2009年4月4日
2008年11月10日に、「いのちとくらしと雇用・営業を守る神奈川県市民実行委員会」による対県交渉が行われました。そこで取り上げられ、県に示された09年度にむけた、主に高校教育にかかわる要求項目を紹介します。「かながわ定時制通信制教育を考える会」や「神奈川高校教職員連絡会」の会員も参加し、県の担当者に要請しました。
W、県民が安心して子育てを続け、青少年、成人が豊かな文化・スポーツを享受できる教育・文化・スポーツ行政を求めて
「不登校1万人超に」「県内公立小中2年連続全国最多」中学校で「全生徒に対する割合は4.02%」と新聞も大きく報じています。また 「関係者は一様に、教諭が子どもと直接触れ合う機会を増やすことや『初期対応jの徹底が対策の鍵を握るとみている。」(08.8.8神奈川新聞)としています。県内小中学校の不登校児童・生徒がはじめて1万人を超え、中学校では1クラスに平均で1〜2人在籍することになります。4割は直接的原因が見当たらないといいまナ。これは子どもたちの「生きにくさ」の「悲鳴」ではないでしょうか.
しかし、神奈川では31人以上の学級が小学校で67%、中学校で94%と学級規模が大きいうえに、報告事務、形式的研究などに時間がさかれて、先生方が 「子どもに向き合う時間」が極端に少なく、先生方も「悲鳴」をあげています。
子どもたちの悩みのトップが小中高生とも「将来のこと」で中高生では過半数を占め、いま、子どもたちが求める学校が小中高生とも「学校にいるとほっとしたり、楽な気持ちになれる」学校がトップであることが県教委の調査でも明らかになっています。
しかし、全日制高校を希望しても入れない(全日制高校進学率は89.2%とさらにさがって全国最低位)、定時制、通信制が超マンモス校化して安心して学べる環境にない、塾のように成績で授業のクラスを分ける習熟度別授業も実施されています。子どもたちは過度の競争にかりたてられ、安心して豊な学びを受けられない状況が広がっています。いま、神奈川の教育条件と学校のありようが問われています。
さらに、神奈川県は、フリーターの割合(高卒無業者)が沖縄についで全国2書目に多い、生活反古率が1.174%に拡大、教育扶助・就学援助の子どもが10年間で2倍になるなど、経済格差と貧困化の拡大が子どもたちを直撃し、事態をますます深刻にしています。
子どもたちが希望と夢をもって成長する環境を整備するために、県が憲法を行政・政策のすみずみまで徹底し、子ども・教育をめぐる政策を抜本的に転換することが求められています。
以下、私たち神奈川県民の、教育・文化・スポーツに関する切実な要求を提出します。真摯に検討され、要求の政策化につながるご回答をいただくことを求めます。
1.子どもの権利に関する項目
(1)子どもの権利の実現について
@教育基本法や学校教育法などの改定により、特定のイデオロギーにもとづく「愛国心」や「道徳」のおしつけ国家管理が心配されるが、憲法と教育の条理にもとづき、未来に生きる子どもたちのために十分な予算を確保して、「人格の完成」をめざすゆきとどいた教育を実現すること。
A3月28日告示の新指導要領の実施こあたっては、各学校の主体性を活かした教育課程の編成を保障すること。とりわけ、学校行事の内容、実施形態に対して通知や職務命令などによる不当な介入を行なわないこと
以下BCは省略
(2)入学式・卒業式について
@卒業式、入学式における「日の丸・君が代jの強制、押しつけを止めること。またその実施状況について、各校の主体的教育課程編成権を脅かす調査や発表を行わないこと。とりわけ不起立者の調査など個人情報保護条例に違反することを止めること。
A「斉唱」「不起立Jなどで子どもたち・保護者・参加者の内心の自由が浸されることのないように手だてを講じるよう指導すること。特に、外国籍の子どもたち・保護者にたいして配慮すること。
2.国・県の教育行財政に関する項目
(1)全般に関して
@教員免許更新制、多くの問題をふくんでおり、実施の凍結とその撤回を国に要求すること。
A新学習指導要領の教科時数増や内容増の先行実施については、教員の配置をはじめとした条件整備をはかるまで凍結すること。
B全国学力調査が競争教育をあおり、不正行為までうみだすなど、その弊害が一層明らかになっています。来年度以降継続実施しないよう国に求めるとともに、各市町村教育委員会には来年度以降参加しないよう要請すること。また今年の点数結果を公表しないよう要請すること。
