2002年2月8日
  1月26日、横浜市内西区の横浜市従会館で「定時制高校をつぶさないで! ― 募集停止の撤回を」というシンポジウムが開かれました。主催したのは、「よこはま定時制父母の会」と「横浜市立定時制高校の灯を消さない会」で、約100名の生徒や卒業生、父母、教職員、市民が参加しました。

  2人の定時制在校生が、「弱い人、不登校の子が最後にゆきつく場である定時制を奪わないで」と発言しました。また、現在港高校1年生に子どもが通っている母親が、「人の痛みがわかる、優しい子どもが育つ定時制をつぶさないで」と涙で声をつまらながら訴えました。さらに、今回の募集停止が学習権の侵害にあたることを弁護士が指摘、また中学校の教員や県立高校、市立高校の定時制教員が定時制がなくなると、高校教育を受けることができなくなる子が出てくる恐れがあることなどを発言しました。

  以下、保護者と生徒の発言を資料として紹介します。


人の痛みがわかり、優しい子どもが育つ定時制高校をつぶさないで

司会  それでは、皆さんお手元に資料が入っていたかと思うんですが、横浜市立定時制高校統廃合に関わる人権侵害救済申立書というのが入っております。そのいちばん後ろに、私たちのこの運動の中身が年表で載せてあります。

  「父母の会」そして「(横浜市立定時制高校の灯を)消さない会」の活動が書かれてありますが、ここで見ていただいても、去年から(活動が)始まったというわけではなくて、1995年くらいからさまざまな取り組み、横浜市内で行われており、その最も中心的な役割というんですか、本当に自分自身のお子さんの問題で苦労されている方が、何とか定時制の高校をつぶさないでと、そういう思いで、皆さんいろんな努力をされてきました。今日は、そういった父母の生の声を皆さんにぜひ聞いていただきたいと思います。

  「父母の会」 のKさん、お子さんは港高校に行かれていらっしゃるそうです。よろしくお願いいたします。


Kさん  ただ今ご紹介いただきましたKです。私は、今まで活動をたくさんしてきたわけではなく、たまたまうちの子、去年の4月に港高校定時制に入らせていただいたというきっかけで、たまたまここに座らせていただいているというだけのことです。去年(のシンポジウムで)は、そちらの席に座らせていただいて、皆さんの話を聞かせていただいた立場です。

 我が家の息子も、ご多分に漏れず不登校を3年間続けました。去年の今頃は、定時制高校に行くと言い出したけど、本当にこの子は行くのか、通っていけるのか、他のお子さんと仲良くやっていけるのか、心配で子どもには言いませんでしたが、親は不安でいっぱいでした。

  定時制高校に入らせてもらって本当にありがたいと思うのは、子どもは行くのがいやだと言わないのです。自分で、時間になるとサッサと支度して、「時間だから行って来るね」と声をかけて、出ていっております。こういうことは、中学校の3年間1度として、経験しませんでした。(声が詰まる)

会場   頑張って

Kさん  すいません。親として、そういう姿をみたいんです。みなさんもそうだろうと思います。親である以上、子どもの笑顔をほしいんです。そんな思いで、今日ここでお話をさせていただきます。

  実は、うちの子は部活動を今、しております。部活動で、ベースギターを弾いているので、登校する時、ベースギターを抱えていきます。帰りはもう深夜という時間になって、終電ギリギリで帰ってきますので、もうバスはありません。そうすると、30分近い道のりを、彼はギターを抱えて、ちょっとお腹を空かして、寒くて、そんな状態で帰ってきます。

  でも、部活をやめる、学校にもう行きたくないという言葉をひとつも言いません。それだけ彼は、毎日毎日楽しい、新しい経験をしているんです。

  ところが、中学3年間は運動会も知りません、修学旅行ももちろん知りません。教室の授業さえ、ほとんど彼は知りません。先生といえば、自宅に来ていただいて、たまにお話をするだけ。でも、中学の先生もいらっしゃるかもしれませんが、たまたまうちは恵まれていて、ちょっと英語読んでみないとか、漢字書いてみないという、優しい言葉をかけていただけるような先生方にお会いできたので、子どもとしては学校にはいいイメージはなかったにしろ、多少は先生たちには、捨てたもんじゃないなとか、大人にも先生方にも、こんな先生もいるのかなという思いで、定時制を選んだと思います。

