2007年2月11日

 2006年11月7日に、「いのちとくらしと雇用・営業を守る神奈川県市民実行委員会」による対県交渉が産業貿易センターにおいて、県側総務課長以下37名、実行委員会側20数名にて行われました。そこで取り上げられ、県に示された07年度にむけた高校教育にかかわる要求項目を紹介します。「かながわ定時制教育を考える会」や「神奈川高校教職員連絡会」の会員も参加しました。


W、県民が安心して子育てを続け、青少年、成人が豊かな文化・スポーツを享受できる教育・文化・スポーツ行政を求めて

 日本国憲法にもとづいた教育基本法の条項、「人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として・・・‥自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成」をはかり、「教育の機会均等」 「義務教育無償」 「男女共学」 「教員はは全体の奉仕者であり、身分は尊重され待遇は適正を期す」 「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負う.教育行政は教育の目的を遂行するための諸条件の整備を目標として行わなければなちない」などの条項を、県教育委員会として遵守し、十分に生かした教育行政を今後とも進めることを求めます。

 また、教育行政に携わる教育委員会の公務員は、憲法第99条「…公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」にもとづいて、憲法第26条「教育の機会均等」「義務教育無償」を理解し保障する立場を堅持して、今後とも仕事を遂行することを求めます。

 さらに、現在の国・地方政治の「構造改革J路線の推進で、経済的社会的文化的な格差が拡大し、多くの子どもたちがその影響を受けています。世界の多くの国が批准している「経済的社会的及び文化的権利に関する国際規約」に「高等教育無償化条項(第13条2項C)「高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること」を活用して、高校進学について、経済的・制度的な改善を行い、全日制高校への希望者全員入学の実現を図ることを強く要望します。

 また、子どもたもの教育を司る教員及び教育職員が、県立高校において昨年度1年間で18人もの在職死者を出したことは大きな教育問題です。この間の、人も金もふやさない「教育改革」で、「特色ある学校づくり」推進を進める中での、教職員の長時間過密労働の出現や研修権の大幅な制限、希望を反映しない人事異動などが、教職員の仕事の過密化、ストレスの増大、健康破壊をもたらしているのは明らかです。これらを早急に改革することも強く要望します。

 以下、私たち神奈川県民の、教育・文化・スポーツに関する切実な要求を提出します。これらを早急に検討され、回答いただくことを期待し、要求の政策化を進められることを強く求めます。


1.子どもの権利に関する項目

(1)子どもの権利の実現について
 @憲法・教育基本掛こもとづき、子どもたちの人権の実現をめぎす教育行政を進めることを確認すること。

 Bこれまで生徒が作ってきた「卒業式委員会」を、校長の指示で廃止させた学校があり、保護者からも強い批判が出されている。卒業式の運営に生徒が関わるのを認める認めないは校長の権限かもしれないが、「卒業式委員会」の立ち上げ自体を認めないのは、明らかな生徒の自主的活動の否定である。こうした校長の指導を県教委は正しい教育活動と考えるのか、明らかにすること。また、こうした指導は、子どもの権利条約の精神に反するので、ただちに指導すること。


(2)入学式・卒業式について
 @卒業式・入学式は子どもたちが主人公であり、学校の主体性を尊重して、「日の丸」「君が代」の強制・押しつけをやめること。特に「斉唱」「起立」などで子どもたち・保護者・参加者・教職員の内心の自由が侵されることのないように手だてを講ずるよう指導すること。入学式、卒業式に参加する生徒、保護者、教職員に、君が代斉唱時に起立と斉唱を強制しないこと。

(3)子どもたちをさまざまな人権侵害から守るために
 A「あいさつ一新運動」など防犯から始まった一般行政の取り組みを、学校に押しつける法的根拠を明らかにすること。教職員や生徒に参加強制はできないことを明らかにすること。



2.国・県の教育行財政に関する項目

(1)全般に関して
 @「あいさつ一新運動」の旗に、NTT東日本という一営利企業の名を書き込み、学校で生徒に見えるように掲げることは、県が特定企業を後押ししていることになる。県教委は、学校内での特定企業の宣伝を行わないこと。