C自衛隊主体の音楽祭に、県立高校生や県内の私立中高生を出演させないように県教委として指導すること。川崎市教育委員会後援の「川崎音楽まつり2008」は海上自衛隊横須賀音楽隊、陸上自衛隊第一音楽隊など、まさに自衛隊の音楽隊一色です。自衛隊の海外派兵が行われているなかで、このような音楽祭に教育委員会としての後援や児童生徒の出演を依頼することのないよう、各教育委員会に指導徹底をはかること。
(2)就学援助について
@ 以下について国へ要望すること。
1)2005年度に廃止した国庫補助をもとに戻し、就学援助を必要とする全ての家庭が受けられるようにすること。
3)就学援助を高校まで適用すること。
4)補助単価を引き上げ、進級時に必事な教材や課外活動をふくむクラブ活動にかかる費用についても対象にすること。
Aは省略
(3)県費旅費に関して
@遠足や修学旅行の下見や部活動の合宿などに人数制限があり、その安全実施に不都合が生じたり、中学校の部活動の練習試合などで出張する場合に自己負担の実態がある。公務出張の全てを賄えるよう旅書の予算を大幅に増額すること。
A旅暮支給(支給打ち切りなど)の実態,自己負担、父母負担、PTA負担などの実態を調査し、その結果を明らかにすること。
(4)県立高校に関して
@県教委発表の「教員の勤務実態にかかわる検討会報告書」(2008年3月)でも指摘されているように、上からの業務が職員の多忙化の要因になっている。「観点別評価の高校への導入」、「神奈川あいさつ一新運動」、「地域貢献デー」に加え.今年新たに「部活動の日」が一律一斉に導入された。これらは県立全校の行事や教育活動が創造的に行なわれていくことを阻害する何ものでもありません.このような県教委からの押しつけはやめること。
A国の政策により教員免許状の更新による年30時間の研修が導入された。また、今年初任3年日の職員に新たな研修が加わって、担任を初めてもった職員が研修のため学校を離れることが多くなりました。そのため「現場での生徒の顔の見える研修」や自主的研修の機会が奪われています。これを機に県独自の研修制度を大きく見直すこと。
B県立高校の維持運営費は、一校あたり備品費50万円、需用費・修繕費120万円、図書費25万円など生徒の活勧に支障を来しているのが現状である。私立高校や都立と比べても数段貧しい予算を増額すること。
C今年試行が行われている「学校事務のセンター化」は、入力ミスと訂正をめぐっての学校とセンターのやり取りでバンク状態になるなど、学校現場の混乱を招き、日々の教育活動の大きな障害になっている。検証は「試行をしながら」行うのではなく、1年間の試行をしたあとにしっかりとした検証期間を設けて行うべきである。「学校事務センター開設準備担当」が試行を実施しながら定期的に行っている検証では、どのような問題をどのように行っているのか全教職員に明らかにすること。
(5)国への要望に関すること
@義務教育費国庫負担制度を維持、拡充し、国の負担率を2分の1に復活すること。
A省略
B教員免許を定期的に更新させる制度は、他職種の免許に比べ、著しく均衡を欠くものであり、実施の凍結とそれを撤回すること。
C学校事務職員・栄養職員の給与国庫負担制度を堅持すること。
D教材費・旅費の国庫負担制度復活を図ること。
E新たな教職員定数改善計画を策定実施すること。
F小学校・中学校・ホ等学校の30人以下学級を早期実現すること。
GHI省略
3.児童生徒の必要に応じた学校運営をすすめるための教職員の定数改善に関する要求
(1)暴力行為、不登校、学級崩壊など、神奈川の学校教育はいま大きな困難を抱えている。学校現場で最も強く求められているのは教職員の増員である。国の教職員人件費負担1/2から1/3への変更にともなう国からの税源移譲によって、教職員の人件費に関わる収入増が出ているいま、県独自措置の教職員定員の大幅増員をはかること。
(2)現在の保健室は精神面からも子どもたちをささえている。その今日的役割を考慮し、すべての学校に養護教諭を複数配置することを国に要求するとともに県独自措置をとること。
(3)(4)省略
(5)定数内臨任が増えて、子どもの教育、校務の継続性、校内分掌の編成にも重大な支障をもたらしている。ただちにその実態を調査すること。定数法通りの人数を正規採用すること。教育保障と正規雇用拡大にむけてどのような方針をもっているか、明らかにすること。
