2016年10月7日
10月7日、「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会」と「かながわの教育政策を考える会」は、神奈川県教育委員会教育長に対して、「2017年度に向けて、子どもたちが安心して学べるように、インクルーシブ教育パイロット校での十分な条件整備を求める緊急請願」を提出しました。
請願は、10月25日の教育委員会会議で審議される予定です。以下に、その請願書を紹介します。
2016年10月7 日
神奈川県教育委員会
教育長 桐谷 次郎 様
2017年度に向けて、子どもたちが安心して学べるように、
インクルーシブ教育パイロット校での十分な条件整備を求める緊急請願
かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会
かながわの教育政策を考える会
<懇談会団体>
横浜市立定時制高校の灯を消さない会 代表 高坂 賢一
かながわ定時制通信制教育を考える会 代表 保永 博行
定時制高校を守る市民の会かわさき 代表 浅野 栄子
不登校の親の会(こだまの会) 代表 馬場 千鶴
教育委員会を傍聴する会 代表 土志田栄子
港南区・教育を語る会 代表 三輪智恵美
県民要求を実現し県政の革新を推進する連絡会 事務局長 神田 敏史
新日本婦人の会神奈川県本部 会長 泉水 令恵
神奈川県教育運動連絡センタ- 事務局長 加藤 誠
【請願項目】
平成28年度より実施予定のインクルーシブ教育パイロット校については、「障害者の権利に関する条約」および「障害者差別解消法」に定める「合理的配慮」を実現するために、以下の項目を求めて請願します。
1,平成28年度入学生から学級定数を20人以下とすること。
2,すべての授業において、取り出し授業あるいはティームティーチングを実施できるだけの教職員定数を確保するとともに、入学生徒の状況に応じて迅速で柔軟な対応ができるよう、学校からの緊急の要請にもこたえられる十分な教職員定数と特別予算を確保しておくこと。
3,養護教諭については常勤者を複数配置とすること。
4,スクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカーをそれぞれ常勤で配置すること。
5,保健室および相談室、生徒のパニック発生時等のための休養室などをはじめとする、「合理的配慮」実現のために必要な施設や設備の確保と充実のための特別予算を、各パイロット校の状況に応じて保障すること。
6,予算は他の教育予算を切り詰めて回すなどせずに、失敗を許されない大事業にふさわしく特別予算を確保して対応すること。
【請願理由】
2012年の文科省報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」では次のように述べています。
基本的な方向性としては、障害のある子どもと障害のない子どもが、できるだけ同じ場所で共に学ぶことを目指すべきである。その場合には、それぞれの子どもが授業内容が分かり学習活動に参加している実感・達成感を持ちながら、充実した時間を過ごしつつ、生きる力を身に付けていけるかどうか、これが最も本質的な視点であり、そのための環境整備が必要である。
多様な生徒を抱える夜間定時制高校では、今でも生徒実態に合わせての「インクルーシブ教育」が行われています(下に実践例)。それも、「少人数環境での教育」のなかで実現できていることです。
全日制でもクリエイティブスクールは「30人学級」で展開し、養護教諭も2名が配置されて成果を上げています。また、これから始まる横浜国際高校の国際バカロレア認定のためのクラスは「25人学級」を予定し、インクルーシブ教育を想定していない場合でも「25人学級」は国際社会での標準規模であることを示しています。インクルーシブ教育パイロット校での「20人学級」は是非とも必要です。
「障害者の権利に関する条約」および「障害者差別解消法」では、「個人に必要な『合理的配慮』が提供される」ことが求められています。
予算や、教職員定数の確保をはじめ、養護教員、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門職の充実や養護学校との緊密な連携など、今までの神奈川での高校教育や障害児教育等で培われた経験・実績を生かした、現在できる限り最良のインクルーシブ教育の実現を求めます。
以上
<夜間定時制高校の例>
A高校定時制に2名の療育手帳を持った生徒が入学して4年目になる。全校生徒は現在160人ほど。1学級は15人から18人。教員定数は18名で、2人の生徒とはほぼ毎日、全職員が声をかけ、会話を交わす関係ができている。芸術科目や体育については他の生徒と一緒の学級で授業を受けているが、国語、社会、数学、理科、英語の各科目については各担当教科から1名の担当がついて、取り出し授業をおこなっている(これらはすべて「内部努力」)。また、近隣の県立養護学校の支援を受けており、養護学校の担当教職員も参加してのケース会議を定期的に開催し、生徒の状況の確認と指導についての話し合いを持っている。進路指導に関しても養護学校が行っているインターンシップに参加するなど、養護学校の全面的な支援を受けている。
こうした取り組みを進める中で、周囲の生徒の意識や2人の生徒との関係にも変化があらわれている。1年前まで「先生、どうしてあの人たちだけ特別扱いされて。ずるい」と言っていた生徒が、今ではその2人の生徒ともごく普通に何気ない会話を交わしている。2名の生徒も、それ以外の生徒も、「それぞれの条件に応じてケアを受けている」との実感が生徒の間で共有される中で、生徒間の相互理解と信頼関係の構築も進んでいると感じられる。
1学級20人以下、全校生徒が160人程度という条件が、このような取り組みを可能にしている。
<追記>
この件について、口頭陳述をさせていただきますよう申し入れます。