的に準義務化している現状がある。子どもの貧困化・格差拡大が社会問題化するなかで、小中学生に設けられている就学援助制度を高等学校にも新設する必要があると考える。県教育委員会としても、何らかの施策をとること。


(5)県立高校について
@ 教育委員会は個別学校の教育課程編成に介入しないこと。特に一律の枠を決めた「〜運動」などの強制をしないこと。

ア、各学校の教育課程編成権を尊重すること。
イ、教職員を多忙化に追い込み、生徒と向き合える時間や授業準備の時間を奪っている「観点別評価」「地域貢献デー」「全公立展」「公私高校展」や自主的な教育課程編成を妨げるシチズンシップ教育、日本史必修などの上からの一律押し付けをやめること。

ウ、学習状況調査を廃止すること。

A 現在19校で、現業の民間委託が行われているが、そのうちの1校では、4月以降の3ヶ月間に、人が2人代わって、清掃担当、植栽担当として仕事を行った。また、体育祭で必要な大掛かりな看板取り付けやゴミ分別などの仕事を、これまでは現業職員と協力しながら行っていたが、今年はそれができずに教員のみで行った。学校には、現業職員による臨機応変な仕事で生徒の教育を保障してきた歴史がある。雨漏り修理、壁塗装修復、下駄箱・机修理など、民間委託業者に直接依頼すれば偽装請負になるので、結局、教員の負担が増えている。民間委託をやめ、早急に現業職員の採用再開をすること。

B 臨任の学校事務職員・学校図書館司書の昇給は、1級37号給(191,600円)で頭打ちとなり、官製ワーキングプアを神奈川県が作り出している。特に、学校図書館司書は県が政策的に採用を控え、その結果、臨任学校図書館司書として10年以上状勤め続けている人もいる。いち早く採用再開するともに、臨任として働き続けている学校図書館司書の待遇を抜本的に改善するために、昇給の頭打ちをなくすこと。

C 多忙化対策について県教育委員会の通知のみではなく、具体的に、基本的な校務が勤務時間内で終了する学校運営の改善をすすめること。また、やむを得ず超過勤務となった時間は完全な振り替えで対応する措置をとること。その具体的対策として、教職員の勤務実態調査を行い、多忙化につながっている業務の見直しなど、労働時間の短縮や校務運営の改善や具体的な進展状況を明らかにすること。

D 学校私費会計の強制的な教員による執行を止め、教員を教育活動に専念させること。そのために、各校に私費会計執行に必要な人員を配置すること。(私費会計数×2時間で計算する)昨年は、学校私費会計処理は、教員のみならず、学校全体として対応するべき業務であると回答を受けたが、教員が会計執行にあたることについての見解をもとめるとともに、学校全体でどのように私費会計処理を合理的に実施すべきと考えているか教えてください。

E 高校授業料無償に所得制限額割られ、事務量の増加に対して85名の非常勤職員が学校事務室に配置された。しかし、年2回の所得証明の提出や書類提出が間に合わない生徒が続出するなど、県立高校の事務室は混乱している。また、奨学金事務の取り扱いが一般教員にゆだねられるようになり、奨学金希望生徒の増大に対応しきれない状況となっている。本来の教育活動をおろそかにし、休日出勤でようやく事務を終えるのが実態である。現在県立高校の事務室には、事務長を含めて3人が基本となっており、その3人のうちに非正規職員が含まれている学校すらある。学校事務職員を増員すること。

G 体育館や灯油庫などのアスベストは速やかに撤去すること。特に、囲い込み等の対策工事では、地震災害でアスベストが飛散する可能性をなくすことはできない。根本的な撤去工事を行うこと。保土ヶ谷高校のシックスクール問題にあるように、雨漏り防止の改修工事における有機溶剤の汚染防止に努めること。

