2003年2月7日


川崎市議会総務委員会で、「『市立高校教育振興計画案』見直し請願」の審議が始まる


 1月31日、川崎市議会総務委員会(出席13名)において「定時制高校を守る市民の会かわさき」から提出された請願(市議会の全6会派と無所属2人を加えた8人が紹介議員になっている)の審議が行われました。当日は、定時制の生徒と親、教職員、さらに市民ら9人が傍聴に駆けつけました。

 教育委員会事務局からの説明の後、各議員がそれぞれ質問と意見を述べました。とりわけ、市教委がこの間開いた市民説明会や高校生の声を聞く会の参加者が極めて少ないこと、市教委の市民に対する広報が不十分であること、振興案策定にあたって定時制生徒や保護者、教職員から十分意見や声を聞いていないこと、5校を2校に削減してしまうと、通学時間が長くなることにより定時制に通えなくなる人が出るのではないか、などの課題が十分が検討されていないこと、などなどさまざまの問題点が次々と議員から指摘されました。

 特に、現在ある夜間定時制5校を2校に削減する理由や根拠が明確でないこと、三部制の高校には横浜の総合高校の例から見て、全日制を希望する人が殺到することも予想され、定時制の削減は慎重に検討されるべきだという意見が体勢を占めました。

 しかし、請願を採択することに対しては継続審議の意見があり、日本共産党の三議員(徳竹、西村、市村)が趣旨採択を主張しましたが、請願は継続審議となりました。

 以下に、「定時制高校を守る市民の会かわさき」が提出した請願書を資料として紹介します。

請願 157号

平成14129

川崎市議会 議長 小泉 昭男様

請願者 定時制高校を守る市民の会かわさき

    代表  浅野 栄子

川崎市立高等学校教育振興計画(案)に関する請願

請願の要旨

@「川崎市立高等学校教育振興計画(案)」には「定時制高校5校の2校への再編成」とありますが、川崎私立高校に現在ある定時制高校の重要な役割を考え、この方針を見直すようにしてください。

A計画案を多くの市民、特に定時制に関係する保護者・生徒・卒業生に広く伝え、審議に十分な時間をかけて、拙速に結論を出さないでください。

請願の理由

 現在、川崎市立で5校ある定時制高校には約1000人の生徒がいます。かつてのように勤労学生が主ではありませんが、代わりにさまざまな立場の人が学ぶようになってきました。全日制高校を不合格になったり中退した生徒・長びく不況のなか経済的な事情で私立高校や全日制高校へ通えなかった生徒・何らかのかたちで中学に通えず不登校を経験した生徒・中学を卒業したときに自分の進路を決めらずにいた生徒・もう一度学習しようと思い立った中高年の生徒・外国籍の生徒・傷害のある生徒などのようです。厳しい競争社会に、居場所を見つけられずにいる人達がいまたくさんいます。そういった人たちが、少人数でもあたたかい雰囲気の中、ゆっくりと、のびのび学んでいるのがいまの定時制高校です。また一方で、不登校の小中学生が増えていついま、定時制高校の新たな役割はますます大きくなっています。

 それに対して、三月に出された「川崎市立高等学校教育振興計画(案)」には定時制高校を5校から2校へ再編成するとの考えが書かれていました。「定時制は不経済」というのが全国で定時制高校を廃止していくときの大きな理由であると言われています。そんななか、本当に定時制高校を統合再編してしまったら、「やっぱり勉強しよう」と思い立ったとき、学校が、家や職場の近くにあることがとても重要で、もしなければ、あたりまえとすら言われる高校への入学ができなくなってしまうのです。私たちの会でも「年をとってからもう一度学ぼうと思ったのは、学校が家の近くにあったからで、遠くだったたらとてもそんな気にならなかった」とか「車イスの生活なので、通学時間が長くなるととても通いきれない」など、いろいろ聞いています。また、60%を超えるぐらいの生徒が通学時間30分以内だとの話を聞きました。比較的通いやすい5校を、なぜ2校に減らさなくてはいけないのでしょうか。教育行政こそ、ゆとりをもって子どもたちを受け入れるべきです。特に川崎では「川崎市子どもの権利に関する条例」で、自分を豊かに成長させたり、個別の必要に応じて支援を受けることを保障していて、私たちはそういう市の考え方を大変誇りに思っています。それなのに、子どもたちがのびのびと、ゆっくり、学べる場所を減らすことは、とうてい納得できません。

 また、教育委員会事務局では市民やPTA関係者へ向けて説明会を開いたそうですが、参加者も数えるほど少なく、説明も具体的ではなかったようです。さらに定時制にはPTAがなく、母校を失うことになる定時制の卒業生には、パンフレットを配ることもしていません。まして、不登校などの状態になっている中学生が、説明会で意見を言うことは大変難しいことです。このように、一番関係する人達にはまったく説明がされていませんし、事務局はその人たちの思いを知らないでいるのが現状です。その一方で、来年度の公立高校の入学定員の発表の時の新聞で、県の教育委員会が、川崎市の計画を既定の方針として考えているような発言をしたことを読みました。私たちは、教育委員の皆さんの審議や市議会での議論の前に、これは大変おかしなことだと感じました。そんな中、教育委員会事務局では、1月には計画を正式なものにする考えでいると聞きましたが、なんでそんなに急がなくてはいけないのでしょうか。今からでも、この計画案をもっと広く伝え、策定委員会の議論の中間報告を行い、本当に定時制高校を必要とする人々からじっくりと話を聞いて、その願いが計画に入るようにしてください。

 今の社会を見たとき、もっともっと人が育ち成長する場が必要です。それなのに、教育行政みずからが、そういった場を増やすどころか減らしてしまっては、かえって生徒は通いにくくなってしまいます。さまざまな人達が触れ合い育ち合う機会を奪うことは許されません。そうではなく、みんなが平等に学び、育つ場を守ることを市民・親として切望しています。

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