2001年12月1日
 11月27日、横浜市教育委員会臨時会議が開かれました。そこで、11月13日に「よこはま定時制父母の会」が提出し、意見陳述した「横浜市立定時制高校の募集停止の中止を求める請願書」と「横浜市立定時制高校の統廃合を中止し、定時制高校の存続をはかることを求める陳情書」の審査が行われました。その臨時会議は、全く定時制高校の実情を知らない教育委員がわずか1時間というきわめて不十分な審査で、定時制生徒と父母の定時制高校をなくさないでほしいという声を聞き入れず、請願と陳情を不採択としました。
  以下に、定時制生徒の意見陳述を資料として掲載します。


  私たち生徒が訴えていることは常に一つです。
  「定時制をなくしてほしくない」

  市の教育委員会が打ち出す、市立高校定時制統廃合、そのすべてが悪いことだとは思いません。総合高校の設置は、これから高校生になる人たちに、学校を選ぶ上での新しい選択肢を増やすことでもあり、とてもすばらしいことだと思います。しかし、五校の募集停止に関しては違います。現実として、定時制に課題があることはわかります。中学校の進路希望調査で定時制を希望する生徒は少ない、少子化で中学生そのものが減ってきている、入学しても一年生から二年生に上がる段階で40%もの人たちが退学してしまう、こういった例を挙げればきりがないかもしれない。

  しかし、僕は確信します。「定時制は必要なのだ」と。そして、そう思う生徒は決して少なくないことを理解してほしいと思います。
 では、なぜ定時制が必要か、理由は大きく分けて二つあります。その理由について説明したいと思います。

 〈理由〉

  一つ目は気持ちです。自分が今も通っている、将来母校になるであろう高校がなくなってしまうことが、単純に納得できないからです。教育委員会の皆さんが、いったいどんな理由で、この市立高校定時制統廃合を打ち出したのか、その理由のすべてを知っているわけではありません。けれども、たとえどんな理由があるにせよ、この学校をなくしてしまおう、という計画には賛成できない。

 二つ目は、実際になくなった場合、これから高校生になりたいと思っている人たちが、一つの選択肢を失う、ということです。この、これから高校生になりたいと思っている人たちというのは、もちろん中学生や、全日制に通っていたけどうまくいかなかった人、年を重ねてから再び学生になりたいと思っている人、その他にも本当に様々な人たちが、この定時制にやってきます。そういう人たちに少しでも選択できるチャンスを与えてほしい。
 
 僕は中学生の時、学校に行っていませんでした。いわゆる不登校というやつです。進路選択の時も、高校に行く気なって更々ありませんでした。授業に全く興味がなく、学校の存在そのものが、大嫌いでした。それでも定時制に来たのは、世間体や、周りの人が「高校は、行っといた方がいいよ」という勧めを受けて、何となくという理由で行くことにしました。もし定時制高校が、今のように入りやすいものでなかったら、僕は確実に高校に入ってはいませんでした。その他にも、授業料が安い、自宅の割と近くに学校がある、なども僕が学校に通おうと思った大きな要因でした。

 もし、既存の定時制を全てなくしてしまっても、これらの良さを残すことができるのでしょうか? これらの「良さ」というものは、一つ一つが本当に大切な定時制の「魅力」なのだと、僕は思います。

 不登校の中学生が、今、激増していることをニュースや新聞で知りました。そういった中学生は、卒業後、一体どういう進路を希望するのでしょうか。就職、専門学校やフリースクールへの進学、大学検定を受けての大学進学、そして高校進学、本当にさまざまです。しかし、こういった希望は、教育委員会が行う進路希望調査には、ほとんど見られません。それは、不登校の生徒が、学校に行っていないことによって、進路希望調査を受けていないからなのではないでしょうか。ですが、不登校の生徒が高校進学する場合、そのほとんどが定時制に来ていることを、皆さんは知る必要があると思います、この意見の裏付けとしては、実際の入学生徒数を見ていただければ一目瞭然だと思います。中学生の進路希望調査では、ほんの一部しか希望していないにも関わらず、実際の入学生徒数はその何倍にもなるのです。

 今ある定時制はこれからも必要です。それはなぜか?
 それは、不登校だった人、金銭的に苦しい人や、現役の生徒ではない人、その他にも本当にさまざまの人達がこの定時制にやってくるからです。そして、そういう人達が激増しているという事実があるからです。今通っている私たちと同じように、これからもたくさんの事情を抱えた生徒が、この定時制にやってきます。そういう人たちの、学校を選ぶという根本的権利を奪わないでほしい。

  私たちは、横浜市立高校定時制統廃合、その全てに反対しているわけでは決してありません。総合高校の設置、既存の定時制の問題点を改善すること、それらを試行するのになんら異論はありません。むしろ、称賛すべきだと思います。しかし、定時制の募集停止をすることは、定時制の問題点の改善には含まれないことを理解して下さい。募集停止は改善ではないのです。

 市の教育委員会として、統廃合の見直し、具体的には、新校開校と同時の募集停止は中止し、新聞発表された公立高校入学定員を直ちに訂正する、などの理解ある対処を期待したと思います。

横浜市立定時制生徒

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