2003年5月15日

 昨年11月7日と11日に、、「いのちとくらしと雇用・営業を守る神奈川県市民実行委員会」による対県交渉が行われました。その交渉を踏まえ、再提出された03年度重点要求項目に対する県の回答(主に高校教育に関わる部分)の一部を資料として、以下に掲載します。

W、県民が安心して子育てを続け、青少年、成人が豊かな文化・スポーツを享受できる教育・文化・スポーツ行政を求めて

1.子どもの権利に関する項目

【要求】
(1))「日の丸・君が代」の教育への強制・押しつけをやめること。県教育委員会は校長や教頭に対して、毎年行われている通知やよびだし、卒業式や来年度の入学式への取り組み状況の調査を行わないこと。

【回答】
 国旗の掲揚、国家の斉唱については、「学習指導要領」の特別活動の中に明確に位置づけられておりますので、その趣旨に基づいて実施されているものと考えております。
 県教育委員会としましては、従来から「学習指導要領」の適正な実施を各県立高校にお願いしております。
 調査につきましては、県教育委員会として、各県立高校の教育課程の実施状況について把握しておく必要があると考えております。調査結果については、現場に混乱が生じないように配慮しながら、必要に応じて発表することも考えております。なお、調査ならびに発表にあたっては、教育的配慮をしていきたいと考えております。

【要求】
(2)子ども、保護者が行事に参加する場合、内心の自由を守るために配慮すること


【回答】
 「学習指導要領」では、入学式や卒業式を儀式的行事として位置づけており、校長・教員は「学習指導要領」に基づいて児童・生徒に国旗・国家の指導をする必要があります。
 このことは、児童・生徒の内心にまで立ち入って強制しようとするものではなく、あくまでも教育上の指導として行うものであると考えております。
 なお、入学式・卒業式のおける国旗・国家に関する指導は、学校では「学習指導要領」に則って行うわけですから、その対象は児童・生徒でございますので、保護者は直接その対象にはなっておりません。

【要求】
(3)卒業式、入学式は、子どもを主人公とした行事にすること。


【回答】
 「学習指導要領」では、卒業式・入学式を「儀式的行事」として位置づけて、校長、教職員が主体となる行事としており、文化祭など生徒が創意工夫を生かしながら学習活動の成果を発表するような「学芸的行事」とは区別しております。


2.国・財政に関する項目

【要求】
(1)県費旅費が不足して、行事の削減や教職員の自己負担、行事などに関わる父母負担になっている事実が、11月の交渉の場で明らかになった。03年度の旅費を増額するとともに、02年度の旅費支給の打ち切りや父母負担・PTA負担などの実態を調査して公表すること。

【回答】
 旅費予算については、公務旅行の必要性等、その内容を十分考慮しながら、予算の範囲内で効率的・計画的に執行するよう指導しておりますが、学校行事等の教育活動に支障が生じることのないよう所要額の確保に努めており、交通費、宿泊費等、旅費で措置すべき経費ついては、実費を支給しております。

3.児童・生徒の必要に応じた学校運営を進めるための教職員定数を主とする項目

【要求】
(1)緊急性の高い以下の教職員定数改善について措置すること。
@市町村独自に30人学級・少人数学級を措置する場合はそれを認めること。


【回答】
 市町村独自の措置による30人学級実施要望があった場合については、学級増に対する人的措置あるいは学校運営全体に及ぼす影響等を見極めながら慎重に検討してまいります。

【要求】
B不登校が中学で7000人を越え、その多くは保健室の指導を受け、保健室登校も増えている。その子どもの実態と指導者の実態を調査して明らかにするとともに、保健室登校生徒がいる学校には、指導するための補助員を配置すること。

【回答】
 保健室登校の児童生徒については、平成12年10月に11年度の状況を調査しており、この結果、県内では保健室登校をしていた児童生徒は、小学校361人、中学校613人、高等学校159人、養護学校1人で合計では、1134人です。
 なお、指導職員の実態調査はしておりませんが、保健室に体の不調や心の悩みを抱えた児童生徒が来室した際には、養護教諭が相談にのり、また必要に応じ指導、支援等をしております。
 補助員の配置については考えておりませんが、今後も、全学校に配置されておりますスクールカウンセラー、あるいは心の教室相談員の更なる活用を図るとともに、より一層の連携に努めてまいりたいと考えております。

【要求】
CADHDに認定された児童生徒が児童生徒が普通級に在籍して、その混乱が深刻な問題になっている。学校の要請があった場合は補助員を配置すること。

【回答】
 小・中学校の特殊学級の障害児介助員の配置については、学校の設置者である市町村の判断で行われるようお願いしてきたところです。平成13年度には障害児介助員制度が35市町村で導入され、一定の成果を得ました。
 同様に、普通級への補助員(介助員)についても、学校の設置者である市町村の判断で行われるようお願いしております。


