2007年12月16日
突然で、
しかも現在の常勤教員不足をさらに悪化させる定数算定方式の変更(募集クラス基準→在籍生徒数基準)はやめよ!
− この間の異常事態により、教員一人あたりの生徒数が全日制を上回ってしまった 定時制教員定数の抜本的改善を −
2007年10月、県は各学校ごとの定時制教員定数の算定について、それまでの『募集クラス数を基礎とする算定方式』から、『在籍生徒数に応じて基礎数を決め、それに少人数教育加配などを上積みする方式』に変更すると各校長に伝え、来年度の各学校の定数の『基礎数』を内示しています。しかし、変更は定時制のみであり、しかも事前に組合にも何の連絡・協議もありません。また、どうしてそのように変更するのか、『基礎数』は何を基礎に算定したのか、加配はどのようにするのか、などについても何も示していません。
従来、教員定数は全日も定時も、定数法(募集クラス数基準)、これを多少修正して年度ごとに各校の定数を配当してきました。しかし、この間の定時制生徒の急増によって、定時制の教員定数は、年々この算定基準から大きくずれて、相対的に減少を続けています。今回、の『変更』は従来の基準から大きくずれて悪化してしまった現状をさらに悪化させるものです。
2000年度から始まった「県立高校改革推進計画」(略して「高校再編」)によって、前期計画(2000−2004年度)で14校、後期計画(2005−2010年度)で11校もの県立全日制高校が削減され、この統廃合に向けて2000年から公立全日制募集枠の削減が始まりました。98年には78,553人の公立中学卒業生が、ボトム(いちばん少ない年)の2006年には63,593人に減少するからというのがその理由です。
公立全日制の募集枠は、1999年の64.0%(中卒者比)から2002年には60.5%にまで減らされました。また一方で、不景気と構造改革の進行で経済格差が拡大し、私学の高い授業料を払えない家庭も増加しています。その結果、2002年度になると全日制を希望しても入れない受験者が急増して定時制の後期試験、2次募集に殺到し、県はそれを受け入れざるを得ませんでした。その後、2003年には公立粋が61.2%と、一時的に拡大されましたが、2004年以降は中卒生徒減少分をそのまま公立枠で減少させたため、2002年と同じ異常事態が毎年起こり、年々深刻化しています。
このような入試途中での募集枠・合格枠の増加は、生徒の受け入れ体制に不備をもたらしています。3月末になっていきなり4月以降の新入生の数が増加するため、それまで予定されていた教員配置では足りず、臨時任用、非常勤の教員を応急的に配置してきました。しかしそれも生徒増加分に見合うだけの数ではありません。さらに、2007年度には生徒増の多かった学校では、その非常勤予算の確定が4月にずれ込み、必要な教員がそろったのは5月という事態になりました。
こうした状況が何をもたらすか、それは常勤教員の不足です。これは定時制に勤める教員は、誰しもこの頃肌で感じていることですが、これを統計資料から確認してみましょう。県教委が発行している『学校統計要覧』から『本務教員一人あたりの生徒数』を計算してみました(表1)。
<表1> 県立定時制高校
本務教員一人あたりの生徒数
年度 普通科 専門学科 2000 10.7人 6.6人 2006 14.5人 8.3人 2007 14.9人 10.0人 これを見ると『異常事態』前の2000年には10.7人(定時制普通科の全県平均)でしたが、2006年には14.5人、2007年には14.9人と急増しています。一方で、この間、全日制は『高校改革』による新校の1学年6学級体制、単位制、少人数(多展開)学級、少人数・習熟度別授業展開、選択科目の増加などもあって、年々改善されてきています。普通科の『本務教員一人あたりの生徒数』を見ると、2006年には14.9人だらたのが、2007年には14.7人と改善されてきましたが、定時制はそれに取り残された形になっています(表2)。従来、『定時制は少人数教育』と漠然と思いこんでいたわれわれ現場の教職員の『常識』が通用しない事態が現実に起こっている訳です。
<表2> 全日制と定時制の本務教員
一人あたりの生徒数比較(全県平均)
年度 課程 普通科 専門学科 総合学科 2006 定時制 14.5人 8.3人 全日制 14.9人 11.3人 12.6人 2007 定時制 14.9人 10.0人 全日制 14.7人 11.2人 12.6人
いま、定時制高校では授業時間帯には職員室がほとんど空の状態になる、残っていても数人の教員しかいない、という状態が多く見られます。しかも今は1クラスが30人前後、35人を超えるクラス編成も多くなっています。過密化、大規模化によって生徒関係のトラブルも急増しています。課業時間中や夜9時過ぎに、近所のコンビニや駅などから「生徒が騒いでいるので来て欲しい」と学校に連絡が入ることも珍しくありません。でもすぐに対応できないというのが今の現実です。
定時制に来る生徒は、職業を持った人、やっと余裕ができてもう一度学びたいと来ている年輩の人、小中学校等で不登校だった人、病弱や軽い障害などで大きな集団になじめない人、日本語にまだ慣れていない外国籍の人、全日制を希望しながらやむなく定時制に来た人など、皆、少なからず困難を抱えています。
こうした人たちが十分な教育を受けられるようにするためには、定時制の教員定数を大きく増加させることが必要です。定時制の教員定数を、在籍生徒数を基礎とすることによって削減するのでなく、抜本的に改善し、学習指導や生活指導に十分に手が回るようにしてもらわなければなりません。