2004年4月16日

 神奈川県の2004年度公立高校の入試は、2002年度の定時制入試をめぐって大混乱した状況が再現される事態となりました。
 実際の入学者数より大幅に水増しされた私立の入学定員枠を変えず、公立全日制の入学定員枠を大幅に減少させ、計画進学率も下げたことにより、公立全日制の不合格者が大量に発生、さらに全日制2次入試で不合格となった子どもたちが定時制の2次入試に殺到しました。
 2月23日全日制の2次入試を前にして、県内の教育3団体が県知事に対し、高校定員に対して緊急の要請をおこないました。以下のその要請書を資料として紹介します。


2004年2月23日


神奈川県知事  松沢成文様

2004年度高校定員に関する緊急措置の要請書


新日本婦人の会神奈川県本部

会長柳下靖子

神奈川県教育運動運絡センター

事務局長加藤誠

子どもと教育・くらしを守る神奈川県教職員連絡協議会

議長福田やよい




 貴職におかれましては、神奈川の教育の充実と発展のために、日ごろからご努力されていることに敬意を表します。

 私たちは、希望する子どもたちに高校教育を保障できる条件整備を求めて毎年要請を行ってまいりました。02度は一部合格枠拡大、03度は高校募集定員拡大など、一定の改善がはかられ、感謝申し上げてきたところです。

 今年から、公立高校の入試制度が大きく変わり、受験生も保護者も先の見えない不安でいっばいです。加えて04年度は、県教委が公立高校の募集定員を大幅に削減して、受験生に大きな混乱を起こしています。

 私たちは、「いのちとくらしと雇用・営業を守る神奈川県市民実行委員会」の共同要求の場でも、計画進学率を94.0%から93.8%に0.2%引き下げた点や公立高校募集定員削減の見直しを求めてまいりました。

 昨日の公立高校の後期選抜試験の志願・受験・辞退の状況や不況・リストラなどによる家計の悪化など考えると、数百人を越える子どもたちが行き場がないまま社会に放り出されることが心配されます。

 県当局が、02年度の事態について「同じような事態を招くことのないように努める」と議会答弁なさいましたように、神奈川の将釆を担う子どもたちに、希望する高校教育の場を整えてやるのが行政の責任であると考えます。

 子どもたちに学習の場が保障されるように、以下のような緊急措置等をとっていただくよう要請いたします。


言已


1、県教委は、後期選抜試験の不合格者を何名と予想し、その子どもたちの受け皿をどのように考えているか示してください。
 進路が決まらないまま、社会に放り出される子どもを1人もださないよう緊急対策を求めます。


■県内公立高校の後期選抜の受験状況が今日の新聞で発表されました。
「平均競争率は全日制1.33倍」で、前年度(一般募集第1希望)より0.23低いとの報道です。しかし、同時期の定時制の受験が、前年度は平塚農業初声分校の28人しかなかったが、今年は1,006人でていることを考え合わせると、全日制・定時制合わせた競争率は前年を上回っていると考えなければなりません。

 前期選抜では、31,828人の「不合格者」をだしました。この数は受験者数の64%に当たります。そのほとんどの子どもたちが後期選抜を受験しています。3月1日の後期選抜の合格発表では、およそ8,000人近い子どもたちが、二度目の「不合格」の烙印を押されることになります。

 そしてその多くは、40万円前後の入学金・設備費などを納入して私学の併願校に入学手続をとり、他の人は公立の二次募集に再々挑戦することになります。

 しかし、今年は定時制の募集定員2,320人のおよそ3分の2はすでに埋まづています。したがって二次募集人員は、全日制の欠員およそ150人位と、定時制の欠員およそ550人程度と推計されます。

 前年同時期(3月1日)は、全日制の欠員にともなう二次募集85人と、2,250人の定時制の募集が残されていました。


■不況・リストラ・不安定雇用などによるいっそうの家計の悪化や、全国最下位を競う私学助成の貧しさなども考えると、公立志向が前年より強まっていると判断されます。

 高校進学を希望しながら、行き場のないまま「15の春」を迎える子どもたちが、少なく見ても試算上、前年より400〜700人以上も多くなると心配されます。青少年をめぐる事件や事故、子どもたちの人間としての発達の歪みが社会問題化しているいま、子どもたちを励まし、自己肯定感情を高め、希望を育み、義務教育修了者の門出を祝ってあげることこそ大切ではないでしょうか。

 「挑戦」して競わせ、少数の勝ち組・多くの負け組をつくり、子どもたちの心に傷を負わせるのは、最大の「いじめ」です。子どもたちを一人ひとりの人間として大切にし、人間の尊厳を守る社会の担い手に育てあげるために、その条件整備をはかるのが行政の責任です。

 今年、公立中学校の卒業生は969人減との推計に、前年度も2000人前後の欠員がうまらなかった私学の定員は1人も削減せずに、公立高校の募集定員を994人も減らした県教委の責任は重大です。



2、二次募集は、欠員が1〜2人でも募集するどともに、全日制、定時制ともに800人程度の緊急募集を実施すること。


3、定時制高校については、昨年度、今年度と定員の拡大が実施され、横浜地区の定員のこれ以上の拡大は、定時制高校のよさ・質を変え、子どもたちの求める教育が保障されないとの批判が強まっています。

 そこで、在校生もいて、校舎もあって、教職員もいながら募集停止とした港高校、横浜商業高校、鶴見工業高校の定時制の募集を再開するよう横浜市教委と協議して、その実現をはかること。

以上

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