  定時制の中に入って、もやはり多少のトラブルはありました。多大なる失敗をして、担任の先生やいろんな方たちにご迷惑をかた時に、本当に先生たちが子どもたちを助けて下さいました。彼は、それを十分にわかっています。ですから、あの担任は嫌いだとか、あの先生は生意気だって言います。でも、どっかで認めています。ですから、ちゃんと授業に出てない時もありますが、どうにか単位を取れるというか、2年に進級できる程度には出席しています。

  ですから、先生たちが頑張っている姿、一生懸命な姿を見ている生徒たちは、先生に絶対ついていくんだと思うんです。ところが、今の中学、申し訳ないのですが、どうも全日の先生方の中にはそうじゃない先生がたくさんいらっしゃるようで(笑い)、こんなこと言っては失礼ですが、もうちょっと真剣に子どもの話を聞いたり、一生懸命子どもと向き合っていただきたい。できることなら、中学校の時に学校でさんざん校長先生に申し上げたのですが、うそをつかないで、子どもの話をしっかり聞いて、うそをつかなければ、子どもはついてくると思います。で、なおかつ授業がおもしろければ、言うことはないんじゃないかなと思うんですけど。いかんせん、今の特に中学はとても授業はつまらないし、クラスの雰囲気は悪いし、そんな中でうちの子はそこでも授業を1、2時間受けたんでしょうか、でも今、港(高校)に楽しく行かせてもらっているので、親としてとても満足しています。

  ですから、そういう選択をしてくれた息子に、ここで拍手を贈りたいと思います。ですから、ここに私をよこしてくれた子どもに感謝しています。

 うちの子は、とりあえず港(高校)に入れて卒業できるかもしれません。港を居場所として、成長していきます。でも、今中学3年生のお子さんたち、定時制に入りたい、新しい3部の(定時制高校の)説明会にたくさんのお子さん、お母さんたちがみえています。でも、実際に受かる数は本当に少ないと思います。数から比べたら。残った方たちはどこに行くのでしょう。

  そう思った時、私はこういう場でお話することを選びました。黙って声を出さずに、うちの子だけ卒業すればいいや、それもひとつだと思いました。でも、それではあまりにも情けないと思ったのです。人として、母親として、自分の子でもだけではなくて、周りのお子さんとともに良くなりたい、そう思った時に、定時制をつぶしてはいけない、定時制なければ、先ほど(弁護士さんの)先生がおっしゃたように、怠けつつも、学校に行って友達関係を学び、学習をしたいというお子さんはもう育たないんです。つぶされていってしまうんです。引きこもりになりかねないんです。人の痛みがわかって優しいお子さんたちが多いんです。そういうお子さんが育つ定時制高校をどうぞ、つぶさないで下さい。皆さんの力を少しずつ出し合って、行政にそれをわからせていきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。
(大きな拍手)


司会  どうもありがとうございました。

2002年2月15日
心に傷を負った人が、最後に行きつく場である定時制を奪わないで
―  横浜市立定時制の生徒が訴える  ―

司会  どうもありがとうございました。

  それでは、定時制高校をつぶさないでということでは、一番の主権者、子どもの権利条約では子どもの意見表明権が尊重されるべきであるということが謳われていますが、この段階では生徒の意見はどのように反映しているのか、それが本当に問われると思います。この間、横浜市内の定時制高校のいくつかのところで、生徒会でも反対の決議が何回もされるとか、あるいは高校生が自主的に集まって自分たちの声を束ねる、そうした運動が行われております。これも本当に貴重なことだと思います。

