2005年4月16日

 4月16日横浜市の神奈川地区センターにおいて、「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会」主催の「これでよいのか!子どもいじめの高校入試」と題したシンポジウムが開かれました。不登校の子の保護者をはじめとする親御さん、中学校、高校の教職員、退職教職員など55名が集まり、保護者、中学校の教員、定時制の教職員の報告をもとに05年度の入試の問題を議論しました。
 子どもが減っているのになぜ高校に入れない子どもが出るのか、中学校での進路指導はどうなっているのか、前期と後期に分けている入試の問題点は何か、二次入試で急遽大幅に募集定員や合格枠が拡大された定時制ではどんな事態となっているか、県教委の入学定員策定の誤りに根本原因があるのではないか、こうした事態を二度と起こさないために行政にどう働きかけていくか、などなどが話し合われました。
 以下に、不登校の親の会「こだま」の会員である保護者の方の報告を資料として紹介します。

子どもがやり直す場を保障するのが教育の原点と思います

   

不登校の親の会「こだま」会員 


 不登校の子の親の会「こだま」のYと申します。
 息子は17歳で、現在通信制のサポート校に通っています。中学時代は不登校で、三分の一くらいしか通えませんでした。2年前に卒業しまして、最初は私立高校に入りましたが、立ち直れず1学期で退学しました。昨年、定時制だったら自分でも通えるかもしれないと期待し受験しましたが、前期選抜試験で不合格となり、後期試験を受けずにサポート校を選択しました。その時の受験について、お話ししたいと思います。

 昨年神奈川県では、定時制と全日制の試験日が同日となり、また前期、後期という従来になかった受験方法となりまして、現場の先生方や親も本人もかなりの混乱をきたしたと思います。

 今までの定時制高校は、学びたい、やり直したいという気持ちがあれば、比較的容易に受け入れてくれるイメージでしたので、前期試験を受けるとき、不合格になることを頭に入れておりませんでした。親の油断もありましたが、募集を超える受験者がいれば必ず落ちる人がいるということです。不幸にもその中の一人になったということです。

 また、内申書重視と自己PRという、何かつかみどころのない視点で合否が決まるというのも不安で納得ができないものでした。落ちた本人は翌日ふとんをかぶって気持ちを立て直すのに日数がかかるのに、その2日後から後期試験の募集が始まり、さらにその2日後から倍率を見ながら、場合によっては志願変更をしなければなりません。その都度、中学からの調査書が必要ですので、何度も学校へ足を運ばなければなりませんでした。

 また、昨年は学区制がありましたので、全日制と定時制の試験日が同じということで定時制受験者も神奈川県の高校教育課から学区確認通知書をもらい、中学からの調査書と一括で受験申し込みをしなければなりません。制度が変わることで書類もふえ、現場の先生も良く理解できていないことがありました。

 すでに中学を卒業している自分の子どものことで、進路の先生に迷惑をかけたくないと思い、わからないことは県の高校教育課に電話をして、その内容を夜中に中学校へファックスを送り、翌朝中学へ電話をかけて、出勤前に書類をいただきにいくことを繰り返し、受験する学校が決まるまでに合計3枚の調書と1通の入学推薦書をいただくことになりました。たった1つの学校に行くのに、なぜこんなに書類が必要かと思います。

 通信制のサポート校は、定時制高校のすべり止めにと受験しましたが、サポート校の先生が大変ていねいに対応して下さり、わざわざ中学まで足を運んでくれたりと息子もそのあたたかさに心が動き、定時制の後期試験を辞退して、決めました。

 1月の中旬から2月中旬まで数日きざみで受験日程がくまれて、これがいったい何の改革なのかと今でも理解できません。昨年、県の教育委員会の折衝の際、なぜ全日制と定時制の試験日を同一にするのですかと聞きましたら、「高校には全日制も、定時制もない。夜ゆっくり学びたいという子もいるだろうし、本人が自由に選べるように生活の多様性に対応したものだ」と説明されましたが、不登校の子を持つ親には、現実離れした詭弁のように感じます。

 改革といいながら、県や市は定時制の枠を狭めていますが、子どもがやり直す場を保障するのが教育の原点だと思います。何度でもやり直しができる場を自分で選べる、これが従来の定時制であったと思います。

 今年もこだまの会では、受験生を5〜6人かかえ、幸いにもその多くが3月に定時制へのキップを手にすることができました。これからもぜひ、定時制の場を広げ閉ざさないように行政に働きかける運動を続けていきたいと思います。

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