2011年9月6日

 「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会」は、9月6日の神奈川県教育委員会定例会議において、以下の内容の請願を行いました。当日は、「かながわ定時制通信制教育を考える会」の保永博行氏が代表して「請願書」にもとづき陳情を行いました。以下に、「請願書」を資料として紹介します。

2011年8月26日

神奈川県教育委員会
 委員長 平出 彦仁 様
 

2012年度に向けて、全日制を希望する子は全日制で、
  定時制を希望する子は定時制で、通信制を希望する子は通信制で、
  子どもたちが安心して学べるように、十分な条件整備をもとめる請願

                 

かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会

横浜市立定時制高校の灯を消さない会
        代表  高坂 賢一
よこはま定時制父母の会
        代表  沢崎 三郎
かながわ定時制通信制教育を考える会
        代表  中陣 唯夫
定時制高校を守る市民の会かわさき
        代表  浅野 栄子
不登校の親の会(こだまの会)
        代表  馬場 千鶴
港南区の教育を語る会
代表  三輪 智恵美
教育委員会を傍聴する会
        代表  土志田栄子
県民要求を実現し、県政の革新を推進する連絡会 事務局長
 佐伯 義郎
新日本婦人の会神奈川県本部
会長  高浦 福子
神奈川県教育運動連絡センタ−
  事務局長 加藤  誠


【請願項目

1,公立高校の募集定員を公立中学卒業者数の60%と固定する案を撤回し、公立高校全日制の募集定員を十分に増員すること。

2.「全日制計画進学率」を県民に明示して、生徒募集計画を策定すること。

3.2012年度生徒募集計画については、少なくとも2010年度公立中学3年生の進路希望調査での全日制希望率91.4%の全日制進学率が達成できるように、公立高校生徒募集定員と私立高校生徒募集定員を確保すること。

4.私立高校生徒募集定員を充足させるために私立高校生徒への学費補助制度の改善(助成額の増額と対象所得限度額の引き上げ)を図ること。

5.生徒募集計画の策定に当たっては、中学および高校の教員代表、PTAおよび保護者代表を正式メンバーとして参加させること。

6.公聴会を開き、受験生の保護者、中学校・高等学校の教職員、県民、中学生から具体的な実態や問題点、意見などを聞いてそれを公表し、審議を行うこと。

7.全日制の不足および夜間定時制の過大規模化と遠距離通学の負担を解消するため、川崎市に隣接する横浜地域に全日制高校と夜間定時制高校を増設すること。


【請願理由

 神奈川県では、この少子化時代に全日制高校を希望しても入れず、定時制高校や通信制高校への不本意入学が急増しています。全日制高校への進学率は公立中学卒業生の88.0%(2011年度)と過去30年間で最低を記録し、全国最低水準に落ちています。
 2011年度入試では、後期選抜で約8,900人もの子どもたちが公立高校全日制を不合格となり、私立高校の欠員は428人でした。県内高校の定数を完全に充足しても、全日制進学率は88.6%にしかなりません。、進路が決まらないまま中学を卒業する子どもも増えています。

 1999年11月に県が策定した「県立高校改革推進計画」では、「全日制課程の再編整備の基本的な考え方」として次のように述べて、前期計画で14校、後期計画では11校の計25校の県立高校を削減しました。

「今後の生徒数の動向を踏まえるとともに、次のような基礎条件に基づいて計画を策定し、再編整備を推進します。計画進学率は、現在、93.5%としていますが、全日制の高校への進学希望等を考慮し、今後も段階的に引き上げていきます。(平成12年度は、94%にします。)」

             (「県立高校改革推進計画」平成11年策定 より引用)

 この文面からも、2000年度(平成12年度)から始まり、2009年度(平成21年度)を完成年度とするこの計画では、当時の計画進学率93.5%という数値は最低限の目標であり、この計画を進める中で全日制の進学率をさらに高めていくということを県民に約束していることになります。

 しかし、その後の全日制進学率は下がり続け、2000年には91.8%だったものが、2011年には88.0%にまで落ち込み、その結果が始めに述べたような子どもたちの困難さを生じさせているのです。

 松沢前知事は、2005年に神奈川県高等学校設置者会議、同協議会を設置し、下記のような基本的な考え方を県民に約束しました。定員について08年度の会議で「2010年度入試から公立全日制を60%に固定し、私立、県外などを40%とする」としています。

 しかし、その合意事項を検証してみますと、・・・
ア、公私が協調することにより
   @生徒の視点に立った定員計画を策定すること 
   〈結果〉全日制高校を希望しても入れない子どもたちが多数でています
            2011年度で、全日制進学希望者が914%  進学実績は88.0%
             (全日制進学断念者2,260人以上)

  A全日制高校への進学実績を向上させるよう努めること
  〈結果〉05年度以降、全日制高校への進学実績は年々下がり続けています。また、前年度の厳しい進学実績から、希望率そのものが年々下がり続ける深刻な事態となっています(決して希望の多様化ではありません)。
      
  B生徒一人ひとりの希望と適性に応じた進路を確保することを目標とした定員計画とすること
  〈結果〉県教委の調査でも、定時制進学者のうち、定時制希望者は25%(高校調査)から38%(中学調査)にとどまり、不本意入学の生徒が増大しています。

イ、生徒が幅広く高校を選択する条件の一つとして、公私間格差の是正を図る方向で検討
   〈結果〉学費補助増額  10年度は、国の高校授業料無償化により大幅に増額された。しかし、私学の初年度納付金平均90万円からみるとごく一部であり、他県と比べても低い水準にとどまっています。

 「基本的な考え方」はどの項目も後退するなかで、「率による新たな定員割振り方式」だけが一人歩きしていることが誰の目にも明らかです。

 県教委の調査でも、定時制進学者の約半数が全日制希望であったことが明らかになっています。子どもたちの希望をかなえて、全日制高校への進学者が増えれば、過大規模校化して学習条件がきわめて悪化している定時制高校、通信制高校の問題も解決し、中退者も少なくなると考えられます。

 松沢前知事は、設置者会議の席上「公立並の学費で私学を選択できるように」私学助成、学費補助、奨学金制度などを充実することを約束して、公立全日制の定員を減らし続けました。

 しかし、経済困難な家庭が増えるなかで、学費補助等のわずかな増額では、希望はあっても私学を選べる子どもは減っています。結果として希望しても全日制高校に行けない子どもたちが大幅に増えているのです。

 2010年度には「学費無償化」による国の「修学援助金」が実施されて、年々減少を続けていた私学進学者が昨年比で1039人も増えました。

 しかし、「6:4体制」が実施されたために、全日制進学率は2009年度の88.7%からさらに低下して、88.0%にまで落ち込み、全国最低値を更新して、またまた多くの子どもたちが全日制高校から閉め出されています。

 私たちは、神奈川の子どもたちが自分の将来に夢と希望をもって、それぞれが希望する、公立全日制、私立全日制、定時制、通信制高校を選択できるよう、上記の請願事項の実現を求めて強く要請いたします。

以上

 <追記>
  この件について、口頭陳述をさせていただきますよう申し入れます。
 

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