(6)大勢いる欠員臨任と、教職員の療養休暇、介護休暇、育児休暇などによる臨任が重なり、一校に4〜5人の臨任、非常勤職員などの非正規雇用教員が生じて、学校運営にも支障をきたす事態が増えてきている。3人以上の臨任、非常勤教員がいる学校とその理由を明らかにすること。(資料請求) また、欠員臨任の解消策を示すこと。
4.児童生徒の必要に応じた学校運営に関する要求
(1)教職員の人事評価制度、査定評価制度導入について
@学校教育で最も大切なものは教職員のチームワークである。教職員集団が協力し生徒に向かい合うなかで、学校教育は成立する。こうした学校教職員の職場に、相対評価に基づき必ず昇給・一時金に差をつけることになる「査定昇給」制度を持ち込むことは、教職員集団を破壊し、教職員の協力体制を妨害することにしかならない。政府の労働経済白書にあるように「職場全体の労働意欲が落ち込む」結果を招くだけである。教職員変への査定昇給制度はやめること。
A第三者機関にゆだねる苦情処理システムをつくること。
B査定賃金導入が学校の共同・協業性を妨げ、子どもたちの教育の困難をさらに増幅することになる。教職員の人事評価とそれに連動した査定昇給、差別賃金の支給は直ちに止めること。
(2)初任者問題について
@子どもたちの教育に夢をいだいて教職についた初任者が、長時間・過密労働などさまざまな原因で健康を害し、意に反して退職に追い込まれる例が頻発している。07年度の新採用教職員の市町村毎退職者数とその退職月、理由を明らかにすること。
Aその主な原因をどのように分析しているか明らかにし、それを防ぐ改善策を示すこと。
(3)教職員の多忙化・時間外勤務問題に関して
@2007年度の療養求職者の数と主な疾患をその日数ごとに明らかにし、過去10年間の経年変化とそれに対する対策を示すこと。
A県教委の調査でも労働法規違反の教職員の勤務実態が明らかになった。それを改善する具体的方策を明らかにすること。
B改書の抜本策を実施するまでの措置として、勤務の開始時刻、終了時刻を記録して、超過勤務については、春休み、夏休み、冬休みなどの長期休業中などに代休をとれるように措置すること。
C労働安全衛生法の改正に基づき、教育委員会と学校長は教職員の労働時間を把握すること。同時に時間外勤務の実態を記録し、振替など適切な回復措置をとること。
D県教委が設置した「教員の勤務実態にかかる検討会」の報告書を広く県民に公表し、学校現場からの意見も集約して、「過労死寸前」の現在の教員の勤務実態を人的・物的・制度的改善策をつくり、その解消をはかること。
E最低限、教員一人ひとりが毎日休憩時間をとれるように条件整備すること。
(4)子ども・保護者が信頼し、教職員が協力しあい生き生きと働ける学校運営に関して日常的に、すべての子どもについて、すべての教職員が直接責任負っていると考えるのが教育条理であり、保護者や世間一般の常識である。一般教職員が目の前の子どもの教育に直接責任を持っていると思うからこそ、意欲的で創遁的な教育活動ができる。また、それでこそ、学校や教職員が、多くの生徒・保護者・地域の信頼を得ることになる。そのために、
@総括教諭の配置から発想して学校運営組織をつくり、県・市町村教委が枠をはめるやりかたをやめること。自由闊達な教育活動ができるように運営上の必要から組織を構成し、それぞれの学校の運営の仕方を尊重すること。
A県教委は一部の管理職と総括教諭を経営層とし、多くの教職員を実践層として分ける、利潤追求型の会社経営組織を学校にあてはめて、学校運営組織を上意下達の組織に変えてきた。その成果と問題点について検証し、結果を公表すること。
5.児童生徒が学習生活を送るための学級編成について
(l)教職員の多忙化が年々深刻になる中、子どもたちに向き合う職員の時間が不足している。ゆきとどいた教育を実現するために、教職員定数の改善と学級規模の縮小(35人〜30人、定時制25人)を直ちに実現すること。
(2)〜(5)省略
6は省略
7.児童生徒が安心して過ごせる学校施設・設備・事業に関する要求
(1)省略
(2)県立高校の老朽校舎の改修と耐震工事を急ぐこと。「要大規模補強」校のうち補強工事未実施校一覧にある校舎を「子どもの命にかかわる問題」として繁急に工事すること。建築後40年を超えた老朽校舎は耐震工事だけではもたない建築物です。直ちに改築計画を策定し、工事に着手すること。 書
