2012年7月25日
7月9日、「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会」は対県交渉をもち、「子どもたちが希望をもって学習に励み希望する高校に進学できる条件整備と入試の改善を求める要請書」を県知事と県教育委員会委員長に提出しました。
以下のその要請書を紹介します。
2012年7月9日
神奈川県知事 黒岩 祐治 様
教育委員会委員長 平出 彦仁 様
子どもたちが希望をもって学習に励み希望する高校に進学できる条件整備と入試の改善をもとめる要請書
かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会
<懇談会団体> 横浜市立定時制高校の灯を消さない会 代表 高坂 賢一
かながわ定時制通信制教育を考える会 代表 保永 博行
定時制高校を守る市民の会かわさき 代表 浅野 栄子
不登校の親の会(こだまの会) 代表 馬場 千鶴
教育委員会を傍聴する会 代表 土志田栄子
港南区・教育を語る会 代表 三輪智恵美
県民要求を実現し県政の革新を推進する連絡会 事務局長 佐伯 義郎
新日本婦人の会神奈川県本部 会長 泉水 令恵
神奈川県教育運動連絡センタ− 事務局長 加藤 誠
いま、神奈川の子どもたちは・・・
▽ 小中校の不登校児童生徒1万人近く4年連続全国最高、暴力行為の発生が全国一、
フリーターの割合(高卒無業者)が沖縄についで全国2番目に多い。
▽ 子どもたちの悩みのトップは小中高生とも「将来のこと」で、
小学生の32%、中学生の50%、高校生の66%。 (2006年県教委調査)
▽ 高校入試の困難は、子どもたちの将来不安をあおり、心の荒れを生み、子どもたちが育ちにくい神奈川を生む最大の原因となっている。
▽ かって長洲知事は県民要求にこたえ、高校債を発行してまで「15の春を泣かすな」と高校100校増設計画を実施した。
▽ この春の入試でも8,900人もの子どもたちが公立高校全日制を不合格となり、経済的に私学には志願できず、定時制・通信制に不本意進学した子どもたちが多数でている。
▽ 一方、全日制定員の調整弁のように使われてきた定時制高校は超マンモス校化して、落ち着いて学習できる環境にないと緊急な改善がもとめられている。
▽ 高校改革推進計画10カ年が終了して2年、公私立高等学校設置者会議設置から7年経過してのこの実態を深刻に受け止めて、いま、高校入試のあり方を抜本的に見直す大前提として、高校の定員計画と学費補助のあり方を見直すことがもとめられている。
子どもたちの立場から、2013年度入試に向けて以下の点を抜本的に改善されるよう求めます。
記
1 全日制高校について
@ 全日制を希望する子どもたちが全日制高校に進学できるのに十分な定員計画と条件整備を県が責任をもってすすめること。
A 破綻状態の神奈川県高等学校設置者会議体制の7年間を検証し、全国最低の全日制進学率88.0%と、全国平均のほぼ2倍の定時制・通信制進学率を生み出した「6:4体制」と「率による割り振り」を見直すこと。
〈設置者会議の合意事項は完全に「破綻状態」〉
「基本的な考え方」(1)視点
ア、公私が協調することにより
@生徒の視点に立った定員計画を策定すること
〈結果〉全日制高校を希望しても入れない子どもたちが多数でている。(資料1参照)
2010年10月の全日制進学希望者が91.4% 2011年4月の進学実績は88.0%
→→2011年度入試で全日制進学を断念させられた子どもは 2,260人以上、
2011年10月の全日制進学希望者は91.6%
A全日制高校への進学実績を向上させるよう努めること
〈結果〉05年度以降も全日制高校への進学実績は年々下がりつづけている。
前年度の厳しい結果から、年々希望率そのものが下がりつづける深刻な実態
・・・・決して希望の多様化ではない。(資料1参照)
B生徒一人ひとりの希望と適性に応じた進路を確保することを目標とした定員計画とすること
〈結果〉はじめから定時制を希望していた生徒は中学の調査で定時制進学者の46.2%、
高校調査では26.8%にとどまっている。(2011年度 県教委調査)
イ、生徒が幅広く高校を選択する条件の一つとして、公私間格差の是正を図る方向で検討
〈結果〉学費補助増額
