2004年4月9日
3月29日、「定時制高校を守る市民の会かわさき」が署名への協力のお礼とこの間の運動をまとめた報告を発送しました。以下に、その報告を資料として紹介します。
平成16年3月29日
署名へのご協力、ありがとうございました。
そして、「定時制課程検討委員会」の審議が始まりました。「ご報告」定時制高校を守る市民の会かわさき
代表 浅野 栄子
昨年9月に始めた署名(第2弾〉『定時制高校の通いやすさを損なわないようにして下さい』には、市内小・中学校の組合分会・PTAをはじめ、全国からもたくさんのご協力をいただきました。遅くなりましたが、心からお礼を申し上げるとともに、この間のご報告をさせていただきます。
(1)@署名総数 13,434筆(3月15日現在)
Aご協力いただいた団体/北海道・秋田・福島・東京・川崎・横浜・長野・静岡・名古屋・岐阜・滋賀・大阪・兵庫・広島・鳥取・熊本などの先生方の組合
Bご協力いただいた市内の分会やPTA/小学校18・中学校9・障害児学校2
その他、さまざまの皆様よりたくさんのご協力をいただきました。ありがとうございました。
(2)昨年5月に教育委員会会議で承認された「市立高校教育振興計画(三部制・夜間単位制の設置を方針化)。これを具体化させる目的で設置された「定時制課程検討委員会」は、委員の構成についての私たち「市民の会」が出した教育委員会への請願「生徒やOB、保護者の代表を加えて下さい」を採択し、委員の構成を変更するなどしたため、予定より大幅に遅れ、昨年の11月29日に審議が始まりました。
@委員の構成
学識経験者2名、市民代表 5名(市民公募、PTA連絡協議会・全日制保護者、地域教育会議推進協議会、定時制保護者、定時制卒業生)、学校関係者4名(高校長、中学校長、定時制教諭、組合代表)、市行政関係者(行財政改革推進本部・企画調整課・教委施設部・教委職員部)、その他事務局7名
A11月29日(土)第1回 委員長・副委員長の選出、振興計画の説明、保護者や教員による定時制高校の現状についての説明など。定時制を知らない委員は問題の難しさを感じたよう。「市民の会」が提出した署名の報告(10,367筆)傍聴14名(15名限定)。
B1月20日(火)第2回 行政側は中退者の多さ、これまで改編されていないことなどを指摘、「環境の変化・財政事情から、自治体がすべてのニーズに応えなければならないわけではない」など。保護者や教員は経済的・精神的に問題を抱えている生徒の状況を説明、傍聴15名
C3月16日(火)第3回 次回より諮問項目の検討に入りたいとの提案、組合からの振興計画への見解、保護者が現場の校長先生と懇談した定時制の現状の感想、今回の前期入試で発生した定時制不合格者(66名)の問題、次回は審議後に定時制高校を施設、傍聴20名
D以降は、2004年度末までに計8回ほごの会合、2004年秋頃に中間報告の予定。
(3)さて、これまでの市教委事務局の説明から、川崎における定時制高校の再編統合の意図は次の諸点にあることがわかってきました。
@ある程度の学校規模を確保したい・・・・学級数を増やし、教員数を確保し、学校を活性化させたい、実績(部活、行事、進学?)をあげたい。
Aとにかく中退者を減らしたい・・・・全日制に比べて、定時制の中退者は高すぎる。
Bとにかく、話題になるような新しいタイプの学校を作りたい・・・・長い間、定時制だけが改編を行っていない。
Cとにかく、経済効率を上げたい・・・・・この検討委員会に「行財政改革推進本部」からの委員がいることからも、このことがいかに大きな動機であるかがわかります。
(4)私たちは、これらの意図について次のように考えています。
@部活や行事、進学などで、とにかく実績を上げ、活発な学校でなければならない、というのが今の教育を覆っている感覚だと思います。そのためには、ある程度の人数、クラス数、教員数を確保したい、となります。ある程度の規模がなければ、選択授業をたくさん設けることもできないというのも、その通りだと思いますが、定時制の入学してくる生徒の多くは、多人数の中で競争し、切磋琢磨しながらやっていくことが苦手な生徒ではないか、と感じています。そういう生徒は、華々しい行事や部活の実績などを求めてはいないように思います。大きくて活発な学校を作ろうとすれば、それは、結果的には、不登校などで傷ついた生徒を排除することにつながるように思います。
A確かに定時制の中退率は、現在20%を超えています。すべての生徒がちゃんと卒業してくれることを私たちも願っていますが、定時制に入学してくる、さまざまな困難をかかえた生徒の事情を考えずに、単純に全日制と比較しても無意味です。
不登校、引きこもりといった精神的な問題だけでなく、家庭の経済的な問題、仕事(アルバイト)との両立、家族の問題、非行など、さまざまな問題があり、それらは相互に連関してもいます。全日制に通う生徒とは異なる傾向をもっていることは誰もが知っているはずです。こういった生徒に、もっと有効なケアができるような施策を考えることは必要ですが、こういう事情を見ずに、ただ中退率を下げることだけを目的にすれば、結果としてはやはりこういう事情をもった生徒たちを排除することになります。
B「新しいタイプの学校を作りなさい」という、国からの指導でもあるのでしょうか。それとも、やり手の教育委員会職員の単なる野心からくるのでしょうか。「何が何でも、今まで通りではダメだ」、という発想は、私たちには理解できないものです。
C表向きには認めませんが、やはりお金のことが最も大きな理由でしょうか。川崎市も財政難で、あらゆる面で経費の削減がはかられています。経済的な理由で切り捨てられるのは、結局、弱い立場の生徒たち、ということでしょうか。
始まった「定時制課程検討委員会」は、三部制・夜間定時制の設置を方針とした「振興計画」を具体化するために設置されたものです。一方で、新たな予算措置はできないという財政状況ですから、それらを設置するためには、現在の定時制を切り捨てなければならないという結論に帰結する、というのがシナリオでしょう。状況はかなりせっぱ詰まってきました。
私たち市民の力でこのシナリオを砕くことができるのか、はなはだ心許ない状況ですが、一縷の希望をもって、できることを精一杯やっていきたいと思います。今後もご指導、ご支援、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。