2012年3月14日

 3月13日に開催された神奈川県教育委員会議において、先に「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会」が提出していた「調査書がない、あるいはその一部の記載がない受験生の公平な扱いを求める請願」について、「かながわ定時制通信制教育を考える会」代表の保永博行が陳述を行いました。以下に、その「請願書」を資料として紹介します。

2012年2月12日

 神奈川県教育委員会委員長 平出 彦仁 様
 

「調査書がない、あるいはその一部の記載がない受験生」の
                        公平な扱いを求める請願

                 

かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会

横浜市立定時制高校の灯を消さない会
        代表  高坂 賢一
よこはま定時制父母の会
        代表  沢崎 三郎
かながわ定時制通信制教育を考える会
        代表  保永 博行
定時制高校を守る市民の会かわさき
        代表  浅野 栄子
不登校の親の会(こだまの会)
        代表  馬場 千鶴
教育委員会を傍聴する会
代表 土志田 栄子
港南区の教育を語る会
代表  三輪 智恵美
県民要求を実現し、県政の革新を推進する連絡会 事務局長
 佐伯 義郎
新日本婦人の会神奈川県本部
会長  泉水 令恵
神奈川県教育運動連絡センタ−
  事務局長 加藤  誠

 【請願趣旨】

 2011 年10 月神奈川県公立高等学校入学者選抜制度改善方針が発表されました。2004年から始まった前期入試、後期入試の現行入試制度が、2013 年度以降、大きく変更されることになりました。全日制の入試が2 回から1 回の選抜にまとめられたことは、受験生や保護者、中学校、高校の負担を軽減する意味で喜ばしいことです。

 しかし、発表された選考方法によると、社会人や不登校経験者、過年度生、日本語に不慣れな人など「調査書がない、あるいはその一部が欠けている受験生」が、全日制や、特に定時制において、現行制度より格段に不利となる恐れがあります。

 すべての受験者の人権を守り、平等性、公平性を確保するために、以下の点について改善を求めます。


 【請願事項】

 1,全日制共通選抜における第1次選考の選考人員は90%でなく80%以下にしてください。

 2, 定時制の共通選抜および分割選抜については、調査書と実施した検査をもとにした総合的選考とし、「調査書がない、あるいはその一部の記載がない受験生」にも十分配慮した制度としてください。



 《 説明 》

 1, 共通選抜での1次選考の選考人数の割合を80%から90%に変更することについて

 「入学者選抜制度改善方針」では「募集人員の90%まで調査書の評定(2・3年)と実施した検査(面接・学力)をもとに定められた数値算出方法で選考」としています。現行制度では数値算出方法(調査書・学力)での選考は「募集人員の80%まで」としていますが、いかなる理由で80%を90%に変えるのか、その説明はありません。

 不登校の生徒や社会人、過年度生、外国につながる受験生などは「調査書がない、あるいはその一部が欠けている受験生」として扱われるケースがほとんどです。このような受験生は、この1次選考からは排除されています。そのため現行制度では募集人員の80%の1 次選考合格者分を除いた残りの20%の枠内で、こうした受験生を受け入れています。

 本来、入学試験制度は、すべての受験生にとって「機会均等」を保障しなければならない性格のものです。現行の制度でも、受験生のうち「調査書がない、あるいはその一部が欠けている受験生」の割合が20%にまで及ばない場合は、その公平性が維持されていると考えられます。

 しかし、「改善方針」ではこれが、90%となってしまうため、こうした受験生の割合が残りの10%以内に収まらないと公平性が保てないことになります。現在、神奈川県では小中学校で不登校だった生徒の高校進学が増加しています。また、外国につながる受験生の数も急増しています。これらの状況を考えると、今このような変更を行うことは事態に逆行しています。

 全日制をこうした受験生にとって狭き門としないためにも1 次選考の割合は「80%以下」とすべきです。


 2, 定時制の共通選抜と分割選抜の選考方法について

 現行の定時制では、前期選抜で「調査書と面接」を資料とした総合的選考、後期選抜では「調査書、学力検査、面接、その他の検査」を資料とした「総合的選考」となっています。

 「改善方針」では、共通選抜では「第1 次選考で募集人員の90%まで(調査書の評定を含めた)数値を用いた選考」、分割選抜では「数値を用いた選考」と大幅に変更されています。

 現在の定時制の受験生の状況を見ると、受験生のうち、2 割から5 割が「調査書がない、あるいはその一部が欠けている受験生」ということも珍しくありません。こうした受験生は「数値にもとづく選考」(1次選考)からはずされます。しかし本来定時制高校は、全日制高校では受け入れにくい、このような受験生のために存在する学校であるはずです。

 「改善方針」の内容で新入試要項がつくられるとすると、社会人、不登校経験者、高校中退者、過年度生、外国につながる受験生など、本来定時制が主として受け入れるべき受験生が排除されてしまうということになりかねません。

 新制度で行われる定時制の「共通選抜」、「分割選抜」のいずれも「総合的選考」とすべきです。

以上 

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