10年度以降、国の高校授業料無償化により増額されその効果が出ている。
しかし、私学の初年度納付金平均90万円の一部にとどまりまだ効果は限定的。
B 神奈川県公私立高等学校設置者会議・公私立高等学校協議会の組織と構成を見直して、公立と私立のPTA・保護者代表、中学と高校の校長会代表をオブザーバーでなく正規の構成メンバーとすること。また、生徒の状況と現場を一番よく知っている中学・高校の教職員代表も正規の構成メンバーとすること。
C 県民の子どもたちの高校進学に責任を負う立場から、かつてもっていた計画進学率を策定して総合的施策をすすめること。来年度は暫定措置として2012年10月調査の希望率91.6%以上に設定すること。
※1999年11月に県が策定した「県立高校改革推進計画」では、「全日制課程の再編整備の基本的な考え方」として次のように述べて、前期計画で14校、後期計画で11校の計25校の県立高校を削減した。
「今後の生徒数の動向を踏まえるとともに、次のような基礎条件に基づいて計画を策定し、再編整備を推進します。計画進学率は、現在、93.5%としていますが、全日制の高校への進学希望等を考慮し、今後も段階的に引き上げていきます。(平成12年度は、94%にします)
(「県立高校改革推進計画」平成11年策定 より)
D 全日制高校進学率を希望率91.6%に見合うまで引き上げる措置をとること。
→→最新の全日制希望率は91.6%「公立中学卒業予定者の進路希望調査」(2011年10月実施)
「91.6%の目標」は全国的にはほぼ達成されている水準である。(資料2参照)
E 公立全日制高校の募集定員を中卒者比60.0%から2.7%以上引き上げること。(資料3参照)
→→全日制進学率を現在の88.0%から91.6%に引き上げるには、3.6%引き上げる対策が必要。
→→これを公立と県内私立で現状の比率で分担すると、公立2.7%、県内私立0.9%となる。
F 10校以上を県立全日制高校として増設し、定員の確保と県立高校の適正規模化をはかること。
→→今後、92%や93%程度(千葉県や’埼玉県なみ)の全日制進学率を展望すると公私で3500人程度の定数増(88%の進学率に比べて)が必要となり、県立でも2500人程度の増加が必要となる。現在、すでに横浜北部の地域では適正規模の8クラスを超えて9,10クラス校も多数でている。適正規模を守り、教育環境を守るためにも全日制高校の増設は必須である。
2 定時制高校について
@ 1校300〜500人近い超マンモス校を解消し、35人学級・学年2クラス以下の適正規模にもどすこと。
A そのためにも、全日制希望者が全日制高校に入れる条件を整備して不本意入学者をなくし、中退者を減らすこと。
B 1学級の募集人数を年度によって40人にしたり35人にしたり、全日制不合格者の受け皿的なあつかいをすることはやめること。定時制高校のよさを復活させ、子どもたちが安心して学習できる環境を整えること。定時制の溢れを通信制に流して解消するなど許されない。
C 以前の定時制高校は、学習のつまずき、いじめ、不登校、高校中退などで傷ついた子どもたちの「生きなおし」の場、勤労者はもちろん、外国籍の人たちの学びの場として、重要な役割をはたしてきた。「定時制のよさ」――少人数学級、小規模学校、安心して通える地域性、異年齢集団を確保するために、定時制の適正配置をして、本来の定時制の一人ひとりが大切にされる“学びの場”に再生すること。
D 横浜市立夜間定時制高校の削減計画を中止すること、川崎市立夜間定時制高校を削減しないこと、および募集クラスを増やして定時制を希望する子どもたちが安心して学べる環境整備について横浜市、川崎市に強く要望すること。
E 川崎市の定時制学区設定の結果を検証し横浜地域への影響を明らかにすること。また、横浜総合高校の弘明寺方面移転にともなう夜間定時制の空白地域拡大について、横浜市、川崎市と協議し、定時制の地域的適正配置をすすめること。
F 相模向陽館高校および新たに開校予定の港南台方面多部制定時制高校については、4年制、少人数学級展開などの定時制の良さを保ちつつ、「多部制展開」をやめて、子どもたちの要求に合わせて放課後の部活動や課外活動等ができる環境を整えること。また特に指導に配慮が必要な生徒が多い実情を踏まえて、個々の生徒に各教職員が十分な時間をもって対応できるよう職員定数や配置に配慮すること。
