2008年7月7日

2008年6月7日

 08年度高校入試は、02、04、05、06、07年度に引き続き、6度目の異常事態
                 子どもたちは入学先を求めて 全日→定時→通信と右往左往

   子どもたちの学習意欲を高めるためにも

来年度の公立全日制枠は少なくとも62.5%(対中卒者比)だ

  「2009年4月から公立全日制60%、私立などを40%に固定する」という
                    神奈川県高等学校設置者会議の「合意」は不当!



 2008年度の高校入試は、県教委や学校関係者にとれば、昨年までのような「混乱」がなかったjとも言えようが、それは誤りである。当事者である受験生が、入学先を求めて、公立全日制から定時制へと右往左往せざるを得ない状況が、今年はさらに通信制独立校である修悠館高校にまで拡大している。全国的にみても突出して定時制・通信制の進学率が増加している神奈川の「異常事態」は続いている。
 
 今年の公立枠は昨年同様60.6%(実績60.8%)。昨年の県の調査から見ても約1500人から2000人の受検生が全日制希望から定時制・通信制へと進路変更している実態が明らかになっている。これは中卒者比で約2%に相当し、これを上積みする事を考えると、2002年の「異常事態」が始まる前の水準、92.5%にしなければならない。

 2006年9月の設置者会議での合意「2009年4月から公立全日制60%、私立などを40%に固定する」は、県民・保護者にも説明がつかない。子どもたちのためにも直ちに撤回すべきである。
 

公立全日制が足りない

 公立全日制を減らしすぎたため、「2%条項」を活用して347人多く合格にしたものの、昨年4月の県の調査でも07年度定時制入学生のうち、約半数(47.8%)が公立全日制志望であったように、昨年並みに多くの生徒が、定時制、通信制へと希望を変更せざるをえなくなっている。

 定時制ではフレキシブルスクールの厚木清南と県立川崎、および平日昼間登校できる新しい通信制高校である修悠館高校に志願者が集中した。「全日制で学びたい」という思いが「昼間(午後)の授業も受けられる」学校を選ばせたことは疑う余地がない。
 

昨年のような「混乱」はなかったが、定時制の過密状態は進行中

 今年の春の入試では、県が定時制の募集定数をはじめから昨年に比べて460人も多く上積みしたことから、昨年度のような「入試途中に募集枠を拡大する」とか「募集定数を超えて合格にする」、「4月になっても教員の手配ができなくて授業ができない」などの異常な混乱は起こらなかった(昨年の緊急の合格枠拡大は433人)。しかし、これをもって「定時制の異常さが改善された」ということにはならない。

 入学生の増加は、その後数年にわたって学年進行で在籍生徒数を累積増加させている。とくに、大規模校の希望ヶ丘、厚木済南、湘南などは夜間定時制でありながら、全校500人近くになろうとしている。神奈川の定時制はそのほとんどが全・定併置校。しかも同じ教室を全日制と定時制が共用している場合がほとんどである。全日制の教育活動との調整も難しくなり、定時制の教育環境は日に日に悪化している。
 

1学年3クラス105人以下にして、定時制本来の教育をとりもどそう

 定時制の生徒は、職業を持った人、やっと余裕ができてもう一度学びたいと来ている年輩の人、小・中学校等で不登校だった人、病弱や軽い障害などで大きな集団こなじめない人、日本語にまだ慣れていない外国籍の人、全日制を希望しながらやむなく定時制に来た人など、皆、少なからず困難を抱えている。

 こうした人たちに、「少人数・小規模」というメリットを生かして個別に指導ができるというのが、全日制にはない定時制の良さであったはずである。はじめから定時制を希望している生徒のはとんどは「アットホームな雰囲気」などの特長を挙げている。
  

受験生を翻弄する前期・後期の2回入試の見直しを
                   ひとまず、定時制の前期入試の募集枠50%上限を撤廃せよ

 今年も定時制の前期試験で志願者が50%を越え、多くの不合格者が出た。一方で、通信制の修悠館高校では前期志顧者が650人の定数を超えて殺到したため、通信制の性質上、志願者758名全員を合格にせざるを得ない事態に追い込まれ、県が固持してきた「前期募集率50%の大原則」は破綻した。

 定時制関係者の多くが前期募集率の引き上げを強く要望する中、5月27日開かれた設置者会議は、来年度開校するクリエイティブスクール3校の前期募集率の上限を80%としたものの、他の全日制、定時制の来年度前期募集率は20%から50%のままとした。5月13日の公私協議会の席上、川崎・横須賀市教委から、定時制の上限を50%以上に引き上げるべきとの発言が出ていたにもかかわらずである。

 受験生にとっては人生に一度の受験である。「一度始めた入試制度はそうそう変えられない」というが、教委や関係者のメンツと受験生の人生とどちらが大事なのか。先延ばしにする理由は全くない。

今必要な全日制をなくして、 「多部制定時制高校」にするのは、本末転倒!
             後期計画を見直し、今後予定されている県立5校の削減も即時中止を

 一昨年、昨年、今年と入試のたびに、公立全日制高校の不足が深刻化している。にもかかわらず、それに拍車をかけるように、高校再編の『後期計画』では、2009年度はひばりが丘を含めた3校、2010年度には2校の全日制普通科高校の削減が予定されている。そのうえ、中学卒菜生徒数が増加に転じている中での削減である。

 その一方で県教委は、昨年12月、2009年度に栗原高校に統合されるひばりが丘高校跡地(座間市)を使って2010(H22)年度に「多部制定時制高校」を開校すると発表した。

 県当局は「定時制には人気がある」「昼間定時制や多部制高校には人気がある」という。しかし、これは公立全日制枠を、県が強引に縮小しているために引き起こされた結果である。08年10月の中学3年生に対する希望諷査での定時制希望は全県で949人、定時制入学者の約3分の1であるという実情を県当局は知っているはずである。

以上

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