2004年12月30日

 2004年11月11日と15日に、「いのちとくらしと雇用・営業を守る神奈川県市民実行委員会」による対県交渉が行われました。そこで取り上げられ、県に示された05年度にむけた高校教育にかかわる要求項目を紹介します。


W、県民が安心して子育てを続け、青少年、成人が豊かな文化・スポーツを享受できる教育・文化・スポーツ行政を求めて

1.子どもの権利に関する項目

(1)思想・良心の自由の尊重と平和に暮らす権利について

@子どもの権利条約、憲法、教育基本法、児童憲章などの精神を県民に広め・定着させる県民的運動が求められている。県の子どもに関わる諸政策・方針を、その主旨ととくに「子どもの意見表明権」を取り入れて見直しをはかるとともに、「神奈川の教育を推進する県民会義」等主導で全県各地でシンポジワム等開くなど検討し、県民運動として実施すること。また、教育基本法の改悪をしないよう・国に働きかけること。

A憲法19条に基づき思想良心の自由が尊重されることを、子どもたちにしっかりと教えること。また、思想や信仰.良心に関わることについては、学校教育でも強制できないことを、しっかりと教えること。

B国際化の進む中、日本にとってはとりわけ東アジアの平和維持と国際交流が求められている。過去の時代における日本国の振る舞いの歴史や東アジアの人々の感じ方などについて、学校教育でしっかり教えること。また、歴史の中で果たした「日の丸」や「君が代」の意味や役割、そして、これからの東アジアの人々との交流の中での必要な配慮などついて、きちんと教えること。

C教育基本法の精神を生かし、子どもたちの「内心の自由」を保障するために、「心のノート」の活用を強制しないこと。また、各学校に対し活用したかどうかを調査し提出させないこと。

(2)入学式・卒業式や、学校運営への子どもたちの参加などについて

@入学式・卒業式において、生徒・保護者・教職員の「思想・良心の自由」を保障すること。とくに、「斉唱」・起立」などで子どもたち・保護者・参加者・教職員の内心の自由が侵されることのないように手だてを講ずるように指導すること。また、ILO・ユネスコの「教員の地位に関する勧告」に基づき、教員の市民的権利をどのように尊重するのか、明らかにすること。

A入学式・.卒業式については、上からの画一的なお仕着せでなく、子どもを中心に教職員・保護者ともども喜び合える式の内容を学校ごとの判断で行えるようにすること。

B子ども・保護者・教職員による学校運営参加を実現すること。とくに、子どもたちは、単なる「消費者」としての参加ではなく、生徒会などを軸に学校運営の「主体者」としての参加のしかたを探ること。また、学校評議委員会に子ども代表の参加を義務づけるなど・子どもの意見が反映できる仕組を作ること。


2.国・県財政に関する項目
(3)県立高校について
 県立高校への予算配当が減る中で、教科教材の購入や環境整備に私費を充てている高校がふえてきた。机・椅子、掃除用具、カーテン、ストーブなど生徒の学習生活にとって最低限必要な備品や消耗品の購入可能な県費の配当を行うこと。また、保護者の私費負担を軽減すること。


3.児童・生徒の必要に応じた学校運営をすすめるための教職員の定数改善に関する項目
(2)高校現場で欠員が生じている「数学」や「理科」などの教科については、新規学卒者の採用をして定員補充を行うこと。また、「情報」「総合的学習の時間」や「産業社会と人間」などの新しい科目について、現場の要求に基づいた人的配置や非常勤講師時間配当を行うこと。

(3)全国最悪の小中高生の暴カ行為、不登校、陰湿化するいじめ問題などの解決は緊急対応を必要としている。それを未然に防ぎ、子どもたちの精神的不安解決や、保護者・教職員の相談にも大きく役立っているスクールカウンセラーと相談員の全学校配置を国に要求するとともに、県独自の措置でもすすめること。保健室登校の生徒数と指導職員の実態を調査して明らかにするとともに、そうした生徒がいる学校には、指導するための補助員を配置すること。

(4)県立高校のスクールカウンセラーは拠点校以外では学期に1回程度しかまわってこないのが実態である。最低でも週1日8時間のスクールカウンセラーの全校配置を実現すること。

(5)学校事務職員の3人化は、生徒・保護者など県民サービスの大幅低下を招くのみならず、電話対応の教員への委託など教育活動自体の縮小を招くことは明らかである。最低でも学校事務職員は4人配置すること。

(6)現在の保健室は精神面からも子どもたちをささえている。その今日的役割を考慮し、すべての学校に養護教諭を複数配置することを国に要求すること。障害児学校の高等部設置校には3人の養護教諭を配置すること。


