2003年4月4日

 

「定時制の統廃合の見直し請願」審議が、年度を越すことになる


 3月25日、3月に入って3回目の川崎市教育委員会会議が開かれました。年度末という極めて忙しい時期にも関わらず、11名の方が傍聴に駆けつけてくれました。

 今回は、振興計画案に書かれている「単位制」と「3部制」についての議論になりました。そのなかで、単位制・3部制を導入した場合、「自己選択・自己責任が単位制のポイントで、これでは現在の定時制の持つ一人ひとりに目が行き届く良さがなくなると思う」、「単位制にした場合、プラス面もあるが、大学でも学生の選択力に苦慮しており、まして高校生の力では心配になる。人との関わりの中で人間的な生長をはかる高校時代に、(単位制を)導入することは正直言って迷っている」との発言もあり、教育委員の皆さんの慎重な姿勢が伺えました。

 以下に、傍聴者から寄せられた「傍聴記」を掲載します。

      

傍聴記 パートV


 3月25日午後1時半より川崎教育会館において、18日の定例会に引き続いて、今月2回目の臨時教育委員会審議が、約1時間20分にわたり開かれました。傍聴者は、父母、生徒、教職員、市民ら約11名ほど。

 委員の審議は、引き続き昨年3月策定の『川崎市立高等学校振興計画(案)』をもとに行われ、川崎市における県立、市立の定時制高校の立地条件、配置、現定時制生徒の通学・修学状況についての委員の質問や当局の資料報告から始まりました。
 
 ついで定時制の高校再編計画についての他の自治体、例えば横浜市、横須賀市、都立高校の実状についての質問と答弁があり、『振興計画(案)』をもとに審議は、3部制、単位制に関する問題に移っていきました。ここでは、生徒、志望する中学生、履修する夜間定時制高校生の立場や実状をふまえた質問が、委員から数多く出されました。

 具体的で、請願者の求める教育条理をふまえた審議という点では、通算5回のうち私が傍聴した3回の会議の中でも出色であったのではないかと思います。

 例えば、○単位制と学年制の矛盾。それは、統一的解決の方途がないのか。  ○制度が学生にもわかるようにする必要がある。高校生自身が待ちわびているような制度でないと結果はしれている。  ○単位制は大人レベルの判断力や自己責任力に基づく制度のように思われるので、少し青年にはしんどいのではないか。また、それは『振興計画(案)』にいう「一人ひとりに行き届いた教育」の趣旨に反するのではないか。現在の定時制の「面倒見の良さ」の定評を生かして考えられないか。  ○こうした制度で中退して、高校履修の機会を失ってしまわないように、(単位制を実施している)大師高校、神奈川総合高校の資料を入手できれば出してもらいたい。

 こうした意見のやり取りの後、当局から3部制では学校間の交流で多様な単位取得が可能だとの説明があり、委員から「単位制でなけれぱ、3部制は成立しないのか」という質問が出る場面もあった。

 つづいて、○自由に単位がとれれぱ知識はふえるかもしれないが、一般の高校では人間関係が豊かで人間性が育つが、3部制ではその点どうするのか、との3部制のネックにふれた質間が出て、当局はその点の工夫は必要だと認めざるを得なかったのも印象に残りました。

 また、○大学生でさえ自分の方向が決められないまま苦労しているのに、中学生がそれができるようになっているのか。その段階で単位制に対応できるのかと思う。  ○高校時代にもう少し人間的なもみ合いが必要なのかと思う。定時制はその点でふさわしいのか。それも考えると(単位制や3部制について)あれこれと迷う。川崎の実態から判断するしかない。

 傍聴者として、このような意見の流れであったと認識したが、最後に教育委員長は大要、次のようにまとめられました。

 ○誰にとってもよい制度というのは至難のことだが、単位制、3部制は(学校・生徒集団としての)まとまりが分散していくのではという懸念もある。全国的には少しずつふえているが、それも参考にしながら・・・・・今(その制度導入を)決めるわけはいかない。今後、高校.配置を二一ズに合ったものにしていくことと、単位制、3部制の検討をさらに進めていく。本日の審議は『振.興計画(案)』のP14〜P15にわたって行われたことを確認する。

 こうして『川崎市立高等学校振興計画(案)』に対する『再考を求める請願』についての市教育委員会審議は終了。審議は新年度に持ち越されました。いっそう教育的に内容豊かな審議が尽くされますよう、傍聴者の一人として願ってやみません。
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