(3)県立高校すべての教室に扇風機を設置すること。図書室、視聴覚室にはエアコンを設置すること。県立高校すべてに行き渡るよう計画し、実行すること。
(4)県立高校のトイレを全て洋式にし、各階に障害者用トイレを完備するよう計画的に進めること。
8は省略
9.県立高校再編・入試改革に関わる要求
(l)公立高校入学定員枠について
@希望する子どもたちが高校に進学するに十分な定員を全日制・定時制・通信制の各課程に確保すること。
A2009年度の全日制高校への進学率を何%と計画しているのか明らかにすること。
B「公立高校は公立中学卒集生の60%の定員」他は私学と県外等で定員枠を確保するとする「定員割り振り方式jは実施前から破綻している。全日制高校進学率の低下がその証拠である。経済格差の広がる中で、私学にどうしても行けない家庭が急増している。私学を選べるだけの十分な学費補助の大幅増額が保障されるまではそれは凍結すること。
C当面、定時制高校の学級定員35人を守って、入学定員・学級数を決めること。単学年2−3学級の適正規模を守って、定時制を希望する子どもたちのニーズに応える教育を保障する環境を整えること。
(2)高校入試について
@高校入試の「前期・後期制」のため入試が長期化し、中学校と高校の現場の教育活動に大きな障害となっている。1月の前期選抜入試を中止し、2月実施のみの一本化をはかること。定時制の入試を全日制とずらすこと。
A独自入試問題、入試と調査書の学校ごとに異なる比率、学校ごとに異なる「重視する内容」など複雑すぎる入試制度を抜本的に見直すこと。
B省略
C公立高校入試の受検料について、前期・後期・二次募集すべて1回の「受検」とみなし、1回の納入で受検できるように改めること。必要ならば「手数料数量条例jの改正をすること。
D省略
E入試制度の見直しについては、受験生、中学校、父母県民の意見を聞いてすすめること。
(3)高校再編・「高校改革」について
@1998年の県立高校再編計画(前期)立案時の予測生徒数を2,000人多く堆移することが明らかになった。その結果、公立中学校卒業生が6年後には今年度に比して5,727人増える。県立高校再編計画では、県立高校の適正なクラス規模は1学年6〜8学級としている。この適正規模を超えない形でどのように保障するのか数値を示して明らかにすること。その際、現在各高校で行っている6クラス8展開などの少人数学習を崩さないことを前提にすること。
教室が不足することは明らかである。今予定されている県立高校5校の廃校を中止するとともに、前・後期計画で廃校にした高校のうち復活可能な状態にある高校の復活を含めた再建計画を立てること。
A特色づくり・多様化政策については、公聴会・シンポジウムなどを開き、広く県民の意見を聞き、改革推進計画を抜本的に見漉すこと。「特色づくり・多様化」の名による学校間格差をなくすこと。
B定時制高校の地域性、今日の定時制高校が果たしている役割を考え、横浜市教委と川崎市教委の定時制再編計画を抜本的に見直すよう申し入れるとともに、定時制高校の全県的適正配置を考えて県立の定時制を増やすことも検討すること。
(4)新しいタイプの通信制高校の学習環境充実について
@修悠館高校の入学生と移行生が混乱なく学習に臨めるよう、早急に対策を講じること。特に生徒数に対し教員数が絶対的に不足しているので、法定数にとらわれずに「毎日通える」という条件に合せて弾力的に配置し、学習に支障が出ないよう最善の方法を工夫し、実行すること。
A修悠館高校の2008年度の志願者、入学者、特に退学者について月別に統計をとり、退学理由も明らかにして情報開示できるように記録すること.
B「残す」との県民への約束を守り、湘南高校、平沼高校の通信制課程を再開すること。
(5)高校生の就学保障・経済的支援について
@学費の公私格差を縮小するとともに、学費補助制度の大幅な拡充・増額をはかること。公私立高校への入学に「入学支度金制度」を新設すること。
A経済格差が高校生の日常にも大きく反映しています。普段からアルバイトをしなければ行事参加はもとより、通学にさえ支障をきたす事態も生まれています。県として授業料減免措置を拡大するとともに学費の無償化へむけて検討を始めること。
B県の奨学金制度の大幅な拡充をはかること。また、少しでも多くの家庭で利用できるように奨学金制度について広報活動を促進すること。
C定時制高校の給食費や教科書代を自己負担させないこと。
以下、省略