4.児童・生徒の必要に応じた学校運営についての項目
(1)教職員の人事評価制度、研修制度問題について

@県教委が実施している人事評価制度は、いま、教職員の目を子どもよりも管理職や行政に向けさせ、学校の開放的な雰囲気や管理職との信頼関係をゆがめ、子どもたちが犠牲となる事態へとすすむことが心配されている。教職員の評価は、子ども、保護者、同僚、専門家なども参加して、教職員の力量向上をめざして行われるべきである。それは本人に開示され、本人が納得し、より一層の努カにつながるものに改めるべきである。

A「新たな人事評価システム」について、制度趣旨である「人材育成・能カ開発・教育力向上」という観点での制度実施後の評価・分析の見解を示すこと。
B制度実施上の客観的困難や、公平性・透明性・納得性の得られない現状から、撤廃もふくめた検討をすること。
C評価結果をもとに、安易な「指導力不足教員」の認定は行わないこと。
D評価結果については、人事・給与上の処遇への反映をしないこと。

E学校教育のさらなる活性化と教職員の育成のために、教特法22条に基づく自主的な研修を奨励すること。「県民への開示」を口実として、県教委主催以外の民間の研究団体や学会の開催する研修への参加を「研修」として認めない校長に対して適切な指導を行うこと。また、教職員の全般的な教育力量の向上の観点から、研修の内容を特定の授業の準備にかぎるなど狭く捉えないように指導すること。

F国民全体に直接に責任を負って学校教育を行う教職員の研修は、自主・民主・公開を原則とすべきである。新たに実施されている10年研修の内容、実施などの問題点を明らかにするために、該当者にアンケートなどを実施し、県民に明らかにするとともに、抜本的見直しをはかること。

(2)教職員の多忙化・時間外勤務問題に関して
 職員室の多忙化と長時間勤務の恒常化の中、健康を害したり、暗い顔、疲れた顔をした教職員が増えてきた。教職員の健康と笑顔は、子どもたちの教育条件である。

@県教委は、教職員の時間外労働の実態把握をすること。また、していない場合はその理由をあきらかにすること。

A1972年1月1日付の教育長通知「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別搭置に関する条例の施行について」は、明らかに教育職員の時間外労働を否定し、やむを得ざる時間外勤務の場合の割振り変更による実質的な時間外労働の排除を求めている。校長の権限において、各学校での割振り変更による時間外勤務の実質的解消ができるように即座に措置すること。

B厚生労働省通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」を各県立学校に文書通知して徹底をはかったというが、その結果どのように改善されたかを明らかにすること。ざらに、教職員定数などの関係からも市町村立学校にも徹底をはかるζ;と。

C通達では、「労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること」その記録は「3年間保存すること」とされている。さらに、国会答弁では、「一般的には命令のない勤務につきましても始業時刻に入る」部活動などについても入る(第153回国会・H13/10/30参議院文教科学委員会・矢野文部科学省初等中等教育局長答弁)とされている。通達についての者え方には、「労働者や労働組合等から労働時間の把握が適正に行われていない旨の指摘がされた場合などには、当該実態調査を行う必要がある」とされている。
 県内の公立学校では、その「確認」「記録」が適正に行われていない学校が多い。県教委は、教職員の時間外勤務、持ち帰り仕事の実態調査をして県民に明らかにすること。

D教職員に時間外勤務を命じることができるのは4項目に限定されているが、実態としてそれ以外の時間外勤務があることを県教委は認めている。しかし、その解決を校内操作に求めているが、それが実効性のないことは悪化の一途をたどっている実態からも明らかであり、直ちに以下の改善策をとること。

1)教育委員会などへの提出書類を整理統合して減らすとともに、その簡素化をはかること。

2)「1時間の授業に1時間の準備ができるだけの教員配置」(02年5月23日、文科省・矢野初等中等教育局長の国会答弁)を実施できるように教員を配置すること。

3)夏休みなど、子どもたちが学校に来ない日に、課業中の時間外勤務の代替休暇などの回復措置の運用をはかること。

4)「休憩時間につきましては、…適正に実施しているものとかんがえておりますが、…指導等を行ってまいります」と前回回答している。その後、指導はどのように行われ、どのように改善されたのか明らかにすること。
 また、労働者から労働時間の把握が適切に行われていないとの訴えがあった場合には、実態調査を行う必要があるというのが労働厚生省の考え方である。この方針に従って、労働墓準法違反の実態を各設置者が調査し、改善の手だてをこうずるように、それを県教委自らが実施するとともに市町村教委を指導すること。
 児童生徒が学校にいる時間帯でも、教職員が休憩・休息をとれるように人員配置や休憩室の整備など条件整備をはかること。