 A10月25日の「地域貢献デー」の各県立高校への強制は、明らかに教育基本法第10条で禁止している教育への「不当な支配」にあたる。県教委は、学習指導要領の言葉を用いて合法を装っているが、学習指導要領には「地域責献」なる言葉は存在せず、「地域貢献活動」が学習指導要領に則っているように見せかける県の造語である。県教委自らが制定した「神奈川県立高等学校の管理運営に関する規則」(平成17年10月4日改定)第8条によれば、「高等学校の全日制の課程、定時制の課程および通信制の課程の教育課程は、高等学校学習指導要領の基準により、校長が編成する」とある。同一日に同一内容の学校行事の実施を、県教委が指定した教育委員会規則を侵した行為である。このような「不当な支配」を行わないこと。
                                                                                             C県立川崎高校の吹奏楽部が、「自衛隊川崎音楽祭2006」への出演する件は、子どもたちの意見が尊重されたのか。
 憲法9条自衛隊を自衛軍にしようとの改定案が自民党から出され、陸上自衛隊はイラクから帰還したが、航空自衛隊はイラクでますます活動を広げている。こうした自衛隊に対して、教育委員会は一線を引くこと。                
 自衛隊のイメージアップに利用されるだけのこうした事態が今後ないように対応すること。

 D上記の件で、県立川崎高校校長は、「川崎市教育委員会から依頼があった」と答えている。しかし、川崎市教育委員会は「出演依頼はしていない」と回答している。校長と市教委の食い違いについて事実関係を調べた上で、県教委から、出演取りやめに向けて指導すること。

 E昨年の交渉で県が「認めることはできない」とした課業期間中の授業時間中に県立高校教職員が監督をして業者テストを実施している学校がある。このようなことが行われている理由を、明らかにすること。県下何校で実施されているのか明らかにすること(資料請求)。こうした学校に、適切な指導を行うこと。
 
                                              
(3)県費旅費に関して
 学校配分の県費旅費の使途は、修学旅行、部活動などの学校行事・子どもの引率など削減しようのない項目が多い。義務教育無償の原則、父母負担の軽減、教職員の研修権保障のため、公務出張のすべてを賄うだけの額を配分する必要がある。
 特に、01年度から県費旅費支給方式が変更された。研究会への出張の制限や中学校の部活動の練習試合などで出張する場合に自己負担の実感がある。そこで、旅費支給(支給打ち切りなど)の実態を調査し、制度の問題点を明らかにするのは県教委の責任である。直ちに自己負担、父母負担、PTA負担などの実態を調査し、その結果を明らかにすること。前回も同じ質問をしたが、回答していない。再度、以下の回答を求める。
 @憲法、教育基本法にも反する現場実態があると県民が調査を求めているのに、なぜ実態調査を拒むのか、明らかにすること。


(4)県立高校に関して
 @再編該当校には、3000万円の照明施設、1台25万円の傘立て、1台10万円のべンチなどが、つぎつと配置されている。また、その使用状況はかんばしくないとも聞いている。これにひきかえ、非再編校の維持運営費は、備品費50万円、需要費・修繕費120万円、図書費25万円など、比較の対象になりえない額である。これらの額を、1993年の削減以前の額に戻すこと。

 A私費負担軽減の観点から県立高校の私費徴収の実態を明らかにすること。(資料請求)

 B修学旅行について、県の示したガイドラインの10万円を超えて海外修学旅行を行っている学校がある。このような高校は県下にいくつあるのか明らかにすること(資料請求)。また、なぜこのようなことが認められるのか明らかにすること。海外修学旅行は、参加費用にくわえて、パスポート取得のために2万円程度余計にかかるのみならず、在日外国人の生徒は、再入国時に指紋押捺を求められることにもなる。また、これらの学校の中には、授業料徴収も厳しい家庭が多く、生徒の修学旅行参加率が8割を割るのではないかと危ぶまれている学校もある。こうした実態についてどう考えているのか、明らかにすること。

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4.児童・生徒の必要に応じた学校運営をすすめるための教職員の定数改善に関する項目

(1)現在の保健室は精神面からも子どもたちをささえている。その今日的役割を考慮し、すべての学校に養護教諭を複数配置することを国に要求すること。障害児学校の高等部設置校には3人の養護教諭を配置すること。

