2007年4月30日

 「かながわ定時制教育を考える会」は、会報『ニュース91号』(2006年9月30日発行)で、「来年度(07年度)公立全日制入学定員は極めて不十分、このままでは02、04年度と同様の混乱を引き起こすと警告を発していました。しかし、県教委はこうした警告を何ら考慮することなく、07年度公立全日制入学定員を策定し入試を実施したため、この春今まで以上の大混乱を生み出してしまいました。これまで、ホームページにアップしてこなかった『ニュース91号』の記事を以下に掲載します。


2006年9月30日

 来年度公立全日制入学定員39,300人(中卒予定者の60.6%)は極めて不十分
 だが、県教委は、これを「定時制の『溢れ』解消」として責任を持って受け入れたのであるから

今度こそ定時制の35人学級・臨時学級増解消に責任を持て


 9月11日、「公私立高等学校設置者会議」は次のことを決定した。
@来年度(2007年度)の公立全日制高校の入学定員を39,300人(中卒予定者の60.6%)とする。
A2009年度の割り振り比率を、公立全日制6割、「私立全日制・その他」4割とする。
 また、会議の中で、県教委・私学経営者の双方から、来年度の全日制進学率の目標を91%としたいとの発言があった。
 

60.6%は、定時制の非常事態が引き起こされた02,04年度と同水準

 39,300人という数字は、来春の中卒予定者64,868人X0.599(今年度の公立全日制への比率)十500人(定時制「溢れ解消分」)=39,356人から、下2桁を切り捨てた数字である。

 しかし、対中卒予定者比60.6%というこの定員は、下表でわかるように、定時制の非密事態が引き起こされた2002年、2004年と同じ水準でしかなく、この定員で定時制の非常事態が解消されるとは考えられない。

 そもそも県教委は、昨年の協議の中で、定時制の「溢れ解消」のためには、事態がやや緩和した2003年の公立全日制の比率61.2%とするよう求めた。これらは、中卒者の公立全日制への希望が約8割であることを考えると、全く不十分な提案であるが、これらの提案をさえ、はるかに下回る60.6%という今回の決定は、何をかいわんやである。

1988年度 01年度 02年度 03年度 04年度 05年度 06年度 07年度?
中卒予定者@ 122,077 71,721 69,034 68,768 67,881 63,987 63,593 64,868
公立全日制入学定員A 83,113 44,494 41,776 42,091 41,067 38,146 37,999 39,300
A÷@×100 68.1 62.0 60.5 61.2 60.5 59.6 59.8 60.6
全日進学率(実績) (%) 91.3 90.1 91.1 90.8 90.1 89.6
定時制二次募集不合格者 13 101 55 66

 2002、04、05、06年度と4度の同じ過ちを犯しながら、抜本的解決を決断しない県教委と松沢知事は、5度目の非常事態を引き起こした場合、今度こそ明確に責任をとらなければならない。


今度こそ、35人学級・臨時学級増解消を

 同時に、県教委はこの定員を、定時制「溢れ解消分」として責任を持って受け入れたのであるから、今度こそ、定時制の学級定員を少なくとも35人に戻し、各校の学級数を2001年以前の数に戻さなければならない。このことは、定時制の学習環境の超劣悪化を元に戻し、定時制の良さを取り戻すための、最低限の急務である。

 また、会議では、今年度の全日制進学率を全国最低水準の89.6%まで落ち込ませたことに対する県民の大きな批判を意識して、県教委・私学経営者の双方から、来年度の全日制進学率の目標を91%としたいとの発言があった。ここには,中学3年生の全日制進学希望者92.4%の進学希望をかなえようとする姿勢はみられない。

 そもそも、県は、「県立高校改革推進計画(1999年11月)」で、「計画進学率は、現在、93.5%としていますが、・・・・・今後も段階的に引き上げていきます」としており、これを守る責任がある。


公立全日制の比率6割は、定時制の非常事態の固定化、
全日制進学率の全国最低水準への固定化

 さらに重大な問題は、2009年度には公立全日制の比率を、来年度の60.6%をも大幅に下回る6割にするとした決定である。この比率は、上の表からわかるように今年度(2006年度)の比率と同水準であり、この6割での固定化は定時制の非常事態の固定化である。当然、このことは、本県の全日制進学率の全国最低水準への固定化をもたらす。

 「設置者会議」は、私学生徒への学費補助等の効果を期待しているのだが、この程度の補助ではその効果が定時制非常事態解消にまで結びつかないということが示されたのが今年(06年度)の入試だったのではなかろうか。また、不登校生徒対策などの他の施策も大きな効果が期待できるとは思えない内容である。

 中学3年生の公立全日制進学希望は約8割であり、公立全日制の比率をこれに近づける努力をして、中学生・父母の期待に応えることしか、定時制の非常事態解消・全日制進学率上昇の道はない。


県教委が検討中の今こそ、35人学級臨時学級増解消の声をあげるとき

 「かながわ定時制・通信制・高校教育を考える懇談会」は、9月20日、この問題で県教委交渉を持った。35人学級・臨時学級増解消に関する県教委の回答は、「定時制環境改善分として一定の数をもらっているので、定時制の定員についても検討していきたい」というものであった。
 10月10日の教育委員会を控え、県教委がこのことを検討している今こそ、35人学級・臨時学級増解消の声を多くのところであげていこう。

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