2007年10月9日

来年度公立全日制入学定員は、36.000人(今年と同じ中卒者比60.6%)

来年も間違いなくここ数年と同じ事態が起こる


公私協調の名の下に中卒者を犠牲にする公立全日制6割の狭き門

今年は改善ゼロ、何の対応もしない公私協議会と設置者会議は機能不全

県は責任を持って、来年度定時制35人学級維持・臨時学級増解消を



 9月11日「公私立高等学校設置者会議」は、来年度(2008年度)の公立高校全日制の入学定員を39,000人(中卒予定者の60.6%)と決定した。今年と同率の60・6%では、来年の定時制入試において、ここ数年と同様の異常事態が起こることは必至である。


60.6%は、定時制の異常事態が引き起こされた02、04、07年度と同水準

 対中卒予定者比60.6%というこの定員は、定時制の異常事態が引き起こされた2002、04、07年と同じ水準でしかなく、来年の入試でここ数年と同様の異常事態が起こることは必至となった。
 県教委は、一昨年の協議の中で、定時制の「溢れ解消のためには、事態がやや緩和した2003年の公立全日制の比率61.2%が必要と提案した。また、県立校長会の代表は、異常事態が引き起こされる前の2001年度の62.0%とするよう求めた。

 今回、県教委がこれらを大きく下回る60.6%を提案したことは、公立全日制希望が8割を超す県民の教育要求に完全に背を向け、異常事態を固定化するものである。


中卒者の進路希望を打ち砕く、「公立全日制6割」の挟き門

 ここ数年の異常事態によって、中学の進路指導にどういうことが起こっているか、県教委や知事は知っているのだろうか。

 これまでなら全日制を受検していたと思われる全日制希望の生徒が、安全のため定時制前期の受検を指導されるようになったという。なるほど、定時制では前期受検者の定着率が思ったほど良くないので不思議だったが、そういうことだったか。
 また、定時制希望の不登校の生徒が、定時制に入りにくくなったので、通信制の受検を指導されるようになったという。

 こうして、大人たちの利害のために、子どもたちの希望が打ち砕かれている。不本意入学者を増やし、高校中退者を増やしている。 県教委や知事の職責は、こうした子どもたちの希望実現のために、公立全日制枠を増やすことではないだろうか。


今年度改善ゼロ、問題解決能力を失った公私協・設置者会議

 昨年は、設置者会議は、非常に不十分ながら定時制「溢れ」解消分500人を上乗せした公立全日制枠を決定した。

 今年は、事態が一層深刻になったにもかかわらず、定員に関しては何の改善もされなかった。5回も開かれた「公私立高等学校協議会」は、何を議論してきたのか。県教委は、何のために中学と定時制で調査を行ったのか。目の前の現実に対して何の対応も示せない公私協・設置者会議は、問題解決能力を失ってしまった。


埼玉・千葉では定時制の「溢れ」等全く起きていない 神奈川の中卒者だけに不利益

 今回、何の改善も示せなかった原因の一つに、「2009年度の比率を、公立全日制6割・私立その他4割とする」との昨年の合意がある。私学経営者側がこれに固執して、議論が問題解決の方向に進まなかった。類似県の埼玉・千葉においては、定時制の「溢れ」等は全く起きていない。公立の比率は、千葉66.5%(来年度)、埼玉65%である。神奈川の6割はやはり低すぎる。

 神奈川の「私立その他4割」の中には、定時制も含まれている。私立への進学者の比率が減少する中で、私学経営者側が比率「4割」に固執することは、定時制等の比率を増加させることに連動する。これは越権行為だ。せめて私立の減少分を減らした率を主張するのでなければ誠実ではない。

 私学経営者は、生徒を犠牲にする6割4割に固執するのでなく、全国最低水準の私学助成の増額の運動に力を注ぐべきである。


受検生の利益を侵す「談合」組織でな<、公正な第三者を中心とする組織で論議を

 また、公私協・設置者会議は、県・市教委と私学経営者という利害当事者が協議し、知事が調停する「談合」組織である。ここに、問題解決能力喪失の原因がある。ここまで大問題になった定員問題は、保護者、専門家、現場代表などを中心とする新しい組織で論議すべきである。


教育長「来年も改善がみられなければ、ゼロから公私協議のあり方を見直すべき

 設置者会議での決定の際、引地教育長は、教育委員の意見として、「進学率2年連続90%割れに大変責任を感じている。現在の協議の方法は機能していない。来年も改善がみられなければ、ゼロから公私協議のあり方を見直すべき」を紹介し、「私も同じ考え」と表明した。

 また、定員決定を報じた神奈川新聞は、「『公私協調』の名の下で、しわ寄せを受けるのは生徒だ。設置者会議は、『機能不全』の様相をさらに深めるか否かの瀬戸際に立っている。」と書いた。
 ビラ配り、署名、記者会見などの行動もあり、県民の理解が広がってきている。


県教委は責任を持って、定時制の35人学報維持・臨時学級増解消を

 これを受けて、定時制の定員が決定される。県教委は、責任を持って提案したのだから、定時制35人学級を維持し、また、各校の学級数を2001年以前の数に戻さなければならない。
 これらは、定時制の学習環境の超劣悪化を元に戻し、一人一人の生徒と向き合う定時制教育の良さを取り戻すための、最低限の急務である。

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