5)労働基準法の主旨からして、「休憩を勤務時間の途中に置かなければならない」規定は、「勤務の始めまたは終わりに置くことが認めらsれない」規定とどちらが上位の規定か明確に示し、休憩が取得できなかった場合には、始業から8時間勤務した後は勤務から解放されると考えるが、これについての県教委の見解を改めて示すこと。


7.児童・生徒が安心して過ごせる学校施設・設備・事業に関する項目
(1)全般について
 危険な校舎・施設をただちに改修し、トイレ・耐震・クーラーをはじめとする学校施設の改善・充実のため予算を確保すること。

(2)定時制高校について
@定時制設置校の夜間グランド照明および屋内照明改善、夜間給食制度の改善など定時制の教育条件を改善すること。

A定時制の教科書無償・給食費補助制度について、生徒の実態にかなった認定基準の弾力化を行うこと。

(3)県立学校について
@耐震診断の行われていない校含についていち早く耐震診断を行うこと。また、その結果を公表し、いち早く耐震工事を行うこと。

A老朽校舎、老朽給水設備、老朽放送施設などの修繕を行うこと。
B校内のアスベストなど生徒の健康被害を引き起こす問題に対策をとるとともに、シックスクール対策を進めること。また、実施した調査結果を県民に公表すること。

Cトイレのとびらや壁の材質の改善や必要な修繕を行うこと。
D基地周辺校の空調施設設置については、現場の実態や生徒の健康維持のために必要な財政的措置をとること。


10.県立高校再編・入試改革にかかわる項目
(1)公立高校入学者定員枠について

@この春、計画進学率を引き下げ、公立全日制定員を削減して、定時制の3次募集まで実施せざるをえなかった混乱の反省の上に、高校進学希望者の希望校種への全員入学を保障するため、全日制の計画進学率を95%以上に引き上げること。同時に、全日制高校の公立・私立の募集定員計画を志願の実態に合うように見直すこと。

A定時制高校の地域性、今日の定時制高校の果たしている役割を考え、横浜市教委の定時制再編合理化計画を抜本的に見直しさせること。

Bまた、全日制不合格者が増えることによって定時制に入学せざるを得ない人が増え、定時制のクラス定員が40名となるしわ寄せが起こっている。定時制のクラス定員を35名に戻すために、全日制入学定員を増やすこと。そして、様々な問題を抱える生徒が学んでいる定時制のクラス規模をいち早く30名以下にすること。

C「県立高校定時制再編通知」(1997年2月)によるr募集停止基準」を見直し、三浦地区における県立夜間定時制の募集を再開すること。

(2)高校入試について
@県立高校の入学金、授業料の値上げをしないこと。県立高校の入試は、1度の受検料で、一連の入試(前期入試、後期入試、2次募集)を受検できるようにし、受検料の二重取りをしないこと。

A受検競争の激化を助長し、中学生に負担を強い様々な問題が生じることが予想される独自問題入試と調査書の学校ごとの比率問題などは中止すること。また、学校間隔差を拡大し、受験競争を激化させる学区撤廃は行わないこと。普通高校の偏りについては隣接学区で調整すること。

B定時制では、前期選抜の入学者割合を学校裁量で決めることができるようにすること。
C県教委の募集計画が達成できるよう、私学助成を大幅に増額すること。
D公私立高校への入学に支度金制度を新設すること。

(3)高校再編について
@県立高校再編後期計画を凍結・停止すること。再編統合はやめること。実質的にエリート高校づくりになる「中高一貫校」の設置はしないこと。とりあえず、当面延期し、前期分の到達点と問題点を検証するために、公聴会・シンポジウムなどを開き、広く県民の意見を聞き、改革推進計画を抜本的に見直すこと。この間、公立高校の定員不足のために、中学校卒業者に進学を断念させてしまった事実、30人学級も見通して公立高校の削減は中止すること。

A前期再編校では、1人の教師がさまざまな科目を多数担当し、1つの授業内容が低下する事態が起こっている。各科目の開講に必要な教職員を非常勤講師もふくめて配置すること。

B前期再編校では、多くの選択科目履修システムの中で、クラス担任が生徒を把握することが困難になっており、教師個人の携帯電話で生徒に必要な連絡を取ることが多くなっている。また、クラスや担任教師との結びつきの薄さから、保健室で支えている生徒も増えている。生徒の実態に応じたカリキュラム運用を認めること。また、養護教諭を複数配置すること。

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