2005年1月21日
昨秋、川崎市立定時制高校の文化祭で「定時制問題」の展示を中心的に行った生徒から、「かながわ定時制教育を考える会」に「『定時制高校 今と未来』を終えて」と題した投稿がありました。以下に、その投稿を紹介します。
『定時制高校 今と未来』を終えて
川崎市立橘高校定時制 在校生
去る10月30日雨天の中、川崎市立橘高校定時制の文化祭が「橘定祭〜橘花乱舞〜」をテーマに行われました。文化祭の中で私のクラスは、展示発表しました。展示のテーマがこの文の表題である『定時制高校 今と未来』です。文化祭で何をしようかと話し合いをクラスでしましたが、何も出なくて私が、定時制問題の展示をしたいと言ったところ、一部からそれ以外が良いという声がして、ゲームがしたいという声が出て他にないのか意見を集めましたが、全くでなくて、司会進行をしている文化委員から、両方やったらどうかと言う提案が出ました。誰も意見を言わなかったので両方することとなりました。
早速テーマ作りから始める事にして、サブテーマ、内容へと進んでいきました。「定時制問題」とテーマをそのまま持っていこうと思いましたが、それでは未来の事が出てこないだろうと思い、「定時制の今の現状と未来の形」とテーマを変え、テーマが長いと思い悩み「定時制高校 今と未来」と文字を削るだけですがこれならいけると思い最終的に決めました。最初はこのテーマだけで進行し、まず川崎市の市民運動の歴史を調べてみようと思い、私が会員になっている「定時制高校を守る市民の会 かわさき」の方に連絡を取り資料を受け取り、学校に持って行き資料を使いながら、先生と打ち合わせを重ねていると市民の会の署名用紙の言葉に良い言葉が書いてあり、それを少しアレンジしてサブテーマにしようと言う事になり「私たちの定時制は・・・必要だ!」と言うサブテーマが出来ました。
入り口にはテーマ、出口にはサブテーマを貼る事にしてそこまでは順調に行きましたが、文化祭の準備の時間が休日休みの関係でかなり削られて、準備が間に合わないのではないかとハラハラしました。東京や横浜など他の都市でも定時制問題をかかえている現状を知っていた私は、インターネットを使ったり、市民の会を利用して、各地の活動団体に連絡をとって資料を頂いたり購入したりしました。自宅にいるときや登校中、下校中には連絡をとり、学校では資料の整理をしたり、ほとんどの時間を使って文化祭に向けて準備をしました。資料が家に届くと資料を見て、学校に持って行き、登校中等に資料に目を通し、読みふけっていました。各地の現状が目に見えてきました。
ここで話を変えますが、私が何故定時制問題にここまでかかわっているのかを話したいと思います。私は入学して3年目ですが今2年生です。それは、1年のときに1単位1時間落とし、留年したからです。私はとある事情から入学式の日から1ヶ月半位後から学校に通いましたが、心身的・精神的な事情から少ししてから通わなくなりました。その間に、単位はギリギリまで来てしまい落ち着いた事もありまた通い始めました。しかし、1単位落としました。ここでほとんどの人は学校には来なくなりますが、私は、通うことにしました。通わなければ単位はもらえないし、学校に行かなかったら授業料が無駄になるし、早く高校は卒業しなければと思い、通いました。留年するのは正直嫌でしたが、退学するのも嫌でした。先生から単位制もあるから頑張ってごらんと言われ、頑張ろうと思ったのです。ここで投げたら、高校卒業できないだろうと思いました。
その年の後半に定時制高校再編の説明会がありました。私が定時制に入学したのは20歳になる年でした。定時制高校があったから入学出来たんだし、話を聞きたくて参加しましたが、納得いきませんでした。
学年末になり、進級できない事は分かっていましたがもしかして出来るかもしれないからと担任の先生と副担任の先生が職員会議に何度も議題に出してくれました。私自身も頼みに行きました。私は万が一の事も考えて単位制高校の編入学の準備の為に単位制高校の見学にも行きました。しかし、単位制高校は遠いところにあり、仕事してたら通えないだろうと考えるようになりました。職員会議では先生が頑張ってくれたのですが進級は出来ない事になり、単位制高校も難しく、留年する事に決めました。これが全日制だったらここまで先生はしてくれるでしょうか?定時制高校で人数が少なく個々の生徒の対応が出来るから先生も必死になってくれたのだと思います。先生には感謝しています。新1年生と一緒になって不安でしたが、今までのクラスと違って、静かなクラスで、留年してよかったと思うようになりました。留年してからも旧担任の先生は心配をしてくださり、過ごしやすかったです。一生の思い出になっています。
