2011年7月2日

 かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会は6月28日と30日に、神奈川県知事と県教育委員会委員長に対して、「子どもたちが希望をもって学習に励み希望とする高校に進学できる条件整備と入試の改善を求める要請」を行いました。以下に、その要請書を紹介します。

2011年6月28日

神奈川県知事   黒岩 祐治 様 
教育委員会委員長 平出 彦仁 様

子どもたちが希望をもって学習に励み希望とする高校に進学できる条件整備と入試の改善を求める要請書

                 

かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会

横浜市立定時制高校の灯を消さない会
        代表  高坂 賢一
よこはま定時制父母の会
        代表  沢崎 三郎
かながわ定時制通信制教育を考える会
        代表  中陣 唯夫
定時制高校を守る市民の会かわさき
浅野 栄子
不登校の親の会(こだまの会)
        代表  馬場 千鶴
教育委員会を傍聴する会
        代表  土志田栄子
県民要求を実現し、県政の革新を推進する連絡会 事務局長
 佐伯 義郎
新日本婦人の会神奈川県本部
会長  高浦 福子
神奈川県教育運動連絡センタ−
  事務局長 加藤  誠

 いま、神奈川の子どもたちは・・・

小中校の不登校児童生徒1万人近く4年連続全国最高、暴力行為の発生が全国一、フリーターの割合(高卒無業者)が北海道についで全国5番目に多い。

子どもたちの悩みのトップは小中高生とも「将来のこと」で、小学生の32% 中学生の50% 高校生の66%。 (県教委調査)

高校入試の困難は、子どもたちの将来不安をあおり、心の荒れを生み、子どもたちが育ちにくい神奈川をうむ最大の原因となっている。

かって長洲知事は県民要求にこたえ、高校債を発行してまで「15の春を泣かすな」と高校100校増設計画を実施した。

この春の入試でも8,900人もの子どもたちが公立高校全日制を不合格となり、経済的に私学には志願できず、定時制・通信制に不本意進学した子どもたちが多数でている。

一方、全日制定員の調整弁のように使われてきた定時制高校は超マンモス校化して、落ち着いて学習できる環境にないと緊急な改善がもとめられている。

高校改革推進計画10カ年が終了し、公私立高等学校設置者会議設置から6年経過してのこの実態を深刻に受け止めて、いま、高校入試のあり方を抜本的に見直す大前提として、高校の定員計画と学費補助のあり方を見直すことがもとめられている。

 子どもたちの立場から、2012年度入試に向けて以下の点を抜本的に改善されるよう求める。



 1. 全日制高校について
@ 全日制を希望する子どもたちが全日制高校に進学できるに十分な定員計画と条件整備を県が責任をもってすすめること。

A 破綻状態の神奈川県高等学校設置者会議体制の6年間を検証し、その体制と6:4体制を見直すこと。

〈以下の設置者会議の合意事項は完全に「破綻状態」〉
「基本的な考え方」(1)視点 
ア、公私が協調することにより
@生徒の視点に立った定員計画を策定すること 
〈結果〉全日制高校を希望しても入れない子どもたちが多数でている。
     2010年度で、全日制進学希望者が91.4%  進学実績は88.2%
      →→全日制進学を断念させられた子どもは 2,200人以上

A全日制高校への進学実績を向上させるよう努めること
〈結果〉05年度以降も全日制高校への進学実績は年々下がりつづけている。前年度の厳しい結果から、年々希望率そのものが下がりつづける深刻な実態・・・決して希望の多様化ではない。
     
B生徒一人ひとりの希望と適性に応じた進路を確保することを目標とした定員計画とすること
〈結果〉はじめから定時制を希望していた生徒は中学の調査で定時制進学者の38%、高校調査では25%にとどまっている。(県教委調査)

イ、生徒が幅広く高校を選択する条件の一つとして、公私間格差の是正を図る方向で検討
〈結果〉学費補助増額  
◆10年度は、国の高校授業料無償化により大幅に増額された。しかし、私学の初年度納付金平均90万円から見るとごく一部にとどまる。

B 神奈川県高等学校設置者会議の構成に、現場を一番よく知っている中高教員代表、PTA代表をオブザーバー参加から正規の構成メンバーとすること。

C 県民の子どもたちの高校進学に責任を負う立場から、かってもっていた計画進学率を策定して総合的施策をすすめること。

※1999年11月に県が策定した「県立高校改革推進計画」では、「全日制課程の再編整備の基本的な考え方」として次のように述べて、前期計画で14校、後期計画で11校の計25校の県立高校を削減した。

「今後の生徒数の動向を踏まえるとともに、次のような基礎条件に基づいて計画を策定し、再編整備を推進します。計画進学率は、現在、93.5%としていますが、全日制の高校への進学希望等を考慮し、今後も段階的に引き上げていきます。(平成12年度は、94%にします。)」
           (「県立高校改革推進計画」平成11年策定 より引用)