(4)定数内臨任が増えて、子どもの教育、校務の継続性、校内分掌の編成にも重大な支障をもたらしている。県教委の責任は重大である。06年度に向けて、それを減らすためにどのような施策をとられたのか明らかにすること。ゆきとどいた教育保障と正規雇用拡大のために07年度に向けてその解消をはかる施策を明らかにすること。
(5)教職員の療養休暇、介護休暇、育児休暇などが重なり、一校に4〜5人の臨任、非常勤職員など非正規雇用教員が生じて、学校運営にも支障がきたす事態が増えてきている。市町村ごとのその実態と理由を調査し、明らかにすること。(資料請求)
(6)また、子どもたちにゆきとどいた教育を保障するために、その改善策を示すこと。

(10県立高校の教職員の週あたり授業持ち時間数を最大で15時間とすること(1時間の授業に1時間の準備が不可欠)。この場合、総合学習の時間は、授業時間に含むものとする。

(11)教職員の勤務条件は、生徒の学習条件である。前期再編校やコース制実施校で、1人の教員が自分の専門科以外の科目も含む5・6科目を担当し、授業準備と会議に追われ生徒と過ごす時間がない実態がある。県教委として、改善策を示すこと。

(14)外国籍児童生徒の日本語教室の増設と充実をはかるとともに、日本語教育の教員を増員すること。それを国にも要求するとともに、国際化にふさわしく、日本語に不自由な児童生徒が在学する学校に、その元国語のできる職員を派遣する基準を現在の5人から引き下げること。

(15)学校の施設設備の維持管理を大幅に後退させ、生徒の学習条件を大幅に引き下げる事務職員と現業職員のセンター化、外部委託をしないこと。



4.児童・生徒の必要に応じた学校運営についての項目

(1)教職員の人事評価制度、研修制度問題について
 @教職員の評価は、子ども、保護者、同僚、専門家なども参加して、教職員の力量向上をめざして行われるべきである。それは本人に開示され本人が納得し、より一層の努力につながるものとすべきである。しかし、県教委が実施している人事評価制度は、主幹・総括教諭制度導入とあいまって、教職員を萎縮させ、同僚性、相互信頼、管理職との信頼関係、協働の妨げとなっている。また、第三者機関にゆだねる苦情処理システムをつくるべきである。県教委は人事評価制度、主幹・総括教諭導入によって、学校がどのように変化しているか調査し、具体的な問題点をあらいだして、県民に公表するとともにその中止をふくむ抜本的見直しをすること。

 A生徒による授業評価の結果を利用し、教員に5段階評価を付けて指導している校長がいる。また、「こういうやり方が、不適格教員のあぶり出しに役に立つ」とも発言している。生徒による授業評価を教員評価に使わないことを確認すること。

 B研修は教職員にとっての義務である。長期休暇中の学校を離れた研修は、奨励されるべきである。長期休業中の研修報告を簡素化するなど研修を取りやすく改善すること。また、研修に関わる費用を公費で補助すること。

(2)教職員の多忙化・時間外勤務問題に関して
 @突発的な生徒指導等による超勤も振り替えやずれ勤、特勤の対象とすること。

 A厚生労働省通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」では、「労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること」その記録は「3年間保存すること」とされている。さらに、国会答弁では、「一般的には命令のない勤務につきましても始業時刻に入る」部活動などについても入る(第153回国会・H13/10/30参議院文教科学委員会・矢野文部科学省初等中等教育局長答弁)とされている。通達についての考え方には、「労働者や労働組合等から労働時間の把握が適正に行われていない旨の指摘がされた場合などには、当該実態調査を行う必要がある」とされている。しかし、夜6時、7時まで学校にいるのは日常化し、9時、10時まで勤務している例もめずらしくない。それは、学校がロックされた時間を調べればすぐに分かることである。教職員の健康破壊、現職死など深刻である。
 05年度の療養休職者の数をその日数ごとに明らかにし、過去10年間の経年変化とそれに対する対策を示すこと。教職員の勤務実態調査を直ちにすすめること。そして、その改善策を明らかにすること。なお、教職員定数などの関係からも市町村立学校にも徹底をはかること。