話を戻しますが、そんな事があった私にとって定時制はかけがえのないものです。そんな定時制高校をつぶす事は、私には出来ません。私は、存続を願うのみですが、行動をして、守って行きたいと思い、参加しています。全国の活動の資料を収集しながら何が出来るだろうかと思い、今の生徒の現状を調べたいと思い、学校アンケートを実施して展示発表に使いました。展示では、入学時のアンケート・学校アンケート・川崎市立定時制40周年史を模造紙で発表し、各都市での資料コーナーを設け、本の紹介コーナーを作ったり、ビデオコーナーを設けてビデオを流したり、と準備しました。教室全面を使用して準備をしました。ほとんど先生と二人で会場作りをしました。ほとんどの生徒が卒業するから関係ないという感じでした。準備の時には頭に来る事がとても多くて、思うように準備が出来ませんでした。
当日は60名近くの来賓の方が来て下さり、展示も見ていかれました。展示の最後にアンケートコーナーを緊急に用意しました。これは、最初企画には入っていなかったのですが展示を見てどのように感じてくださったのか知りたくて用意しました。文化祭が終わり、後片付けをしてアンケートが入っているか確認すると、5人の方のアンケートが入っていました。1枚1枚見ていくと1人の少女の感想がありました。中学3年生の少女の感想でしたが、それを見て、私は、やってよかったなと実感しました。その子の感想を読み上げたいと思います。
「定時制高校は絶対必要だと思います。私の家でも祖父と祖母が定時制高校に入学する事を反対しています。『近所のうわさになるから。』とか『世間体が悪いから。』とか・・・。とてもとても腹が立ちました。こんな事を言う人を見返してやる為にも定時制に入り、しっかり楽しく高校生活を送りたいと思います。この展示物はとても私を前に押してくれました。とてもうれしく思っています。ありがとうございました。」
私は、最初は本当失敗したかなと思いましたが、この感想を見てからは、やってよかったと、皆さんもー人の少女を救ったと思いませんか?私は、このように思っている生徒の為にも定時制高校を存続させたいと思います。この少女にはお礼を言いたいと思います。ありがとうございました。
最後になりましたが、文化祭の展示の為に資料を提供してくださった各団体の方々に御礼申し上げます。ありがとうございました。私にとって今回の展示発表はかけがえのないものとなりました。そして、弱者切捨ての教育には問題があるし、定時制が不経済だと言う国の理由にも納得は出来ません。不経済になった理由は、国の政策にあるのであって定時制は不経済にはなっていません。問題があるのは、競争社会を作った国なのです。その方針を変える事が最優先ではないでしょうか?サブテーマで「私たちの定時制は・‥必要だ!」これには、多くの意味を持ったサブテーマになっています。今の定時制のままでは、ダメな事は分かっています。これから私たち生徒が協力し合って学校を変えていきたいです。
3部制を作るなら、何も定時制を減らさないで新しく作ればいいのです。川崎市は南部には定時制高校がありますが北部には定時制高校は1校もありません。麻生区の人や多摩区の人は遠く離れた南部まで通ってきています。横浜からも来ています。今ですら遠くまで通っている生徒がいるのです。皆、学校が近くにあるといいんだけど。と言っています。今ですら1時間以上かけて学校に通ってきています。学校が減ってしまえば個人の負担がとても多くなり、また職場も早く.切り上げないと学校に遅れてしまう状態が出来てしまいます。生徒にとってのストレスにもなります。もっと生徒が通っていて楽しいと思える学校にしていくことが必要になると思います。少子化少子化と教育委員会は言っていますが、全日制にも定時制にも少子化の影響ははっきり言って出ていません。と言うのは、全日制でも定時制でも過年度の生徒の受け入れがなされているからなのです。全日制では、1年遅れで入学している生徒もいます。定時制では、もっと幅広い層の生徒を受け入れています。今、学校に通えない引きこもりの生徒や、あやまちを犯し社会から追い出された人の中にも社会に出て定時制高校があることが重要になります。
3部制高校にも夜間の部はあるけども、競争させるだけの定時制でしかありません。ゆとりある定時制高校は存在し無くなるのです。断固反対したいと考えていますが、単位制になった場合には、ゆとりある高校を検討して、競争させない学校にしていきたいと思います。
あまりまとまりのない文章となりましたが、終わりとさせていただきます。