2011年4月16日

 2010年11月に、「いのちとくらしと雇用・営業を守る神奈川県市民実行委員会」による対県交渉が行われました。そこで取り上げられ、県に示された11年度にむけた高校教育にかかわる要求項目を紹介します。


W、県民が安心して子育てを続け、青少年、成人が豊かな文化・スポーツを享受できる教育・文化・スポーツ行政を求めて

 いま、「お金がなくて修学旅行に行けない」、「昼のパンを買う金がなくて、月末になると休んでしまう中学生」など、経済不況・家計の悪化が子どもたちを直撃している。子どもたちを経済格差の拡大・子どもの貧困化から守り、子どもたちが安心して生活し、学び、将来への希望を描けるよう条件を整備する課題が行政に強く求められている。

 だから、「高等学校希望者全入」、「公立高校の授業料は無料化」、「私立高校授業料補助(年12万〜24万円程度)」、「就学前教育の無償化推進」、「保護者の教育費負担軽減」など「教育の無償化」が政権を担おうとする政党のマニフェストにも掲げられる事態である。

 しかし、実態は日本の教育予算は異常に低い。教育予算のGDP比は、OECDの平均が5%にたいして、日本は3.55%である。それを欧米並みに引き上げると日本の教育予算は現在より約7.3兆円も増え、この要求書に掲げる条件整備の多くが実現可能となる。

 憲法26条は「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育はこれを無償とする」と定め、教育基本法第4条(教育の機会均等)‥47年教基法・第3条(教育の機会均等)は「すべて国民はひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」と規定している。

 しかし、公立全日制高校では8,400人も不合格にされ、経済的困難から私学全日制に行けず全日制高校への進学をあきらめ、定時制、通信制に進学せざるを得ない子どもたちが多数出ている。それが高校中退者を多数生む一因にもなっている。

 また、不登校、校内暴力、学級崩壊など神奈川の教育課題は改善されず、深刻になっている。その根底には、他県に比べても大人数学級が多く、先生方の多忙化がますます激しくなって、「子どもに向き合う時間」がとれないなど、学校の在りようが根本から問われている。

 これまでになかったこうした事態に、いま、県は子ども・教育・文化・スポーツに関わる政策を子ども・学校・地域の声を聞いて抜本的に転換することが求められている。

 以下、ここに私たち神奈川県民の切実な要求を示し、県が真摯に検討され、要求の政策化につながるご回答をいただくよう求める。


1.子どもの権利に関する項目

(1)子どもの権利の実現について

@教育基本法や学校教育法」などの改定により、特定のイデオロギーにもとづく「愛国心」や「道徳」のおしつけ国家管理が心配されるが、憲法と教育の条理にもとづき、未来に生きる子どもたちのために十分な予算を確保して、「人格の完成」をめざすゆきとどいた教育を実現すること。

A新学習指導要領の実施に当たっては、各学校の主体性を活かした教育課程の編成を保障すること。とりわけ、学校行事の内容、実施形態に対して通知や職務命令などによる不当な介入を行わないこと。


(2)入学式・卒業式や、学校運営への子どもたちの参加などについて

@「斉唱」「起立」などで子どもたち・保護者・参加者・教職員の内心の自由が侵されることのないように手だてを講ずるように指導すること。
 特に、外国籍の子どもたち・保護者にたいして、お祝い事であるべき式のの席で、どんなにか傷つきながら列席している子や保護者がいることを考え、配慮すること。「思いやりが大切」「国際的な人間に」などよく学校で子どもたちが教わるが、教育委員会はその先頭に立つべきである。「国旗」「国歌」に関する指導も、憲法で守られている内心の自由を教える教育的な姿勢で行うこと。


2.国・県財政に関する項目
(5)県立高校について
@教職員を多忙化させ、生徒と向き合える時間を奪っている「観点別評価」「地域貢献デー」「全公立展」などや、各校の自主的な教育課程編成を妨げているシチズンシップ教育、日本史必修などの上からの一律押し付けをやめること。

A県立高校の維持運営費は、1校あたり備品費が0円、修繕費120万円、図書費25万円など生徒の活動に支障を来しているのが現状である。県費の不足分を補っている実体を調査し明らかにすること。「まなびや基金」など学校間格差をより広げる結果になる制度をやめること。

B学校事務センターの始動で、学校事務室が多忙化し、事務センターと学校のやり取りで事務執行が困難を来し、遅れなど窓口サービスの低下を招いている。学校事務センター廃止に向けて動き出すこと。

C県立学校の耐震工事と老朽校舎の改修工事を早急に行うこと。未着工後者の今後の工事計画を明らかにすること。

D生徒の学習環境改善のため、各校の教室に扇風機を設置するとともに、視聴覚室・音楽室・図書館にはクーラーを設置すること。また、すでにクーラーを設置している学校のクーラーのレンタル料や電気代、掃除代等を公費負担とし、保護者負担を禁止すること。

