2003年7月18日
7月15日、「かながわ定時制教育を考える会」も参加している「かながわ定時制・通信制教育を考える懇談会」は、神奈川県教育委員会の事務局(高校教育課、総務室、義務教育課など7名)と話し合いを行い、県教育委員会教育長に対し次のような4点について要望しました。
以下に、その要望書を資料として紹介します。
2004年7月15日
神奈川県教育委員会
かながわ定時制・通信制教育を考える懇談会
教育長 曽根秀敏 様
私たちは神奈川県内で後期中等教育、とりわけ定時制高校の問題を考える組織が集まって結成した「かながわ定時制・通信制教育を考える懇談会」と申します。以下に、私たちの基本的な考え方をお示しし、貴教育委員会に四点要望いたしますので、どうぞご検討いただき善処されますようお願いいたします。
基本的な考え方
県民の二一ズとして、私学への進学希望が少なくないことは理解いたします。しかし、経済的な困難さと私学助成の貧困や奨学金等の制度の不十分さにより、最終的な進路希望を公立高校とせざるを得ない現状はだれもが認めるところであろうと思います。
ここ数年来、高校入試は混乱が続きましたが、この原因は中学卒業生の強い公立志向と向き合わずに、公立と私立の入学定員が策定されていること、および1500人もの生徒が学ぶ横浜市立の定時制高校を募集停止にしたところにあると考えます。現実の問題として、昨年度も私学では2047人の定員割れをおこしていますし、定時制の入試では異例ともいえる三次募集が行われました。
最初から定時制を希望する生徒が増一えている現状と、多くが公立高校への進学を希望していることを考えあわせる時、公立高校の定員を増やす必要性を強く感じるとともに、定時制の募集定員も増やして、定時制教育を充実させる必要があると考えます。この問題を放置するなら、また来年も同様な混乱が繰り返されるであろうことを危倶いたします。
要望事項
・私学への入学を希望する生徒が、経済的な困窮を理由に進路変更することがないように、私学助成の増額と奨学金制度のより一層の拡充を求めます。
.・公立の全日制高校への進学を希望する生徒が多くいる(進路希望調査から)という現状を考え、公立高校の募集枠の拡大を求めます。市教委から提出された「平成17年度神奈川県立高等学校入学者の募集定員等に関する要望」について、県教委はどう考えどのように対応しようとしているのかお聞かせ下さい。
・定時制高校への進学を希望する生徒が増えている一(進路希望調査から)という実態、および不登校を経験した生徒や日本語を母語としない生徒・経済的に困窮する生徒、過年度卒業生(高校中退者を含む)等の全日制への進学をあきらめざるを得ない生徒の存在を考え、定時制の募集定員増と定時制教育の充実を市教委と協議して下さい。併せて、募集停止になった市立定時制4校での募集再開と戸塚高校定時制の存続(募集の継続)を市教委に求めて下さい。
・定時制のクラス定員が40人になりましたが、次年度以降はクラス定員を35人に戻してください。
参加組織(かながわ定時制・通信制教育を考える会に参加している組織)
横浜市立定時制高校の灯を消さない会
よこはま定時制父母の会
かながわ定時制教育を考える会
よこはま市民教育委員会
定時制高校を守る市民の会かわさき
県民要求を実現し、県政の革新を推進する連絡会
新日本婦人の会神奈川県本部
神奈川県教育運動連絡センター
こだまの会(不登校の親の会)
教育委員会を傍聴する会
2004年8月1日
7月15日に行われた「かながわ定時制・通信制教育を考える懇談会」と神奈川県教育委員会の事務局との話し合いにおいて、「懇談会」に参加する諸団体の訴えと要望を、以下に資料として紹介します。「不登校の会」のお母さんの切実な要望が叶えられることを強く望みます。
まず、進行役(横浜市立の定時制に関わる会)から、「昨年の入試状況を見ても、希望する全日制の高校に入れずに、定時制や通信制にも入学でない子どもがうまれている。横浜市教育委員会が再編整備計画を打ち出したこと(この間市立定時制4校を募集停止にした)によって、4年たっても混乱が収まっていない。
私学は、入学定員の枠を2000人ほど満たさず、空いている状況だ。
横浜市教委は、定時制の統廃合の理由のひとつに、不本意入学を挙げ、再編整備計画の言い訳にしている。横浜弁護士会から、出された勧告(定時制を募集停止にしたことは人権侵害であるという勧告)を無視しているが、県当局はどう考えているのか」などと切り出されました。
続いて、県教育運動連絡センターの加藤誠氏が「今回の定時制の問題は、地域性と科(普通科、工業科など)の問題をしっかり押さえなければならない。地域性で言えば、横浜の入学定員が空いてなくても、小田原が空いているからよいということにはならない。
また、科で言えば、子どもたちは普通科を希望しているということだ。02年度2723人減らして、大混乱が起きた。03年度は、334人増やして、混乱を何とか回避した。04年度は、全日制の生徒定員を969人減らしたため、二次募集さらに三次募集までやる羽目になった。
入れなかった子どもたちは、進学を断念する子、百数十万円を払って私学の通信制(サポート校)に通っている子など今も苦しんでいる。全日制の生徒定員が不足しているため、定時制に殺到しているというのが現状である。
今日の新聞報道を見ると、県の後期再編計画は、大幅な削減計画(県立高校を11校削減するという計画)であり許せない。後期再編計画は、県民の意見を聞くといっていたが、県民の声も聞かずに計画を打ち出してきたのは、許しがたい。
来年度の全日制の進学率が確定するのは、いつなのか。また、高校に入れずに、無業者のまま中学を卒業した子どもたち約1000人をそのままにしておくのか。何らかの対策をたてるのか」と質しました。
さらに、「かながわ定時制教育を考える会」の代表である中陣唯夫は、「定時制に学んでいる生徒たちは、多様な条件やさまざまな問題を抱えながら、登校している。中学をほとんど通わなかった不登校の子、外国籍の子、過年度生、働きながら学ぶことを希望している子、中高年の方々などである。
今まで30人から35人で教育成果をあげてきた。川崎市も県に言われて40人にしている。せっかくこれから学びなおそうと思っている子の教育の場を奪っている。全日制の定員を削減して、定時制の定員を拡大して学校を圧迫している。教育委員会は、定時制の現場に来て、教育の現状を学ぶ必要があるのではないか」と訴えました。
最後に、不登校の子の会である「こだまの会」のお母さんから次のような切実な要望が出されました。
「今、15人以下2年連続すると廃校になる(県立定時制高校の重点校でないところは、入学者が2年連続15人以下になると廃課程になる)ということを聞いて、子どもたちが切り捨てられると思うと、胸が張り裂けそうになります。
今年、前期選抜試験で落とされた子がいるのですが、自信をなくして、立ち直れない子も出ています。過年度になった子は、進路についてどこにも相談窓口がないのです。中学の先生もその子がどうなったかわからないとおっしゃっていました。
いろんなところでそういう子は苦しんでいます。ある子は、サポート校に行っているが、年間百数十万円の負担です。奨学金も受けられません。
私の子は、今、定時制高校に通っていますが、毎日、無遅刻無欠席で部活のサッカーを楽しんでいます。この子が『お母さん、1クラス40人はこの学校では無理だよ』と言っています。
どうか、人間の心を持って定時制の子どもたちと接していただきたいと思います」