H 県立高校の維持運営費を大幅に増額し、私費負担を減らすこと。

I 冷房機器を県立高校の図書準備室・技能員室・体育科準備室・芸術科家庭科以外の特別教室・視聴覚室・教科準備室などすべての部屋に設置すること

(7)県として以下の点を国へ要望すること
  昨年の回答では、「全国都道府県教育長協議会等を通じ」要望している旨の項目が多い。今年は、神奈川県独自に強く要望する。

@ 日本の教育予算は異常に低い。GDP比教育予算は、OECD平均が4.9%にたいして、 日本は3.3%である。欧米並みにすると日本の教育予算は約7兆円増にもなる。教育予算を少なくともOECD平均まで増額し、日本の教育条件を抜本的に改善すること。「必要と思われる事項について提案・要望」との回答であるが、国際的比較においてあまりにも貧弱な教育予算を総枠で国際水準まで引き上げるよう要求すること。

A 教職員の多忙化が年々深刻になる中、子どもたちに向き合う職員の時間が不足している。中央教育審議会から少人数学級の緊急性が答申され、政府が小1から中3まで35人学級制とし、さらに小1小2は30人学級制とする8カ年計画はいまも生きていると文科省はいうが凍結されている。直ちに実施に踏み切るとともに、高等学校の全日制35人、定時制30人の学級定員制を実現し、生徒が安心して学習できる教職員定数改善を図ること。「国の動向を注視」にとどめずに学校現場の焦眉の課題として要求すること。

B 新たな教職員定数改善計画を策定実施すること。

C 特別支援学校の設置基準を設けること。差別ともいえる特別支援学校の遅れた教育条件の根底にある重大事項として国に要求すること。

D 年々増加する外国籍児童生徒の学習権保障に国が責任を持って条件整備をすすめること。外国籍児童生徒の日本語教室の増設と充実を図るとともに、日本語教育の教員を増員すること。

E 義務教育費国庫負担制度を維持、拡充し、国の負担率を2分の1に復活すること。

F 教員不足解消のため、大学・大学院の教職課程の定員を増やすこと。

G 学校事務職員・栄養職員の給与国庫負担制度を堅持すること。

H 教材費・旅費の国庫負担制度復活を図ること。

I 子どもたちの精神的不安解決や、保護者・教職員の相談にも大きく役立っているスクールカウンセラーと相談員を全学校に配置すること。

J すべての学校に養護教諭を複数配置すること。

K 就学前教育の無償化を図ること。

L 高校授業料無償を所得制限なしに続けるよう要望すること。

8.県立高校再編・入試改革に関わる要求
(1)県立高校改革推進検討協議会報告(以下、協議会報告)と基本計画策定について
前回の再編計画完了後5年しか経ていない段階で、次なる再編計画を立てることは、教育活動の継続性を維持する点から、あまりにも安易な対応と言わざるを得ない。この点についてどう考えるか、明らかにすること。 

@ 協議会報告を受けて基本計画を策定するというが、計画策定にあたっては、県民参加の討論集会を県下各地で開催し県民の生の声を反映させるとともに、県立高校で行われている教育活動を安易に否定することなく、当該の教職員や生徒・保護者の意見を反映させる発展的な内容の計画とすること。

A 協議会報告は、今以上の教育費をかけることなく、今以上の効果を出すようにいうが、今配当されている予算を減らされる学校でどのように教育効果を上げるというのか、明らかにすること。また、効果を上げるために、現状以上の労働強化を教員に強制するようにならない保障をどう行おうとしているのか明らかにすること。

B 協議会報告は、学校規模を8クラス以上にするといっているが、現状の学校施設では、9〜10クラス分の教室を配置することは無理がある。現在の教育条件を引き下げることなく、教育活動が展開できるよう配慮すること。とりわけ、各校の工夫によって行われている少人数授業や少人数クラスについては、保障すること。

(2)公立高校入学定員枠と中卒者の進路について
  国連子どもの権利委員会が、『学力的な優秀性と子ども中心の能力形成を結合し、かつ、過度に競争主義的な環境が生み出す否定的な結果を避けることを目的として、大学を含む学校システム全体を見直すこと』を日本政府に勧告している。