3 県立横浜修悠館高校および県立通信制高校について
@ 県立横浜修悠館高校は「昼通える通信制高校」と、全日制と同じような学習形態をとる私学の通信制高校のイメージで子どもたちに大きな期待をもたせて開校した。その子どもたちの期待にこたえるように、教職員を大幅に増員して子どもたちの学習進度にあったきめ細かな指導ができるようにすること。
A 横浜修悠館高校で年900人もの退学者を出している実態について調査し、改善を図ること。
B 保護者との懇談会や生徒の要望を聞く会などをもって、要望を聞き、それを生かすよう学校運営や施設設備の改善をはかること。
C 超マンモス校化を解消するため、県民に「サービスは残す」と約束していた平沼、湘南の通信制を再開すること。経済不況の中で通学費用の家計に与える影響も大きい。子どもたちの希望と実態に合わせた通信制の配置がもとめられている。
4 保護者の学費負担軽減について
@ 公立高校の私費負担の実態を調査し、県民に明らかにするとともに、学校予算を増額して、本来公費で負担すべき費用の私費負担をなくするとともに、文字通り「高校学費無償化」をはかること。
A 松沢知事が05年に約束したように「公立並みの学費で私学を選択できるように」私学助成、学費補助を大幅に増やして、私学を希望する子どもが私学に志願できる条件を整備すること。
B 学費補助を中学生3年時に仮申し込みできる方式をさらに発展させ、それを見越して入学金の延納や貸付制度をつくること。
C すべての私学の入学手続き(納金)を入学金含めて公立の合格発表後にもできるようにすること。
D 全日制・定時制・通信制を問わず、共通選抜から二次募集まで一回の受験料納入で受験できるように特別の教育的配慮をすること。
5 奨学金制度について
@ 経済困難・格差拡大は子どもたちの教育の機会均等の大きな妨げになっている。
奨学金の希望に応じて予算を大幅に増額し、適用人数も増やすこと。
A 保護者の収入を前年の所得でみる方式を、リストラ・解雇などの急変による緊急措置の必要な家庭については、特別な配慮をするよう改め、中学校の段階から周知徹底をはかること。
B 返還免除条件を子どもたちの実態に合うように弾力的に運用できる以前の制度にもどすこと。
C 経済困難家庭の増加の実態に合わせて返還不要の奨学金を新設すること。
6 入試制度について
@ 国連子どもの権利委員会は1998年から2010年までに日本政府に対して3度の勧告を行い、「過度に競争的な学校環境が就学年齢層の子どものいじめ、精神障害、不登校、中途退学および自殺を助長している可能性がある」と指摘し、改善を求めている。これを踏まえて入試制度について、受験生の人権保障、負担軽減の観点から大幅改善を図ること。(資料4参照)
A 現在、毎年10月に実施している「公立中学校卒業予定者の進路希望調査」を、1学期中に実施し、当該年度の生徒募集計画に反映させること。
B 学校ごとの重点化が多岐にわたり、複雑過ぎる入試制度をわかりやすい制度に改めること。
C 学区撤廃を見直し、当面中学区制に戻すなど検討すること。
――自由に選べたのはごく一部の子どもで、多くの子どもたちは、近くに学校があっても受験できずに遠くに行ったり、ランクを下げたりして、結局は不本意入学者を増やす結果になっている。
D 夜間定時制と通信制の分割選抜を全日制と同様の1回選抜とすること。十分な定員を確保した上で、志願変更で調整し、不合格者の受け皿は二次募集とすること。
E 全課程・全学科に必須としている面接検査を改め、各学校の選択に任せること。
F 新しい入試制度の実施は、中学に入学した時点で明らかにされているようにはからうこと。
G 不登校などハンデイをもつ子どもの進学が難しくなっている。特別枠の検討など、そうした子どもたちに配慮された措置をおこなうこと。
7 中学校3年生の学校生活と高校の正常な授業を保障する措置について
@ 分割選抜など2回選抜制を見直して期間を短縮すること。
A 私学の願書受付期間を3日間位に集中すること。(そうすれば、学級で全員揃う日数が大幅に増える)
B 私学の1月入試・「推薦入試」を遅らせること。
C 公立の入試から合格発表までの期間を短縮すること。
以上