2013年8月12日

 8月6日、神奈川県教育委員会議において、「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会」が高校入学定員などについて請願を行いました。当日は、「かながわ定時制通信制教育を考える会」代表の保永博行が請願陳述を行いました。以下、陳述資料と請願書を紹介します。

『2014年度に向けて、全日制を希望する子は全日制で、
     定時制を希望する子は定時制で、通信制を希望する子は通信制で、
     子どもたちが安心して学べるように、十分な条件整備をもとめる請願』


 私は県立高校定時制に勤務する保永博行です。今の神奈川の高校生の置かれた状況とその問題点、全日制進学率の向上の重要性について陳述いたします。


1,請願の要点

 『91.4%の全日制進学率を達成するために、公立44600人程度、私立14300人程度を確保すること』

  2012年3月入試は、わずかですが、「公立枠60.0%」を上回る公立募集枠を設定したため、全日制進学率は2010年の88.0%から88.3%へと増加に転じました。2013年は公立枠増があったため、さらに若干の改善が見込まれます。

  しかし、全日制高校への希望率、91.6%(2011年10月)、91.4%(2012年10月)からは大きくかけ離れ、あいかわらず全国最低水準のままです。「県立高校改革推進計画」では『93.5%』の計画進学率を掲げています。91.4%の達成はすぐ直ちに達成しなければならない課題です。


2,現状
 今の神奈川の全日制進学率は全国最低(2011年3月88.0%、2012年3月88.3%)であり、1973年の「100校計画」実施以来、最低の値。とくに、2000年からの「高校改革(高校統廃合)」以降の減少が著しい。
『少子化なのに高校には入れない』
 1988年、89年頃は、公立中学校卒業生数は今(7万人弱)の2倍近い、約12万人でしたが全日制進学率は91.8%(1989年)、92%(1990年)もありました。




3,全日制希望率の低下は、『大人の責任』
 高校改革開始以降、全日制希望率が低下(2001年94%→2012年91.4%)しています。若者に、次世代をになう自信をあたえるのは、いまの大人の責任ではないでしょうか。

「私は価値のある人間だと思う」

日本7.5%、米国57.2%、中国42.2%、韓国20.2%

高校生の心と体の健康に関する調査(日本青少年研究所2011年2月)
神奈川県教育委員会
委員長 具志堅幸司様

2014 年度に向けて、全日制を希望する子は全日制で、
定時制を希望する子は定時制で、通信制を希望する子は通信制で、
子どもたちが安心して学べるように、十分な条件整備をもとめる請願


2013年7月30 日
かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会
<懇談会団体>
横浜市立定時制高校の灯を消さない会       代表  高坂 賢一
かながわ定時制通信制教育を考える会         代表  保永 博行
定時制高校を守る市民の会かわさき       代表  浅野 栄子
不登校の親の会(こだまの会)         代表  馬場 千鶴
教育委員会を傍聴する会            代表  土志田栄子
港南区・教育を語る会             代表  三輪智恵美
県民要求を実現し県政の革新を推進する連絡会 事務局長 蓮池 幸雄
新日本婦人の会神奈川県本部   会長  泉水 令恵
神奈川県教育運動連絡センタ−   事務局長 加藤  誠

                

【請願項目】
2005 年9 月13 日の高等学校設置者会議での合意事項の「1,公私が協調することにより
@生徒の視点に立った定員計画をもつ
A全日制高校への進学実績を上げる
B生徒の希望と適性に応じた進路確保


 公私間格差の是正」を、2014 年度生徒募集計画において実現するために以下の項目について請願します。

1.2013 年入試より実施した「定員目標設定方式」の検証を行い、全日制を希望する子どもたちが全日制高校に進学できるのに十分な定員計画と条件整備を県が責任をもってすすめること。特に全日制高校進学率向上は、公私立高等学校設置者会議でも毎年確認され、新たに設けられた神奈川の教育を考える調査会の中間まとめでも指摘されている点を重く受け止め措置すること。

2.「全日制計画進学率」を県民に明示して生徒募集計画を策定し、2014 年度の計画進学率は暫定措置として2012 年10 月調査の希望率(全日制高校希望率91.2%+高専希望率0.2%)91.4%以上とすること。

3.2014 年度生徒募集計画については、91.4%の全日制進学率が達成できるように、公立高校生徒募集定員は44600 人程度、および私立高校生徒募集定員は14300 人程度とすること。

4.また、その定員を充足させるために私立高校生徒への学費補助制度の改善(助成額の増額と対象所得限度額の引き上げ)を図ること。

5.,生徒募集計画の策定に当たっては、中学および高校の教員代表、PTAおよび保護者代表を正式メンバーとして参加させ、また、中学生・高校生の意見反映を図る仕組みを工夫すること。

