2008年11月1日


  全日制進学率が89.2%(2008年4月)にまで低下
         今でさえ不足していて、今後生徒が増えるというのに、
  全日制公立募集枠 来年度60.3%、再来年度60.0%という県教育委員会、

公私立高校設置者会議の決定は許せない


 10月15日、県教育委員会議が開かれ、来年度の公立高校生徒募集計画について審議された。生徒募集計画については、「定時制教育を考える会」や「不登校の親の会」など11の県民団体の連名による請願と神高教による請願が出された。公立全日制高校の入学定員の拡大と私学助成(学費補助)の増額、公私協議会での「公立6割 : 私学ほか4割」の合意の撤廃などの切実な要求が出され、意見陳述も行われた(県民団体8月26日、神高教10月15日)。

 しかし、会議では9月12日開かれた「神奈川県高等学校設置者会議」で承認された原案が提案され、「私学側も了解しているということでjと、ほとんど審議もなく了承され、公立高校の生徒募集枠(中卒者比で2008年度60.6% 実績61%)が、2009年度60.3%(39,450人)に減らされることになった。また、9月12日の設置者会議では、2010年度は60.0%に減らすことまで確認されている。

 設置者会議の席上、松沢県知事は「公私が合意できて良かった」と述べただけで、全日制を希望しながら定時制や通信制へ行かざるを得ない生徒の現状や私学進学者への学費補助など、その改善に向けての施策などについての発言は一切なかった。公立募集枠を県教委の原案より900人近くも減らす決定をした2005年9月の設置者会議で「公立と同程度の負担で私学にも行けるように」と発言したことはなんだったのか。知事をはじめ、教育委員、教育長、私学経営者の責任は重大である。


 2009年度公立全日制募集枠(中卒生徒比)は、公(教育委員会)、私(私学協会)の主張の「中(なか)」をとって、60.3%に

 今年度の定数協議は7月31日から始まり、8月13日、8月29日、9月11日と、4回の公私協議会で行われた。7月31日の協議会では、今年度の神奈川県の全日制進学率がとうとう 89.2%にまで低下したことが報告された。一昨年、昨年にひきつづき、全国最低水準を更新している。その後の協議では不登校対策や、田奈、釜利谷、大楠の3校を2009年4月にクリエイティブスクールとして改編する計画などが話題となった。

 8月13日の協議では、県教委の募集計画担当から「2009年度の公立枠は今年同様60.6%、公立60.0%実施は1年延ばして2010年」という案が出された。私学協会からは、私学経営の立場からそれは認められない、2006年9月の設置者会議での合意事項(2009年4月から公立全日制60%、私立などを40%に固定する)の完全実施を求める意見が強く出された。

 その結果、9月11日の協議で座長の県民部学事課から両者の中間を取った調整案『2009年の公立枠60.3%、2010年の公立枠を60.0%にする』が出されて協議会の合意として設置者会議に提案された。

 2000人もの不本意入学を毎年生み出している事についての真剣な謙論はなし

 しかし、公立募集枠の削減により公立全日制への入学が困難になり、2002年以来、入試での混乱と定時制・通信制入学者の異常な増加が続いていることから、「不登校の親の会」などの市民団体や神高教などの教職員組合から、公立枠の拡大と「公立6割 : 私学ほか4割」体制の見直し、私学進学者への学費補助などを求める数多くの要請署名や請願が寄せられた。9月11日の公私協議会で保護者の立場からの意見陳述も行われたが、それについてこの協議の場で時間をかけて真剣に討議されたという事実はない。

 「昼間進学率」は全日制進学率の低下を隠すために持ち出された?

 また、そのうえ、昼間進学率という全国にもない一方的な概念をつくりだし、横浜市立横浜総合高校などの昼間定時制や、通信制の修悠館高校の平日登校講座に通う生徒や私学の通信制で昼間登校している生徒の数もそれに含めてカウントすれば、神奈川の進学率は高まっている(07年度:91.8%、08年度:92.4%)という議論まで始めようとしている。

 しかし、統計上のデータをいじっても事実を変えられることない。全日制進学率の低下と定時制・通信制進学率の急増は、もともと全日制を希望している中学生が、受験の技術的ミスや経済的理由で定時制や通信制に進学せざるを得ないという事実を示している。この現実に真剣に向き合うことである。

 真のニーズは 公立全日制枠の拡大と高校増設および「公立と同程度の負担で私学に通える」 (2005年9月の知事発言)制度の充実

 県教委は定時制や通信制にはニーズがあるという。不登校経験の生徒など、確かに今までの全日制普通科の体制では受け入れにくい生徒が増えているのも事実で、その人たちが自分にとってよりましな環境を求めて定時制や通信制を希望して進学してきているのも事実である。これには小学校、中学校も含めて、今の学校の教育環境に大きな問題があることを見逃してはならない。

 でも、神奈川の定時制・通信制で急増している生徒の大半はもともと全日制進学を希望していた生徒たちである。入試の段階になって、公立全日制募集定数の不足によってやむなく進路変更している。これは県の政策によってやむなく作り出された「ニーズ」であって、本人の「希望」ではない。これらを検討・改善していく努力なしに、定時制や通信制の枠だけ増やしても何の解決にもならない。

 すでに定時制や通信制で受け入れた生徒に対しては、その教育要求に応じた教育環境の整備が急務である。しかし、本来全日制を希望している生徒を、2002年以来、6年以上にもわたって定時制や通信制で1,000人、2,000人規模で大量に受け入れざるを得ないという神奈川の状況はまさに異常としか言いようがない。

 生徒を犠牲にした高校再編計画

 2000年度から始まった高校改革で25校も高校削減を行ったことは明らかに「やりすぎ」である。そのつけが、いま全日制進学率の低下、定時・通信制の急増に現れている。これらの不合理を押しつけられている生徒が増えている。これはただちに解消しなければならない。今回の公私合意『2009年の今立枠60.3%、2010年の公立枠を60・0%にする』はこの現実から見ても許されるものではない。

 生徒の人権を守り、学校の適正な規模・教育環境を守るためにも、公立全日制枠の拡大と高校増設はもちろん、「公立と同程度の負担で私学に通える」ためにはどの程度の私学助成と私学進学者への学費補助が必要なのか、真剣な議論と施策づくりが求められている。

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