県立高校のトイレに洋式トイレを増設し、各階に障害者用トイレを完備するよう計画的に進めること。


3.児童・生徒の必要に応じた学校運営をすすめるための教職員の定数改善に関する項目

(4)定数内臨任が増えて、教職員の療養休暇、介護休暇、育児休暇などによる臨任と重なり、子どもの教育、校務の継続性、校内分掌の編成にも重大な支障をもたらしている。ただちにその実態を調査し明らかにするとともに、定数法どおりの人数を正規採用すること。

(5)職場の多忙化で次々生まれる療養休暇者に対して臨任者や非常勤職員の迅速適正な配置がなされていない。それがさらに多忙化を進め、つぎつぎに療養休暇者を生み出す悪循環となっている。非常勤講師をプールするシステムを構築・制度化すること。




8.県立高校再編・入試改革にかかわる要求
(1)公立高校入学者定員枠と中卒者の進路について

A2011年度の全日制高校への進学率を何%と計画しているのか明らかにすること。「平成18年度入学者選抜以降計画進学率は策定せず」との方針は、私学側と共同責任を負う立場の競技結果であって、県民の子どもたちの希望に沿う進路・高校進学を実現する責任を負う県教委としては目標をもたない行政などはあり得ない。私学はどうであれ県教委には目標値を県民に明らかにする責任がある。

B知事の参加する公私立学校設置者会議で、「公私が強調することにより1」生徒の視点に立った定員計画を策定すること 2」全日制高校への進学実績を向上させるよう努めること 3」生徒一人ひとりの希望と適性に応じた進路を確保することを目標とした定員計画とすること」と決められているが、それ以降の5年間、この県民に対する約束がまったく守られていない。この事態をどう総括しているのか明らかにするとともに、2011年度にはこれを守るためにどのような政策が打ち出されるのか明らかにすること。

C「本合意事項の遂行に著しく困難な状況が生じた場合には、公私協調の精神に基づき、協議により解決を図る」となっているが、2010年度の「公立定員60%実施」については、前年度の問題点や子どもたちの実態など全く論議されないまま決定された。2011年度定員については全日制進学実績向上に責任ある協議をすること。

D全日制のクラス減を確保するためとして1学年9クラス以上の学校を作ることはやめること。また、現在各校の工夫で6クラス8展開のクラス運営をしていることは保障すること。そのため、再編非活用校の校舎を使うこと。


(2)高校入試について
C公立高校入試の受験料について、前期・後期・二次募集すべて1回の「受験」とみなし、1回の納入で受験できるように改めること。前期・後期・二次募集の分け方は以前にはなかったものであり、必要ならば「手数料条例」の改正をすること。

E入試制度の見直しについては、受験生、中学校、父母県民の意見を聞いてすすめること。


(3)高校再編・「高校改革」について
@県立高校改革10ヵ年計画の立案は公聴会・シンポジウムなど県民の意見を聞いてまとめられた。「県立高校改革10ヵ年計画10ヵ年間の成果と課題」の検討は同様に県民に開かれた場で検討すること。

A定時制高校の地域性、今日の定時制が果たしている役割を考え、横浜市教委と川崎市教委の定時性再編合理化計画を抜本的に見直すよう申し入れるとともに、定時制高校の全県的適正配置と適正規模を考えて県立の定時制高校を増やすこと。

(4)定時制高校の充実について
@
定時制高校の給食費や教科書代を自己負担させないこと。

A定時制高校給食は経済困難が深刻化する中で、若者の健康と体力維持増進、食育の観点からもますます重要になっている。給食制度の維持はもとより、衛生基準や現場・生徒のニーズに合った施設設備と給食内容の充実を図ること。

B定時制の在籍生徒数の急増にともない、全日制・定時制併置校においての県費予算不測はより深刻である。全日制単独校と変わらない図書費25万円をはじめ、生徒数の増加に見合った予算とするよう、ただちに改善を図ること。

C夜間定時制においては、この10年間に入学生徒数が2倍に増加した。一方で、教職員定数はほぼ同じという状態が続き、教員一人当たりの生徒数が全日制を大きく上回る学校も現れている。不登校、病弱、学国籍など配慮を必要とする生徒が多い現状をふまえ、定時制の教員定数の改善を図ること。

D生徒がいる時間帯であっても司書、事務職員および現業職員が配置できていない状況を改善するため、定時制のための司書、事務職員、現業職員を増員すること。

(5)新しいタイプの通信制高校の学習環境充実について
@修悠館高校の入学生と移行生が混乱なく学習に励めるよう、早急に対策を講じること。1万人を前後する不登校は神奈川の実態であり、義務教育を修了して模索するなかで高校教育に移る高校1年生は、自分を主体的にとりもどすチャンスである。その子たちに寄り添う指導が求められる。そのためには法定数にとらわれることなく、「毎日通える」という条件に合わせて教員数を増員すること。

A修悠館高校の2009年度の志願者、入学者、タイプごとの履修状況、履修届を提出していない生徒数、退学者数を示し、その理由も明らかにすること。

B「残す」との県民への約束をした湘南高校、平沼高校の通信制課程を、不登校生徒のニーズにこたえる施策としても再開すること。

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