D 全日制高校進学率を希望率に見合うまで上げる措置をとること。

E 公立全日制高校の募集定員を十分に増員すること。

F 廃止校10校以上を県立高校として再開し、定員の確保と県立高校適正規模化をはかること。
  

2、 定時制高校について
@ 1校300〜500人近い超マンモス校を解消し、学年2〜3クラスの適正規模にもどすこと。

A そのためにも、全日制希望者は全日制高校に入れる条件を整備して不本意入学者をなくし、中退者を減らすこと。

B 1学級の人数を年度によって40人にしたり35人にしたり、全日制不合格者の受け皿的なあつかいをすることはやめること。35人以下として定時制高校のよさを復活させ、子どもたちが安心して学習できる環境を整えること。

C 以前の定時制高校は、学習のつまずき、いじめ、不登校、高校中退などで傷ついた子どもたちの「生きなおし」の場、勤労者はもちろん、外国籍の人たちの学びの場として、重要な役割をはたしてきた。「定時制のよさ」――少人数学級、小規模学校、安心して通える地域性、異年齢集団を確保するために、定時制の適正配置をして、本来の定時制の一人ひとりが大切にされる“学びの場”に再生すること。

D 横浜市立夜間定時制高校の削減計画中止、川崎市立定時制高校を削減しないこと。40人学級をすぐに解消し、クラスを増やして定時制を希望する子どもたちが安心して学べる環境整備を横浜市、川崎市に強く要望すること。

E 川崎市の定時制学区設定の結果を検証し、横浜総合高校の弘明寺方面移転にともなう夜間定時制の空白地域拡大について、横浜市、川崎市と協議し、定時制の地域的適正配置をすすめること。

F 定時制を希望する子どもたちが安心して定時制で学べるように条件を整備すること。定時制の溢れを通信制に流して解消するなど許されない。


3、 県立横浜修悠館高校および県立通信制高校について
@ 県立横浜修悠館高校は「昼通える通信制高校」と、全日制と同じような学習形態をとる私学の通信制高校のイメージで子どもたちに大きな期待をもたせて開校した。その子どもたちの期待にこたえるように、教職員を大幅に増員して子どもたちの学習進度にあったきめ細かな指導ができるようにすること。

A 保護者との懇談会や生徒の要望を聞く会などをもって、要望を聞き、それを生かすよう学校運営や施設設備の改善をはかること。

B 超マンモス校化を解消するため、県民に「サービスは残す」と約束していた平沼、湘南の通信制を再開すること。それは特に07年度以前の入学生の希望が強く、子どもたちの希望・実態に合わせた通信制の配置がもとめられている。


4、 保護者の学費負担軽減について
@ 公立高校の私費負担の実態を調査し、県民に明らかにするとともに、学校予算を増額して私費負担をなくし、文字通り「高校学費無償化」をはかること。

A 松沢知事が05年に約束したように「公立並みの学費で私学を選択できるように」私学助成、学費補助を大幅に増やして、私学を希望する子どもが私学に志願できる条件を整備すること。

B 学費補助を中学生3年時に仮申し込みできる方式をさらに発展させ、それを見越して入学金の貸付制度をつくること。

C すべての私学の入学手続き(納金)を入学金含めて公立の合格発表後にもできるようにすること。

D 全日制・定時制・通信制を問わず、前期選抜から二次募集まで一回の受験料納入で受験できるように特別の教育的配慮をすること。


5、奨学金制度について 
@ 経済困難・格差拡大は子どもたちの教育の機会均等の大きな妨げになっている。奨学金の希望に応じて予算を大幅に増額し、適用人数も増やすこと。

A 保護者の収入を前年の所得でみる方式を、リストラ・解雇などの急変による緊急措置の必要な家庭については、特別な配慮をするよう改め、中学校の段階から周知徹底をはかること。

B 返還免除条件を子どもたちの実態に合うように弾力的に運用できる以前の制度にもどすこと

C 経済困難家庭の増加の実態に合わせて返還不要の奨学金を新設すること。


6、入試制度について
@ 複雑過ぎる入試制度をわかりやすい制度に改めること。

A 学区撤廃を見直し、当面中学区制に戻すなど検討すること。
――自由に選べたのはごく一部の子どもで、多くの子どもたちは、近くに学校があっても受験できずに遠くに行ったり、ランクを下げたりして、結局は不本意入学者を増やす結果になっている。

B 前期選抜、後期選抜の二回選抜を中止すること。

C 特別活動等の点数化を見直すこと。

D 新しい入試制度の実施は、中学に入学した時点で明らかにされているようにはからうこと。

E 不登校などハンデイをもつ子どもの進学が難しくなっている。特別枠の検討など、そうした子どもたちに配慮された特別措置を検討すること。


7、中学校3年生の学校生活と高校の正常な授業を保障する措置について
@ 前期・後期の2回選抜制を見直して期間を短縮すること。

A 私学の願書受付期間を3日間位に集中すること。(そうすれば、学級で全員揃う日数が大幅に増える)

B 私学の1月入試・「推薦入試」を遅らせること。

C 公立の入試から合格発表までの期間を短縮すること。

以上

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