4.児童・生徒の必要に応じた学校運営についての項目

【要求】
(1)県教委は教職員の人事評価制度を03年度より本格実施しようとしている。その前提となる試行は実質的には2ヶ月程度であり、どのような教育効果があったのか、どのような問題を学校・教職員に生み出す危険があるかも明らかになっていない。子どもにとって人生一度である教育の計画は慎重でなければならない。今回の試行の結果を明らかにするとともに、十分な試行を行い、その結果の分析、教職員、保護者、子どもたちの声を反映するために、03年度実施を再検討すること。


【回答】
 平成14年度上半期を中心に行った試行の結果については、@評価結果の分析、A試行校の全教職員に対して実施したアンケート結果の分析、B試行校の所管する市町村教育委員会への聴き取り調査の三つを柱として検証し、「試行結果の概況について」として取りまとめました。その後、教育事務関係者で組織した教職員人事制度検討委員会において、それらを踏まえて更に検討し、平成15年2月7日に新たな人事評価システムについての最終報告書がまとめられたところです。
 この最終報告書をもとに細部を整理し、現行の勤務評定に関する規則を改正した上で、平成15年4月から本格実施する予定であります。

【要求】
(2)厚生労働省通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」の徹底が不十分であるとともに、その実態を県教委が把握していないことが11月の交渉の場で明らかとなった。「労働者や労働組合等から労働時間の把握が適正に行われていない旨の指摘がなされた場合などには、当該実態調査を行う必要がある」とされている。県教委はその実態を調査し、公表するとともに、改善策を明らかにすること。

【回答】
 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」は文部科学省は「公立学校教職員にも基本的には適用される」としており、校長は所属教職員に過重な長時間労働を課すことのないよう、適切な対応をとることが必要と考えております。
 教育委員会として、平成14年5月17日付けで各県立学校あてに「総労働時間の短縮に関する指針等について」という通知を出し、新たに定められた(以前の通知を廃止、新指針策定)「総労働時間の短縮に関する指針」を周知したところです。
 教職員の勤務実態調査については、行っておりませんが、引き続き、校長が労働時間の短縮の取り組みや、一部の教職員に過重な負担がかからないような適正な校務分掌の配分、会議の効率化等の校務運営の効率化を図ること、さらには、時間外勤務命令ができる4項目の適正な取り扱いを行うよう、指導してまいります。
 なお、文部科学省に確認したところ、厚生労働省通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について」のうち、実態調査に関する項目は公立学校教職員に適用はないと聞いております。


5.児童・生徒が安心して過ごせる学校施設・設備・事業に関する項目

【要求】
(1)相模原の高校で女子生徒が落下してきた壁(30×20cm)で大ケガをしました。生徒の大腿部にあたった傷は治らずに残るそうです。大至急すべての高校の外壁の点検と修理を行い、ケガをした女子生徒に対して県教委の責任はどのようにとられたか報告すること。


【回答】
 外壁の老朽化については、これまで建物の保全調査により実施の把握に努め、その調査結果を踏まえ、対策を講じてまいりました。また、ケガされた生徒および保護者に対しましては、誠心誠意をもって対応しておりますし、傷の問題についても、本人ともども専門医に相談のうえ、適切に対応していくこととしております。

【要求】
(2)「壁やひさしが落ちて(けが人が出て)から、調査・修繕を開始するのではなく、県立高校校舎・施設の老朽化調査を、せめて20年経過の段階で一律に実施すること。全県立校舎・施設の老朽化・修繕を計画的に実施する計画を立てること。

【回答】
 学校施設の老朽化については、平成10年度より建物等の保全調査を実施し、実態把握に努めており、その調査結果を踏まえ、必要な対策を講じております。

【要求】
 (3)県立高校の耐震診断実施について報告すること。


【回答】
 県立高校の耐震診断については、防災局で実施しており、地震防災対策強化地内の学校は全て完了しております。
 また、地震防災対策強化地域外の学校については、防災局が順次実施しております。

【要求】
 (4)県立高校の職員室の冷房化を早急に実施すること。教室については、基地周辺の空調ダクトのついている高校に対して早急に冷房化を進めること。


【回答】
 職員室の空調設備については、平成14年度から新たにクーラーを設置することとし、今年度については高校20校、養護学校3校について設置しております。
 平成15年度についても夏期の活動状況や周辺環境の状況等を踏まえ、順次整備していくよう準備を進めております。
 厚木基地周辺校の防音対策については、県立高校改革推進計画による校舎建て替えや大規模改修等との整合を図りながら進めており、前期再編整備の対象となっている2校の既設換気設備の空調設備への交換について、防衛施設庁に対し補助申請を行い、交付決定をいただいているところであります。

【要求】
 文部省は今後10年間で30万教室にクーラー設置の計画を発表し、来年度の概算要求に当面100億円が盛り込まれています。このことについてどう受け止めているか。県教育委員会としての計画や実施状況を明らかにすること。