(3)企画会議・総括教諭に関して
 @企画会議は、学校長の恣意的な希望の実現を図る装置であり、学校内のすべてのできごとに学校長が関わるシステムである。その結果、生徒の実態をよく知らない管理職のごり押しで、生徒に不利になる事態がつぎつぎに生ずる可能性が高い。また、企画会議は、勤務時間を超えて延々と行われることが多く、「総括教諭は時間外勤務は当然だ」と発言する校長も現れている。この実態について県教委はどう考えるのか、明らかにすること。

A担任が企画会議のメンバーとなり、生徒の在校時間中にも事務仕事に忙殺され、進路に関わる生徒面談が実施されず、生徒が迷惑している実態がある。これについて、県教委はどう考えるのか、明らかにすること。



5.児童・生徒がよりよい学習生活を送るための学級編成について
(6)県独自で全日制30人以下学級、定時制25人学級を実現すること。当面、定時制1クラスの人数を35人以下に戻すこと。また、1学校当たりのクラス数も、2002年度の臨時学級増以前に戻すこと。


7.児童・生徒が安心して過ごせる学校施設・設備・事業に関する項目

(2)定時制高校について
 @定時制の給食費や教科書代を自己負担させないこと。

(3)県立学校について
 @知事は、老朽校舎の改築について、発言しているが、その計画を明らかにすること、また、耐震調査と耐震工事のその後の計画や工事実施の進捗状況を明らかにすること。

 A県立高校の各教室に、扇風機を設置すること。それに関わる電力量を確保すること。


10.県立高校再編・入試改革にかかわる項目
(1)公立高校入学者定員枠について
 @公立全日制の開門率を引き上げ、全日制高校への実質進学率を94%以上に上げること。

 A知事も参加する公私立高等学校設置者会議において、公私協調して全日制高校への進学率を引き上げる約束がなされ、県民も大いに期待した。しかし、全日制高校への進学率は90.0%を切って全国最低位となり、子どもたちが犠牲となった県知事の責任は重大である。その原因をどのように分析し、来年度に向けてどのように改善方策をたてているか明らかにすること。

 B高校進学率の希望校種への全員入学を保障するため、県は目標をもって計画的にすすめるべきである。全日制の計画進学率は95%以上に引き上げること。全日制高校の公立・私立の募集定員計画を、全日制希望者が全日制に進学できるだけの枠を確保するように見直すこと。

 C定時制高校の地域性、今日の定時制高校の果たしている役割を考え、横浜市教委と川崎市の定時制再編合理化計画を抜本的に見直すよう申し入れること。

 D中学校卒業生の進路希望調査結果をふまえて、「希望する子どもたちに高校教育を保障する」基本にたち、学級を35人定員にもどすこと。また、教職員の配置、施設設備など、それに伴う教育条件整備を行うこと。


(2)高校入試について
 @高校再編と高校入試制度改革は広く中学生、高校生、教職員、父母、県民の意見を組み入れて希望者全入の視点で見直すこと。 

 B学校間格差を拡大し、受験競争を激化させる学区の撤廃と、5人に3が不合格となって受験生に不必要なダメージをあたえる前期・後期の分割募集は中止すること。普通高校の偏りについては隣接学区で調整すること。また、独自入試問題、入試と調査書の学校ごとに異なる比率、学校ごとに異なる「重視する内容」など複雑すぎる入試制度を抜本的に見なすこと。


(3)高校再編について
 @県立高校再編計画の後期計画の高校削減を中止すること。計画策定時の生徒数より5000人(約20校募集分相当)を増えることが明らかになり、適正規模の高校を前提とするならば、これ以上の高校削減は県の方針とも相容れないものとなっている。多様化政策については前期分の到達点と問題点を検証するために、公聴会、シンポジウムなどを開き、広く県民の意見を聞き、改革推進計画を抜本的に見直すこと。

 B観点別評価は、文部科学省も高校での実施を予定していない。なぜ、神奈川県のみ、観点別評価導入をすすめるのか、理由を端的に答えること。また、観点別評価実施により、評定が生徒の学力や技術の水準を正確に反映したものでなくなるため、結果として学力や技術水準の低下が起こることが十分に想定される。観点別評価の一律拙速な導入をやめること。


11.不登校の子どもたちが豊かに生活できるための項目
(1)不登校の子どもたちの現状を理解し、教育行政に反映するために、不登校の親の会やフリースペース運営者との懇談会を定期的に開催すること。

(2)フリースペース、フリースクールに公的補助を行うこと。

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