  神奈川では、その否定的影響が、不登校、暴力、いじめ、中途退学などと顕著に実体化している。高校入学問題が義務教育全体、子どもたちの人格形成に大きな影響を与えていることを重視して、以下の改善を図ること。

@ 13年度入試から、「生徒の受入れを拡大することを基本方針とし」、公私立高校が「実現を目指す定員目標を設定する方式」に変更して、全日制高校進学率が一定改善された。しかし、なお2,000人もの子どもたちが全日制高校を希望しながら進学できず、定時制や通信制に不本意入学させられている現状は早急に改善しなければならない。県民の子弟の教育に責任を負う県政として、県内公立、県外公立、県内私立、県外私立を含む計画進学率を県民に示し、その達成のために具体的施策を検討すること。

A 知事が主宰する公私立高等学校設置者会議は9年を経過して、当初県民に約束した目標と逆の結果を生みだし、機能不全状態から脱出の道を模索する事態にある。子どもたちを蔑にした公私の談合の場とまで批判されている。この体制を解体し、現在オブザーバー参加とされている、現場を一番よく知っている中・高教員代表、PTA代表を中心メンバーとし、高校生、中学生の意見表明も保障する組織に再編すること。

B 公立高校授業料無償化の精神を具体化して、全日制高校進学率を当面、生徒の全日制希望率(13年度卒は92.1%)とし、公立全日制高校の定員を増やすとともに、私学学費補助を大幅に増額して公私間格差を是正し、希望する子どもたちが私学を選べるようにすることによって、全国最低の全日制高校進学率(14年度入試は89.2%)の大幅改善を図ること。

C その年度の高校募集定員計画にその年度の中学校の進路希望調査を活用できるように、その調査の実施時期を現行10月より早めること。

D 様々な問題を抱えている生徒が多く入学する定時制高校の学級定員を現行35人から30人に縮小させること。さらに、夜間定時制については単学年原則(3学科ある工業高校などを除き)2学級の学校適正規模化をすすめ、定時制を希望する子どもたちのニーズに応える教育を保障する環境を整えること。

(3)高校入試について
@ 新入試制度は、学力重視をうたい、難問化する傾向にある。差をつける学力競争ではなく、それぞれの高校で学習するに足る学力をみる問題とし、子どもたちへの心理的、肉体的過重負担を解消し、義務教育の競争主義教育の弊害を排除すること。

A 地域づくりの観点からも学区問題を重視し、全県一学区制から当面、以前の中学区制にもどし、希望する子どもたちが安心して近くの高校に進学できるように改革すること。

 アンケート結果に見る学区自由化の肯定的意見は、合格者の意見であり、不合格者も含めた受験者・保護者の意見ではないことも考慮し、その弊害も分析すべきである。新制度で受験した子の保護者は徒歩や自転車で通える学校に行きたくても学力的に遠くの学校を選ばざるを得ない等の問題がおきている。交通費の負担や部活動によっては早朝の登校や遅い帰宅になるなど、親は費用の面や犯罪などに巻き込まれないか、さらに東日本大震災のような大災害があった場合などの心配も。子は親への負担を心配してアルバイトをするなどの弊害が起こっている。以前の中学区制でも学区外の行きたい学校に通うことはできたのですから、全県一学区制をやめること。

D 現行の「定通分割選抜」は夜間定時制と通信制を、初めから全日制や昼間及び多部制定時制などの「受け皿」とする差別的な入試制度である。また、夜間定時制專願の子どもたちには不利となる(80%枠ために不合格となり、「定通分割選抜」では全日制を不合格となった子どもたちが殺到するため厳しくなる)「定通分割選抜」を廃止し、「共通選抜」で100%募集するように改めること。「共通選抜」不合格者に対しては、この2年間の夜間定時制及び通信制の出願者数を考慮するならば二次募集で可能であり、定員が十分に準備されていれば問題はない。