【回答】
 文部科学省においては、教室のクーラー設置の国庫補助事業化を見送ったところであり、現在の本県の財政状況を考えますと全ての県立学校の全ての教室に対してエアコンを設置することは大変難しい状況です。
 今後は、他の都道府県の状況や地方交付税での財源措置の状況等を見極めていきたいと考えております。

7.県立高校の再編・入試改革に関わる項目

【要求】
(1)高校再編の後期計画については、これ以上の高校削減は行わないこと。特に、30人学級の実施についての国並びに他県の状況を見据え、30人をクラス基本数としたクラス数の精算をもとにした計画案とすること。


【回答】
 県高校改革推進計画の後期実施計画は、平成17年度から実施する計画であり、県立高校を質と量の両面から改善するという、県立高校改革推進計画の基本方向に沿って、県立高校を取り巻く諸課題などを踏まえて、策定してまいりたいと考えております。
 また、県立高校の再編については、生徒数の動向を踏まえ、活力ある教育活動を展開するために、適正な規模を確保するとともに、生徒の多様な学習ニーズに対応し、新しいタイプの高校をバランスよく配置していく観点から、再編整備を計画してまいりたいと考えております。
 平成13年度からスタートしました第6次公立高等学校教職員定数改善計画は、学級編成の標準は40人のままとし、学科や教科の特性に応じて、少人数によるきめ細かな指導を行うなどの教職員定数の改善を目指しておりますので、本県においても国の改善趣旨に沿った改善を行ってまいりたいと考えております。
 なお、県が独自に30人以下の少人数の学級編成を実施することにつきましては、配置に要する膨大な経費を県が負担していく必要がありますので、現実問題としては困難な状況であります。

【要求】
 (2)「県立高校定時制再編通知」(1997年2月)による「募集停止基準」を見直し、三浦地区における県立夜間定時制の募集を再開すること。横浜弁護士会が出した勧告についての県教育委員会の見解を示すこと。

【回答】
 三浦地区に設置されていた県立三崎高校の定時制課程については、入学者の実績が平成9年2月の「県立高等学校定時制課程再編の基本的考え方」における募集停止の基準に該当したことから、地元の関係の方々からご意見や地域の実情を伺うとともに、今後の生徒数の動向等を斟酌した上で、基準に則して募集停止せざるを得ないと判断し、平成11年度定数計画において募集停止を行いました。
 平成14年度3月に定時制課程は閉鎖しておりますが、今後の生徒数の動向等を踏まえ、募集再開は考えておりません。
 横浜弁護士会の勧告については、横浜市立高校定時制課程の再編計画の見直しを求めるものでありますので、横浜市が主体的に判断すべきものと認識しておりますが、公立高校の定員計画については、県と横浜・川崎・横須賀の三市と協議する場がありますので、その中で、定時制を含めた適正な定員計画の策定に努めてまいりたいと考えております。

【要求】
 (3)横浜弁護士会の横浜市教委に対する「勧告」でいう、子どもたちの学習権を保障する基本にたって、全日制の募集定員枠を最大限活用するとともに、定時制の募集定員を弾力的に運用できるようにすること。
@中学校卒業生の進路希望調査結果と入試志願結果を踏まえて、「子どもたちに高校教育を保障する」基本にたって、全日制の募集定員枠を最大限活用するとともに、定時制の募集定員を弾力的に運用できるようにすること。

【回答】
 高校教育は公立だけでなく、私学も重要な役割を担ってきており、高校の入学定員につきましては、従来から公私協調の考えのもとに、高校進学者の受入枠の確保に努めているところです。
 進路希望調査では、毎年、公立中学校卒業予定者の8割を超える生徒が公立の全日制高校を希望しておりますが、価値観が多様化している現在、教育の場面でも多様な人材を育成することが求められておりまして、私学の建学の精神に基づく教育や特色ある教育も、公教育の中で重要な役割を果たしております。
 こうしたことから、今後とも、公私で協調しながら高校進学者の受入枠の確保に努めてまいりたいと考えております。
 定時制の定員計画につきましては、弾力的な運用は困難でありますが、全日制への志願の見通しや定時制高校への受検動向などを見ながら、定時制高校を設置する横浜・川崎・横須賀の三市とも協調を図り、適正な定員計画の策定に努めてまいりたいと考えております。

【要求】
A不況・リストラなど経済状況の悪化が続いている中で、必要な生徒には何らかの形で高校入学支度補助を行うこと。

【回答】
 経済状況や雇用状況が悪化する社会情勢を踏まえて、県教育委員会としては、家計の状況が思わしくない方が安心して学業を継続できるようこれまでの奨学金制度に加えて、より学資の支援を必要としている方を対象にした高等学校特別奨学金を平成14年度に新設いたしました。
 また、授業料以外の教育費負担を勘案して貸与月額を国公立在籍者は18,000円、私立在籍者は30.000円に増額するとともに募集人員枠の拡充、年度途中の家計急変者を対象とした随時の貸付、返還免除要件の緩和などを新たに実施したところです。

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