6.公聴会を開き、受験生の保護者、中学校・高等学校の教職員、県民、中学生から具体的な実態や問題点、意見などを聞いてそれを公表し、審議を行うこと。


【請願理由】
 神奈川県では、この少子化時代に全日制高校を希望しても入れず、定時制高校や通信制高校への不本意入学が急増しています。全日制高校への進学率は公立中学校卒業生の88.0%(2011 年度)、88.3%(2012 年度)と過去30 年間で最低を記録し全国最低水準に落ちています。2013 年度入試では、7,300 人もの子どもたちが公立高校全日制を不合格となっています。また、進路が決まらないまま中学を卒業する子どもも毎年700 人から900 人にも上っています。1999年11月に県が策定した「県立高校改革推進計画」では、「全日制課程の再編整備の基本的な考え方」として次のように述べて、前期計画で14校、後期計画で11校の計25校の県立高校を削減しました。

「今後の生徒数の動向を踏まえるとともに、次のような基礎条件に基づいて計画を策定し、再編整備を推進します。計画進学率は、現在、93.5%としていますが、全日制の高校への進学希望等を考慮し、今後も段階的に引き上げていきます。(平成12年度は、94%にします。)」

(「県立高校改革推進計画」平成11 年策定より引用)

 この文面からも、2000年度(平成12年度)から始まり、2009年度(平成21年度)を完成年度とするこの計画では、当時の計画進学率93.5%という数値は最低限の目標であり、この計画を進める中で全日制の進学率をさらに高めていくということを県民に約束していることになります。

 しかし、その後の全日制進学率は下がり続け、2000年には91.8%だったものが、2011年には88.0%にまで落ち込み、その結果がはじめに述べたような子どもたちの困難を生じさせています。
 2005年に前知事が設置した神奈川県公私立高等学校設置者会議、同協議会では、下記のような基本的な考え方を県民に約束しました。その後もこの「基本的考え方」は毎年確認されています。
 しかし、その合意事項を検証してみますと、

「基本的な考え方」(1)視点
ア、公私が協調することにより
@生徒の視点に立った定員計画を策定すること

〈結果〉
 全日制高校を希望しても入れない子どもたちが多数でています
2012年3月卒業生で、全日制進学希望者(高校+高専)が91.6%進学実績は88.3%(全日制進学断念者2200人以上)(添付資料のグラフ@参照)
A全日制高校への進学実績を向上させるよう努めること
〈結果〉
 05年度以降も、全日制高校への進学実績は年々下がり続けています。また、前年度の厳しい進学実績から、希望率そのものが年々下がり続ける深刻な事態となっています(決して希望の多様化ではありません)。

B生徒一人ひとりの希望と適性に応じた進路を確保することを目標とした定員計画とすること
〈結果〉
 県教委の調査でも、定時制進学者のうち、定時制希望者は46.2%(高校調査)から26.8%(中学調査)にとどまり、不本意入学の生徒が増大しています。

イ、生徒が幅広く高校を選択する条件の一つとして、公私間格差の是正を図る方向で検討
〈結果〉
 「率による新たな定員割振り方式」では、私学学費補助を増やさないまま、公立の定員を厳しく制限して私学へ誘導する方法が採られましたが、その間私学への進学率も低下を続け、全体の全日制進学率は大きく低下しました。
 しかし、2010年度は、国の高校授業料無償化により、学費補助が大幅に増額され、私学入学者も顕著に増加(前年比0.6%増)しました。よりいっそうの充実が求められます。

 県教委の調査でも、定時制進学者の約半数が全日制希望であったことが明らかになっています。子どもたちの希望をかなえて、全日制高校への進学者が増えれば、過大規模校化して学習条件がきわめて悪化している定時制高校、通信制高校の問題も解決し、中退者も少なくなると考えられます。

 松沢前知事は、設置者会議の席上「公立並の学費で私学を選択できるように」私学助成、学費補助、奨学金制度などを充実することを約束して、公立全日制の定員を減らし続けました。しかし、経済困難な家庭が増えるなかで、学費補助等のわずかな増額では、希望はあっても私学を選べる子どもは減っています。結果として希望しても全日制高校に行けない子どもたちが大幅に増えているのです。2010 年度は「学費無償化」による国の「就学支援金」が実施されて、年々減少を続けていた私学進学者が前年比で1039 人も増えましたが、「6:4 体制」が実施されたために、全日制進学率は2009 年の88.7%から低下して88.2%に、2011 年度はさらに88.0%にまで落ち込んで、また、また多くの子どもたちが全日制高校から閉め出されています。

 2013 年度入試では、「率による割り振り方式」をあらため、公私それぞれが目標を設定する「定員目標設定方式」に変えたことから、全日制進学率も若干の改善が見込まれます。しかし、「公立6 割」を「勘案」した目標設定であったため、「全国平均」や「希望率の91.4%」には大きな隔たりがあり、不本意入学などの改善はまだまだです。私たちは、神奈川の子どもたちが自分の将来に夢と希望をもって、それぞれが希望する、公立全日制、私立全日制、定時制、通信制高校を選択できるよう、上記の請願事項の実現を求めて強く要請いたします。

以上



<追記>
この件について、口頭陳述をさせていただきますよう申し入れます。

トップ(ホーム)ページにもどる