(4)高校再編・「高校改革」について
@ 全日制高校を廃止して昼間定時制をつくる県教委の方針は、全日制高校を希望しても入れずに多くの子どもたちが泣かされている実態を無視した政策であり、県民の理解を得難い。全日制を希望しても入れないから定時制に希望する。夜間定時制よりは昼間定時制を希望する。昼間定時制が子どもたちの真のニーズでないことはアンケート調査からも明らかである。昼間定時制ではなく全日制高校を増設すること

A 1999年に始まる県立高校再編計画で、県教育委員会は、文部省方針の通りの6〜8学級を適正規模とし、選択授業や少人数授業・少人数学級も同様に推進してきた。その結果、新タイプ校では30人以下授業が実施され、普通科課題集中校では、6クラス8展開のような実質的な少人数学級が実現し教育効果を上げてきた。ところが、今検討協議会まとめでは、この歴史を無視し、8〜10学級を適正規模とした。1学年6学級から8学級という現行の学校適正規模を維持し、1学年9学級や10学級という過大校を解消し、全日制高校定員を確保するために、人口急増地域の横浜北東地域など、地域的配置を考慮してしながら高校増設を図ること。

B 定時制高校の地域性、今日の定時制高校が果たしている役割を考え、夜間定時制の定員確保のため、横浜市教委と川崎市教委の定時制再編合理化計画を抜本的に見直して定員を確保するよう申し入れること。

C 横浜総合高校の弘明寺移転に伴い、横浜東部が夜間普通科定時制高校が手薄になる。定時制高校の全県的適正配置と適正規模を考えて、横浜東部に県立の夜間定時制を設置すること。

(5)定時制高校の充実について
@ 経済格差の拡大・貧困化の拡大を考慮し、定時制高校の給食費や教科書代を自己負担させないこと。

A 夜間定時制給食は、経済困難が深刻化する中で、若者の健康と体力維持増進、食育の観点からもますます重要になっている。給食制度の維持はもとより、衛生基準や現場・生徒のニーズに合った施設設備と給食内容の充実を図ること。

B 定時制の在籍生徒数の急増にともない、全日制・定時制併置校においての県費予算不足はより深刻である。全日制単独校と変わらない図書費20万円をはじめ、生徒数の増加に見合った予算とするよう、ただちに改善を図ること。

C 夜間定時制においては、この10年間に入学生徒数が2倍に増加した一方で、教職員定数はほぼ同じという状態が続き、教員一人あたりの生徒数が全日制を大きく上回る学校も現れている。不登校、病弱、外国籍など配慮を必要とする生徒が多い現状をふまえ、定時制の教員定数の改善を図ること。

D 生徒がいる時間帯であっても、専任の事務職員が配置できていない状況を改善するため、東京や埼玉では置かれている夜間定時制専任の事務職員を配置すること。また、定時制専任の現業職員や司書を配置すること。

(6)新しいタイプの通信制高校の学習環境充実について
@ 不登校が1万人近い実態がつづいている。義務教育を修了して模索するなかで高校教育に移る高校1年生は、自分を主体的にとりもどすチャンスである。修悠館高校に対する期待も高い。その子たちの条件に合わせて、寄り添う指導がもとめられる。そのためには法定数にとらわれることなく、「毎日通える」という条件に合せて教員数を増員して、遅れを取り戻して成長できる条件を整備すること。

C 「残す」との県民に約束をし、施設も残っている湘南高校、平沼高校の通信制課程を、不登校生徒のニーズに多面的にこたえる施策として、小規模通信制として再開すること。

(7)高校生の就学保障・経済的支援について
@ 学費の公私格差を縮小するとともに、学費補助制度の大幅な拡充・増額を図ること。公私立高校への入学に「入学支度金制度」を新設すること。 

A 経済困難家庭の増加に合わせて、返還不要の給付型奨学金を新設すること。また、少しでも多くの家庭で利用できるように、奨学金制度について広報活動を促進すること。

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