  今日は、お二人の生徒さん、Iさん、Kさん、いずれも市立定時制高校の在校生です。勇気を持って、この場に来て下さいました。二人から、訴えをさせていただきたいと思います。(拍手)

Iさん   T高校定時制のIと申します。エーと、何を言ったらいいんだろう。なんで(定時制を)なくしてほしくないのか。理由は、大きく分けて二つあります。一つ目は、単純に今自分が通っている高校がなくなるってことがさみしいし、なくしてほしくないという感情なんですけど。それが、まず一つです。

  もう一つは、自分が定時制に行って、得たものというのは、・・・ずっと中学校のとき不登校で、学校に行けなくて、それでも学校に行こうと思ったときに、全日制には行けなくて、私立にはもっと行けなくて、それでどこに行けるのかなと思ったときに、定時制高校しかなかったんですね。定時制高校は授業料も安いし、希望すれば入れたんです。

 で、希望して入ってみて、こんな中学校、不登校だった弱い自分だったんですけど、定時制に入ったことで、同じ傷を持った人たちがたくさんいて、すぐに友達になれたんですね。それまで、友達ってはっきり言ってほとんどいませんでした。友達ができなくて、やっぱりそれも原因で不登校になったんですね。でも、定時制に行って同じ傷を持った人たちといろいろ話しているうちに、すごくなんつうか癒されたというか、すぐに友達になれたし、それがすごい楽しくて、もう本当に毎日学校に行ってました。

Kさん  今は行ってないの?

Iさん  いえいえいえ。今も、頑張っています。(笑い)

  えーとですね、だからなんですかえね。こんな弱い人たち、学校に行けないという弱い人たちが最後に行きつくのが、定時制だと思うんですよね。定時制がなかったら、僕は高校には行っていませんでした。たぶん、そういう子がこれから、たくさん来ると思うんです。中学生は減っているけど、不登校の子は増えているじゃないですか。だから、そういう人たちが最後に行きつくのがやっぱり定時制だと思うんです。

  今いる生徒は、勤労青少年ではないけど、でもそれとは違ったかたちで、今の定時制というのは、違ったかたちで意味をなしていると思うんですよね。そういう弱い人たち、不登校の人たちの最後のよりどころになっているところだと思うんです。

  だから、新しい3部制の高校を創ったりだとか、そういうことをすることはとてもいいんですけど、それと同時に今ある定時制高校をなくしまったりだとか、そういうことはしてほしくないです。

 今、そういう弱い人たちの行き場を奪うようなことはしてほしくないです。以上です。

(大きな拍手)


Kさん  T高校定時制の生徒のKといいます。僕の経験をちょっと話しますと、僕はですね、最初に通った高校を不登校だったんですね。在籍は、2年くらい在籍して、それで退学したんですけど、その後にアルバイトとか、いろいろやっていたんですけど、22(歳)くらいの時にアルバイト先の人から、「君は高校に行った方がよい」と言われて、近所に歳がいっている人でも行ける学校があるからと紹介されたんですよ。

  それでちょっと進学を意識するようになって、結局いろいろ縁があってT高校に入学することができたんですけど、それで入学してみて、僕は他の生徒さんとやっぱり年齢が離れているということで、受け入れてくれないのかなとか、何か一枚壁があるのではないかと最初すごく意識してはいたんですよ。でも、本当は最初の最初はたしかに多少はあったんですけど、少し話をしていくうちに、すぐみんなうち解けてくれて、僕を受け入れてくれるというか、全く他の人と同じように扱ってくれる環境があったわけですね。

 自分と同世代の人がもうちゃんと就職して働いているのに、自分だけバイトを続けながら、まだ高校生をしているんだというのは、結構負い目ではあるんですけど、まわりが自分を受け入れてくれて、こんなことをしていてもちっともおかしくはないんだよという環境がある定時制を僕は大好きです。終わります。

(大きな拍手)

司会  定時制高校を大好きだという言葉に、本当に気持ちが現れていると思います。
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