来年度高校定員計画決定、公立全日制38,000人(定時制非常事態解消分はゼロ)

これでは、02、04、05年度と同様の「混乱」は必至

定時制への犠牲押しつけはもういい加減にしろ
定時制を、35人学級・元の学級数にもどせ


 9月13日、「公私立高等学校設置者会議」(昨秋の私学経営者側の提訴を受けて、知事が作った会議)は、来年度の県内公立高校全日制の定員を38,000人と決定した。同時に、知事提案として出された、私立高校等生徒学費補助金の充実などの対策を了承した。

最終的には全く無視された定時制の非常事態

 38,000人の算出式は、38,257人(今年度公立実績)−291人=37,966人(※)を四捨五入したものである(291人は、来年度中卒予定者減少分487人×0.597{今年度公立中卒予定者減少分487人×0.597(今年度公立実績の対中卒者比)} 

 この式を見れば一目瞭然、38,000という数は全くの今年度並みであることがわかる。そこには定時制の非常事態解消への意志は全く見られない。

 また、知事提案の「私立高校等生徒学費補助金の充実」は、これ自体には賛成だが不況と格差拡大による家庭の経済状態を考えると、これにより定時制の非常事態が解消するほど私学の入学者が増加するとは考えられない。結局、来年度入試においても、全日制大量不合格者が定時制に殺到する事態は変わらないことは必至である。

年   度 97年 98年 99年 00年 01年 02年 03年 04年 05年 06年
@中卒者  78,588  78,201  77,424  74,865  71,792  69,106  68,850  67,958  64,080  63,593
A県内公立全日制枠  50,069  49,862  49,524  47,200  44,494  41,776  42,091  41,067  38,146  38,000
BAの対中卒者比(%) 63.7 63.8 64.0 63.1 62.0 60.5 61.2 60.5 59.6 59.8
C県内私立高校空枠 812 1,978 2,456 1,760 2,340 2,646 2,047 2,074 2,571
D県内定時制入学者 1,443 1,844 1,953 2,017 1,975 2,331 2,095 2,383 2,670
E定時制2次入試不合格者 6 2 6 0 1 13 5 101 55
06年度入試の59.8%は、「大混乱」の02、04年度より大幅に低い。(注)06年度@は予定 <県教委資料より作成>            
 

定時制を混乱させない」ための県教委の提案は、38,919人だった

 「混乱」が必至であることは、決定までの経過を見るとさらにはっきりする。
 8月29日の「公私立高等学校協議会」(「設置者会議」への原案協議の場)で、県教委は、「来年3月に定時制を混乱させない」ためには、公立全日制枠は38,919人必要だと提案した{中卒予定63,593人×0.612(直近で定時制が「混乱しなかった」03年度の公立実額の対中卒者比)}。

 全日制の公立粋が大きければ、私学粋が小さくなり、私学の「空枠」が少なくなって、全日制の不合格者が少なくなり、定時制への殺到が緩和されるのである。

 この提案は、03年度「混乱しなかった」のは定時制の臨時学級増を行った上でのことなので、非常に不十分な提案だが、定時制現場と受験生の要求を一定程度反映した提案だった。

 しかし、私学経営者側はこれに強く反対し、座長(知事部局)はこれを座長預かりとした。

座長提案は定時制問題解消分をゼロに
来年3月「混乱」なら知事は責任をとれ

 9月5日に再開した「協議会」の座長提案は、37.966人(前掲の※)±100人というものであった。何と、定時制非常事態解消分はゼロとされたのである。大の大人たちが多大な税金と時間を使って、何を議論してきたのだろうか。

 私学経営者側はすぐにこれを受け入れ,県教委側は約1時間の検討の上受け入れた。 こうした経過を経て、9月13日の「設置者会議」で、38,000人の公立全日制粋が決定されたのである。
 これだと、公立枠の対中卒者比は59.8%、大「混乱」の今年度と同水準であり、同じく大「混乱」の02,04年度より大きく下回る。(前表参照)

 座長提案および「設置者会議」の決定は、議論の過程で確認してきた、「生徒の視点に立った定員計画」、「全日制高校への進学実績を向上させる」、「生徒の希望と適性に応じた進路を確保する」などに反するものである。座長提案は事実上、知事提案である。来年3月、ここ数年と同様の「混乱」が起きた場合、知事は責任をとらなければならない。

35人学級・元の学級数に戻せ
臨時学級増が必要なら全日制でも行え

 この無責任な全日制の定員計画の決定を受けて、来年度の定時制の学級定員は40人のままとし、定時制数校にまたまた臨時学級増をおしつけることが、決められようとしている(最終決定は、18日の教育委員会)。再々々度すべての犠牲を定時制と受検者におしつけるこれまでと同じやり方がとられようとしているのである。

 しかし、定時制の学習環境の.劣悪化は、許容限度をとっくに越えている。 私たちは、定時制の良さをとりもどすためにも、こうしたやり方をやめ、定時制の学級定員を少なくとも35人に戻し、学級数を02年度以前の規模に戻すことを、県教委に強く求める。

 その上で、1〜2月には私学の受け入れ状況をリアルタイムで把握し、「混乱」が予想される場合には、全日制にも臨時学級増を実施することを提案する。こうすることが、受検者の希望を少しでも尊重する道である。

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